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【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

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December 2009の18件の記事

2009.12.31

業務・執筆・講演を承ります

金森マーケティング事務所 は以下の業務を承ります。


■企業のマーケティング戦略の立案・実行に関するプランニングやコンサルテーション

■マーケター育成のためのセミナー、社内研修

■マーケティングコラムの執筆


<お問い合わせは、プロフィールページの「メール送信 」からお願い致します>

プロフィールページ http://kmo.air-nifty.com/about.html


執筆は雑誌・メルマガ、Webへの寄稿、連載など。
業界紙・社内報等のクローズドな媒体でも承ります。

講演・セミナーも、公開セミナー、社内・社員向け教育研修のどちらも承ります。
公開セミナーは、最近は以下のような内容で実施いたしました。

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消費財ブランド担当者のための超実戦型「売れるマーケティング」の法則
~ヒット事例解説×プランニング演習×総点検で身につく「ヒットを生み出すための考え方」~
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2010/02/post-92a2.html


たった4時間でマーケティングがわかる!楽しくなる!
【『あれがヒットしたワケ』をフレームワークで読み解く勉強会】
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2010/01/post-6968.html

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提携コンサルタントプロフィール

弊社の提携コンサルタントのプロフィールを紹介します

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鈴木 準 (すずき じゅん)

マーケティングコミュニケーション・コンサルタント
1960年10月30日生まれ。岐阜県岐阜市出身。
放送文化事業株式会社、株式会社エーシーシー、株式会社新東通信、株式会社、電通ワンダーマンケイトージョンソンと、特色の異なる広告会社の経験を経て、1998年独立。プランニングオフィス「ジュンプランニング」を立ち上げ独立開業。その後2003年に法人化し、現在「株式会社ジェイ・ビーム」代表取締役。
広告会社時代は、「媒体(ラジオ・テレビ)・営業・セールスプロモーションプランニング・ストラテジックプランニング・ダイレクトマーケティングプランニング」と、様々な部署でマーケティングコミュニケーションの企画や実務を行う。
こうした経験を活かして、『モノやサービスを売り、顧客満足を与え、ブランド価値を高める』には、何をするべきかと言う視点で、課題発見と課題解決を図る戦略・戦術立案の、様々な業種のマーケティングコミュニケーションコンサルティング&プランニングを手掛ける。
特に、「通信販売・自動車・各種サービス業」などを中心とした、「ダイレクトマーケティング」企画の実績は多数。
「財団法人生涯学習開発財団認定コーチ」

2009.12.25

またもバランス感覚を発揮するマクドナルドのキャンペーン


 マクドナルドが1月から期間限定のバーガーを連続投入するという。その狙いを考えてみよう。

マックから大型新シリーズ!アメリカ4都市の名を冠した“Big America”期間限定発売(2009・12・24 東京ウォーカー)
http://news.walkerplus.com/2009/1224/7/
<「クォーターパウンダー」で大旋風を巻き起こしたマクドナルドから、2010年に大型の新シリーズが期間限定で登場! 「テキサス」、「ニューヨーク」、「カリフォルニア」、「ハワイ」といった本場・アメリカの味をイメージしたまったく新しいハンバーガーだ>とのことだ。

 商品が「安くて価値が高い」のであれば、どんな顧客からも支持される。しかし価格と価値の同時に実現することは難しい。故に、「同じ商品なら安い方が勝つ」という考え方と、「価格が多少高くても価値が高い方が勝つ」という考え方に従った戦略の意志決定がなされる。前者を「コストリーダーシップ戦略」、後者を「差別化戦略」という。マイケル・ポーターによる考え方だ。「コストリーダーシップ戦略」は単なるコスト削減とは異なる。経営資源の大半を費やして、業界の最低コストを実現し、市場価格の決定権を握って、競合と価格競争をしても黒字経営が実現できる企業体質を実現する。自動車業界でいえばトヨタ自動車。ファストフード業界でいえば日本マクドナルドである。

 低コストを実現するためには、生産数を上げて固定費比率を低減する「規模の経済」と、生産性を高め単位時間あたりの人件費比率を低減する「経験効果」が重要になってくる。つまり、「数を売る」ことが重要なのだ。故に、コストリーダーの戦略は、より幅広いターゲットを狙う「全方位戦略」となる。

 日本マクドナルドが今年の夏から展開していた、チキンタツタやグラコロなどの懐かしの日本オリジナルメニューを復活させた「NIPPON ALL STARS」キャンペーン。チキンタツタなど「キャベツがこんなに美味しかったとは!」と懐かしさとその味に大満足した筆者であるが、舌鼓を打った同年代の人は多かっただろう。そのキャンペーンの狙いは、6~7月に展開したクォーターパウンダーの販促キャンペーン「日本バラ色計画」で若年層に振れたターゲティングの修正を図ったのである。
 そして今度は「Big America」だ。懐かしの日本オリジナルメニューの次は、「本場アメリカ!」の訴求と「クォーターパウンダー」シリーズで使用している4分の1ポンドのパテを使ったボリューム感で迫る。右へ左へと巧みにポジショニングを調整し、メインとなるターゲットも切り替えて「全方位戦略」を展開しているのだ。

 マクドナルドのバランス感覚はターゲティングとポジショニングの調整だけでではない。商売の基本である「客数×客単価の最大化」を愚直に追求している面もある。低価格メニューで集客し客数増を図り、高価格メニューで客単価向上を図るというマージンミックスである。今年展開した無料コーヒーで客数は増加している。今度はボリューム感に比例して高価格な「Big America」メニューの投入である。

 リーダー企業こそ、奇策で勝負するのではなく基本に忠実な戦略を徹底するという姿勢に学ぶところだ。

【関連記事】
日本マクドナルドの恐るべきバランス感覚


2009.12.23

チョコレート携帯の購入は「コト消費」?

 徹夜の行列も出た大人気の「チョコレート携帯」。ドコモとジュエリーブランド「Q-pot.」がコラボした携帯電話「docomo STYLEシリーズ SH-04B」のことだ。その携帯からの考察は先週『ハートをとろかす「チョコ携帯」の可能性』として記したが、さらに一歩進めて考えてみよう。

 前回の記事でも取り上げた東京ウォーカーの記事にある購入者のコメント<「もともと『Q-pot.』が好きなんです。携帯のデザインを見て、すぐに買うことを決めました。価格? 気にならないです」>。6万円後半~7万の価格であるが、実は本当に高いものではないのではと思う。確かにブランドのファンであれば、購入して手にした喜び、所有し使う喜びは高いだろう。だが、それ以上に「チョコ携帯」を持っていることで実現できることがある。「なにそれ、スゴ~イ!」と仲間内で話題になることだ。話題になる、羨望されるというなら、アクセサリーや服でも良いじゃないかと思うかもしれないが、同じアクセサリーを付けっぱなし、着たきり雀ではちょっと悲しい。その点、携帯電話は毎日持ち歩くのが当り前で、しかも常に自分から20センチ以内のところにあるモノである。

 実は筆者も同様の経験がある。ゼロハリバートンのアタッシュケースを愛用しているのだが、色は鮮やかな赤なのだ。「きれいな色ですねぇ」「こんな色あるんですね!」と間違いなく会った人が話題にしてくれる。印象に残って覚えてもらえる。トレードマークになる。価格は8万円弱であったが、費用対効果を考えると実に安い買い物であった。つまり、「チョコ携帯」の購入者と同じ感想だ。

 日経新聞12月22日の消費欄。<Xマスギフトは「挑戦権」 パラグライダー・陶芸・・・ 体験講座・ツアーを贈る モノよりも印象深く?>とのタイトルが目につく。プレゼント商品のツアーを企画したJTBの担当者が<プレゼント慣れした若い世代はありきたりのモノでは飽きたらず、「新しいタイプのプレゼントをしたい人に体験型ギフトが受けている」>とコメントしている。
 若者の消費意欲、購入意欲に体験ギフトがどの程度刺さるのか、クリスマス狙いのマーケティングにどの程度踊ってくれるのかはわからないが、モノの飽和によって、若い世代ほど「モノからコトへ」の傾向が顕著なのは間違いないだろう。

 昨今の若年層の大きな関心事は、「仲間とのゆるやかな“つながり”」。携帯電話はもともとコミュニケーションツールであるが、「チョコ携帯」は電話やメールをしていなくてもコミュニケーションが促進できる。つまり、「チョコ携帯」の7万円という価格には、「仲間とのつながり」「コミュニケーション」という「コト」の価値も含まれているのである。

 「モノが売れない」という言葉は何年も前からいわれてきた。「モノからコトへ」もいわれて久しい。ならば、それをさらに進めて、「そのモノは、顧客にどのようなコトを実現できるのか」を精緻に考えるべきなのだろう。顧客のココロの中をよくのぞき込むことだ。単純な思いつきでは「モノ」も「コト」も売れないのは同じだ。

2009.12.22

仕事の本質とは何なのか?

