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18 posts from November 2009

2009.11.29

コンビニはケイコさんがいなりずしを買うところなのか?

 日曜日の昼、なぜだか突然あるものが食べたくなった。
 昔の大ヒットCM的に表現するとこうなる。
 「私は(夜中ではなく)昼下がりに突然(いなりずしではなく)焼きそばが食べたくなったりするわけです。それはもう食欲とかそんなことではなくて、ただもうなんだか(いなりずしではなく)焼きそばのことで頭が一杯になってしまうわけなんです。そこでこうやってセブンイレブンへ。こんな自分を私はかわいいと思います。」(セブンイレブンCM・ケイコさんのいなりずし編:1995年)

 で、セブンイレブンに行ってきた。すると、いなりずしやら、焼きそばどころではなく様々な弁当を手にした同年代、中年男女の人々ががレジや店内にいた。カゴの中には弁当は3つ4つ。日曜日に「外食」はもはや贅沢で昔日の風景となり、さりとて休みに料理の手間はかけたくないといった風情が今日的なのだろうか。
 
 それは、さすがに出来合の焼きそば味気ないと思って材料を買いにスーパーに行こうと思った。が、大手スーパーに行くには駅を超えて10分ぐらいの距離。たかが10分、されど10分。さらに、その時間だとレジの行列も想像に難くない。さりとて、個人商店の八百屋は今日は休みだ。平日でも商店街は閉まっている店が多いのも事実だが・・・。

 と、すぐ近くに100円コンビニ・スーパー「ショップ99」があるのを思い出す。品数は少なく品質もそこそこだが、何より気軽に入れるし、商品が小分けで買いすぎないのがうれしい。何といってもこちらは衝動的に焼きそばが食べたくなって、それだけを作れる材料が手に入ればいいのだ。
 店内には驚くほど高齢者の姿が目についた。おばあちゃん後ろに並んでレジで会計。

 かくして、自称・メタボ予備軍の予備軍である筆者は、本来禁忌すべき高カロリーな焼きそばにありつくことができたのであるが、それを食しながら目にした光景を反芻してみた。
その光景は、実はネット調査の通りである。

 <コンビニ来訪客の世代分布をグラフ化してみる(2009年11月版)>
 http://news.livedoor.com/article/detail/4476715/
 上記統計によれば、1995年に20代とおぼしき「ケイコさん」がセブンイレブンに、夜中にいなりずしを買いに走った頃に近い1998年、20代の来店客は、客層中最多の35%を占めていたが、今日では筆者と同年代の30~40代が合わせて41%を占める。(95年は合計で29%)。人口分布の変化を反映しているに加えて、10~20代においてコンビニに慣れ親しんだ層がそのまま年を重ねたというわけだ。

 もう一つ。<100円ショップ来訪客の世代をグラフ化してみる>
 http://www.garbagenews.net/archives/708901.html
 記事で示されているのは、いわゆる雑貨中心の「100円ショップ」ではなく、筆者が行った100円コンビニ・スーパー「ショップ99」である。記事の分析によれば、40代の利用が最多であるが、次いで、ほぼ同数で50代以上、30代。30代以上は女性客の割合に変化はなく、固定客化していると推測できるという。さらに<Shop99は元々生鮮食品を多く取り扱うタイプの100円ショップなため、食品をはじめとした生活必需品を買い求める主婦層が多く来訪するということだろう。特に50歳以降になっても来客数が落ちないのは注目に値する>としている。加えて、高齢者は世帯人口が少なく、少量しか食料を使用しないため、小分け販売に対する支持が高いことも理由の一つだろう。さらに、必要なものを必要なだけ購入し、無駄を省きたいという傾向は世代に関係なく高まっているだろう。

 まさに、統計的に見ても、筆者が目にした風景通り。人口動態的な変化。経済環境の変化。人々の意識の変化。
 商店街の隆盛は昔日のこと。さらに、大手スーパーでなく、コンビニが食材供給を担う。買い物風景はどんどん変化している。

  

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2009.11.28

つぶやきはじめました(twitter)

1年以上前にアカウントを作っておいてそのまま放置していたのですが、昨日からにわかにつぶやきはじめました。

http://twitter.com/vermilion07

何をどうしたものやらと、完全な「レイトマジョリティー」状態からの再スタートですが、Blog記事にする前の、街やネットやメディアで目にしたものの感想などをつぶやいてみます。

自分にとってはネタ帳兼、備忘録ですが、「なるほど、カナモリはこんなものを見ているのか」と思っていただければ幸いです。

すぐ飽きて更新しなくなるリスクもありますが、フォローなどして暖かく見守っていただければうれしいです。

フォロアーになるのが面倒だったり、twitterのアカウントを作っていない方は、
←左のナビゲーションに「twitter カナモリのつぶやき」というリンクを作りましたので、たまにのぞいてみてください。


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2009.11.27

明日から始める! 初めての自転車通勤(2)

■メディアに掲載された弊社スタッフの執筆記事を当Blogでも随時紹介していきます。

Business Media 誠 連載記事

いざ自転車を買おうと思い立ったとき、最初に迷うのが「どこで買うか」「どんな自転車を買うか」では? 今回は日本全国の初心者大歓迎のショップを紹介。それぞれのショップで「オススメの3台」を選んでもらった。

著者プロフィール:西幡治美(にしはた・はるみ)

Photo


金森マーケティング事務所の体育会系コピーライター&プランナー。スポーツ市場の販促やプランニングを得意とする。

まずは体験してユーザーの立場に自分をおく事から商品や企画を始めたい性質(タチ)。根性系の自転車レースやトレイルランに好んで出場するが、大抵はレースの制限時間と格闘、誰よりも長くレースを楽しんでい ることが多い。

「いつ取材されてもいいように」とおしゃれなコーディネイトを考えるため、毎回遠征は大荷物。めったにないくせに「表彰式用のウエア」までいつも用意している。「スカートをはいてランニングを始めたのは私だ」と言い張っているが……。
(Photography by Sho Fujisaki)

「初めての1台」をどう選ぶ?

 運動不足解消や健康維持のため、自転車通勤を始めたいと考える人を応援する本連載。1回目は自転車通勤のメリットや、いわゆる“ママチャリ”や“シティーサイクル”はなぜ長距離乗ると疲れやすいのかといったことについて説明した。2回目となる今回は、親身になって初心者をサポートしてくれるショップや、各ショップオススメの“最初の1台”にふさわしい自転車を紹介する。

どこで、いくらぐらいの物を買えば良い?
 いざ自転車を買おうと思い立ったとき、最初に迷うのが「どこで買うか」「どんな自転車を買うか」ではないだろうか。友達に自転車乗りがいるなら聞くもよし、ネットで調べるもよし、本を買うもよし。焦らず、じっくり情報収集をしたい。

 家や職場の近くにバイクショップが全くないから通販で、と考える人もいると思うが、初めて買うときはできる限り実際にお店へ足を運び、実物を見て、触ってから買うようにしたい。選択肢がたくさんある場合は、メンテナンスのことを考えて、気軽に持っていける範囲内にあるショップがベストだ。

 ショップは対面販売で、店員さんが親切に購入からメンテナンスまでケアしてくれるところがおすすめ。予算としては、初心者向けの自転車であれば、5万円程度から良いものがいろいろそろっている。とはいえ、自転車の価格はピンキリ。この価格なら良い、というものではないので、まずは自分が気に入ったものを選ぶのが長続きのコツ!

 身体の一部として、通勤時の相棒として長く付き合うバイク選びは、ぜひとも慎重を期してほしい。身長が同じだからといって、同じサイズのバイクが合うとは限らない。腕や脚の長さ、体型、筋肉量や質によって、全く違うバイクが合う時もある。

 サイズの選び方を間違えば、腰痛やひざの痛みといった身体の不調や、落車、接触事故につながる危険性も考えられる。「安くするよ」などと甘い言葉に誘われて購入したバイクのサイズが全く合わず、結局買い替える羽目にあった、という切ない話は多い。悪質な「自称プロショップ」も少なからず存在するのだ。

 また、俗に「ルック車」と呼ばれる“なんちゃってスポーツバイク”などにも注意をしなければならない。一見マウンテンバイクやクロスバイクのように見えるのだが、頑丈な作りをしておらず壊れやすい。よく見ると、「悪路を走らないでください」などと極小の文字で注意書きがあったりするものがそうだ。「安さにつられて買ったらルック車だった」という話は、ちょっとネットで検索してみればたくさん出てくる。ルック車なのかちゃんとしたバイクなのかは見た目では分かりにくい。初めのうちはやはり、信用できる店で取り扱われている自転車を選ぶのが無難だ。量販店やネットで購入する場合でも、できるだけ自分とフィーリングの合う店をまずは探そう。

 「完璧に調整できた安いバイク」は「調整していない高級バイク」よりも、乗りやすさでは上になる。これをふまえた店選びはとても重要だ。車体選びからウエア、乗り方やメンテナンス方法まで教えてくれる、初心者大歓迎のお店は全国にたくさんある。そのうちのおすすめをいくつかご紹介しよう。今回紹介するのはすべて、初心者大歓迎のショップばかりだ。また各ショップのスタッフに、通勤はもちろん、趣味の1台としても十分に楽しめるおすすめバイクも紹介してもらった。

→オススメの1台は? (続きはこちら:Business Media 誠

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2009.11.26

「ケータイらしいケータイ」って何だ?

