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2009.11.25

「洗濯機市場」のガラパゴス化?・・・に学ぶもの

 インターネットリサーチの株式会社アイシェアが洗濯機に関する調査報告を発表した。
 <洗濯機の新製品価格に物申す!>
 http://release.center.jp/2009/11/2401.html

 調査結果によると<本音が見えた!?女性の9割「洗濯機の新製品は高い」!~使用者の7割が!現在使用中の洗濯機に「不満がある」>という。家電メーカーの担当者にはショックであろう。
 「不満」が7割とする内訳は<使用中の洗濯機に「とても満足している」人は25.3%と少数。「おおむね満足している」が59.4%と高く、「満足していない(15.3%)」を合わせると74.7%もの人が、何らかの『不満がある』とした>である。
 「おおむね満足」=「何らかの不満足の表明」としているので数字の解釈は微妙だが、「不満足理由」の選択肢には全員が回答しているので確かに不満はくすぶっているのかもしれない。その不満点の主なものは<最も多かったのは「運転音がうるさい」の37.2%。以下「洗濯時間が長い(27.3%)」「水の使用量が多い(21.5%)」「洗濯物が絡まる(20.3%)」の順>だという。意外にも基本的な部分での不満足が多い。

 不満によってすぐに買い換えるかというと<現在洗濯機の購入または買い換えを「考えている」人は回答者全体の18.3%>と、必ずしもそうではない。景気の停滞による節約志向が買い換えを躊躇させているのかもしれない。
 調査項目である「新製品の価格に対する評価」も関連しているだろう。<「とても高い」と答えた人は39.1%、「少し高い」は45.2%で、合計84.3%もの人が『高い』と回答。「ちょうどいい」は14.5%で、『安い(「少し安い」「とても安い」の合計)』はわずか1.3%>であるという。

 一般に製品の価格は機能を機能向上によって比例して高くなる。自動車の価格が安全基準の高度化によって車体の大型化とともに高くなっていったのと同じだ。自動車は若年層の「クルマ離れ」といわれて久しいが、原因はケータイやゲームなどに興味が移ったことよりも、車体価格の高騰によって手が出なくなったという意見もある。生活必需品の洗濯機が買われなくなることはないが、買い換え年数の伸長の原因にはなるだろう。自動車の使用年数はついに8年を超えたようだ。上記の調査によれば洗濯機も10年越えで使用している人が18.1%いるという。

 調査では「とても満足している」という25.3%の満足理由が示されていないのが残念なのだが、洗濯機の高機能化はどの程度支持されているのか気になるところだ。携帯電話は通信機キャリアからの販売奨励金の廃止に伴う販売方式の変更で、端末価格が高くなった。ユーザーが容易には機種変更ができなくなった。それと同時に、「機能満載でなくてもいいからもっと安い機種を」と望む声も徐々に高まっている。使わない、使いこなせない機能も多すぎるとの不満の声も少なくない。

 「バリューライン」という考え方がある。横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取る。すると、「安くてそれなりの価値のもの(エコノミー)」「そこそこの価格で、ほぼ妥当な価値のもの(中価値)」「高くて価値の高いもの(プレミアム)」という比例した関係が出来上がる。これがバリューラインだ。
 洗濯機や携帯電話は現在、「プレミアム」に集中しているのではないだろうか。回転式・ドラム式・乾燥機能付とタイプがあり価格も様々であるが、7万、8万、10万円越えから20万円近いものまである。

 もし、消費者がその価格を嫌ったらどうなるか。
 世界の家電市場におけるいて、白物家電は既に日本のお家芸ではない。白物家電のうち、冷蔵庫と洗濯機の世界シェア№1は、昨年から中国のハイアール・グループが握っている。白物家電全体でも2004年から世界第2位である。洗濯機は日本でソフマップなどが扱っている。価格は2万円を切るものから3万円ちょっととかなり安価な「エコノミー」価格である。洗濯機のハイアールだけでなく、日本の家電市場においては安価な外国勢がぐっと存在感を増している。

 バリューラインを考えた時、競合に勝つには「バリューラインを超える」ことが必要だ。つまり、「価格以上の価値」を提供するのである。例えば「低価格なのに中間価格と同等の価値=グッドバリュー」「低価格なのに高価格のものと同等の価値=スーパーバリュー」という存在になる。
 価格.comなどで、ハイアールの洗濯機の評価を見ると、「騒音が大きい」というような意見が散見される。騒音はアイシェアの調査でも37.2%と一番の不満要因である。一方で、評価では「価格なり」とあきらめる意見も多い。それ以上に価格の安さと機能のシンプルさを評価する意見が多いのである。つまり、「安くてそれなりの価値のもの(エコノミー)」としてのポジションをしっかりと確立しているのである。

 もし、日本の家電メーカーが同等の価格で不満要因を解決できれば、「グッドバリュー」のポジションを獲得できるだろう。そうした戦い方はできないのだろうか。
 この洗濯機の例は一つの象徴ではないだろうか。高機能化と高価格化を進めるだけでなく、もっと「引き算」をしながらバリューラインを超えることを狙うような戦い方が。

 今年は「種の起源」を著わしたダーウィンの生誕150周年にあたり、ちょっとしたブームだ。彼が研究した、隔絶した南海の孤島における独特の進化になぞらえて、世界に通用しない日本独特の製品開発を「ガラパゴス現象」などと呼ぶ。少子高齢化の進行で縮む日本市場においていかにそれが危険か警鐘を鳴らす識者は多い。
 問題は、日本市場への「引きこもり」だけに留まらない。
 ガラパゴス島は、近年、海水温の上昇によって海草が枯れる「海焼け」が進行し、海イグアナが絶滅の危機に瀕しているという。それだけでなく、地球温暖化の影響は枚挙にいとまがないようだ。独特の生物を脅威に追いやるのは、より生命力に富んだ外来種の影響も大きいという。

 足し算に足し算を重ねた日本独自仕様の製品は洗濯機だけではないはずだ。
 経済的要因をはじめとした外部環境は、ユーザーニーズにどのような変化をもたらしているのか。競合となる存在は、日本市場にどのように展開しているのか。競合はユーザーニーズをどのように捉えているのか。ごく基本的なマクロ環境分析と競合環境分析でも分ることは多いだろう。

 快進撃を続けるファーストリテイリングの柳井会長兼社長は<「世の中には(価格が)高くて良い服と、安くて悪い服しかない」という常識を打ち破り、安くて良い服を作ろうと思った。>とその原点を語っている。(日経フォーラム世界経営者会議・日経新聞09年11月25日朝刊)。
 バブル崩壊によって衣料品市場は30%以上市場縮小している環境下で、ユニクロは大胆な「引き算」による「エコノミー戦略」で低価格を実現し、品質を徹底的に高めることで、「グッドバリュー戦略」に転換し、機能性を付加し、さらにファッション性を高めるという価値向上で現在は「スーパーバリュー」のポジションを獲得している。

 日本市場は、消費者はどのように変容しているのか。そして、押し寄せる競合の脅威はどうなのか。周囲をもっとよく観察すれば、生き残りのための示唆はもっと得られるのではないか。

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