 「労働生産性が低い」といわれる日本のホワイトカラー。その向上策の一つがナレッジマネジメントである。筆者はマーケティングとは別の領域で、2000年頃からに取り組んでいる。知識(ナレッジ)共有のためのシステムの導入と同時によく議論されるのが、オフィス環境である。久々に面白い取り組みを見つけた。
 <森ビルが自社の社員で実験中! 「仕事がはかどるオフィス」とは?>
 http://news.livedoor.com/article/detail/4514636/

 記事によると、従来から用いられている「フリーアドレス」の手法を少し進化させているようだ。
 <実験場は12種類のワークスペースに分けられる。「図面を引きやすい奥行きのあるデスク」「集中してアイデアを練る半個室」「ブレストに適したベンチシート」などで、各場所に2時間の利用制限があるという。>2時間という時間がミソで、集中を高める狙いがあるという。
 会議室にも工夫があるようだ。<朝の会議では脳を活性化させるため、交感神経を優位にする強めの光に設定するなど、それぞれの会議で最高のパフォーマンスを発揮できるよう、色や光の演出をしています>と担当者が語る。

 フリーアドレスを単純に導入しても成果が上がらない事例は多い。それを踏まえて、時間制限や環境変化などの工夫をしているのが印象的だ。ただ、会議室の光の話など、「ホーソン実験」を彷彿とさせるものがある。

 ホーソン実験とは行動科学のもととなった、人間の動機づけに関する古典的研究である。1927年から、ウエスタンエレクトリック社のホーソン工場で実験が行われ、作業場の明るさに注目し、照度を変えることがどの程度作業効率に影響を与えるかを検証した。実験の結果は照明の明るさという環境要因によって作業効率が変わるのではなく、実験の対象となって注目されていることが動機付けとなって効率が上がるのであると仮説が立てられた。(詳細はグロービスのMBA用語集の該当ページを参照→ http://gms.globis.co.jp/dic/00316.php )

 問題はここだ。「動機付け」がうまくできなければ、環境を整えてもうまくいかないのだ。今日ほど社員の動機付けが難しい状況はない。収益効率の低下によって、「儲からないのに忙しい!」という状況が恒常化し、リストラによる人数の減少が追い打ちをかける。動機付けも減ったくれもなく、仕事の満足とはほど遠い状況が散見される。

 TuitterでDruckerBOTがつぶやいた。「知識労働者の動機づけは、ボランティアの動機づけと同じである。ボランティアは、まさに報酬を手にしないがゆえに、仕事から満足を得る。」ピーター・ドラッカー先生はさすがに「仕事の本質」を看破されている。
「仕事が楽しみならば人生は極楽だ。仕事が義務ならば人生は地獄だ。」 ロシアの作家、マクシム・ゴーリキー(1868~1936)の言葉である。
 厳しい環境の中、企業は社員をどのように動機付けするのかが大きな課題だ。個人もどのように自らを鼓舞して仕事を楽しむようにできるかが欠かせない。

 今日は昼の時間が最も短い冬至である。これからどんどんと明るい時間が長くなるのだ。不景気を嘆いたり、二番底に怯えているだけでは始まらない。忙しい年の瀬ではあるが、来年をどうするのかもそろそろ考えた方が良いだろう。

2009.12.19

おしらせ:本が出ました!

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このBlogが本になりました!

TAC出版 「実例でわかる! 差別化マーケティング 成功の法則」 金森努・監修

当Blogの記事を元にしたヒット商品の実例が56連発。
マーケティングのフレームワークで成功のポイントをわかりやすくまとめました。

「面白いんだけどさぁ、カナモリさんのBlogの記事って、長くて疲れるんだよねぇ・・・」と言っていた、そこのあなた!
もうご心配は無用です。
図解でバッチリ。見開き1ページがBlog記事1本分と思っていただければ結構です。
たぶん、全編読んでも1時間半ぐらいで読めるでしょう。
出張のお供に!東京駅で買って、名古屋駅でポイしてもいいから、一度読んでみて!

例えば・・・

序章 10分でわかるマーケティングの基本

第1章 環境分析から差別化を図る

実例01 競合しているようで競合していない
      「とびきりハンバーグサンド」にみる【競合回避】

実例07 仁義なき“牛丼戦争”の決着は?
      「すき家」にみる【違いを見抜く戦略】

第2章 戦略立案における差別化

実例18 オタフクソースの徹底したニッチャー戦略
      「お好みソース」にみる【セグメントの細分化】

実例20 マーケティングの整合性を考える
      「世界のkitchenから」にみる【マーケティングミックス】

実例27 誰とも戦わない、ブルーオーシャン戦略
      「メリットさらさらヘアミルク」にみる【STPの開拓】

第3章 施策立案における差別化

実例34 今の時代に売れるモノとは?
      「スーパーホテル」にみる【価値の差別化】

実例39 変わり種は奇をてらうだけではない!
      「ペプシあずき」にみる【チャレンジャーの戦略】

実例45 顧客層を広げるちょっとした工夫
      「プリッツ」にみる【定番商品の改良】

実例52 キムタクのCMに学ぶ企業戦略
      「キシリッシュ」のCMにみる【価値判断】

実例56 ポケモンとバッジをもらいにマックへ!
      「マクドナルド」にみる【隙間のない販促戦略】

・・・などなど、ネタ満載です。


気になるお値段は、たったの700円(税込)。スタバのキャラメルマキアート2杯分というリーズナブルさ。

さあ、アマゾンでのお求めは【 こちら 】から!!

書店にも並んでます!!
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2009.12.18

見事!フェニックスの「チャレンジャー」広告戦略!

 リーダーの戦い方は、全方位戦略だ。強大な力であらゆるところ、あらゆる相手に戦いを展開する。それに対してチャレンジャーは「勝てるところを見つけて戦う」のが原則だ。リーダーに、全面戦争を仕掛けて犬死にすることは絶対に避ける。そんな視点で冬のアンダーウエア市場を見ると、実に面白いチャレンジャーがいることがわかる。

 冬用の暖かアンダーウエアのリーダーは間違いなくユニクロのヒートテックである。今年度の販売目標は、何と5,000万枚!しかし、消費者が「売って売って!」と列をなす。低価格でも、より薄くフィットするように、さらにより暖かく発熱するようにと毎年製品改良の努力を重ねた成果である。

 「冬のアンダーウェア、発熱するだけでいいの?」
 そんな、挑発的なキャッチコピーの広告を展開したのがフェニックス(Phenix)だ。その展開がチャレンジャーの戦略としては実に見事なのだ。広告は電車の車内吊りである。

 あったかいだけのアンダーウエアは、実は環境が整備された日本では使いにくい。活動のスタート時は激寒でも、動き始めると人間は発熱する。次はその熱をどのようにして制御するかが問題になってくる。
 寒波が押し寄せ始めた日本列島の朝、準備してあったユニクロのヒートテックや大手スーパーの暖かインナーの出番である。
 「ほら、パパ!これ、あったかいって評判だから着てって!」とあてがわれた夫たち。ところが、「電車の中じゃあちーよ!会社で汗臭いよ、俺!」と不満をつのらせることになる。

 電車という密室で、しかも「熱い」という不満が満ち満ちる絶好のシチュエーションで「フェニックス」「フェニックス」「フェニックス」と、三回もカタカナですり込まれる。フォントも微妙に凝っていて、興味を惹く。AIDMAのAttention・Interestバッチリだ。
 興味(Interest)を維持したまま、汗だくのまま、「フェニックスのアンダーなら、快適かもしれない」と、欲求(Desire)が高まる。そしてWebサイトを見てみれば何とも親切に、どうやったらアンダーのページに行けるかまで説明がしてある!PC苦手なパパもママも安心!
 そしてサイトをよく見れば、結構本気のスポーツメーカーだったりして、機能もなんかすごそうだ、とちょっとびっくり。

 しかし、価格はセール時のヒートテックが4枚以上買える値段…「おぉぉ…無理かもしれん…けど、ボーナス少ないけど出たし、いつもならコート買ってもらう所だけど、それは我慢して…「クリスマス…せめてこれを買ってくれ、嫁!」。Memoryをすっ飛ばして、Action、購入申請がなされる。そんな展開が多くの家庭で繰り広げられるのではないだろうか。

 じ・つ・は、他のスポーツウエアメーカーも、この「保温/放熱/汗発散/抗菌防臭」を実現してる所は多い。いわば「高価格帯のウエアメーカーでは当たり前の機能」でもあす。しかし、電車に乗っている人が全てパタゴニアを、CW-Xを、アンダーアーマーを知っている訳ではない。そう、その辺りのブランドを熟知している人は、今回のフェニックスのターゲットではないのだ。

 電車という限定空間で不満を募らせる人が、スポーツに詳しい知人から「スポーツブランド○○のアンダーは熱を発散して、快適温度を保ってくれるから快適だよ。ヒートテックよりも高いけど、高いだけの事はあるよ」という競合の情報をすり込まれる前に、確実に狙い打ちしているのだ。
 チャレンジャーは勝てる戦いをする。相手、場所、時間・・・。フェニックスの車内広告展開から学ぶところは大きい。

【フェニックスの広告】
http://www.phenix.jp/topics/foresight.2009121401.php

2009.12.16

現代のマーケティング環境は「ガンダムの世界」であるという話

 筆者は「ガンダム世代」といわれる年代ながら、実はあまり思い入れがなかった。しかし、改めてその世界観を考えてみると今日のマーケティング環境に似ている気がする。

 マーケティングという概念が確立する以前から存在した、それこそ戦いに勝つための「ランチェスター戦略」や、競合をいかにに勝ち抜くかを考えるマイケル・ポーターの「競争優位戦略」など、その概念がしばしば戦争に例えられることが多々あった。そして、今日に至る市場環境の変化もまたそうだ。

 1955年代から73年までを中心とした高度成長期。消費者は人よりいち早く、または人並みに家の中に揃ってくる家電製品などを楽しみにしていた。誰もが同じモノを手に入れ満足し、むしろ同じであることを喜んだ。「作れば売れる」という時代。さしたる狙いも定めずに兵力・物資の力だけで勝てた時代だった。「絨毯爆撃」の戦い。KSF(Key Success Factor=成功のカギ)は「迅速な生産・供給」。「作れば売れる」という環境に適合した戦い方であった。大軍を率いたマスの戦いだ。

 80年代から90年代にかけて市場は成熟し、1986年から91年のバブル景気を迎えた。人々の家々にも一通りのものが揃い、生産者は買い換えか買い増しをさせることが生き残りの法則となった。限られたパイの食い合いの時代への突入である。そんな時代の戦いは、湾岸戦争のニュース映像に想起されるような、極めてピンポイントな戦いになった。あたかもテレビゲームの如く高精度なミサイル爆撃が繰り返される。レーダー等による、ターゲティング精度の向上である。それは、「ターゲットマーケティング」といわれる概念と相似している。

 バブルの崩壊と共に市場は完全に飽和し、人々はもう既に手に持っているもので十分。「買わない自由」もあることに気がついてしまった。そうなると、「消費者」などという大括りな生活者の捉え方はできない。

 ガンダムの世界観のキモは「ミノフスキー粒子」という存在だ。それによってレーダーが無効化され、長距離誘導ミサイルが使えなくなり、有視界戦法によるロボットを用いた白兵戦が展開されるようになった。
 レーダーによるピンポイントな爆撃は、戦場全体を見渡して、どこを攻撃すればいいかがわかっていることが必須である。しかし、昨今は消費環境が多様化し、さらにそれを取り巻く環境も複雑化しているため、全体像をMECE(モレ抜けのない)なセグメンテーションマップで描くことができない。 セグメンテーションマップが描けない状態は、ガンダムの世界の「有視界戦法」に似ている。絶大な効果な長距離ミサイル≒マス媒体は無効になり、有視界戦法、白兵戦となる。
 では、目で見るのは何をみればいいのか。目で見て戦う場所を見つけるには、顧客の「ニーズ」もしくは「ニーズギャップ」を探して、そこを徹底して叩くしかない。昨今のマーケティングはハイテク装備を装備しながら、白兵戦的な前近代的戦い方に逆行した世界だ。しかし、そこで目でよく見るべくは、「敵」である競合の動き以前に、「顧客」の姿、心理に注目することが欠かせないのである。

2009.12.15

勝手企画・「冷えしらずさん」の新展開を考えてみた!