 電車の中で新しい携帯電話のポスターが目に止まった。auの「カシオ・CA003」。(http://k-tai.casio.jp/products/ca003/)ケータイカメラはついに12.2メガだ。それに「顔認識」は当り前、各種のシーンに応じた撮影モードや、画質劣化のしない20倍ズーム、高速連写に、カシオのお家芸である「ダイナミックフォト」、つまり静止画・動画合成機能まで搭載している。はっきりいってこれは、カシオのデジカメ・EXILIM に携帯電話機能を搭載したようなものだ。・・・確かに「EXILIM ケータイ」といっている。

 派手な機能だけでなく、カシオの 「EXILIM ケータイ」のブランドコンセプトはしっかりしている。
 <撮りたくなる。伝えたくなる。 毎日持ってるケータイだから、思いついたらすぐ撮れる。偶然出会ったその瞬間を、大切な人と送り会い、伝えあって、キブンやキモチを共有できる。誰かと誰かをPhotoでつないで、Communicationを楽しもう。(後略)> (カシオWebサイトより)
 まさしくケータイカメラの本質を突いている。
 今日、デジカメで撮影した写真はほとんどプリントされない。デジカメ本体の液晶画面も大型化し、SDカードなどのメディアも大容量化していることから、カメラ自体が「持ち歩けるアルバム」と化してそれを人に見せることが多い。しかし、それよりメールで送れば離れた人とも、そしてより多くの人とも共有できる。そうした消費者のニーズは大きいはずだ。少なくとも筆者は最近、ケータイで気になるものを撮影して人に送るということが、撮影という行為そのものになっている。

 「撮影→送って共有」というアクションは、ケータイだけでなくデジカメでも始まっている。「CEREVO CAM」。(http://cerevo.com/)内蔵の無線LAN機能かイーモバイルの着装で、撮影したその場ですぐに画像をアップロードでき、共有できる。「世界一写真をシェアするのが簡単なカメラ」がコンセプトだという。

 生物学では「収斂進化(しゅうれんしんか)」という。「複数の異なるグループの生物が、同様の生態的地位(環境要因)についたときに、系統に関わらず身体的特徴が似通った姿に進化する現象(Wikipediaに加筆)」。空を飛ぶ「昆虫の翅と鳥・コウモリ・翼竜の翼」土中で生活する「モグラと昆虫のケラの前足」などがその例である。各々の生物が環境に適応するために器官を進化させた結果、同等の機能を獲得する過程で極めて似た形状となることを示している。  
 ケータイとカメラも「撮影→送って共有」という使われ方、消費者のニーズの高まりという環境変化に適応するため、収斂進化したのだと解釈できる。

 筆者にはとても便利な機能で、ケータイでもカメラでもそれが実現できるのはありがたい限りなのだが、少々心配な気もする。
 生態学における「生物多様性」。「環境に適応する面からも、画一的な生物群よりも多様性を持った生物群の方が生き残りやすいと考えられる。環境に変化が起きたとき、画一的なものは適応できるかできないかの二択であるが、多様なものはどれかが適応し生き残る為の選択肢が多いからである(Wikipediaより)」。
 「消費者ニーズ」という「環境」に適応するための収斂進化の結果、多様性がなくなってはいないだろうか。消費者ニーズが大きく変化した時にどうなるのか。

 音楽が聴けるケータイ、ワンセグが見られるケータイ、電子ブックが読めるケータイ、ハイビジョン撮影ができるケータイ、楽器になるケータイ・・・いやいや、十分ケータイは多様性を確保しているとの論もあるだろう。しかしそれらは、オーディオプレイヤー、ワンセグテレビ、電子ブック(あるいは文庫本)、ハイビジョンビデオカメラ、楽器との収斂進化である。いや、正確には収斂進化ではなく、「片方が、もう片方の種に似た姿であることで何らかの利益を得るため、それに似る方向に進化したもの(同)」であるところの「擬態」である。

 カメラはどうかというと、カメラ本来の原点回帰の動きが見える。
 大人気の「デジイチ」こと、「デジタル一眼カメラ」。そして、「トイカメラ」のデジタル版、「トイデジ」。ひたすら美しい写真を撮影するための「デジタル一眼」。微妙なボケ味とビビットな色調で芸術的な撮影を楽しむ「トイデジ」。確かに撮影した写真を人に見せるということもあるだろうが、「撮影→送って共有」というよりは明らかに撮影者自身の趣味の実現に使われる商品であり、ケータイカメラとは明らかに一線を画す。

 では、ケータイはどうだろうか。携帯電話の「原点」、即ち中核的価値は「通話」とiモードの登場以来は「メール」と「携帯サイトの閲覧」だ。意外とシンプルなのである。それを実現する「実体」はバッテリーが長持ちして、丈夫で、いつでも(雨の中でも)使えるような防水機能などだ。そして、現在、各社が競い合っている「擬態的機能」は、中核的価値とは関係のない「付随機能」である。
 カメラに「原点回帰」が求められたように、付随機能を取り去ったシンプルなケータイを求めるニーズはないのだろうか。

 シンプルなケータイというとどうしても高齢者向け機種が主となる。例えば、「1・2・3」という短縮ボタンが付いているような。さすがに高齢者であるという自覚がなければそれを持ち歩くのは抵抗がある。一方、当の高齢者はすっかりケータイに目覚め、それこそ「撮影→送って共有」という使い方をするため高度なカメラ機能や、孫と「デコメ」を楽しむというような使い方を求めて高機能ケータイへの買い換えが進んでいるという。
 年代で「シンプルを求める、求めない」というセグメントをすることが間違っているのではないだろうか。

 どんなに消費者ニーズという環境が変わっても、付随機能を取り去った中核的価値は変わらない。また、シンプルにそれだけを求める層もなくならないはずだ。ひたすら多様で高機能化したコンパクトデジカメとは別に、デジタル一眼やトイデジが原点回帰をしているように、ケータイも軸足に重きを置いた機種をもっと出してもいいのではないだろうかと思った。

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2009.11.25

「洗濯機市場」のガラパゴス化?・・・に学ぶもの

 インターネットリサーチの株式会社アイシェアが洗濯機に関する調査報告を発表した。
 <洗濯機の新製品価格に物申す!>
 http://release.center.jp/2009/11/2401.html

 調査結果によると<本音が見えた!?女性の9割「洗濯機の新製品は高い」!~使用者の7割が!現在使用中の洗濯機に「不満がある」>という。家電メーカーの担当者にはショックであろう。
 「不満」が7割とする内訳は<使用中の洗濯機に「とても満足している」人は25.3%と少数。「おおむね満足している」が59.4%と高く、「満足していない(15.3%)」を合わせると74.7%もの人が、何らかの『不満がある』とした>である。
 「おおむね満足」=「何らかの不満足の表明」としているので数字の解釈は微妙だが、「不満足理由」の選択肢には全員が回答しているので確かに不満はくすぶっているのかもしれない。その不満点の主なものは<最も多かったのは「運転音がうるさい」の37.2%。以下「洗濯時間が長い(27.3%)」「水の使用量が多い(21.5%)」「洗濯物が絡まる(20.3%)」の順>だという。意外にも基本的な部分での不満足が多い。

 不満によってすぐに買い換えるかというと<現在洗濯機の購入または買い換えを「考えている」人は回答者全体の18.3%>と、必ずしもそうではない。景気の停滞による節約志向が買い換えを躊躇させているのかもしれない。
 調査項目である「新製品の価格に対する評価」も関連しているだろう。<「とても高い」と答えた人は39.1%、「少し高い」は45.2%で、合計84.3%もの人が『高い』と回答。「ちょうどいい」は14.5%で、『安い(「少し安い」「とても安い」の合計)』はわずか1.3%>であるという。

 一般に製品の価格は機能を機能向上によって比例して高くなる。自動車の価格が安全基準の高度化によって車体の大型化とともに高くなっていったのと同じだ。自動車は若年層の「クルマ離れ」といわれて久しいが、原因はケータイやゲームなどに興味が移ったことよりも、車体価格の高騰によって手が出なくなったという意見もある。生活必需品の洗濯機が買われなくなることはないが、買い換え年数の伸長の原因にはなるだろう。自動車の使用年数はついに8年を超えたようだ。上記の調査によれば洗濯機も10年越えで使用している人が18.1%いるという。

 調査では「とても満足している」という25.3%の満足理由が示されていないのが残念なのだが、洗濯機の高機能化はどの程度支持されているのか気になるところだ。携帯電話は通信機キャリアからの販売奨励金の廃止に伴う販売方式の変更で、端末価格が高くなった。ユーザーが容易には機種変更ができなくなった。それと同時に、「機能満載でなくてもいいからもっと安い機種を」と望む声も徐々に高まっている。使わない、使いこなせない機能も多すぎるとの不満の声も少なくない。

 「バリューライン」という考え方がある。横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取る。すると、「安くてそれなりの価値のもの(エコノミー)」「そこそこの価格で、ほぼ妥当な価値のもの(中価値)」「高くて価値の高いもの(プレミアム)」という比例した関係が出来上がる。これがバリューラインだ。
 洗濯機や携帯電話は現在、「プレミアム」に集中しているのではないだろうか。回転式・ドラム式・乾燥機能付とタイプがあり価格も様々であるが、7万、8万、10万円越えから20万円近いものまである。

 もし、消費者がその価格を嫌ったらどうなるか。
 世界の家電市場におけるいて、白物家電は既に日本のお家芸ではない。白物家電のうち、冷蔵庫と洗濯機の世界シェア№1は、昨年から中国のハイアール・グループが握っている。白物家電全体でも2004年から世界第2位である。洗濯機は日本でソフマップなどが扱っている。価格は2万円を切るものから3万円ちょっととかなり安価な「エコノミー」価格である。洗濯機のハイアールだけでなく、日本の家電市場においては安価な外国勢がぐっと存在感を増している。

 バリューラインを考えた時、競合に勝つには「バリューラインを超える」ことが必要だ。つまり、「価格以上の価値」を提供するのである。例えば「低価格なのに中間価格と同等の価値=グッドバリュー」「低価格なのに高価格のものと同等の価値=スーパーバリュー」という存在になる。
 価格.comなどで、ハイアールの洗濯機の評価を見ると、「騒音が大きい」というような意見が散見される。騒音はアイシェアの調査でも37.2%と一番の不満要因である。一方で、評価では「価格なり」とあきらめる意見も多い。それ以上に価格の安さと機能のシンプルさを評価する意見が多いのである。つまり、「安くてそれなりの価値のもの(エコノミー)」としてのポジションをしっかりと確立しているのである。

 もし、日本の家電メーカーが同等の価格で不満要因を解決できれば、「グッドバリュー」のポジションを獲得できるだろう。そうした戦い方はできないのだろうか。
 この洗濯機の例は一つの象徴ではないだろうか。高機能化と高価格化を進めるだけでなく、もっと「引き算」をしながらバリューラインを超えることを狙うような戦い方が。

 今年は「種の起源」を著わしたダーウィンの生誕150周年にあたり、ちょっとしたブームだ。彼が研究した、隔絶した南海の孤島における独特の進化になぞらえて、世界に通用しない日本独特の製品開発を「ガラパゴス現象」などと呼ぶ。少子高齢化の進行で縮む日本市場においていかにそれが危険か警鐘を鳴らす識者は多い。
 問題は、日本市場への「引きこもり」だけに留まらない。
 ガラパゴス島は、近年、海水温の上昇によって海草が枯れる「海焼け」が進行し、海イグアナが絶滅の危機に瀕しているという。それだけでなく、地球温暖化の影響は枚挙にいとまがないようだ。独特の生物を脅威に追いやるのは、より生命力に富んだ外来種の影響も大きいという。

 足し算に足し算を重ねた日本独自仕様の製品は洗濯機だけではないはずだ。
 経済的要因をはじめとした外部環境は、ユーザーニーズにどのような変化をもたらしているのか。競合となる存在は、日本市場にどのように展開しているのか。競合はユーザーニーズをどのように捉えているのか。ごく基本的なマクロ環境分析と競合環境分析でも分ることは多いだろう。

 快進撃を続けるファーストリテイリングの柳井会長兼社長は<「世の中には(価格が)高くて良い服と、安くて悪い服しかない」という常識を打ち破り、安くて良い服を作ろうと思った。>とその原点を語っている。(日経フォーラム世界経営者会議・日経新聞09年11月25日朝刊)。
 バブル崩壊によって衣料品市場は30%以上市場縮小している環境下で、ユニクロは大胆な「引き算」による「エコノミー戦略」で低価格を実現し、品質を徹底的に高めることで、「グッドバリュー戦略」に転換し、機能性を付加し、さらにファッション性を高めるという価値向上で現在は「スーパーバリュー」のポジションを獲得している。

 日本市場は、消費者はどのように変容しているのか。そして、押し寄せる競合の脅威はどうなのか。周囲をもっとよく観察すれば、生き残りのための示唆はもっと得られるのではないか。

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2009.11.24

「花畑牧場」ブランドの価値とは何か?

