「自販機女子」を狙え!エキナカ限定飲料の挑戦!
JR東日本管内で「acure」ブランドの自販機事業を展開するJR東日本ウォータービジネス。「自販機イノベーション宣言」を掲げる同社がまた、新たな商機を見いだしたようだ。
同社はJR東日本管内のエキナカに約1万台の自販機を保有している。特徴的なのは、各飲料メーカーの商品を混載する「ブランドミックス」で展開していることだ。自販機は飲料メーカーの重要な販路であるため、自社ブランド製品のみを扱う単一ブランド機がメインである。一部に自販機の商品供給やメンテナンスを行う自販機運営会社(オペレーター)が独自ブランドの自販機で混載を展開する例もある。しかし、その自販機運営会社には何らか飲料メーカーの資本が入っている場合もあって、完全にメーカーの偏りがない混載は実現していないのが現実である。
メーカー資本が入っていない、完全な「ブランドミックス」の実現こそが、「顧客起点」の自販機であると同社は主張する。ブランドミックスだけでなく、飲料メーカーとのコラボレーションによる独自商品を数多く開発しているのも特徴だ。伊藤園との「朝の茶事」、アサヒ飲料との「ワンダ・朝のオレ」などのヒット商品も多数ある。
それらの取り組みも奏功してか、この3年間で同社の売上げは自販機の台数はそのままで、136%伸長しているという。自販機ビジネス全体を見れば、全国に推計240万台強という台数も年間6万ケース強という売上本数も過去6~7年の間横ばいが続いている。直近では西日本の大手ボトラー、コカ・コーラウエストが先月末に自販機の売上げ不振で大幅な赤字を計上し、400人の早期退職に踏み切るという発表をしたことも記憶に新しい。業界内での同社の好成績は鮮明である。
そんな同社が、この秋再び新たなコラボレーション商品を上市した。アサヒ飲料のフレーバーティー「FAUCHONアップルティー」をホット用に製品改良し、「acure」ブランドの自販機専用として販売する。
従来のコラボレーション商品はエキナカコンビニ「NEW DAYS」でも取り扱っていた。しかし、同店のホット棚は小さく確保が困難であることから今回は自販機のみで勝負をかけるという。同社の保有する自販機は1万台と、業界内で見れば決して多いわけではない。そこで勝負をかけるということは、1台あたり相当数売り切ることを意図した決断であることが分る。
商機は同社の独自調査から見えてきたようだ。リリースにある「首都圏におけるエキナカ自販機男女利用構成比」では、女性の利用者が今年34.9%に上った。2007年の調査と比較して6.1%の伸長である。一方、街中では<飲料自販機の消費者は、男性9割、女性1割という特異な状況である>という。(2005年7月26日放送ガイアの夜明け「自動販売機 24時~知られざる飲料業界の攻防~」より)。
消費者の購買行動を考えてみよう。
街中の自販機は、男性が仕事の合間などに喉の渇きを癒そうと飲料を購入し、その場で蓋を開けてゴクゴク飲むイメージだ。では、女性はというと、飲料購入のメインはコンビニだろう。その女性層取り込みの弱さもたたって、自販機の飲料販売シェアはかつての50%から現在は35%まで低下している。
しかし、昨今、一つの外部環境が変化している。景気の低迷だ。コンビニでの飲料購入は、多くは弁当、菓子などの「ついで買い」である。景気の低迷により消費者は支出を絞る。通勤途上で習慣的にコンビニに立ち寄ってしまう層も少なくないが、その行動が抑制されるとしたら、飲料はどこで買われるのか。また、朝、カフェでコーヒーなどをテイクアウトで購入する習慣を持っている層も多いが、その価格抑制を図ろうとした場合、代替品として何が買われるか。
同社は消費者の購買機会のうち「朝」を徹底的に取り込む戦略を明確にしている。従来のコラボ製品は「朝の茶事」「朝のオレ」だけでなく、カゴメとの「朝にすっきり野菜と果実」、日本コカ・コーラとの「ジョージアキックオフ 」などほとんどが「朝」テーマである。
今回の「FAUCHONアップルティー」は「寒さが厳しい季節のホームの朝」での購入を明らかに狙っている。職場に向かう前の駅で、「acure」の自販機の中からオレンジ色のホットキャップに暖かなディープピンク(deeppink:たぶんR:255 G:20 B:147)のラベルが購入を誘う。手に取ればボトルはペットボトルではなくボトル缶で、暖かさが直接手に伝わってくる。手袋をはめた両手で包み込むか、コートのポケットで暖かさを楽しむかしながら、職場に向かうという風情である。街中で缶の蓋を開いてゴクゴク飲む男性の購買行動との違いをよく考えた設計である。また、職場の席で飲む時に蓋を開けばフルーティーなりんごの香りがふっと広がるように、ホット専用に調整したという。リピーターとなるファンも増えそうだ。
自販機は完全なる飽和時代。ただ、置いておけば売れるということはもうない。
「顧客起点」を掲げるJR東日本ウォータービジネス社の外部環境の変化をとらえ、内部データを活用し、誰に、どのように買ってもらうのかという購買行動の細部まで設計した展開には、自販機や飲料だけでなく学ぶべきところが大きいといえるだろう。
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Posted by: hant insurance | 2010.12.02 07:51 AM