 永谷園の「生姜部」。まさに今、ビジネスとしては「収穫期」を迎えているのだろう。新製品の投入も矢継早である。そんな同社・同部に作って欲しい商品を考えてみた。

 生姜部の最新商品は「『冷え知らず』さんの生姜ぞうすい」。この冬限定・コンビニのみで販売だという。寒さが厳しくなる季節に何ともにくい商品である。
 永谷園の生姜部とは、生姜という素材を究めるために設立された組織だ。主力商品は「しょうがの知恵」シリーズ。シリーズ名より「『冷え知らず』さんの・・・」という商品名の方が圧倒的に認知度が高い。展開商品はカップスープを主軸に、即席スープ、ボトル缶飲料、グミ・飴・キャラメルといった菓子にまで展開を始めた。
 「『冷え知らず』さんの・・・」のコンセプトは<2007年6月に、オフィスで働く女性をターゲットに開発した生姜入り商品シリーズ>であり、<生姜を主役にした商品で、女性の美容と健康を応援していく>という。(同社ニュースリリース)。

 こんな声を聞いた。「何だか、体温が上がらないんですよ。生命活動が低下してきているっていうか・・・」(ベンチャー企業役員・男性・34歳)
 そんな彼が飲んでいたのは、「『冷え知らず』さんの生姜チャイ」。
 「正直、買うのに抵抗がありましたよ。でもね、背に腹は替えられませんから。それにね、確かに飲むと暖まるんですよ、これ。」
 手にした缶には、ちょっとオシャレなタッチで描かれた、「冷え知らずさん」とおぼしき女性のキャラクターが描かれている。キャッチコピーは「冷えは、オンナの大敵!」。描かれている手書き風の文字も何やらカワイイ。イケメン、男前の彼が購入を躊躇するのもわかる。

 「オトコの冷え性」。意外と多いのである。日経BPネットの4年ほど前の記事にリンクを張ろう。
 <実は男性にも多い「冷え性」( http://tinyurl.com/ycs886j )>
 <以前に比べて、最近は男性の冷え性が目立つようになってきたようだ。「男が冷え性だなんてかっこ悪いと、多少の冷えなら辛くても黙って我慢していた人が多かったが、この風潮が崩れてきたためではないか」>と医師のコメントから記事は始まる。
 辛い世の中だ。寒さまでぐっと堪えてのみ込んでいるなんてとても無理なのだ。ましてやエコなのか経費削減なのか、オフィスの暖房の設定温度は低い。寒々しいのはボーナスが減って寂しい懐のせいだけじゃない。

 というわけで、是非とも「冷えしらず君」を作って欲しいのだ。スープや菓子はともかく、飲料は是非作って欲しいと、実は隠れ冷え性の筆者も切望する。

 しかし、問題はそんなに簡単ではない。
 「冷えしらずさん」に対して、それと混然一体となるような「冷えしらず君」を作ってしまうと、「ええぇ~課長が同じの飲んでる~」「部長もだ~」と、オジサンたちの進出に、既存顧客である「オフィスで働く女性」がNO!を示すかもしれない。安易なブランド拡張は、既存顧客の離反を招く。ターゲットである「冷え性男」にも、最低限の矜持はある。「冷えは、オトコの大敵!」では事実はそうでも、少々情けない。手が出しにくい。故に、ポジショニングと、それを示す商品名、キャッチコピーには腐心することになる。
 (筆者はコピーの才能がないので例示は控えます。ご用命いただければ、弊社コピーライターが担当します)。

 ターゲティング、ポジショニングが固まれば、次は4Pである。Product(製品)は、生姜入りであって、男性受けするフレーバーの開発が必要だが、それは永谷園・生姜部が頑張るだろう。Price(価格)も相場の350ml・120円程度に設定することになる。
 最大の問題はPlace(販売チャネル)だ。ターゲティング・ポジショニングの問題から、「冷えしらずさん」とは別物になる。となると、販路・棚の確保をまた、一からやらなければならない。

 コンビニのホット飲料棚の取り合いは熾烈だ。なかなか割って入りにくい。狙いは自販機だ。
 実は、首都圏において「『冷え知らず』さんの生姜チャイ」の露出が高まっているのは、エキナカ自販機のせいもある。JR東日本管内のエキナカに1万台展開されている「acure」のブランドロゴが付いた自販機の多くで同商品が販売されている。飲料メーカーではない永谷園が自販機に食い込めたのは、運営会社であるJR東日本ウォータービジネス社が、メーカーに偏らない品揃えにこだわっているからだ。うまくすれば、もう1アイテム、男性向けも扱ってもらえるかもしれない。

 もし、エキナカ自販機が無理なら、マチナカ自販機を狙うことになる。男性向けということであれば、実はマチナカは親和性が高い。エキナカでは、電車待ちのホームで飲料を購入する「自販機女子」も利用客の4割を占めるというが、マチナカ自販機利用客は実に9割が男性。自販機はオトコの「エナジー・チャージスポット」なのである。
 狙いは「アサヒ飲料」だ。アサヒ飲料は保有自販機の数は全国23万台と中堅クラスであるが、カゴメなどをはじめ、コラボレーション商品を出している。前出のウォータービジネス社ともエキナカ商品のコラボ実績もあるため、うまくすればマチナカ、エキナカ共用品が開発できるかもしれない。
 いずれにしても、チャネル開発は困難を伴うため、有力企業との協業がオススメである。

 最後にPromotionは、「オトコゴコロ」に響くヤツを企画しなくてはならない。が、プロモーション企画業務は、筆者の本業でもあるので詳細は割愛する。(ご用命いただければ、弊社プランナーが企画致します)。

 以上、勝手企画として、「冷え性オトコ」向けの商品の売り方を考えてみた。現実のマーケティングプランはこんなに荒っぽいものではないが、思考実験として、日々こんなことを考えると観察眼も養えるし、情報収集力も高まる。気になる商品やビジネスの切り口を、単なる「思いつき」のレベルから「プラン」まで発展させて考えることをオススメしたい。

2009.12.14

ウェンディーズを偲ぶ?

 ハンバーガーチェーン店の「ウェンディーズ」が逝ってしまった。12月31日には全店閉鎖というから、急逝ともいうべきあっけない幕切れである。事業単体でみれば黒字であったが、運営会社のゼンショーが米国のフランチャーザーとの契約を延長しなかったためだ。
 各種飲食チェーンを運営するゼンショーの主力事業は牛丼のすき家。吉野家を店舗数で抜き、価格も吉野家より100円安く設定してさらに攻勢を強めている。低価格の原資は輸入牛の産地が吉野家の米国産より豪州産を用いて2/3に抑えられていることと、他の関連事業の高収益によるものといわれている。12月13日の日経MJフード欄の「ウェンディーズ撤退」の関連記事にも「経営資源集中のため」と書いてある。いうなれば、ウェンディーズは「牛丼戦争のとばっちり」を受けたがための幕切れである。

 実は筆者はウェンディーズが好きだった。四角い形が特徴のミートパテは、解体から流通まで一切冷凍をしない独自製法で、1枚1枚焼き上げていた。作り置きをせず、店内でカットしているという新鮮な野菜をたっぷり入れて仕上げる。そのくせ、待たせられることなくあっという間にオーダー品が揃えられる仕組みは見事だった。店内にこどもは見あたらない、オトナな感じもよかった。

 では、ウェンディーズ亡き後、その姿を偲んで通うべきハンバーガーチェーンはどこかを考えてみる。
 
 アメリカンでオトナな店内空間といえば、「フレッシュネスバーガー」が現在一番かもしれない。アーリーアメリカン調の店内は落ち着く。ドリンク類も紙コップではなく、グラスで出されるし、ハンバーガーも籐かごに入れて供される。オーダー後、一つずつ作られるスタイルはウェンディーズほどスピーディーではなく、モスバーガーと同じだ。
 そう、フレッシュネスバーガーは明らかにモスバーガーをベンチマークとした展開なのだが、当のモスバーガーは客層がこどもから老人まで幅広なのに対し、客層をオトナに絞っているのが特徴だ。それ故、喫煙スペースも広い。(筆者的にはここが引っかかるのだが)。メニューも今年話題になった、巨大マッシュルームを使った「ベジタブルバーガー・マッシュルーム」もヘルシーでオトナ向け。フレッシュネスバーガーは、行く宛のなくなったウェンディーズファンを吸引することができるのではないだろうか。