 2007年の「生キャラメル」発売以来快進撃を続けてきた、タレントの田中義剛氏が経営する北海道の「花畑牧場」が、8月末の工場閉鎖に続いて店舗網の縮小を始めたようだ。

<ついにハジケ始めた田中義剛花畑牧場バブル>(livedoorニュース・ゲンダイネット091122)
http://news.livedoor.com/article/detail/4464115/

 ニュースを受けてネット上では、メディアでの田中氏の商品宣伝への反発から「メシうま(他人の不幸で飯がうまい)」的な反応が相次いでいる。そして、「急拡大しすぎで当然」「北海道限定でなければ意味がない」といった意見も散見される。

 果たして、事業としての成否は分らない。前掲の記事によれば、売上げは<09年3月期は143億1500万円>だったという。このまま事業を漸次撤しても、高い商品価格を設定して早期に投資を回収して利益を残す「スキミングプライシング(上澄み吸収価格)」を基本とした戦略であったかもしれないからだ。但し、それにしてはネット上の指摘通り業容を拡大しすぎているように思えるが。

 事業の成否はともかく、「花畑牧場ブランド」に対する消費者のイメージが大きく変容していることは確かだ。
 今年1月にコア・コンセプト研究所・大西宏氏がBlogにて出張の折、千歳空港で目にした「花畑牧場生キャラメル騒動」を目にして<大丈夫だろうか?花畑牧場>という記事を掲出していた。
http://ohnishi.livedoor.biz/archives/50891288.html
<まるで花畑牧場が千歳空港ロビーをジャックしたようで、ちょっとイメージの過剰さを感じてしまいます>といい、さらに<花畑牧場生キャラメルカフェやホエー豚亭でセットメニューをオーダーすれば、そこのレジですんなり並ばずに生キャラメルを購入できるというのは、2階ロビーの人の列はなになのかという疑問を感じてしまいます>と記している。
 同氏は1月の時点で<ブランドとして離陸の段階から維持継続、さらに成長と進化の段階に入ってきていると思えます。この切り替え、戦略シフトができるのかが今後の焦点になってくるのではないでしょうか>と分析している。

 花畑牧場が選んだブランドとしての「維持継続、さらに成長と進化」は「東京進出」という結論であった。<花畑牧場は2月に東京に進出し、渋谷、青山、銀座など8カ所で直営店をオープンさせた>(livedoorニュース・ゲンダイネット)。その事業内容は、カフェやホエー豚メニューの展開であり、生キャラメルとの抱き合わせ販売には、前掲の大西氏同様に多くの消費者が違和感を持って度々ネットでも指摘されてきた経緯がある。
 やはり「急拡大によるブランド価値の希釈」という側面は否めないだろう。
 さらに、東京進出には規模の拡大と北海道限定の希少性がトレードオフされた点も否めない。

 一方、頑なに北海道限定にこだわる同ブランドには例えば、石屋製菓の「白い恋人」がある。その「白い恋人」及び「石屋製菓」には2007年にブランド存亡の危機から復活した経緯がある。消費期限を1ヶ月先延ばしに改ざんした問題で販売停止となったのである。同社は経営者の交代や再発防止策の励行によって100日後に販売を再開したが、その際、再開を待っていたファンが殺到し各店舗で即日完売。以後、しばらくは品薄が続いたという。(出典・Wikipedia)

 ブランド論の大家、デビット・A・アーカーによれば、「ブランド認知の資産価値」はまず、「Evoked set(想起集団)」に入ることであるという。そのブランドを「知らない」(未知)→「知っている」(認知)という段階を経て、「意識している」(想起)という段階に至る。そして、「○○ならこれと決めている」という「トップ・オブ・マインド」の獲得が最終ゴールである。Evoked setとは顧客のマインドシェアを獲得できている「想起」状態のブランドと「トップ・オブ・マインド」のブランドを併せてせいぜい3つであるとされている。

 では、「白い恋人」はどのようなカテゴリーのEvoked setに入っているのだろうか。もしくは、トップ・オブ・マインドになっているなら、「○○ならこれと決めている」の○○とは何なのだろうか。それは紛れもなく、「北海道土産」というカテゴリーである。マルセイバターサンドやチョコレートが人気の「六花亭」も同様に、北海道土産というEvoked setに入っているのは間違いない。特に石屋製菓と白い恋人は「北海道土産としては欠かせない」という顧客の支持があってこそ、100日という異例の早さで完全復活を遂げることができたのである。

 では、白い恋人や六花亭のチョコ、バターサンドが、それに「勝るほど美味しいお菓子はない!」というほど絶品であるかといえば、筆者は決してそうは思わない。個人の感覚によるだろうが、もっと美味しい菓子はいくらでもある。しかし、商用や旅行で北海道を訪れると必ず買ってしまう。それはなぜか。
 アーカーによれば、ブランドには「顧客が認めている、その製品ならではの価値」があるという。「知覚品質」という。客観的に測定可能な価値を「工場品質」という。「知覚品質」とは、それに対して顧客の頭の中にある主観的な評価だ。
 菓子の味に測定可能な絶対値を求めるのは難しいが、それでも比較対象して多くの人が美味しいという菓子は他にもある。それでも「白い恋人」や「六花亭」を評価するのは、「北海道ならでは」という「知覚品質」を買っているのである。
 「花畑牧場」が東京進出して全国区のメジャーブランドという知名度を手にして、その代償として失ったものは、一つは北海道土産としての「知覚品質」ではなかっただろうか。

 では、「北海道土産」ではないとしたら、「花畑牧場」はどのようなEvoked setに入っているのだろうか。それは、もしかすると「流行りもの」というカテゴリーかもしれない。
 流行りものは廃れるのも早い。流行りものは「一度は味わってみよう・買ってみよう」という一見客は集められても継続顧客化することは難しい。「知覚品質」も、「流行りもの」という前提条件の下で評価されてしまう。
 一方、北海道土産というEvoked setに入っている 「白い恋人」や「六花亭」は、北海道に行くたびに買ってしまうという継続顧客を生む。さらには、「北海道に行く」という人に「買ってきて!」とリクエストする人も囲い込む。

 前出の大西氏の指摘にある、花畑牧場の「ブランドとして離陸の段階から維持継続、さらに成長と進化」は容易な道ではないように思われる。
 

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2009.11.20

ペットボトル入り「ボージョレー・ヌーヴォー」飲みましたか?

 11月第3木曜日、つまり昨日はボージョレー・ヌーヴォーの解禁日であった。そして、デフレ時代に「出るべくして出た」という感のある「ペットボトル入りボージョレー・ヌーヴォー」も発売された。果たして販売成果はどうだろうか。

 <今年のボージョレーはペットボトルでお財布に優しい!>(日経トレンディネット09/11/18)
 http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/news/20091118/1030302/

 記事によれば<(ボージョレー・ヌーヴォーの)市場規模は2004年をピークに減少傾向となっている。08年は金融危機の影響もあり、約55万箱と前年比81%(財務省関税局貿易統計発表)>と大幅な落ち込みを見せるている。そんな中、「デフレを商機とせよ」とばかりに流通各社は反転攻勢を仕掛けている。
 西友は<昨年も1279円という低価格で発売し、販売数量が前年対比40%増を記録>したという成功体験を元にさらなる低価格化を断行。今年は890円という価格を12日に発表した。さらにイオングループが980円、ドン・キホーテも880円で参戦してくると、西友は18日には価格を780円に値下げすると発表した。何やら低価格ジーンズ戦争のプレイヤーがジーンズをワインに替えて同様に熾烈な価格競争を演じているのである。

 低価格化のヒミツはペットボトル詰めだ。<ペットボトルはガラス瓶に比べて軽量なので、空輸の輸送費が削減できる>(前掲誌)という。
 <通常、ボージョレー・ヌーヴォーは2000円以上の出費を覚悟しなければならないが、(中略)1000円でお釣りがくるのなら、「今年は飲んでみるか」と消費者の財布のひもが緩むかもしれない>(同)というが果たしてどうだろうか。

 インサイトナウ(http://www.insightnow.jp/)のビジョナリーで株式会社戦略調達 代表取締役社長 中ノ森 清訓氏が同テーマの寄稿をしている。
 <イオンのペットボトル入りボージョレ・ヌーボはヒットするか?>
 http://www.insightnow.jp/article/4539

 同氏は<焼酎や日本酒では、ペットボトルや紙パックが一般的です。また、格式張らずに気軽にワインを楽しむがぶ飲みワインや家で飲む家飲みといったスタイルが広がりつつあります。グラスに気を遣えば、ペットボトルや紙パックからでも、雰囲気を損なう事なくお酒を楽しめます>としている。さらに、<すべてのガラス瓶をペットボトルや紙パックに置き換えるべきとは思いませんが、雰囲気よりも環境負荷の低減に価値を置く消費者にも選択肢を提供する。商品の提供者としては、消費者のニーズを後追いするばかりでなく、新しい価値を示していく事がその使命と考えます>としている。

 デフレで消費者は低価格志向を強めている。加えて内食化、家飲み(宅飲み)が進み、オシャレなレストランやワインバーでボージョレーの解禁カウントダウンに合わせて栓を抜くなどといったこともなくなっている。だとすれば、激安・ペットボトル入りボージョレー・ヌーヴォーは大ヒットするのだろうか。

 筆者は今回の「ペットボトル入りボージョレー」は不発に終わるのではないかと懸念している。理由は2つある。

 「ボージョレー・ヌーヴォー」を飲むのは、「コト消費」である。年に一度の「ハレの日消費」でもある。それが例え家飲みであったとしてもだ。「ケの日消費」として日常的に紙パックのワインを飲むのとは意味合いが違う。
 日経トレンディネットは<初めての人や、バブル期以来のカムバック組が購入に動くか注目だ>と予想している。
 実は2009年のボージョレー・ヌーヴォーは相当に出来がいいらしい。All Aboutの記事によれば<2009年は春の穏やかな気候と暑い夏で、ブドウは上出来。久しぶりによく熟した、ボジョレの本当の「当たり年」である>という。
5秒でわかる!ボジョレ2009年の出来(09/10/25)>
 確かに「初めての人」であれば、激安ペットボトル入りで手軽に試すチャンスかもしれない。しかし、ボージョレーブームが去って久しい今日、「上出来」という記事の露出は少なく、初心者に伝わっているかは怪しい。
 では、「バブル期以来のカムバック組」はといえば、まさに「雰囲気重視派」であろう。ヌーヴォーをのむということが「ハレ消費」であり「コト消費」であることをよく知っている層である。1000円以下のペットボトル入りヌーヴォーでは何か寂しさを感じはすまいか。「上出来」という情報を知っていれば、せっかくだから多少値のはるものでも買ってみようかとならないだろうか。

