「世界のキッチンから」が連続大ヒットを狙っている!
絶対外れない・当るレースを「鉄板レース」と競馬ではいい、絶対に外さない・ウケるネタを「鉄板ネタ」とお笑いではいう。では、絶対外さずにヒットする飲料は、さしずめ「鉄板飲料」とでも呼べばいいのだろうか。
「世界中のお母さんの知恵をヒントに、日本人の味覚にあうように“ひとてま”加えたおいしさをお届けするブランド」という独特のポジショニングで人気の飲料、キリンビバレッジ・「世界のキッチンから」。<1-9月のブランド全体の販売実績は前年の約5割増と好調に推移>(同社ニュースリリース)しているというからこの時代に大変な売れ行きである。
品目別の発表はないが、恐らく牽引車は「とろとろ桃のフルーニュ」である。乳飲料でありながら、桃の香りが鮮烈で、マンゴーの甘みがやさしいその味わいに魅せられたファンは多い。昨年3月に発売された商品を今年3月にリニューアル販売したのだが、一気にブレイクした。本来、世界のキッチンからは各商品とも期間限定なのだが、あまりの人気に限定期間を終了することができずに未だに生産・販売を続けているのだ。
大ヒットとなった「とろとろ桃のフルーニュ」もコンビニの店頭でのフェイス数が減ったり、店舗によっては取り扱いがなくなったりしている状況だ。キリンビバレッジによれば、生産・販売を終了する予定はまだないということであるが、プロダクトライフサイクルで考えれば、成熟期から衰退期へ移行する状況であると考えられる。
ヒット商品が、追加のマーケティングコストをかけずに粛々と売上げを上げている「金のなる木」状態にある間に、次世代「スター」を目指す「問題児」を上市するのがポートフォリオマネジメント(PPM)の基本。そして、「世界のキッチン」が世に送り出すのが「グレープフルーツビネガー&ミルク」。11月17日発売である。
この新商品、まさに確実なヒットを狙った「鉄板」であることが、同社のニュースリリースから読み取れる。その狙いと、どのような売り方がなされるかを予想してみよう。
■ターゲットとニーズ
<当社調べによると、健康素材であるお酢を使用したビネガードリンク市場はここ10年で約8倍に拡大していますが、手軽においしく摂取したいニーズが十分に満たされていないことが分かりました>(ニュースリリースより)
世界のキッチンからシリーズは、昨今の「ゼロカロリー」や特保に代表される「機能性」とは一線を画した、カロリーはあってもとにかく「美味しい」を追求するコンセプトだ。それは新製品にも継承されることは間違いない。それに加え、「黒酢飲料」などに代表される、「美味しく健康的に飲める」という飲料を求めるターゲットとそのニーズに対応しようとしているのである。
■製品(Product)
前述のように酢飲料は「黒酢」などがすぐに想起されるが、新商品は<グレープフルーツ果汁を発酵させて、オリジナルのグレープフルーツビネガー>を作ったという。さらに<ミルクと合わせて酸味を和らげることで、飲みやすく仕上げ>たという。このような、「新しい味」が世界のキッチンからの真骨頂で、酢飲料ユーザーだけでなく、一般消費者の興味を惹くことも狙っている。
■価格(Price)
320mlで150円。量からすると、ちょっと高め。しかし、清涼飲料の相場である150円ラインは超えない。手間をかけた高級感と手を出しやすい価格のバランスは、大ヒットした「とろとろ桃」を踏襲したプライシングである。
■チャネル(Place)
一部、自社ブランドの自販機でも販売するが、コンビニエンスストアを主たる販路とする世界のキッチンからにとっては、店頭の棚をいかにに確保するかで販売が左右される。その意味では「とろとろ桃」の大ヒットは、棚確保が勝利の大きな一因となっていたといえる。スリムボトルの特性を活かし、通常の飲料6本のスペースに7本が置ける。すると、コンビニのオーナーはそれをやってみたくなる。そして、実際に7フェイスを並べてみると実に壮観なアピール力をもった棚が完成する。消費者もつい手に取ってしまうのだ。今回の「グレープフルーツビネガー&ミルク」もその戦術を踏襲することは間違いないだろう。
■プロモーション(Promotion)
「とろとろ桃」の各種プロモーションの中でも最も小技が効いていたのは、PETボトルに貼付けられていたPOPシールだ。シールは3種類あり、 「おまたせしました」「ますますとろとろ」「とろあまずっぱい」と色違いで展開していた。同じ商品なのに3種類ある。これもコンビニオーナーにアピールでき、最低でも3フェイス並べたくなるのだ。プロモーションも「棚取り」にフォーカスしている。今回、この戦術も踏襲するはずだ。ましてや、今回の商品パッケージは<食卓のテーブルクロス柄をベースに、清々しい爽やかさを表現しています>というように、店頭アピールを強化している。「新しい味わい」「すっきりまろやか」「爽やかに美味しい」などの言葉がパッケージの青いチェック柄に映えるシールの色で展開されるに違いない。
絶対に売れる「鉄板飲料」と筆者は「グレープフルーツビネガー&ミルク」を分析したが、結果は果たしてどうであろうか。17日発売ということは、コンビニに配荷されるのは18日だろうか。まずは、店頭で会えるのを楽しみにしたい。
« 「巣ごもり消費」の商機をとらえろ!:ハインツの内食対応に学ぶ | Main | 居酒屋デフレ戦争・「全品均一価格」店隆盛の意味するものは? »
« 「巣ごもり消費」の商機をとらえろ!:ハインツの内食対応に学ぶ | Main | 居酒屋デフレ戦争・「全品均一価格」店隆盛の意味するものは? »
Comments