 もう一つ、オトナなハンバーガーチェーンといえば、一度は日本を撤退して2007年に企業再生のリヴァンプ資本で再登場した「バーガーキング」だろう。最大の特徴である直火焼きハンバーグは、ウェンディーズのパテにこだわっていたファンも吸引する魅力がある。オトナという文脈では、先頃発表された、バーボンで味付けした「バーボンワッパー」や、ドリンクはバーボンのフォーローゼスで作る「薔薇のハイボール」など、オトナなメニューでポジショニングを明確にしてきた。ファーストキッチンやモスバーガーでビールやワインも扱われていたが、その店内空間で、そのメニューと共にアルコールを楽しみたいとは思わなかった。バーガーキングには、オトナに足を運ばせる理由づくりをうまくやったといえるだろう。
 2010年までに全国50店舗展開が目標だというが、店舗数がまだ少ないのが、ウェンディーズファン吸引のネックではあるが、十分その実力はある。

 当面、ウェンディーズファンは、フレッシュネスバーガーとバーガーキングに緊急避難をすることをお勧めしたいが、バーガーキングが日本再上陸したように、是非とも復活して欲しいものだ。日経MJの記事にも米ウェンディーズの副社長が新たなパートナーを探してビジネスの機会を探りたいという旨のコメントをしている。
 バーガーキングを再生したリヴァンプは、ロッテリアにも出資・再生中なので、バーガーキングともかぶるし、同業種3社目はないだろうが、どこかのファンドが手をさしのべてくれればと、一ファンとして祈っている。

2009.12.11

3人乗り自転車の普及方法を考える

 2009年7月に解禁された「3人乗り」。道路交通法で軽車両にあたる自転車は、それ以前でも補助椅子を付けた場合に限り6歳未満のこどもとの2人乗りが認められていた。しかし、実際にはこどもが2名いる家庭では母親が自転車の前後に補助椅子を付けて3人乗りをする姿も恒常化しており、黙認が続いていた状態である。
 自転車をめぐる事故の状況を見ると、平成20年に自転車が当事者となった交通事故が16万2,525件あり、交通事故全体の21.2%を占めるに至った。それは、10年前に比較して13.6%増となっている。(警視庁発表)
 3人乗りの解禁に際しては、平成21年に警察庁が招集した検討委員会の発表した、強度、制動性能、駐輪時の安定性、ハンドル・リヤキャリヤの剛性、転倒時の安全性に配慮、チャイルドシートは国内の規格・基準適合などの要件(一部抜粋)を満たしている自転車に限ることが義務づけられることになった。
 かくして、自転車メーカ各社から要件を満たした3人乗り自転車が発売されたが、一向にその普及が進まない。その理由の大きなものは車体価格4~5万円、電動アシスト付きの場合は10万を超えるという価格である。

 上記の通り、価格が普及のネックになっているのは間違いないが、さらに、普及が進まない理由の深掘りと、その対策をフレームワークで考えてみたい。

 まず、E.M.ロジャースの普及論における「イノベーション普及要件」で考えてみよう。

■相対優位性
 今までの無理矢理3人乗りをしていた通常の自転車と比べて、どれぐらい利用メリットがあるか認識きることが重要だ。「今までの自転車では十分な安全性が確保できていないので、3人乗り専用を導入しなさい」といわれれば、「そちらの方が良いのかも」とは思うかもしれないが、どれだけその導入が重要なのかが伝わっているかが疑問だ。前述の事故の増加状況、事故内容の重篤さ。さらに、通常の自転車と比較した専用車の安定性・安全性。十分伝える努力を強化する必要があるだろう。

■試行可能性
 本格的な導入のための「お試し」が、イノベーションの普及には欠かせない。3人乗り自転車でもこの要件は極めて重要だ。千葉県市川市では1年間の試用のための募集を行ったところ、128台に対してあっという間に422件の応募があり、抽選を行ったという。ニーズは高いのだ。

■両立性
 新しい専用車を導入する場合、置き場所の問題で今まで用いていた自転車を廃棄するしかない家庭は多いだろう。その事情も導入のハードルとなる。上記の試用期間は前の自転車を預かるような制度を設けてもよいのではないか。

■観察可能性
 導入前の状態と比較して、明らかに高い効果を確認・実体験できること。この要件を考えても、やはり試用による体験が重要であることがわかる。

 以上のように、ポイントは市川市の事例にあるように、「試用」である。
 それを踏まえて、対象者をどのように態度変容を促していけばいいのかを別のフレームワーク、AMTULモデルで検証しよう。AMTULとは、認知(Aware)、記憶(Memory)、試用(Trial)、本格的使用(Usage)、ブランド固定(Loyalty)の略である。

 【A】まず、相対優位性の項でも述べたように、3人乗り自転車の必要性を有用性、導入しない場合のリスクを十分認知させる。

 【M】今までも散発的に上記の広報は行われているが、対象者の記憶に残るようにしなくてはならない。本来、専用車以外で3人乗りをすれば道路交通法の定めによって「2万円以下の罰金又は科料」となる。該当者を見かけた際に警察官などが注意し、取り締まる代わりにチラシなどを手渡してはどうか。

 【T】一番のキモである試用だ。地方自治体が中心となって、3人乗り自転車試用会などを定期的に開催してはどうか。そこで、有用性を実体験できれば購入検討する生活者も少なからずいるだろう。購入助成制度を設けている地方自治体で、なかなか応募者が集まらないケースがあるようだが、試用を経てからであれば応募数も増加すると思われる。

 【U】一度きりの体験では十分な効果実感ができない可能性も高い。市川市のように、一定期間の貸し出しができればさらに効果実感ができるはずだ。両立性を考えれば、前述の通り以前の自転車の預かりも検討する。

 【L】有期の貸し出しを経て、3人乗り自転車の効用を十分実感した後に、補助金を用いた購入を促進。前の自転車が不要であれば、通常の粗大ゴミ廃棄費用を減免すれば、さらにハードルは下がるはずだ。

 以上、普及の阻害要因を分解して明確化し、対象者の態度変容をどのように促せるかを検討してみたが、各自治体での具体的な取り組みに期待したい。


※本稿は以下の記事を参考に執筆した
<「3人乗り自転車」普及進まず 無料貸出始める自治体も>(2009年12月7日@niftyニュース)
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/jcast-55106/1.htm
  

2009.12.10

ハートをとろかす「チョコ携帯」の可能性

 <徹夜組&行列も!ドコモ×Q-pot.の“チョコ携帯”が発売初日に完売>(2009年12月10日東京ウォーカー)
 http://news.walkerplus.com/2009/1210/6/
 <ドコモとジュエリーブランド「Q-pot.」がコラボした携帯電話「docomo STYLEシリーズ SH-04B」が、発売日初日の12月9日(水)午前中に完売する店舗が続出した>という。

  「Q-pot.」とは、 2002年にデザイナーのワカマツタダアキ氏が立ち上げたブランドで、お菓子をモチーフにした、本当に食べられそうなアクセサリーが人気のブランドである。同ブランドは食品をはじめ様々なブランドとも積極的なコラボレーションを展開しており、ユニクロのTシャツ「UT」でもコラボモデルがある。
 今回のコラボはドコモの携帯電話。一目見れば忘れられないような、携帯電話の筐体をリアルなとろける板チョコに見立てたデザインが特徴である。

 上記東京ウォーカーの記事にある、同携帯電話の特徴と購入客のコメントが印象的だ。
 <リアルなチョコレートの質感とデザイン、細部にまでこだわった品質が魅力の同品だが、価格は6万円台後半から7万円台と、決して安いものではない。しかし「もともと『Q-pot.』が好きなんです。携帯のデザインを見て、すぐに買うことを決めました。価格? 気にならないです」と話す購入者がいるように、ファンにとって、価格は大きな問題ではないようだ。>

 携帯電話の「中核価値」は必要な時にいつでも通話やメールなどでコミュニケーションが取れることだ。中核価値を実現するために欠かせない「実体」は、どこでもつながることや、電池の持ちがいいこと。メールなどの入力がしやすいことなどである。カラーバリエーションや、デザインは、中核の実現には影響しない付加価値である「付随機能」である。
 どんな製品もコモデティー化が進むと、差別化ポイントは「付随機能」レベルの戦いになる。昨今、強化されている「防水機能」は「どんなところでも使えること」を実現する「実体」であるが、各メーカーの独自技術ではなく、ある企業が開発した基盤技術を共用しているため、それだけでは差別化要素にはならない。

 付随機能での差別化は大きく分けて2つの方向性がある。一つは、携帯電話本来の通話やメールなどでコミュニケーションと関係のない、カメラの性能やハイビジョンムービーなどのデジタル技術を極限まで高める方向だ。もう一つは、au(KDDI)のiidaブランドが示す、「持っていて気持ちいい」や「上質感が伝わる」という携帯電話のデザイン性を高める方向性だ。
 しかし、今回の「チョコ携帯」は同じ「デザイン」でも全く違った方向性を示しているのではないかと考えられる。東京ウォーカーの記事でインタビューを受けた購入客は、「携帯電話」を購入しているのではない。「Q-pot.」の「携帯機能付アクセサリー」を購入しているのだ。つまり、「中核」は「お気に入りのデザインであること」であり、「実体」が「通話やメールなどでコミュニケーションができること」と、価値構造が逆転しているのだ。
 いやいや、今までにもドコモなら、「プラダフォン」や、ソフトバンクにもアルマーニがデザインした携帯があるではないかとの論もあるだろう。であれば、上記リンクから「チョコ携帯」の画像を確認してみて欲しい。もしくは、ドコモの製品ページはこちらである。単なる携帯電話という存在を遥かに超越している、オソロシイまでの質感である。

 では、チョコ携帯は何を指し示すのか。先の女性購入客の心理を考えれば、「できれば2台欲しい」ではないだろうか。チョコレート色と、ミルクチョコ色の2色があって、そのどちらも魅力的だ。「デザイナーがデザインした携帯電話」であれば、多少バリエーションやカラーが違っていても1台あれば十分だ。しかし、「アクセサリー」は気に入ったデザインがあればあるだけ欲しくなる。しかも、昨今の携帯電話は、カードを差替えれば複数の機種を使うこともできる。(auはショップでの手続きが必要)。
 さすがに<価格は6万円台後半から7万円台>だと、気軽に何台も買えない。その価格が<細部にまでこだわった品質>であるならしかたがないが、例えば800万画素のカメラ機能や3.0インチの液晶画面などのスペックを下げればもう少し低減することもできるかもしれない。アクセサリーに最高のスペックを求めはしないだろう。

 最低限の機能で、デザインを楽しむアクセサリーとしての携帯電話。それを複数使い分ける。コモデティー化した果ての携帯電話は、既にコミュニケーションツールとしての存在ではなくなる可能性をチョコ携帯が示しているように感じた。

2009.12.09

ライオン「チャーミーマイルド」はどう来るか?