 もう一つの理由は、価格の安さだけを訴求している売り方だ。
 前出の中ノ森氏は<ペットボトル入りワインは、コスト削減と環境負荷低減を両立する、正にLeanでGreenな商品ですが、なかなか普及していません>と問題提起し、その理由を<消費者が、環境負荷の低減を価値としてまだ余り認めていないからでしょう>としている。
 激安戦線のプレイヤーのうち、唯一イオンはプレスリリースにて<(ペットボトル入りボージョレー・ヌーヴォーは軽量化により)空輸の際に燃料が削減され、CO2の抑制効果がある「エコ」に優しい商品でもあります>と環境負荷軽減効果をうたっている。西友とドン・キホーテはエコ訴求をしていない。
 中ノ森氏は<イオンのペットボトル入りボージョレ・ヌーボがヒットするか、環境調達が普及するかは、我われの民度に比例すると予想されます>としているが、消費者に十分響くようには訴求できていないように思える。
 さらに、そのエコ効果もどれほどのものなのか釈然としないのも気になる。「フードマイレージ」。食糧輸送距離と訳せばいいだろうか。食糧輸送距離=輸入量重量×輸送距離なので、確かにガラスビン入りとペットボトル入りならイオンのリリースのようにペットボトル入りに軍配が上がる。しかし、フランス南東部からわざわざ運んでくる距離は変わらない。重量軽減で確かに輸送費削減効果はあるようだが、CO2削減効果はよく分らない。

 「雰囲気」では上記のようにガラスビン入りに軍配が上がる。「価格優位性」はペットボトル入りが明らかに安い。「エコ効果」はよく分らない。単純な星取りでは判断できないが、1勝1敗1分けである。絶対的な優位性はない。
 消費者が商品を購入する理由を「KBF=Key Buying Factor」という。そして、そのKBFを組み合わせて、その製品の魅力を訴求する切り口である「ポジショニング」を定める。例えばエコ効果が実証できていれば、ペットボトル入りボージョレー・ヌーヴォーは、「安くてエコにいい!」と訴求できる。しかし、それはどうやらいえないように思う。だとすると、明確に言えるのは「安い」ということだ。イオンのリリースではボトルは<一見では瓶入りと区別がつかないほどの出来映え>だという。だとすれば、「安いのに普通の瓶と代わらない雰囲気」が魅力を伝えるポジショニングだろうか。

 何やら決め手に欠けるポジショニングと、誰が買うのか分らないターゲティングで、熱い価格競争をしている各社とは逆に妙に醒めてしまうのは筆者だけだろうか。

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2009.11.19

低価格「ハンバーグ専門店」隆盛のヒミツを考える

 外食各社が低価格「ハンバーグ専門店」の出店を加速しているという。
 <低価格「ハンバーグ専門店」続々 「薄利多売」大都市で顧客開拓>(09/11/17
Fuji Sankei Business i)
 http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200911170022a.nwc

 記事によれば< 居酒屋チェーン「甘太郎」を運営するコロワイドは、今年5月、ハンバーグ専門店「ハンバーグ大魔王」の1号店をさいたま市にオープン>、「デニーズ」などを運営するセブン&アイ・フードシステムズが<8月にハンバーグ専門店「ぐーばーぐ」を東京・四谷に出店>、<カレー店「CoCo壱番屋」を展開する壱番屋も、来年3月、ハンバーグ専門店の1号店を愛知県内に開設する計画>とまさに開店ラッシュの様子を伝えている。
 低価格の秘密は<メニューの絞り込みによる食材の一括大量購入や調理簡素化などのコスト削減で、単品価格は500円程度の低価格を実現>であるとして、節約志向を強める家族を狙うとある。そして、中華の「日高屋」、イタリアンのサイゼリアを例にして<「なんでも屋」のファミレスなどが軒並み集客に苦戦する中、ターゲットを明確にした専門店の出店が広がりそうだ>と分析している。

 しかし、そもそも、何でハンバーグなのだろうか?

 かく言う筆者も大のハンバーグ好きである。1969年から1970年まで、フジテレビ系で放映されていたタツノコプロのアニメ「ハクション大魔王」。主人公の大魔王の好物であるとして描かれていた、大皿に山盛りにされたハンバーグにあこがれたものだった。その記憶を持つ人は多いようで、前出の「ハンバーグ大魔王」のキャラクターはもろに「ハクション大魔王」で、店頭で等身大の人形が来店客を迎えている。つまり、高度成長期以来、日本人はハンバーグが大好きになっていて、もはや国民食になっているのである。記事の分析のように、ファミレスのように「何でもあります」とメニューを広げるよりも、ピンポイントでみんなが大好きなハンバーグに集中すれば食材の集中仕入れもでき、さらに廃棄率も低減できる。故に低価格で提供できて集客が見込めるという好循環が期待できるのだ。

 しかし、内食化を高める今日の消費環境において本当に繁盛するのだろうか?

 実は、みんなが大好きなハンバーグには、大きなニーズギャップが存在するのである。Googleで「ハンバーグ 難しい」と検索してみよう。約712,000 件がヒットする。「焼き方が難しい」とするBlogのエントリや掲示板のコメントがズラリと並ぶ。そうなのだ。ハンバーグは外側をこんがり、中をジューシーに焼き上げるのは意外と難しい。中途半端な加熱だと、中の肉がまだ赤いままになってしまう。
 国立情報研究所に補完されている論文「ハンバーグステーキ焼成時の内部温度 : 腸管出血性大腸菌O157に関連して(第4報) : 一般家庭におけるハンバーグステーキの焼成方法に関する実態調査」( http://ci.nii.ac.jp/naid/110001167084 )によれば、多くの家庭での調理方法では加熱不十分で危険な状態であると指摘している。
 かといって、これでもかと加熱してはポロポロのパサパサでジューシーのかけらもなくなってしまう。

 その解決策として急速に普及しているのが「煮込みハンバーグ」のソースである。
 <「料理の腕をカバーできる」煮込みハンバーグの市場拡大>(09/11/08 oricon)
 http://gourmet.oricon.co.jp/70442/full/
 ソースメーカのハインツによれば<「市販の焼きハンバーグ用ソースが縮小するのに対し、煮込みハンバーグソース市場は前年比113%と大幅な拡大傾向にある」状態>だという。その理由として<同社の調査によると焼きハンバーグの調理を不安に思っている主婦は多く、「生焼けになりにくい」、「焦がしにくい」という理由から煮込みハンバーグを選ぶ人が増えている>と分析している。

 失敗はしないかもしれない。でも、やっぱりハンバーグはジュワーッと肉汁がこぼれる「焼き」で食べたい!
 「煮込みハンバーグは邪道だ」と、ここで筆者としては断じるが賛同してくれる人は多いのではないだろうか。そこで、「専門店」の出番なのだ。

 外食産業不振の中で登場した低価格ハンバーグ専門店。内食傾向はさらに強まるかもしれないが、たまに外食もしたくなるのは否めない。そんな時、特別な料理ではないけれど、意外と家庭で作るのは難しいハンバーグを、家庭で一から具材を揃えて作るのとたいして代わらないぐらいの価格で提供することができれば、それは大きな商機となる。
 厳しい時代こそ、消費者のニーズギャップに注目してピンポイントで勝負をかけることが大切なのである。

 

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2009.11.17

”To Be Or Not To Be”アサヒビールはどこまで踏ん張るか?

 昨日、当Blogで居酒屋デフレ戦争・「全品均一価格」店隆盛の意味するものは?を公開したあと、日経MJ紙で同様に「全品均一価格居酒屋」の記事を発見した。2009年11月16日15面・ふーど記”発泡酒「樽」7年ぶり復権”とある。
 記事によれば今年1~10月の「樽(たる)・タンク」の販売が増えているという。その理由は低価格均一居酒屋であり、同価格でたっぷり提供できるため、ビールより発泡酒が選ばれた結果だという。

 ビールから発泡酒へ。その動きにビール大手4社の中で唯一抗っている存在がある。アサヒビールである。同社は発泡酒も第3のビールも「樽」で展開していない。取引先の料飲店からのプレッシャーは想像に難くない。それでもアサヒビールが踏ん張るのはそれは主力商品「スーパードライ」を擁する同社の矜持の現れでもある。

 「スーパードライ」の歴史をひもといてみよう。
 アサヒビールは1980年代半ば、ビール市場シェアで10%を割り込む存亡の危機を迎えていた。反転攻勢は1987年の「スーパードライ」の上市ではじまった。「ビールはキレです」と従来にない価値観を訴求しわずか1年、1988年に一気にビール市場のトップシェアを奪取。同88年から89年にかけて各社が追随し、「サッポロドライ」、「サントリードライ」、「キリンモルトドライ」を上市して激しさを極めたいわゆる「ドライ戦争」も制して、揺るぎないビール市場のリーダーの地位を確立したのである。

 スーパードライに注力し、ビール市場を牙城とする。「アサヒはドライ一本、ビールのみで勝負する」と宣言したアサヒであるが、デフレ不況の中、消費者が安価な発泡酒支持を強める動きを無視することはできなかった。2001年、「本生」でついに発泡酒市場に参入した。
 発泡酒参入以降、アサヒは「スーパードライ」の中核的価値である「”キレ”の呪縛」にはまっている。2位転落の憂き目を見たキリンは発泡酒「淡麗<生>」、そして第3のビールでも「キレ」を武器にシェアを拡大した。アサヒは同じ「キレ」を訴求すると、低価格な発泡酒や第3のビールがスーパードライとカニバリゼーション(共食い)を起こすことを避けるために市場のトレンドではない「コク」を訴求せざるを得ない。それが「呪縛」である。

 料飲店に対して頑なに発泡酒「樽」を展開しないのは、「スーパードライ」のブランド価値を守りたいためだ。料飲店で顧客が例えば「本生」をジョッキで飲んで「発泡酒でも十分美味しいじゃん!」と思うようになれば、自らスーパードライの命脈を断つことになってしまう。何としてもそれは避けたい。
 ビールにおいて、料飲店は品揃えが上位ブランドに集中する。その結果、スーパードライで料飲店市場の1/3占有しているともいわれていた。まさにアサヒの牙城でありドル箱だ。その市場が発泡酒に置き換わり始めている。

 さらに気になる動きもある。日経MJの記事はさらに今後、主戦場は発泡酒からより安価な第3のビールに移る可能性も示唆している。サッポロビールが9月末に「麦とホップ」の樽詰めを全国発売したからだ。均一価格居酒屋では、ビールは通常店で400mlのところ、300ml。発泡酒なら500mlの大だという。記事では「低価格均一価格居酒屋に第3のビールによる特大ジョッキが登場するかもしれない」と予想している。
 サッポロビールの「麦とホップ」は「麦芽2倍で、ますますビールと間違えるほどのうまさへ」とのキャッチコピーで売り出している。CMキャラクターの田村正和も「私には、ますますビールです」と言う。ビールに命を賭けるアサヒには恐らく我慢のならないコピーであろうが、市場の評判は悪くない。

 わずか1年でジリ貧の状態から「スーパードライ」で奇跡のトップシェアを奪取した成功体験が、その後の動きを鈍らせているわけではないだろう。
 『お客様のさらなる「うまい」のために』が、スーパードライの「挑戦」だという。妥協せず、料飲店では自らの信じる最高の味、「スーパードライ」を提供し続けることが、アサヒビール自身の「挑戦」なのだ。この戦いは攻めの挑戦ではない。どこまで踏ん張れるかという挑戦である。その挑戦の行方から目が離せない。
 

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2009.11.16

居酒屋デフレ戦争・「全品均一価格」店隆盛の意味するものは?

