こどもを狙う永谷園「生姜部」の「ジンジャー君」戦略
永谷園が9月より秋冬期間限定で発売しているという、こども向け生姜入りのホットレモン飲料『つよいぞ!ジンジャーくん』。「こどもに生姜?」という感もあるのだが、実はここには同社の精緻な戦略が仕込まれているのである。
<永谷園『つよいぞ!ジンジャーくん』商品紹介サイト>
http://www.nagatanien.co.jp/r_products/index.php?pnum=n211
永谷園といえば「お茶づけ海苔」というイメージがすぐ浮かぶが、同社には知る人ぞ知る「生姜部」というものがある。社内部門を横断し、職位も超えて「生姜」という素材にこだわって研究し、新製品やレシピを開発して、新たな価値創造を目指している。専用農場を持ち、部員の求心力を高める「生姜部の歌」まであるのだ。
生姜部は活動の成果として今までに、冷え性の女性の悩みを解決する『「冷え知らず」さんの生姜シリーズ』として、カップスープ、みそ汁、飲料などを世に出している。そして、今回発売されたのが、ターゲットを「こども」とした製品なのである。
こどもは生姜を食べたり飲んだりしたがるのか?少なくとも筆者の幼少時代は独特の風味と辛みが何とも苦手で、忌避する食品の一つであった。しかし、そこは生姜部の弛まぬ努力でレモン果汁とハチミツでまろやかな味わいに仕上がっている。これならこどもも大喜びだ。
飲めばこどもにも美味しい「ジンジャー君」。しかし、生姜部の努力によって「女性の冷え性には生姜!」という認識は広がっているものの、生姜をわざわざ「こどもに飲ませましょう」と思うかまだまだギモンである。こども自身が「生姜ハチミツレモンを飲みたい!」と言い出すのも望み薄だろう。
そこで、効果を発揮するのが、コントラストの強い色彩とキャラクターを全面に出した「ジンジャー君」のパッケージである。キャラクターも絶妙だ。いわゆる「ゆるキャラ」でも、ましてや「萌えキャラ」でもない。小さなこども好みの「アンパンマン」を彷彿とさせる(?)キャラクターでアピールする。母親にスーパーに連れられてきたこどもが「ジンジャー君買って!」とねだる様が目に浮かぶ。
こどもにねだらせ、母親に手に取らせばパッケージには「寒さに負けるな!」「たっぷりビタミンC!」とのメッセージが目に止まる。「あら、こどもにいいわね」と思う。さらに、冷え性対策などに生姜を今まで愛用していなかった母親だったとしても、「私も飲んでみようかな」と思うようになる効果も期待できる。
モノを購入する際の意志決定に関与してくる様々な人々のことをDMU(Decision Making Unit=購買決定単位)といい、BtoB(企業間取引)のマーケティングでは絶対に欠かすことのできない要素である。誰がどんな関心事を持って、どのような過程で購入意志決定がなされるかを想定して、働きかけを行うことが欠かせないのだ。
「ジンジャー君」もDMUへの働きかけの設計が絶妙である。
通常母親に働きかけをするところを、こどもにもキャラクターでアピールする。生姜に興味がない母親だったら、生姜飲料は目に入らない。それを想定して、こどもも狙っているのだ。こどもが「買ってー」と稟議を挙げる。母親は生姜の効用を認知して、購入を決断。さらに、自分でも飲んでみるという意志決定をする。二人で飲めば、消費量は2倍である。
生姜に対する熱い思いを伝えたくても、興味のない人には届かない。しかし、そんな人にこそ、生姜を試して欲しい。逆説的な課題を解決するのが「ジンジャー君」というキャラクターであり、『つよいぞ!ジンジャーくん』という商品なのだ。
ただ思うだけではなく、しっかりとした顧客へのメッセージ伝達経路を設計している「永谷園・生姜部」の戦略に脱帽である。
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