 統計データと一消費者として店頭を観察した感覚が異なる場合は多々あることだ。<国内企業別台所用洗剤シェア2008年:花王 34.9%・P&G 31.7%・ライオン 20.5%(日本経済新聞社)。もっとも、1年前のデータではあるが、スーパーの店頭、台所用洗剤の棚にライオンの製品がほとんど見つからないのである。

 そんな状況を打破しようとして上市されたと思われるのが、“手肌にやさしい洗浄成分”を増量したという「チャーミーマイルド」である。
 <ライオン、手肌と同じ弱酸性の台所用洗剤「チャーミーマイルド」を改良発売>(2009年12月07日マイライフ手帳@ニュース)
 http://news.livedoor.com/article/detail/4491189/

 同社独自の調査から導かれた戦略は明確だ。<主婦の55%が手あれを感じており、特に冬場に実感する人が多くいるという。また、台所用洗剤を購入する際に重視する項目は、「洗浄力」に次いで「手にやさしい」ことが挙げられた>ということだ。
 もちろん、洗剤としての基本機能は充実している。<油汚れをしっかり落とす洗浄力>、O157 などの対策としての<スポンジの除菌>、<まな板などについた肉や魚の気になるニオイを消臭>という機能も盛り込まれている。さらに<オレンジピュアオイル(天然エッセンシャルオイル)配合で、フレッシュなオレンジの香り>である。(以上、同社Webサイトより)

 「チャーミーマイルド」をモデルに台所用洗剤の価値構造を分解して考えてみよう。台所用洗剤で実現したい「中核」となる便益は「食器の汚れを落とせる」である。しかし、今日の食生活は油もののメニューも多く、「油汚れをしっかり落とす」ことも欠かせない。
 では、その一連の「洗浄」をどのように実現するかという「実体」を考えてみると、ライオンが狙っている「手にやさしい」が挙げられる。さらに、中核たる便益に影響はないものの、製品の魅力を高める「付随機能」が、洗浄ではないが「スポンジ除菌」「まな板消臭」「オレンジの香り」となる。

 では、ライバル各社の先行商品を見てみよう。まずはP&Gの「ジョイ」だ。<洗い始めから汚れを素早く落とすので、お皿洗いにかかる時間を短縮できます!!>と訴求している。さらに<毎日簡単に、まな板・スポンジ・ふきんまで除菌できます!!>としている。(以上、同社Webサイトより)香りはシトラスミント、フレッシュオレンジ、グレープフルーツの3種がある。
 中核の汚れ落とし、付随機能の除菌、香りはライオンと同様だ。実体の部分が「手にやさしい」ではなく、「素早い汚れ落としによる時間短縮」であるのが特徴だといえるだろう。
 次は花王の「キュキュット」。<キュキュットは、すすいだ瞬間、指先でキュッと汚れ落ちを実感できる食器用洗剤です>という。(以上、同社Webサイトより)汚れ落ちの良さが実感できるということが「実体」である。香りはP&G同様3種ある。

 ライバルの訴求ポイントをWebサイトやCMからもう一度整理してみよう。
 P&Gの「時間短縮」は、新たな価値の提案である。CMのキャラクターである「ちはるママ」ことタレントの新山千春がWebサイトでも「うれしい!浮いた時間で何しよっかな♪」と言っている。この「時間短縮」は洗濯用液体洗剤市場での強力な訴求ポイントとなっている。花王は「アタックネオ」ですすぎが1回で済むという新機能を実現し、「節水・節電・節時間」としている。そして、それを追って開発され来年1月に発売されるライオンの「トップNANOX(ナノックス)」も同様の機能を盛り込んだ。洗濯用洗剤で同様の製品を持たないP&Gは食器用洗剤でどの価値訴求をしているとも考えられる。
 花王は「汚れ落ちの実感」だ。人形のアニメーションによるCMでも、食器をこすってキュツキュッと鳴らす様子が30秒CMで何と6回も演じられている。汚れ落ちを体感する気持ちよさを伝えようという「情緒的価値」の訴求だ。

 ライオンが現在打ち出しているのは、主婦の過半が抱える「手荒れ問題」に対する「課題解決」である。従来からの同製品のポジショニングとUSP(Unique Sales Proposition=その製品ならではの価値)にブレがない、伝統的な訴求であるといえる。但し、ライバルの両社は「新たな価値」や「情緒的価値」など、ひとひねりした訴求ポイントを持ち込んでいるといえる。
 「チャーミーマイルド」は今月中に全国発売となる。CMやWebサイトでの訴求もそろそろ始まるだろう。2001年頃には山崎まさよしがCMソングとして「てをつなごう」を歌い、従来からの「手にやさしい訴求」をしていた。今回はどうなるか注目したい。

2009.12.07

牛丼戦争最終章・苛烈な「すき家」の戦略を読み解く

 牛丼戦争が最終章を迎えたようだ。ついにすき家は牛丼並盛りの価格を280円に値下げした。松屋が11月末にタレの改良と共に渾身の320円という値下げに踏み切ったばかりだ。すき家の勝算はいかに?

 すき家を経営するゼンショーの戦略を読み解くには、「3C分析」のフレームワークで考えると分りやすい。

 まず、Customer=「市場の環境、顧客のニーズ」である。いうまでもなく市場はデフレ現象を起こしており、モノの価格低下は留まるところを知らない。消費者は生活防衛のため消費を切り詰めている。2008年11月のオリコン調べでは、社会人の平日のランチ予算は49%が500円以下に抑えられているという。(400~500円未満・17.3%、300~400円未満・13.8%、200~300円未満・9.0%、200円未満・8.9%)。

 次にCompetitor=「競合の動き」である。昨今の牛丼チェーンの競合は、同業の戦いばかりではない。前述の通り、ランチ予算低減の動きをすくい取ろうと、スーパーは200円台の弁当を投入している。かつては200円台であった牛丼も、BSE騒動の影響で原材料確保が難しくなって300円台の後半にずるずると価格が上昇してしまった。消費者は200円台の記憶があり、デフレ環境下のランチ市場全体でみれば、本来「安さ」が魅力であった牛丼の価格は相対的に割高になってしまった。そして、顧客離れが起きていると、12月7日の日経新聞本紙の記事でも指摘があるとおりだ。
 では、牛丼チェーン業界内の競合の動きはどうか。吉野家は値下げに動けていない。セットメニューでの割安感を訴求する戦略を展開しているが、牛丼単価はそのままだ。松屋は動いた。11月末に、「松屋史上最高のタレできました」とする製品改良と共に、牛丼並盛り380円を320円とする渾身の値下げを行ったのである。

 最後にCompany=「自社の活かすべき強み・克服すべき弱み」をみてみよう。動けない吉野家、渾身の値下げを行った松屋に対して、すき家はあっさりと値下げに踏み切った。すき家(ゼンショー)の強みは、バリューチェーン上の「調達」にある。日経新聞にも記載されているとおり、吉野家・松屋の米国産牛に対してすき家は豪州産を使用している。米国産は豪州産の1.5倍の価格なのだ。

 単純に考えれば、以上のように、この勝負は調達の段階で終わっているように感じられるが、すき家(ゼンショー)の狙いはもっと深いと筆者は考える。

 昨今の流通における「値下げ競争」は凄まじいものがある。11月のボージョレ・ヌーヴォー解禁日、今年はペットボトル入りボージョレー・ヌーヴォーが登場し話題になったのは記憶に新しい。最も激しい戦いは西友、イオン、ドンキホーテの3社が最低価格をめぐって対抗値下げを繰り返し、半日毎に価格改定を行ったことだ。
 ワインに先立ち、同じプレイヤーが低価格ジーンズでも値下げ合戦を展開した。ユニクロと同じファーストリテイリングが経営するジーユーが990円ジーンズを発売すると、対抗すべく、各社はそれを下回る価格でジーンズを投入し、さらに値下げを繰り返した。

 その様子に対して、ファーストリテイリングの柳井 会長兼社長は冷ややかにコメントしている。 <非常に危険だと感じているのは、われわれが990円ジーンズを売るのは、企業として儲かっており、それだけ余裕があるからですよ。でも、ほかの余裕がない企業が990円のものばかり売ると、自分で自分の首を絞めるようなことになってしまう。これは経営判断として、非常に危険だと思います>(東洋経済オンライン12月 4日)
 ファーストリテイリングはユニクロやジーユー全体で顧客に対してトータルに価値提供をしている。さらに、自社も様々な利益率の商品を組み合わせて売るマージンミックスで利益を確保する。<企業として利益を上げてお客様を増やしていこうということよりも、単純に宣伝効果だけを狙う企業>(同)とは違うとの指摘だ。

 では、再び牛丼チェーン業界に視点を戻そう。渾身の値下げを行った松屋はどうか。松屋は牛丼チェーン業界の中でも最も多彩なメニューを誇っており、牛丼を値下げしても、まだまだマージンミックスを図ることは可能だ。しかし、牛丼依存率が低いため、更なる対抗値下げには踏み切らないとも考えられる。
 吉野家はどうか。カレーなども投入したが、何といっても牛丼依存率が高い。故に、値下げは難しい。今後の同社の主戦場は、「2010年代半ばまでに1千店出店」の計画があるというとおり、国内よりも中国市場に軸足を移すものと考えられる。