 アルコールを含む「全品299円」などの「低価格・均一価格居酒屋」が急増しているという。居酒屋業界は今後どうなっていくのか。

 <居酒屋チェーン全品300円以下均一価格の居酒屋急増。進む居酒屋のデフレ化>(Fuji Sankei Business i)
 http://www.business-i.jp/news/flash-page/news/200911140109a.nwc

 記事を見ると<料理やアルコール類を全品300円以下の「均一価格」で提供する居酒屋が急増している>という。

当Blogで今年の2月下旬に東京ウォーカーの記事を元に、「全品均一価格」ではなく、「激安」居酒屋に関するコラムを掲載した。
 <「損して得取れ」・激安居酒屋の価格戦略に学ぶ>
 http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2009/02/post-f71f.html?no_prefetch=1

 鮮魚の刺身10円、焼き鳥1本50円、手羽先5本399円という価格で料理を顧客に提供する、ある激安居酒屋の価格実現の秘密を、東京ウォーカーは<馴染みの業者から特別に仕入れている>と報じていた。
 激安の秘密は実は比較的簡単だ。激安メニューは利益が出なくとも販売する「ロスリーダー」商品である。「ロスリダー・プライシング」で損を覚悟で目玉商品を用意して客を呼ぶ。そして、利益の出る価格設定をしたほかの商品を併売して目標利益を達成する「マージンミックス」を図っているのだ。

 均一価格でも、メニューによって原価率の違いはあり、その組み合わせでマージンミックスも当然図っていると考えられる。しかし、価格の上限があることは極めて厳しい。それ故、「激安メニューがある居酒屋」と「低価格均一価格居酒屋」のビジネスモデルとしての違いは大きい。

 Fuji Sankei Business iの記事では、「均一価格」実現の事例を紹介している。居酒屋「甘太郎」などを展開するコロワイドは新業態店「うまいもん酒場 えこひいき」で均一価格居酒屋に参入。均一価格実現手段の一つは食材の一括大量仕入れだという。

 低価格な仕入れの実現でも、単独店舗が独自の仕入れルートを活用することと、チェーン店では意味が大きく異なる。一括購入は、大量仕入れによるボリュームディスカウントが効く反面、素材の「品質」「価格」「量(を確保した納期)」の安定も重要となる。いわゆるQCD(Quality・Cost・Delivery)である。「均一価格」を実現したということは、揺るぎないQCD体制が確立されていることを意味する。

 素材の仕入れ価格もさることながら、人件費をどう押さえ込むかも重要だ。一般に居酒屋の原価率でいえば、原材料30%、人件費25%程度であるという。原材料を押さえ込んでも人の効率を上げなければ、規模化することによって厨房やホールが混乱し、むしろ無駄が出かねない。そこを<タッチパネル型の無線注文システムの採用で人件費を圧縮した>という。恐らく、タッチパネルだけではなく、オペレーションの隅々まで効率化を図りマニュアル化をしたのではないかと推測できる。

 上記のような経費の低減化が均一価格による効果かといえば、そればかりではない。
 <支払額がわかりやすいため、景気悪化で懐の厳しいサラリーマンを中心に人気を集めている>(Fuji Sankei Business i)という。昨今の仕事帰りの一杯における「予算を決めて飲みすぎず、さっさと切り上げる」という風潮とズバリマッチしているのである。つまり、さっさと切り上げてくれれば、「回転率」が高くなる。

 利益=売上-原価だ。原価は原材料も人件費も低減化を図る。そして、売上げ=客数×客単価である。
 激安居酒屋はマージンミックスによって最終的には客単価向上を狙っている。しかし、とかく呑みの席は時間が経つに従って、料理の注文はストップし、アルコールの消費もペースが落ちる。それよりは、分りやすい価格で予算上限までササッと呑んで帰ってくれる客を狙った方が効率がいい。つまり、均一価格の実現は「コストの低減化」だけではなく。「高効率化」が車軸の両輪なのである。そうして考えてみると、人件費も単に削減しているのではなく、少ない人員でオペレーションするという「高効率化」を目指していることが分るのだ。

 飲食業は極めて参入障壁が低い業種である。それ故、いままで大手居酒屋チェーンが店舗数を拡大しても、個人や中小零細企業が営む居酒屋も共存できていた。
 その業界に、大量にQCDを保って原材料を低廉に仕入れ、さらに人件費を効率化するオペレーションを確立して、支援システムを装備するという、極めて高い参入障壁を持った勢力が拡大している。しかもそれは、顧客の求める「明瞭な価格設定」と「長居しない」という志向にピッタリとマッチしている。

 Fuji Sankei Business iは<日本フードサービス協会によると、パブ・居酒屋の全店売上高は9月まで9カ月連続で前年実績を割り込んでいる。集客増を狙いに「居酒屋のデフレ化」が進みそうだ>と記事を締めくくっている。
 誰でも始めることができる。しかし、続けることが難しい居酒屋業界の風景が確実に変わり始めている。

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2009.11.14

「世界のキッチンから」が連続大ヒットを狙っている!

 絶対外れない・当るレースを「鉄板レース」と競馬ではいい、絶対に外さない・ウケるネタを「鉄板ネタ」とお笑いではいう。では、絶対外さずにヒットする飲料は、さしずめ「鉄板飲料」とでも呼べばいいのだろうか。

 「世界中のお母さんの知恵をヒントに、日本人の味覚にあうように“ひとてま”加えたおいしさをお届けするブランド」という独特のポジショニングで人気の飲料、キリンビバレッジ・「世界のキッチンから」。<1-9月のブランド全体の販売実績は前年の約5割増と好調に推移>(同社ニュースリリース)しているというからこの時代に大変な売れ行きである。
 品目別の発表はないが、恐らく牽引車は「とろとろ桃のフルーニュ」である。乳飲料でありながら、桃の香りが鮮烈で、マンゴーの甘みがやさしいその味わいに魅せられたファンは多い。昨年3月に発売された商品を今年3月にリニューアル販売したのだが、一気にブレイクした。本来、世界のキッチンからは各商品とも期間限定なのだが、あまりの人気に限定期間を終了することができずに未だに生産・販売を続けているのだ。

 大ヒットとなった「とろとろ桃のフルーニュ」もコンビニの店頭でのフェイス数が減ったり、店舗によっては取り扱いがなくなったりしている状況だ。キリンビバレッジによれば、生産・販売を終了する予定はまだないということであるが、プロダクトライフサイクルで考えれば、成熟期から衰退期へ移行する状況であると考えられる。
 ヒット商品が、追加のマーケティングコストをかけずに粛々と売上げを上げている「金のなる木」状態にある間に、次世代「スター」を目指す「問題児」を上市するのがポートフォリオマネジメント(PPM)の基本。そして、「世界のキッチン」が世に送り出すのが「グレープフルーツビネガー&ミルク」。11月17日発売である。

 この新商品、まさに確実なヒットを狙った「鉄板」であることが、同社のニュースリリースから読み取れる。その狙いと、どのような売り方がなされるかを予想してみよう。

■ターゲットとニーズ
 <当社調べによると、健康素材であるお酢を使用したビネガードリンク市場はここ10年で約8倍に拡大していますが、手軽においしく摂取したいニーズが十分に満たされていないことが分かりました>(ニュースリリースより)
 世界のキッチンからシリーズは、昨今の「ゼロカロリー」や特保に代表される「機能性」とは一線を画した、カロリーはあってもとにかく「美味しい」を追求するコンセプトだ。それは新製品にも継承されることは間違いない。それに加え、「黒酢飲料」などに代表される、「美味しく健康的に飲める」という飲料を求めるターゲットとそのニーズに対応しようとしているのである。

■製品(Product)
 前述のように酢飲料は「黒酢」などがすぐに想起されるが、新商品は<グレープフルーツ果汁を発酵させて、オリジナルのグレープフルーツビネガー>を作ったという。さらに<ミルクと合わせて酸味を和らげることで、飲みやすく仕上げ>たという。このような、「新しい味」が世界のキッチンからの真骨頂で、酢飲料ユーザーだけでなく、一般消費者の興味を惹くことも狙っている。

■価格(Price)
 320mlで150円。量からすると、ちょっと高め。しかし、清涼飲料の相場である150円ラインは超えない。手間をかけた高級感と手を出しやすい価格のバランスは、大ヒットした「とろとろ桃」を踏襲したプライシングである。

■チャネル(Place)
 一部、自社ブランドの自販機でも販売するが、コンビニエンスストアを主たる販路とする世界のキッチンからにとっては、店頭の棚をいかにに確保するかで販売が左右される。その意味では「とろとろ桃」の大ヒットは、棚確保が勝利の大きな一因となっていたといえる。スリムボトルの特性を活かし、通常の飲料6本のスペースに7本が置ける。すると、コンビニのオーナーはそれをやってみたくなる。そして、実際に7フェイスを並べてみると実に壮観なアピール力をもった棚が完成する。消費者もつい手に取ってしまうのだ。今回の「グレープフルーツビネガー&ミルク」もその戦術を踏襲することは間違いないだろう。

■プロモーション(Promotion)
 「とろとろ桃」の各種プロモーションの中でも最も小技が効いていたのは、PETボトルに貼付けられていたPOPシールだ。シールは3種類あり、 「おまたせしました」「ますますとろとろ」「とろあまずっぱい」と色違いで展開していた。同じ商品なのに3種類ある。これもコンビニオーナーにアピールでき、最低でも3フェイス並べたくなるのだ。プロモーションも「棚取り」にフォーカスしている。今回、この戦術も踏襲するはずだ。ましてや、今回の商品パッケージは<食卓のテーブルクロス柄をベースに、清々しい爽やかさを表現しています>というように、店頭アピールを強化している。「新しい味わい」「すっきりまろやか」「爽やかに美味しい」などの言葉がパッケージの青いチェック柄に映えるシールの色で展開されるに違いない。

