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2009.11.17

”To Be Or Not To Be”アサヒビールはどこまで踏ん張るか?

 昨日、当Blogで居酒屋デフレ戦争・「全品均一価格」店隆盛の意味するものは?を公開したあと、日経MJ紙で同様に「全品均一価格居酒屋」の記事を発見した。2009年11月16日15面・ふーど記”発泡酒「樽」7年ぶり復権”とある。
 記事によれば今年1~10月の「樽(たる)・タンク」の販売が増えているという。その理由は低価格均一居酒屋であり、同価格でたっぷり提供できるため、ビールより発泡酒が選ばれた結果だという。

 ビールから発泡酒へ。その動きにビール大手4社の中で唯一抗っている存在がある。アサヒビールである。同社は発泡酒も第3のビールも「樽」で展開していない。取引先の料飲店からのプレッシャーは想像に難くない。それでもアサヒビールが踏ん張るのはそれは主力商品「スーパードライ」を擁する同社の矜持の現れでもある。

 「スーパードライ」の歴史をひもといてみよう。
 アサヒビールは1980年代半ば、ビール市場シェアで10%を割り込む存亡の危機を迎えていた。反転攻勢は1987年の「スーパードライ」の上市ではじまった。「ビールはキレです」と従来にない価値観を訴求しわずか1年、1988年に一気にビール市場のトップシェアを奪取。同88年から89年にかけて各社が追随し、「サッポロドライ」、「サントリードライ」、「キリンモルトドライ」を上市して激しさを極めたいわゆる「ドライ戦争」も制して、揺るぎないビール市場のリーダーの地位を確立したのである。

 スーパードライに注力し、ビール市場を牙城とする。「アサヒはドライ一本、ビールのみで勝負する」と宣言したアサヒであるが、デフレ不況の中、消費者が安価な発泡酒支持を強める動きを無視することはできなかった。2001年、「本生」でついに発泡酒市場に参入した。
 発泡酒参入以降、アサヒは「スーパードライ」の中核的価値である「”キレ”の呪縛」にはまっている。2位転落の憂き目を見たキリンは発泡酒「淡麗<生>」、そして第3のビールでも「キレ」を武器にシェアを拡大した。アサヒは同じ「キレ」を訴求すると、低価格な発泡酒や第3のビールがスーパードライとカニバリゼーション(共食い)を起こすことを避けるために市場のトレンドではない「コク」を訴求せざるを得ない。それが「呪縛」である。

 料飲店に対して頑なに発泡酒「樽」を展開しないのは、「スーパードライ」のブランド価値を守りたいためだ。料飲店で顧客が例えば「本生」をジョッキで飲んで「発泡酒でも十分美味しいじゃん!」と思うようになれば、自らスーパードライの命脈を断つことになってしまう。何としてもそれは避けたい。
 ビールにおいて、料飲店は品揃えが上位ブランドに集中する。その結果、スーパードライで料飲店市場の1/3占有しているともいわれていた。まさにアサヒの牙城でありドル箱だ。その市場が発泡酒に置き換わり始めている。

 さらに気になる動きもある。日経MJの記事はさらに今後、主戦場は発泡酒からより安価な第3のビールに移る可能性も示唆している。サッポロビールが9月末に「麦とホップ」の樽詰めを全国発売したからだ。均一価格居酒屋では、ビールは通常店で400mlのところ、300ml。発泡酒なら500mlの大だという。記事では「低価格均一価格居酒屋に第3のビールによる特大ジョッキが登場するかもしれない」と予想している。
 サッポロビールの「麦とホップ」は「麦芽2倍で、ますますビールと間違えるほどのうまさへ」とのキャッチコピーで売り出している。CMキャラクターの田村正和も「私には、ますますビールです」と言う。ビールに命を賭けるアサヒには恐らく我慢のならないコピーであろうが、市場の評判は悪くない。

 わずか1年でジリ貧の状態から「スーパードライ」で奇跡のトップシェアを奪取した成功体験が、その後の動きを鈍らせているわけではないだろう。
 『お客様のさらなる「うまい」のために』が、スーパードライの「挑戦」だという。妥協せず、料飲店では自らの信じる最高の味、「スーパードライ」を提供し続けることが、アサヒビール自身の「挑戦」なのだ。この戦いは攻めの挑戦ではない。どこまで踏ん張れるかという挑戦である。その挑戦の行方から目が離せない。
 

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