 では、すき家の戦略の真骨頂はどこにあるのか。日経新聞が伝えるところによると、<コメもブレンド米からコシヒカリに変更し、質も向上させる>とある。農林水産省から公表された平成21年産米穀小売価格調査の概要(21年10月分)によれば、コシヒカリの卸価格は下落傾向にある。同社にはフォローの風である。そして、値下げしながら品実改良をするという、一気にシェアを奪取する構えであると考えられる。規模の経済と経験効果を発揮して、ペネトレーションプライシングを実現するのだ。
 ペネトレーションプライシングは「市場浸透価格」と訳され、とにかく低価格・低収益率に耐えて市場のシェアを広げる価格戦略である。収支トントン、場合によっては戦略的赤字も辞さない。規模化することで、店舗什器などの設備費、広告宣伝費、メニューなどの開発費という固定比率を低減する。さらに、顧客の回転率を上げて、単位時間あたりの従業員の人件費率も効率化する。固定費・変動費率の低減によって利益を創出する戦略である。

 200円台の価格を実現したことによって、牛丼チェーン業界以外の低価格ランチ市場でも覇権を狙っているのは確実だ。しかし、その前に、すき家は既に店舗数で吉野家を追い抜いていることもあり、第一のターゲットが吉野家であることは間違いない。
 最終章に突入した牛丼戦争から目が離せない。

2009.12.04

「衰退期」から返り咲け!カラオケボックスの挑戦

 成熟期~衰退期の商品・サービスをかかえて悩んでいる人も多いだろう。もう一度盛り返そうとしたら、まず何を考えればいいのか。

 日経MJ12月4日。3面と17面にカラオケルームのシダックスの記事が掲載された。
 一つは犬を同伴して入店できる「ワンだふるルーム」。既にシダックス全店の3分の1にあたる100店舗で導入されているという。もう一つが札幌市内にオープンした「Bar Room 101」という1回にバーを併設した新業態店である。

 カラオケボックスの発祥は<1985年のことである。第一号店は貨物用のコンテナボックスを改造したものを岡山県内の郊外の幹線道路沿いに設置したものであった。>とWikipediaにある。以来20年以上が経過した。少しデータが古いが、2007年度の市場規模は4270億円で10年前比35%低下であるという。施設でみれば、ルーム数も129,400室と同10年前比8割の水準である。(全国カラオケ事業者協会)市場は成熟期を過ぎ衰退傾向が顕著だ。
 ほんの少し明るい傾向もある。同、全国カラオケ事業者協会の発表では2008年のルームの数は、2008年3月末で約128,600ルームと減少率が緩和されたという。それは、業界各社の努力のたまものだといえるだろう。

 昨年あたりから「歌わないカラオケボックスの利用のされ方」がメディアで何度か取り上げられている。
 平日の昼間。場所はオフィス街にほど近い店舗。ある部屋では、何と、会議やプレゼンが行われている。今時の映像を映す液晶画面には、PCの入力端子が付いている。結構画面が大きいため、プレゼンにうってつけだ。飲み物を個室に持ってきてくれるサービスも便利だ。
 ベッドタウンの店舗、平日の昼下がり。ある部屋では若い主婦グループがランチを取りながら歌わずに談笑している。連れてきているこどもは大はしゃぎで騒いでいる。黎明期のカラオケボックスには乾き物のフードしかなかったが、昨今のカラオケボックスはファミレス並のメニューが揃う。個室・防音なので子供が騒いでも安心だ。
 日曜の昼間。楽器を持ち込んで練習をしているおやじバンドの面々。カラオケマシンだけでなく、音楽用のパワーアンプが設置されている。

 そして今回の「犬同伴」。約9割が昼間の利用で<カラオケをしないで、おしゃべりだけを楽しんで帰るグループも目立つ>(日経MJ)という。ペット談義に花が咲いているわけだ。
 「バー併設」の特徴は<カラオケ(ルーム)では提供しないメニューを用意><バーテンダーが常駐するほか、ダーツも楽しめる>(同)という。カラオケと別会計のため単独利用も可とのことだが、やはりバー施設でひとしきり楽しんでもらって、二次会ノリりでカラオケ利用を見込んでいると考えられる。

 そもそもカラオケボックスとはどのような存在であるかを考えてみれば、<カラオケボックスは、独立性の高い空間で仲間内だけでのカラオケが楽しめるようにしてある娯楽施設である>とWikipediaで定義されている。つまり「中核価値」は「カラオケを歌う」ことである。それを実現する「実体価値」が「個室・防音」で、中核の実現に直接影響はないが魅力を高める要素である「付随機能」が「飲食の提供」である。

 「価値構造の転換」が衰退期にあるカラオケボックス活性化のカギなのだ。「中核」をあえて外して「実態」の「個室・防音」を中核に高める。それを求めるニーズは市場にないか考える。記事では自身もミニチュアダックスの飼い主だというシダックスの担当者が語っている。<「街に犬を連れて入れる場所は少ない」と思っていた。それならば、大勢の人が集う場所であるカラオケルームで、その受け皿を作ることができないかと考えた>と。
 子連れ主婦のおしゃべりの場としての利用も同様だ。「こども連れで周りを気にせず楽しく食事ができるところが少ない」というニーズギャップをカラオケボックスが吸引しているのだ。本来、付随機能である飲食は、「味とメニュー数」を確保することで、「食事とおしゃべり」という、求められる「中核」を実現する「実体」に昇格している。
 「貸し会議室の料金は意外と高い」というニーズギャップを「個室」という実体を中核に昇格させてすくい取った「会議利用」への対応は、液晶画面のPC入力端子程度なので特に何かを付け加える必要もない。。
 「音楽スタジオの利用料金が高い」というおやじバンドも「個室・防音」が中核で、音楽用パワーアンプを実体として付加して取り込んだのである。
 バー併設は「一次会二次会をまとめてやってしまいたい」というニーズ対応だろう。カラオケしながらでも飲食はできる。一次会でガッツリ呑み喰いしてしまうより、バーでちょっと軽くの方が安上がりだし、面倒でない。既存のカラオケボックスの店舗に「付随機能」としてのバー設備を付け加えて提供できる効用である。

 カラオケボックスの衰退からの返り咲きは、「価値構造の転換」という「引き算」と「足し算」である。中核として欠かすことができないと思いがちな「歌う」を取り去って考えてみる。すると、中核は何になるのか。「個室・防音」が昇格した。それに何を実体や付随機能として付け加えればいいのか。
 一連の展開は全て、市場のニーズに注目して、大胆に発想の転換をして「引き算」「足し算」をした結果である。今後、市場の回復がどのように図られるのか、継続して注目したい。

2009.12.03

「ハーフ」で「ニュー」な時代をどう生き延びるか

■もう、元には戻れない

 「変わり続けてく街並みのように、元には戻れない若いふたり・・・」切ない歌のフレーズがそこだけ頭にこびりついていて離れない。なんという歌だったか。
 しかし、元には戻れないのは若いふたりだけではない。世界は、もう元に戻れないのだという。

 <「ニューノーマル」~米国経済は二度と元には戻らない>(プレジデント12月 1日)
 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20091201-00000001-president-bus_all
 <ニューノーマルという語は、世界最大手債券ファンド・米ピムコのCEOであるモハメド・エラリアン氏が、サブプライム危機を予言した著書の中で、その後の経済状況を表現するのに使ったものだ><エラリアン氏のいうニューノーマルとは、「景気が回復しても元通りの経済水準にはならない」というものだ>という。そして、<マイクロソフトのようにニューノーマルを見据えた経営計画を立てる企業が相次いでいる>というのが記事の概要だ。

 「ニューノーマル」と同義で「ハーフエコノミー」という言葉も金融危機以降、頻繁に使われていた。
 <Q.ハーフエコノミーって何?・今日の知識>(日経トレンディネット2009年4月30日)
 <ハーフエコノミーとは、市場における需要が半分程度の規模になった経済のこと>と、「ハーフ」が状態を表わしていたのに対して、それがいよいよ「ノーマルなんだぜ」と、経済活動が盛んで消費も活発だった「若き日」にはもう「元には戻れない」んだぜ、ってことをマイクロソフトのCEOのスティーブ・バルマー氏は力説したわけだ。

■早晩「縮む」運命だったのは確か

 「冗談じゃない」といいたいところであるが、それが現実である。さらに考えれば、日本市場は少子高齢化で確実に「縮む」市場だ。今年の東京モーターショーで海外勢が3社しか出展せず、こぞって中国に行ってしまった寂しさを考えれば放っておいても「ハーフ」になったのは想像に難くない。自動車関連の寂しさ加減は枚挙にいとまがないけれど、こんな動きもあった。
 <現代自、中国に新工場 日本では乗用車販売から撤退>(日経ネット11月28日)
 http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20091129AT1D270AP27112009.html
 <01年の参入以来不振が続く日本の乗用車販売からは撤退する>と、確かに現代のクルマは売れてなかったと思うけど、それ以上に日本市場がオイシクナイのだ。

 少し日にちを遡るとこんなことを言っている人もいる。
 <「日本は普通の市場になった」ルイ・ヴィトンCEOに聞く>(日経ビジネスオンライン11月25日)
 
<これまでの日本は世界の流れとは一線を画した少し特殊な市場だった。ルイ・ヴィトンに関しても日本の店舗は客数が多すぎたと言えるほどだ。日本もようやく普通の高級品市場になったということだろう。>で、昨年末に銀座への出店を早々に断念して、その代わりにGAPが入店することになったというニュースも記憶に新しい。

■消費者の方が対応は早い

 その銀座も、昨秋のH&M銀座店の大行列に始まり、ユニクロの大規模増床と、「高級ブランドの街」からすっかり「身の丈の街」に変身しているのである。
 つまり、「ハーフエコノミー」は恒常化して、まずは生活者が「身の丈消費」を身に付けた「ニューノーマル」になって、それに対応できる企業だけが生き残れる構図が既に出来上がりつつあるのである。