 絶対に売れる「鉄板飲料」と筆者は「グレープフルーツビネガー&ミルク」を分析したが、結果は果たしてどうであろうか。17日発売ということは、コンビニに配荷されるのは18日だろうか。まずは、店頭で会えるのを楽しみにしたい。

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2009.11.12

「巣ごもり消費」の商機をとらえろ!:ハインツの内食対応に学ぶ

 テレビゲーム・インターネット・通信販売・自宅での食事などに関連した消費が活況を呈している。いわゆる「巣ごもり消費」である。関連した株の上昇を期待して「巣ごもり銘柄」なる言葉も誕生している。では、その市場環境の変化を商機とするにはどうすればいいのだろうか。

 「巣ごもり消費」は昨秋の米国発の世界的な経済危機以降から注目されたキーワードであるが、一方でここ20年程度をかけて緩やかに育ってきたトレンドだという説もある。(※1)バブル崩壊以降、華美な生活への反省と、「賢い消費者」であろうとする傾向が節約志向の高まりに行き着いたと考えれば確かに納得感のある話である。さらにここ10年あまりで急速に高まった環境意識と、その象徴的なキーワードである「もったいない」も堅実消費を後押しする要因になっているかもしれない。
 「巣ごもり」して「堅実消費」する姿の筆頭が「内食」であろう。スーパーでは安価な食材の「もやし」が品切れする店が続出したり、土鍋がブームになったりとその傾向が一層明確になっている。

 米国での面白い事例がある。「キャンベルスープ」の話だ。
 キャンベルスープは世界120ヶ国で販売されている米国の代表的なスープ缶である。その赤と白のパッケージはアンディー・ウォーホールの作品でも有名だ。1929年に起こった世界恐慌の当時、多くの米国人がキャンベルスープをすすって飢えをしのいだという話もある。
 その世界恐慌と今回の経済危機を重ね合わせて、一部の投資家がキャンベルスープの株を買い入れた。しかし、2009年4月時点で同社のスープの売上げは15.5%も減少したという。(※2)米国株式市場の最新情報を伝えるMarketWatchは、より安価で簡便な電子レンジ食品の存在を挙げ、「1930年代と今日では状況が異なる一つの証左である」としている。

 では、日本はどうだろうか。当然、単純に缶スープをすすって飢えをしのぐことはしないだろう。かといって、簡便な電子レンジ食品だけで内食を済ますだけの姿も、現在のトレンドからは見えない。
 その一つが「内食ブームで調理具にこだわる主婦が増えている」という事例からも見える。(※3)東京・浅草のかっぱ橋道具街でプロ用調理器具を買い求めに来る主婦が増えているという。内食は節約のためだけの行動ではない。ましてや飢えをしのぐという行為ではない。節約を前向きにとらえ、むしろそれをイベント的に楽しんでいる側面が大きい。

 これは一つの価値観の転換であるといってもいい。かつての華美な消費の時代、様々な外食産業が活況を呈した。贅を尽くした料理を空間プロデューザーといわれた人々が工夫を凝らした店内空間で食した。当時、それはサービスを買う「コト消費」のようにいわれた。しかし、考えてみればそれらは「贅沢な料理」「奇抜な空間」という「モノ」に対価を払っているだけの、実は「モノ消費」だったのではないだろうか。
 では、今日の内食はどうなのか。本当にもやししか食べられないような経済状況ではない人までもが、もやしを買い求める。それは、節約料理のレシピ開発という自分で考えた一つのイベントを楽しんでいるのではないか。プロ用調理器も、単なる日々の食事を作る料理を楽しいイベントに変える道具として購入しているのではないか。だとすれば、「もやし」や「プロ用調理器」というモノは「コト消費」のために購入されていることになる。
 「モノからコトへ」と言われて久しいが、本格的な移行が意外な形で加速しているように思える。

 米国資本の食品メーカーである「ハインツ」の動きが興味深い。ハインツはケチャップが最も有名であるが、スープ、ソース類も主力商品である。
 ハインツの日本法人、ハインツ日本がキャンペーンを展開している。
 「ホワイトソースのレシピ提案 『ほっと!するメニュー』キャンペーンを開始 “巣ごもり現象” で手料理が注目を集める中、ロングセラー商品の価値をあらためて紹介」(※4)ニュースリリースによれば、日本の9割の主婦がホワイトシチューを用いているが、より本格的に作るために「ホワイトソースを用いること」。さらに「ホワイトソースメニューのバラエティーを広げること」などを「提案」している。

 節約志向や巣ごもり消費は待っているだけでは享受できないのは、前述のキャンベルスープの事例で明らかだ。積極的な消費者への働きかけ、提案によってそれを商機としなくてはならないのだ。ハインツの「提案」は、食品メーカーの使い方提案、レシピ提案と考えてしまえば当り前のようにも受け取れる。しかし、「巣ごもり消費」にフォーカスして、それ商機として取り込もうと確実に動いている点には学ぶべきであるといえるだろう。


※1 nikkeiBPnet<「巣ごもり消費」~20年かけて準備されたトレンド2009年3月3日>
   http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20090303/136128/?P=1
※2 MarketWatch<Avoiding the soup line Commentary: Campbell Soup shows investors this is not the 1930s April 6, 2009>
   http://www.marketwatch.com/story/campbell-soup-shows-not-great?dist=msr_2
※3 J CASTニュース<内食」を極めたい! 「プロ用調理具」主婦に人気 2009/11/11>
  http://www.j-cast.com/2009/11/11053701.html
※4 ハインツ日本 ニュースリリース 2009/11/11
  http://prtimes.jp/data/corp/595/3a9b021d33ff21d1a62f0abb8882bd1d.pdf

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2009.11.11

永谷園「生姜部」が高めるブランド価値

 永谷園の「生姜部」をご存じだろうか。同社がコツコツと地道に続けてきた活動が、昨今開花し始めている。

■部門横断・消費者も巻き込んだ生姜部とその覚悟

 「生姜部」とは、永谷園が生姜という素材を究めるために、社内の部門や職位を超えて多種多様の人材を投入し、専用の試験農場を整備し、さらには消費者を「社外部員」として巻き込んで活動している組織である。
 主な活動は生姜を使ったレシピや製品開発であるが、「売上げや利益追求のためではない」と同社は言い切る。それは、<我々は自分達の手で生姜を育てることから始めて、生姜についての知識と理解を深めていく事を決意いたしました。私たち永谷園は『生姜』に本気で取り組み、新しい価値を提供していく事をここに宣言いたします。>(生姜部ホームページ)という、株式会社永谷園代表取締役専務 兼 生姜部顧問・永谷泰次郎氏の言葉に表れている。

■生姜部の存在意義は「ブランド価値向上」である

 同社は単なる調味料としてだけではなく、日本古来からの「冷えた体を温める」という生活の知恵から得た効用を消費者に提供することを目指している。確かに昔から伝わる効用を知る者はいても、それを丹念に製品化して消費者市場に根づかせるのは、企業としての売上・利益の側面から考えれば決して効率的とはいえないだろう。最近、女性向けの「冷え知らずさんの生姜シリーズ」といった製品が形になり売れ始めているが、今までにかかった永谷園の生姜部に関わる人員や経費などは効率面からだけではペイするかどうか疑問である。
 しかし、生姜部は同社にとって、何にも代え難い価値をもたらす。「永谷園」という企業ブランドを高めてくれるのだ。以下、活動の効果を細かく見てみよう。

■製品(Product)価値の向上

 永谷園の製品で思い浮かぶものは何だろうか。
 お茶漬け、ふりかけ、即席みそ汁、ちらし寿司やチャーハンやそうざいの素・・・などなどだろう。それらは消費者にとって、もしくは家庭でどのような存在だろうか。「ササッと食べられて便利」。「ササッと料理が作れて便利」。つまり、手間や時間短縮(Time saving)という効用を提供してくれる。
 一方、生姜部が開発した、スープや飲料、菓子などを展開する「冷え知らずさんの生姜シリーズ」はどうだろうか。「冷えを解消する」「血行をよくする」という、女性特有の悩みを解決する製品である。その効用は単に「便利」を超え、「これがあって良かった!」という気持ち(Peace of mind)を提供する製品であるといえる。
 つまり、生姜部の製品は従来の永谷園製品より、一歩消費者の心に入り込んで、「なくてはならない存在」というポジションを獲得することができるのだ。

■プロモーション(Promotion)効果の増

 前述の「社外生姜部」の効果も無視できない。
 社外生姜部には2つの会員資格がある。「オンライン部員」と「特別部員」だ。オンラインはメールを中心とした気軽に参加できる資格であるが、特別部員は生姜レシピのムービーへの出演や商品開発への参画などにも携われる代わりに、何と「入部試験」があるという。しかし、入部希望者続出で、常に追加募集待ちの状態である。前項で述べた、「これがあって良かった!」という気持ち(Peace of mind)を提供する製品は、「熱狂的なファン」を生むのである。
 元東京大学大学院教授・丸の内ブランドフォーラム代表の片平英貴氏が提唱している「AIDEES」という消費者行動モデルがある。製品を認知(Attention)・理解(Interest)した後に経験(Experience)し、その良さに惚れ込み(Enthusiasm)、人に推奨(Share)するというものだ。伝統的な消費者行動モデルであるといわれるAIDMAに代わる、インターネット時代の新たな行動モデルといわれるAIDEESが生姜部では正に現実のものとなっている。ますます、生姜部とその製品の価値地はクチコミによって喧伝されていくのだ。

■チャネル(Place)露出効果の増大

 従来の永谷園商品は、スーパーの棚、コンビニの棚の一部に収まっているにすぎなかった。しかし、「冷え知らずさんの生姜シリーズ」は展開スペースを大きく拡大することに成功している。ナチュラルローソンでは、他社の生姜製品も含めてではあるが、過半を同シリーズが占めた「冬に向けた生姜特設コーナー」を展開した。JR東日本管内のエキナカで1万台の自販機を展開するJR東日本ウォータービジネスは、冬に向けたホット飲料強化の方針とマッチする「冷え知らずさんの生姜シリーズ・生姜チャイ」を自販機に導入した。また、今月17日発売のシリーズ製品「生姜のど飴 かりん」「生姜キャラメル チャイ風味」「生姜グミ 梅味」は食品流通各社の菓子棚に導入されることだろう。
 従来の永谷園ではあり得なかったチャネルを開拓。それによる売上げ増大だけでなく、「永谷園ってこんな製品も出しているんだ」という消費者の認知を獲得する効果も発揮できるのだ。

■売上げ・利益(≒Price)拡大効果

 従来の永谷園製品は「お茶づけ海苔」=「お茶漬けを食べる時」、「チャーハンもと」=「チャーハンを食べる時」しか用いられないのが基本だ。そのことからすると、購買頻度(Frequency)はあまり期待できない。それ故、様々な製品を展開し一人の顧客にクロスセル(併売)して購買総額の向上を図っている。しかし、「冷え知らずさん」シリーズは単体の製品、例えば飲料や菓子であれば、お気に入りの商品の購買頻度は高くなる。また、シリーズ製品の併買率も高くなることが期待できる。従来にない、「顧客生涯価値」の向上が期待できるのだ。

■ポジション(Positioning)・ターゲット(Targeting)拡大効果

 ここまで、生姜部の活動、及び「冷え知らずさんシリーズ」の効果として、マーケティングの4Pの要素を順不同で見てきたが、4つのPが整合し、かつ相乗効果を発揮している「マーケティングミックス」が実現できていることがわかる。
 マーケティングの鉄則は、4Pの前にそれがターゲットに受け入れられるのかという、「ターゲティング」がしっかりしていることが求められる。従来製品が、手間無く料理を作りたい主婦層や、ササッとご飯を食べてしまいたい単身層を中心ターゲットにしていたのに対し、「冷え知らず」というポジショニングを構築して、若い女性やOLをはじめ、全女性にターゲットを拡大することができた。さらに、派生商品である生姜ジュース「つよいぞ!ジンジャー君」でこどもを取り込み、さらに菓子製品は女性の薦めで男性にも拡大できる可能性を秘めているのである。

■環境(3C:Customer・Competitor・Company)はどうなのか?