■バリューラインを超えろ

 昨今話題の商品を見ても、しっかり「ニューノーマル」対応している。分りやすいのが、今さらながら「餃子の王将」。
 <人気のファミレス、ベスト3は「サイゼリヤ」「餃子の王将」そして……>(Garbagenews.com2009年12月01日)
http://www.garbagenews.net/archives/1143858.html
 マイボイスコムのネット調査の結果。1位は「ガスト」。但し、「最もよく利用する」以上に「今年利用が増えた」の対比では、俄然「餃子の王将」の伸びが目立つ。

 価格と価値が正比例した関係を「バリューライン」という。「安かろう・悪かろう」から「高くて・いいもの」の関係だ。「ニューノーマル」になった消費者の支持を集めるなら、そのバリューラインを超えなくてはならない。「王将」は価格が安くて、味は最高ではないものの結構イケルという、典型的な「グッドバリュー戦略」だ。ガストは「安いなり」の「エコノミー戦略」であくまでバリューライン上である。故に、現状、「最もよく行く」ではあるが、「今年利用が増えた」の割合が低くなっている。

■代替されない商品をメインに

 「ニューノーマル」な暮らしの中では、当然消費をおさえられるところは切り捨てる。だとすれば、もしくは代替される。例えば、なにげなく毎日買って飲んでいるペットボトルの飲料。ミネラルウォーターなら100円~120円ぐらい。お茶や清涼飲料なら150円が相場だ。1日1本~2本買って、日数をかけると、おっと、馬鹿にならない金額だ。と、みんな気付いている。なので、水は水道水を浄水してマイボトルに入れる。お茶は茶葉やティーバックで淹れる。その結果が、このデータだ。

 <勝ち組「ゼロ飲料」、負け組「ミネラルウオーター」――2009年飲料市場>(Business Media 誠12月3日)
 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0912/03/news031.html
 これも、分りやすい。「ゼロ飲料」はオイシイ(甘い)炭酸なのにゼロカロリーという理由で、今までカロリーを気にして茶系飲料を飲んでいた人を取り込んで成長した。しかし、今も買われているのは「炭酸は自分で作れないから」だ。その証拠に、数字の意味するところは、伸びているのは「ゼロ系」に限らない「炭酸」である。

■新たな価値で自社に取り込め

 「代替されない」以外のキーワードを考えるなら、「新たな価値創造」だろう。・・・ちょっとビッグワードすぎるので、まずは具体例から。
 日経MJヒット商品番付にも登場した「資生堂UNO FOG BAR」
 
 <“ポストワックス”狙う「ウーノ フォグバー」登場、ヘアスタイリング剤の勝者は?>(<日経トレンディネット11月19日)
 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20091106/1030096/?P=1

 華やかな「イケメン四天王」のCMもさることながら、ワックスのベタベタさをなくした商品は画期的。その良さは使えば分る。<新開発した水溶性の整髪成分が配合されており、髪一本一本を互いに吸い付かせ>ていて、<髪の毛を束に固めないので、何度でも手直しできるのが特徴><霧状なので髪全体に均等にスプレーでき、ワックスの弱点であるべたつき感や重さ、洗髪のしにくさをカバーした>といいことずくめである。
 但し、実はワックスほどやはり強力じゃない。なので、髪を大胆に「盛」ったり、「エアリー」(古いか?)にしたりはちょっとしにくい。故に、ナチュラルっぽくなる。そのお手本のヘアスタイルを、CMで「イケメン四天王」がやっているのだ。つまり、廃る提案をしつつ、新たな価値を訴求している。
 さらに、本来男性用であるが、「女性が使ってOK」と、ターゲットを2倍にしている。女性ターゲットにも「イケメン四天王」は効果的。高そうなギャラのもとは十分とっているだろう。

■「反動的需要」を取り込め!

 何事も行きすぎると「反動」が出る。健康ブームやメタボ撲滅。さらには昼食費の削減と、「食」はどんどん地味になっていく。でも、それも「ハーフ」だし「ニューノーマル」としては致し方ない。と、思えない人もしっかりいるのだ。
 <1食1800kcal越えも!“あぶら料理専門”レシピ本発売>(東京ウォーカー11月27日)
 http://news.livedoor.com/article/detail/4474172/
 <本の中身は、「ガーリック&バターしょうゆステーキon the ライス」や「満腹マヨ玉ツナグラタン」、「ミックスフライソースカツ丼」に「羽付きラード餃子」など><全ページ、バターやラード、マヨネーズ、生クリームなどをた~っぷりと使った“高カロリーメニュー”が並ぶ>
 需要があるから、本にまでなる。例えば、都内では「全席喫煙可」の喫茶店などが人気を集めているのも一例だ。マイノリティー需要を取り込むことも、この時代の生き残りには重要である。

 実は今回のネタはここ1週間でネット上に掲載された記事を集めたものだ。それを、「ハーフエコノミー」と「ニューノーマル」というフィルターで見たのである。売れる商品、顧客が集まる商売は、きちんと時流を捉えているのである。そうした動きが自然にできることが「ニューノーマル」として求められているに違いない。

  

2009.12.02

おせちの中に世相が見える、戦略が見える!

 おせちブームである。景気の低迷によって「年末年始の旅行は控えるけど、せめてお家でちょっと豪華なおせちを食べましょうね」ってわけで、昨年あたりからブームに火が付いた。さらに今年はそれが加速して、百貨店各社はしのぎを削る熱い戦いが開始されている。”空前の”おせちブームといってもいいかもしれない。
 そのおせちのラインナップに注目してみると、昨今の世相と、各社の戦略が見えてくる。そう、おせちはデパ地下マーケティングの集大成なのである!

■おせちの全体傾向は?

 まずは、価格戦略(Price)に注目してみよう。おせちも景気動向の影響は否めない。そのため、「1万円おせち」などのロープライス路線の拡充は各社とも意識しているところだろう。しかし、松・竹・梅でついつい、「竹」を選んでしまう日本人の性格。そのために高価格帯も手を抜けないし、百貨店によっては10万円の強気商品を展開している例もある。但し、あくまで狙いは中価格帯への誘導であり、手堅く低価格帯も展開するというのが価格戦略である。

 では、そのおせちはどのような製品戦略(Product)がとられているのだろうか。気になるのは「おひとり様おせち」を展開している百貨店が目につくことだ。少子高齢化に晩婚化、非婚化が進んで「正月に一人でおせち」を推奨しているわけではない。というわけでなく、「個食化」対応である。子供用と称して「キャラクターおせち」があったり、若いひと向けに「若手料理研究家プロデュースおせち」があったりと、おせちはそれぞれ一人一重になっていくのでは?と思える様相である。
 かと思えば、定番の「老舗のおせち」はしっかりと存在感を示している一方、「懐かしのおばあちゃんの味おせち」なども充実を図っているようである。「おせち市場」まだまだ、市場のパイが拡大するであろう成長期なので、商品そのものの工夫のしがいはまだまだあるというところだ。

 但し、おせちには制約条件がある。それは販売チャネル(Place)である。生おせちは「地域限定」にして数量の確保と、保存性と、運送にかけるコストを減らさなければならない。「」全国どこでもお届け」にしてしまっては安全性の問題や、味の劣化、運搬中に盛りつけが崩れるというようなリスクが生じる。提供する料亭や仕出しはいやがるだろうし、百貨店としても責任が持てない。そもそも食の好み地域で全く異なる。
 考えてみれば、地域に応じた商品の提供は本来あるべき姿である。今までは多くの商品が「売る側の都合」で全国一律で行われていたのである。地域性のあるおせちは、見ていても楽しく、商品提供の本来あるべき姿を示しているともいえるだろう。

 各社がどのようなプロモーション(Promotion)を展開しているのかは、最後にWebサイトで見ていくとして、それを見る前に、どんなテーマ性が設定されているのか、その切り口をざっくり見ておこう。テーマ性とは即ちポジショニング(Positioning)であり、各社の戦略の要だ。
 「食の達人が仕立てたおせち」「いまどきおせち」「なつかしおせち」「三都雅おせち」「料理研究家のおせち」「ヘルシー精進おせち」「タイガースおせち」「おばあちゃんの味おせち」・・・ホンッッッッッッッッッッとに種類が多くうまくカテゴライズできないのである。消費者ニーズの多様化に対応しているというよりは、まだまだ手探りで百貨店のプランナーたちがハァハァゼェゼエと息を切らしながら手探りをしているという状態が目に浮かぶのである。しかも、デパ地下商品としてはえらく高単価商品であるし、成長市場なので手は抜けない。ご苦労様ですといいたい。

■百貨店各社の傾向とオススメの切り口は?