 永谷園という企業自身(Company)にとっては、戦略的に重要な事業であり、上記の通り効果を上げているといえる。では、それを取り巻く環境はどうなのか。ここまで述べたように、顧客(Customer)からは受け入れられている。では、競合(Company)はどうか。
 正直なところ、競合となる明確な存在は見あたらない。それは、「冷え知らずさんシリーズ」という製品を生み出すまでに積重ねた、同社の苦労が並大抵ではなく、そこに追いつくまでにはまだまだ時間がかかることを意味している。
 FMO(First Mover's Advantage=先行者優位)を発揮するのはこれからで、ますますの活動とその成果が期待できる「生姜部」なのである。

 生姜部が今後、永谷園の「生姜ブランド」を確たるものにすることは間違いない。さらにそれは、永谷園本体のブランド価値も確実に高めるだろう。
 目先の利益ではなく、将来に投資し、社員が汗をかき、顧客とともに真剣に活動している「生姜部」の事例から学ぶところは大きい。

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2009.11.10

顧客視点で「王道」を歩む「スーパーカップ」

 エースコックが「スーパーカップミニ」シリーズの新商品として、「カレーうどん」を11月16日から発売するという。同シリーズとしては今年8月初旬に「スーパーカップミニ もやしみそラーメン」をリニューアル発売したが、「カレーうどん」でさらにラインナップを強化した形になる。その狙いは何だろうか。

 エースコックといえば、1988年に「スーパーカップ」を発売して大ヒットを飛ばし、大型カップ麺のパイオニアとして君臨している存在である。その歴史を振返れば、その翌年にはすぐさま「スーパーカップ1.5」シリーズを展開し増量。さらにその地位を盤石のものとした。さらに2005年にはメガフードブームを先取りして、「スーパーカップ超大盛り2.0」という禁断のサイズまで展開。その系譜は今日にも続いている。

 上記のスーパーカップ大型化の歴史を見れば、「ミニ」というサイズの整合性が疑問に思えてくるかもしれない。
 「ミニ」の源流は遠く過去に遡る。1990年に「スーパーもやしみそラーメン0.5」など、「0.5」のサイズバリエーションでいくつかの商品が展開され、それが後に「ミニ」となって脈々と今日まで続いているのである。
 存在理由と狙いは明確だ。「0.5」は「新たなシーンを提案」というコンセプトで上市された。「新たなシーン」とは、「弁当・おにぎりとの併用」である。1990年代はコンビニエンスストアの最後の成長期であるとともに、コンビニ弁当の成長期でもあった。そこでの併売を狙って「0.5」は上市され、以後、「ミニ」と呼び名を変え、幾度のリニューアルを経ても「もやしみそラーメン」を継承してきたのである。

 8月の「もやしみそラーメン」のリニューアル、今月の「カレーうどん」のラインナップ追加のどちらにも<「おにぎり」「お弁当」などの“米飯類”との相性を考慮>したと、同社ニュースリリースに明記されている。それは従前通りなのだが、なぜ、「カレーうどん」が追加されたのか。通常、「スーパーカップ」においては、うどんやそば類は、「季節限定」や企画商品のカテゴリに入っている。現在なら「冬のスーパーカップ1.5倍」という季節限定で「豚バラとん汁うどん」「鶏南蛮そば」が展開されている。しかし、その単純なサイズダウンではない。
 リリースでは<「できるだけ多くの素材を摂りたい」という消費者のニーズに応える商品として開発を行いました。ほくほくのじゃがいもを中心に5種の具材が入り、とろみのあるだしが効いたカレーうどんスープがお弁当などにもよく合う、小さくてもこだわりは大きいミニカップめんです>とある。

 昨今のサラリーマンの昼食事情は、株式会社アイエムプレスが今年8月に行った調査から見えてくる。20歳から59歳までのサラリーマン500人の回答では、昼食代は500円以内と回答した人が全体の7割、さらにその中でも350円から500円が37.2%、350円未満が33%を占めるという。
 スーパーカップ1.5倍は190円。2.0倍でも220円。これだけでも33%の350円未満派におつりが来る状態で、ガッツリ満足してもらえる。しかし、「人はスーパーカップのみに生きるにあらず」なのだ。同社がつかんだ、ランチにお金はかけられないけれど、「できるだけ多くの素材を摂りたい」という消費者のニーズは今後ますます高まるばかりだろう。

 8月リニューアルの「もやしみそラーメン」以来、パッケージには高品質印刷が施され、カップの<側面に調理写真を配しおいしさ感を高めたデザイン>にしたという。まさに、コンビニの棚から「あと105円で高まる満足度」を誘いかけるのである。しかも、追加されたのは、昨今のカレー及びカレーうどんブームを反映した商品だ。
 「おにぎり2個+スーパーカップミニ」「250円弁当+スーパーカップミニ」。
 魅力的な「ミニ」を展開することで、弁当、おにぎりと手を結び、より多くの味とボリュームの満足度、そしてちょっと汁物が欲しいというランチ350円派の欲求に応えることができる。
 圧倒的ボリュームの自社商品で一気に顧客の胃袋シェアを獲得するのではなく、他の食品と胃袋シェアを分け合ってニーズに応える。そして、満足度を高め選ばれ続けることを目指す。「スーパーカップミニ」のラインナップ強化は、「顧客視点」な展開でもあるのだ。
 

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2009.11.09

ニンテンドーDSi LLは誰を狙うのか?

 10月30日に行われた任天堂の2010年3月期 第2四半期(中間)決算説明会での岩田社長の発言から「ターゲティング」の本質を考えてみたい。商品は『ニンテンドーDSi LL』である。

 11月21日発売予定の『ニンテンドーDSi LL』の最大の特徴は液晶サイズの大きさだ。Dsi3.25型であるのに対し、4.2型。数字以上に比較画像を見ると「でかい!」と実感できる。しかし、大画面化の代償は重さに跳ね返ってくる。214gのDSiに対して314gとキッチリ100g重くなっている。たかが100gというなかれ。ポータブルゲームという製品特性を考えれば、この重量をずっと支えるのは結構骨が折れるだろう。「この重さで携帯ゲームやるのは辛いわ」とネット上でも突っ込みが相次いでいる。
 本体カラーは「ダークブラウン」「ワインレッド」「ナチュラルホワイト」と今までにない渋いラインアップ。ジャスト20,000円と価格は若干高くなったが、「ちょっと脳を鍛える大人のDSiトレーニング文系編」「ちょっと脳を鍛える大人のDSiトレーニング理系編」「明鏡国語 楽引辞典」という3種類のDSiウェアも標準で付属されているからだ。

 大画面で小さな文字も辛くない。渋いカラーに、これまた渋いソフトのラインアップから考えて、「年寄り向けだろ」との声も多く上がっているが、実は決算説明会で岩田社長はそれを完全否定している。
 ちょっとマニアックなゲームサイトがその発言の主旨を取り上げている。
 <岩田社長「DSi LLは年配向けってわけじゃない」>(ザ・ゲーム情報ブログ・メディア Kotaku JAPAN)
 http://www.kotaku.jp/2009/11/dsixl_not_senior.html

 岩田社長のコメントは<「任天堂は限られた目的のみのために新しいプロダクトを開発するようなことはしません。」>とのことである。さらに、製品特性としては、液晶が大きいことだけが重要なのではなく、<ニンテンドーDSi LLのスクリーンは斜めの角度から見ても美しさを保>つことを強調している。そしてDSi LLのポジショニングを<周りの人も一緒にプレイすることが出来る初のポータブルゲーム機>としている。その製品コンセプトは<誰かがプレーしているのを覗き込もうとモニターに寄らなくてもいいのです。プレイしている人が周りにいれば、一緒に楽しむことができる。ニンテンドーDSi LLはそんな新しいスタイルを提供します>とのことなのだ。

 では、ターゲットは誰なのか。普通に考えれば「中高年」であり、その層はゲーム人口が少なくまだまだ開拓余地もあって、しかも競合が参入する気配はない。Wiiの失速やiPhoneの追撃によって業績の下方修正を余儀なくされた任天堂にとって、オイシイ「ブルーオーシャン」であるといえるだろう。しかし、岩田社長はそれを否定している。

 例えば、マクドナルドの大型ハンバーガー「クォーターパウンダー」のターゲットを考えてみよう。水泳の北島康介選手や歌手の安室奈美恵、またイベントで登場したモデルの益若つばさなどのイメージキャラクターを考えれば、普通に考えれば「若者」ということになるだろう。しかし、日本マクドナルドはそのターゲットを明言はしていない。
 クォーターパウンダーの前身というか、日本独自メニューの大型バーガーであった「メガマック」は誰がターゲットだったか。同商品はもっとターゲットを明確にしていない。そして、その実ユーザー像はというと、30代40代の男性が最多であったという。メタボ検診が本格化し、健康ブームも高まる中、その反動的な需要を持つ層も少なくない。また、単品350円と高単価ながら、1個で約750キロカロリーと普通のハンバーガーの3倍の高カロリーで確かな満足が約束される、コストパフォーマンスの高さも受けた。クォーターパウンダーの実ユーザー像は不明ながら、メガマックと実際には同様なのではないだろうか。

 ターゲットを単純に性・年齢などのデモグラフィックで定義すると、そのターゲット像から外れるが実際にはニーズを持っている層が敬遠して取り込めなくなる。前述のメガマックは「30代40代の男性」が中心だったわけだが、正しくターゲットセグメントを表わすなら「コストパフォーマンスの良いボリューム感を求める層」であるのだ。それを「お腹を減らした若者へ!」とメッセージしていたら、「30代40代の男性」は取り込めなかったかもしれない。同様に、クォーターパウンダーもギリギリのところで「若者」の明言を避けているのではないか。