 各百貨店の展開をサイトで見ていこう。百貨店名におせち料理サイトのリンクを設定したので、具体的にはリンク先を参照いただきたい。

三越
 「キッズおせち」「ピンチョスおせち」「身の回りの素材でお正月を楽しく演出する方法」など、届いたおせちを「より楽しく」「より便利に」食べる工夫もあわせて提案して、おせちの2次利用を提案しているのが秀逸だ。
http://www.mitsukoshi.co.jp/osechi/
 そして、「そもそも”おせち”ってなんだ?」という「おせちに興味がなかった層」を取り込む工夫もちらり。成長市場では需要喚起、需要創造が欠かせないがその鉄則をきちんとおさえた展開である。

大丸
 「セレクトおせちであれこれ食べたい人のさらなる欲望を満たす!」がオススメと見た。但し、セレクトはめんどい人には、あらかじめ有名店を合体させたおすすめおせちもあり、両面作戦を展開している。また、「一人暮らしだけど、実家には帰りたくない…彼氏と一緒にお正月!」 な女子向けと思われるおせちもあり、なかなか細かなニーズを拾うことも忘れていない。

阪神
 あああ、やっぱり。という感じの「タイガースおせち」はホームとアウェー用のお重2色展開。たぶんタイガースファンは色違いで購入するに違いない。また、関西のとんかつチェーン「とんかつKYK」のおせちがあるなど、土着的雰囲気バッチリな展開だ。

伊勢丹
 高い。伊勢丹独自の価値を訴求する「オンリーi」をおせちで展開するとこうなるのか。京都下鴨茶寮のおせち取り扱いは伊勢丹と東急だけ。10万のは伊勢丹だけ。関西発祥ではないのに、大丸・高島屋・阪急を差し置いて、伊勢丹が専売。伊勢丹バイヤーは「いいものを一人勝ちで売る為には、ジャングルも戦場もかき分けて行く」らしいので、「孔明の家」にも3回行ったのだろう。下鴨茶寮が口説き落とされた様子も目に浮かぶ。

阪急
 伊勢丹とは正反対の攻め方。こちらも新しい。老舗ではなく、若手狙いである。京都では今「お高くとまった殿様商売の京料理店」に反旗を翻した若手料理人たちが「美味しい物を、全うな価格で」提供するきざしがあるという。伝統を守りつつ革新的で、価格は良心的。そんな若手達の店はこの不景気の中でも、何ヶ月も予約が取れなかったりする人気店になっている。そんなお店におせちをつくってもらっているのが阪急。人気を反映して売り切れも多い。

高島屋
 20万オーバーのおせちがあるのはここだけ。4人家族が食べたら一回で終わり。送料はなぜか1万のおせちも20万のおせちも300円。とこんな細かい所が気になる筆者のような者がターゲットでないことだけは確か。あぁぁすごい強気。

そごう/西武
 プロモーション的にすごく損してると思う。「そごう おせち」「おせち 西武」と、単体で検索すると順位がだいぶ低い。正解は「そごう・西武 おせち」なのだけど、各々の百貨店の顧客は「そごう・西武」と認識していないだろう。
 しかも、サイトの写真をみても、ショッピング画面にいけないのだ。「店頭か電話で注文」ですぜ。商品的には「おばあちゃんのおせち」シリーズなど、面白い企画もあるのだが、プロモーションと連動しておらず。残念。

東武
 こちらも少し残念。一応特設ページがあるのだが、ものすごい階層が深くてなかなかたどり着けない。しかし商品的には、好きなものを選んで重ねられるというアソートおせちがあるなど楽しさのある企画も充実している。

京王
 「多摩地区産の食材にこだわり」などと、ものすごく限定された地域のおせちで特徴を出している。もう一つのポイントは、京王プラザホテルと2段構えの展開。「ホテルのシェフが作るおせち」という強力なカードしっかり使っている。活かすべき強みを有効に使うお手本だ。

小田急
 おせち→お正月→家族が集まる→宴会→「かにまつり!」という文脈が面白い。他の百貨店がおせちと、お正月宴会料理のページを分ける中、小田急は一発で鍋パーティーとおせちの両方楽しめる画期的なセットを開発した。顧客の行動をきちんと考えた結果辿り着いた秀逸な商品である。

東急
 品数はものすごく多い。が、サイトで変えないだけでなくやたら見にくい。そごう・西武と同等かそれ以上に損している気がするが・・・。ネットを使う人はターゲットに設定していないのだろうか。

近鉄
 商品以上にサイト構成が秀逸。人数・価格・味の嗜好と、ニーズに沿った選び方がスムーズに展開されている。これぞ顧客視点。さらに料理に合うオススメへのお酒への誘導も顧客にとっては気が利くサービスで、自社にはクロスセリング効果バッチリである。

天満屋
 関東・関西・中四国と、各地域の味を楽しめるおせちが展開されている。なぜ、こんなに多くの地域を揃えるのか、その意図を推測するために中国地方の人々にインタビューした。すると、「あんまし行かないからじゃない?」と口を揃える。超保守的地域ならではの、「ちょっと冒険心」をおせちで充足させようという意図だろうか。

岩田屋
 こちらも全国の味を楽しめる展開。プロモーションとしては「おせちの現場を取材してきました!」が秀逸である。なんともドラマチックに作り手の思いが伝わってきて、「ここのおせちを食べてみたい」という気持ちに心揺さぶられます。写真がまた、いい。マーケターの力量が感じられ、ちょっと感動した。

リウボウ
 「しょうがつくわっち~」とは「正月料理」の沖縄言葉らしい。さすが沖縄、おせちを食べる習慣というか、おせちそのものから説明している。しかし、最後にこのサイトで勉強になったことがいくつもある。「そもそも、おせちは正月だけの食べ物ではなかった」とか、「おせちを重箱につめたのはデパートが始め」、とか。しかし、おせちのバリエーションが劇的に少ないのは需要が無いからだろう。

 以上、ランダムに沖縄までざーっとさらってみたが、現状は各社各様の展開であり、温度差もある。しかし、成長市場で覇権を競い合う様も垣間見える。しかし、やはり消費者のニーズをいかにおさえるか、顧客行動をどのように設計するかがキモであることは間違いない。
 おっと、サイトを見ると既に随分と完売の商品も目についた。
 「ご予約はお早めに!」

2009.12.01

ドコモの広告とauのクチコミ戦略?

 揃えも揃えたり、並べに並べたり。その数63機種。ドコモの「冬春モデル」である。

 「おっと待った!いくら何でもそんなに多くないだろう!」と突っ込まれればその通り。11月10日に行われた「冬春モデル発表会」でSTYLEシリーズ10モデル、PRIMEシリーズ5モデル、SMARTシリーズ2モデル、PROシリーズ2モデルの計19機種と伝えられた。
 63機種は、11月30日の日経新聞朝刊に掲載された、カラー見開き全面広告に並べられた携帯電話の数だ。同一機種でもカラーバリエーションまで掲載されているので、紙面を埋め尽くす壮絶な数が並ぶことになった。
 日経新聞の媒体掲載料を正確に思い出せないし、ドコモほどの大手広告主なら特別レートがあるだろ。なので、かなりいい加減な計算だが、15段(全面)掲載料で1500万円×2面×カラー料金1.2倍=3600万円ぐらいだろう。その広告費を投じてドコモは何を狙ったのか。

 もっともポピュラーな消費者の態度変容モデルは1920年代に米国でサミュエル・ローランド・ホールが著書で示したAIDMAモデルだ。即ち、消費者に商品を認知させる、Attention(注意喚起)から始まって、Interest(関心喚起)、Desire(欲求喚起)、Memory(記憶)、Action(購買行動促進)へと様々な刺激を与えて誘引設計を行うのである。
 ドコモの「63機種そろい踏み」は明らかにAttention(注意喚起)を目的としたものであるのは間違いない。しかし、それ以降に続くのか少々疑問である。

 2007年の大和証券グループの企業広告は印象的で今でも記憶に残っている人も多い。プリストン大学の行動経済学者 E・シャフィール博士が解説する。画面にはベビーカーを買いに来た夫婦。最初のシーンでは4種類展示されたベビーカーから簡単に1つを選ぶ。しかし、展示する種類を十数種に増やすと、次にやってきた夫婦は選ぶことができずに立ち去ってしまうという内容だ。「”決定回避”の法則」であると解説する。「普通は『選択肢が多い方がよりよいものが選べる』と思うでしょ? 選択肢が増えすぎると、人はむしろ選べなくなるんだよ」と。
 63機種、どうだろうか。

 まさかこの広告で終わるはずもなく、各機種の魅力を一つ一つ順次伝えていくのだろうが、はじめに「お腹いっぱい」になってしまうとあまり興味が湧かなくなるのも事実だ。

 「現状維持の法則」という。選択肢が広がりすぎると無難なものを選んでしまう心理だ。居酒屋の膨大なメニューを見ると、一瞬何が美味しいそうか探したくなるがすぐに面倒になって「たぶんあるはず」の無難な料理を注文してしまわないだろうか。筆者の場合は「薩摩揚げ」である。
 薩摩揚げを注文しない時もある。それは、「オススメの一品」が店内の看板などに産地や味付けなどのうんちくと共に掲載されている場合だ。店員に聞いても「当店自慢のメニューです」などといわれる。即、注文である。

 この冬の携帯で、ドコモユーザーの筆者がキャリア変更までして注文してしまいそうな「オススメの一品」がある。au(KDDI) iidaブランドの「PRISMOID」である。
 この一品、(いや、逸品と言い換えようか)はオススメのしかたも絶妙であった。auのデザインプロジェクトの系譜であるiidaは発売のかなり前から製品発表を行うのが常だ。発表は9月9日であった。その分、ティザー(じらし)効果もバッチリだ。
 うんちくもいい。シェフならぬ、デザインを手がけたのはプロダクトデザイナーの深澤直人氏。過去にニューヨーク近代美術館(MOMA)収蔵品にもなった歴史的な名作「インフォバー」のデザインも担当した。

 さらにステキなうんちくは続く。同氏が「PRISMOID」のコンセプトとしたのは「未来的な未来」。その意味するところは、「昔の人が思い描いたであろう未来」だという。
 日経新聞朝刊一面のコラム「春秋」では12月1日に、最新のハイブリッドカーとクラッシックカーのデザインを対比する前に<最先端の技術を極めた製品には、鋭い美しさがある。時を経た古い工業品には、生き物に似たぬくもりがある>と記している。
 「PRISMOID」とは角錐台を意味し、その名のとおり四角錐台を2つ重ねたようなフォルムである。シャープなエッジを見せるが、握りやすそうで、その直線的なデザインはどこな懐かしい、確かに「昔、夢見た未来」を彷彿とさせる。
 発売日12月1日、本日だ。

 ドコモの広告にお腹いっぱいになった筆者は、auのクチコミ戦略に乗って記事を書いている気がする。しかし、それは単に企業の戦略の違いかもしれない。リーダー企業はより幅広いターゲットにリーチする方法を選択し、auも本体のブランドでは、ジャニーズの嵐を使って既に大量に広告を投入している。iidaは筆者のようなニッチなターゲットをつかんでクチコミを展開していくということなのかもしれない。
 各々の戦略の結果、今後のシェアがどのように変化していくのかも注目しておこう。

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