 再びニンテンドーDSi LLに話を戻そう。
 ニンテンドーDSi LLのスペックや付属ソフトを考えても、実際には「中高年」を狙っているのは明らかだ。しかし、それは明言しない。岩田社長は否定する。しかし、その層が反応して売れていくのは歓迎なはずだ。但し、一番狙いたいのは「ポータブル機でも周りの人と一緒に楽しみたい」というニーズを持った層だ。それは「中高年」とは一致しない、「ニーズで括ったセグメント」である。

 実際のところ、そのニーズを持った層が、どのような実ユーザー像なのか、任天堂はまだ完全につかめてないのだろう。もし、それが明らかならそれに適したソフトを同時に投入してくるはずだからだ。しかし、そのニーズは感じる。故に、ハードを投入し、「中高年」以外のユーザーがどのように受け入れ、使用するのかをこれから注意深く見守るのではないかと思われる。

 「20代男性」とか「F1層(20~34歳の女性)」といった、ありきたりなデモグラフィックに縛られない、ニーズで括ったセグメントは的中すればメガマックの例のように大ヒットの可能性がある。しかし、実際には言うは易く行うは難しである。任天堂の挑戦がどうなるか、今後も要チェックだ。

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2009.11.05

マクドナルドが根こそぎにするカフェ市場

 日本マクドナルドがカフェ市場の完全制圧に乗り出した。ファストフードの強大なるコスト・リーダーの本格進出は、この後のさらなる大胆な展開も予感させる。

<スタバに対抗?マックが「カフェモカ」などコーヒーメニューを強化!>(東京ウォーカー)
http://news.walkerplus.com/2009/1103/10/

 上記リンクだけでなく、各メディアでマクドナルドのカフェメニュー強化は大きく取り上げられている。今回は、カフェラテ、キャラメルラテ、カフェモカ、カプチーノなどの、より「カフェらしい」メニューを投入しただけでなく、「マックカフェ」という新ブランドとして販売していることが大きな特徴である。

 このブランドネームが日本マクドナルドとしての壮絶なリターンマッチへの決意を表わしている。「マックカフェ」は元々は単なる商品ブランド名ではない。マクドナルドの新業態・カフェ店舗として1998年にスタートした店舗ブランド名である。その1度目のチャレンジは店舗を矢継ぎ早に展開したものの、翌年撤退。2度目のチャレンジは2007年に同名の店舗を複数展開したが、翌年から縮小を相次ぎ、現在、同社のWebサイトにはその形跡を示すものすら残されていない。

 新業態店ではなく、既存店舗でのカフェメニュー拡充という方向性に舵を切ったのが、昨年7月のこと。既にその前に顧客から評判の悪かったコーヒーを、ホット、アイスともに「プレミアムコーヒー」化して100円(現在は120円)で提供するという大手術を終えている。それに続いて、焼きたてベーカリーメニューを投入した。そのメニューは新業態店の「マックカフェ」のメニューと完全にかぶる。つまり、その時点で新業態店の展開は収束させる意志決定がなされていたと理解できるのである。

 3度目の挑戦は、新業態店ではなく、本体メニューへ全面的にカフェメニューを組み込んでの「カフェ市場完全制圧」を狙った展開である。そして、それは、もはや失敗が許されない最後のリターンマッチなのだ。
 その意気込みは原田CEOのコメントからも伺える。<「やるからにはトップを目指す。価格は他社とも比べて一番お得であり、マクドナルドの店舗数の多さ、24時間営業などの利点を考えると(カフェ市場で)一番をとれない理由はない」>(東京ウォーカー)という。
 取り扱い店舗も<年内には都内260店舗前後、2010年内には全国1000店舗の展開を目指す>(同)というから、完全制圧に向けたチャネルの面展開も急ピッチで進む。新業態店をチマチマ出店していた状況とは意気込みが違うのである。
 1,000店という規模はチェーン展開カフェ市場の約2割に上る店舗が市場に突如出現したのと同じだ。他の例で考えるなら、セブンアンドワイがコンビニ店舗にATMを設置してATM市場を制圧したのと同じだ。流通網やチャネルを活用した「経営シナジー」を発揮した展開である。

 プロモーションにも注力している。
<マクドナルドがカフェメニューを開始 試飲キャンペーンに800人行列>(J-CAST)
http://www.j-cast.com/mono/2009/11/03053112.html
 無料コーヒーで今までマクドナルドに来店しなかったカフェ客を呼び込むのはもはやお手の物だ。無料に慣れてきた消費者も「何か他のメニューも頼まなきゃいけないのかな・・・」という躊躇ももはやなく、新メニューを試しに行ったことだろう。

 渾身の新商品(Product)、日本全国を完全制圧する面展開のチャネル(Place)、800人を集客する無料試飲キャンペーン(Promotion)とくれば、最後に残されたマーケティングの4Pの一つ、価格(プライス)が気になる。

 <決め手はもちろん、マクドナルドならではの“お手ごろ価格”。一番安い「カフェラテ」のSサイズが190円、高い「カフェモカ」のMサイズが300円とリーズナブルな価格に抑え、200円台後半~400円台がメインのカフェチェーン店との差別化をはかった>と東京ウォーカーは分析している。しかし、「差別化を図った」という割にはその価格差は2~3割安いレベルに留まっているのではないだろうか。
 新製品で一気に市場のシェアを取ろうと思った時には「ペネトレーション・プライシング」を取るのが基本だ。場合によっては収支トントンも辞さず、競合が真似できない圧倒的な低価格を設定。シェアを取ったら規模の経済と経験効果で原価低減を図って収益を出すのである。
 そう考えると、競合比2~3割安はまだまだ、圧倒的なコスト・リーダーのマクドナルドなら下げ余地はあるように思えてしまうのだ。
 すぐに値下げをするのではないだろうか。そんな予感がする。

 前例があるのだ。今年3月に発売開始して人気メニューとなった「マックホットドッグ クラシック」。発売した月内にすぐに220円を190円に30円値下げ、2個とまとめて買うと330円(1つ165円。55円引き)という価格改定を行ったのである。今回のマックカフェメニューで再びそのような展開をしないとは断言できないのだ。

 マクドナルドのドメインは「ハンバーガーレストラン事業」である。その事業ドメインでは絶対に負けないリーダー企業だ。「カフェ」はドメインではない。だが、ドメイン拡張をしても、必ずマクドナルドはそこでもリーダー企業となるだろう。その時、既存のカフェ市場のプレイヤーはどうなるのか。
 ちなみに、筆者は頑なにスタバ派である。そうした強固なファン層だけを相手にするニッチャーとなるのか。
 マクドナルドが根こそぎする日本のカフェ市場を考えると、少々背筋が寒くなるのは筆者だけであろうか。

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2009.11.04

「自販機女子」を狙え!エキナカ限定飲料の挑戦!

 JR東日本管内で「acure」ブランドの自販機事業を展開するJR東日本ウォータービジネス。「自販機イノベーション宣言」を掲げる同社がまた、新たな商機を見いだしたようだ。

 同社はJR東日本管内のエキナカに約1万台の自販機を保有している。特徴的なのは、各飲料メーカーの商品を混載する「ブランドミックス」で展開していることだ。自販機は飲料メーカーの重要な販路であるため、自社ブランド製品のみを扱う単一ブランド機がメインである。一部に自販機の商品供給やメンテナンスを行う自販機運営会社(オペレーター)が独自ブランドの自販機で混載を展開する例もある。しかし、その自販機運営会社には何らか飲料メーカーの資本が入っている場合もあって、完全にメーカーの偏りがない混載は実現していないのが現実である。

 メーカー資本が入っていない、完全な「ブランドミックス」の実現こそが、「顧客起点」の自販機であると同社は主張する。ブランドミックスだけでなく、飲料メーカーとのコラボレーションによる独自商品を数多く開発しているのも特徴だ。伊藤園との「朝の茶事」、アサヒ飲料との「ワンダ・朝のオレ」などのヒット商品も多数ある。
 それらの取り組みも奏功してか、この3年間で同社の売上げは自販機の台数はそのままで、136%伸長しているという。自販機ビジネス全体を見れば、全国に推計240万台強という台数も年間6万ケース強という売上本数も過去6~7年の間横ばいが続いている。直近では西日本の大手ボトラー、コカ・コーラウエストが先月末に自販機の売上げ不振で大幅な赤字を計上し、400人の早期退職に踏み切るという発表をしたことも記憶に新しい。業界内での同社の好成績は鮮明である。

 そんな同社が、この秋再び新たなコラボレーション商品を上市した。アサヒ飲料のフレーバーティー「FAUCHONアップルティー」をホット用に製品改良し、「acure」ブランドの自販機専用として販売する。
 従来のコラボレーション商品はエキナカコンビニ「NEW DAYS」でも取り扱っていた。しかし、同店のホット棚は小さく確保が困難であることから今回は自販機のみで勝負をかけるという。同社の保有する自販機は1万台と、業界内で見れば決して多いわけではない。そこで勝負をかけるということは、1台あたり相当数売り切ることを意図した決断であることが分る。

 商機は同社の独自調査から見えてきたようだ。リリースにある「首都圏におけるエキナカ自販機男女利用構成比」では、女性の利用者が今年34.9%に上った。2007年の調査と比較して6.1%の伸長である。一方、街中では<飲料自販機の消費者は、男性9割、女性1割という特異な状況である>という。(2005年7月26日放送ガイアの夜明け「自動販売機 24時~知られざる飲料業界の攻防~」より)。

 消費者の購買行動を考えてみよう。
 街中の自販機は、男性が仕事の合間などに喉の渇きを癒そうと飲料を購入し、その場で蓋を開けてゴクゴク飲むイメージだ。では、女性はというと、飲料購入のメインはコンビニだろう。その女性層取り込みの弱さもたたって、自販機の飲料販売シェアはかつての50%から現在は35%まで低下している。
 しかし、昨今、一つの外部環境が変化している。景気の低迷だ。コンビニでの飲料購入は、多くは弁当、菓子などの「ついで買い」である。景気の低迷により消費者は支出を絞る。通勤途上で習慣的にコンビニに立ち寄ってしまう層も少なくないが、その行動が抑制されるとしたら、飲料はどこで買われるのか。また、朝、カフェでコーヒーなどをテイクアウトで購入する習慣を持っている層も多いが、その価格抑制を図ろうとした場合、代替品として何が買われるか。

 同社は消費者の購買機会のうち「朝」を徹底的に取り込む戦略を明確にしている。従来のコラボ製品は「朝の茶事」「朝のオレ」だけでなく、カゴメとの「朝にすっきり野菜と果実」、日本コカ・コーラとの「ジョージアキックオフ 」などほとんどが「朝」テーマである。
 今回の「FAUCHONアップルティー」は「寒さが厳しい季節のホームの朝」での購入を明らかに狙っている。職場に向かう前の駅で、「acure」の自販機の中からオレンジ色のホットキャップに暖かなディープピンク(deeppink:たぶんR:255 G:20 B:147)のラベルが購入を誘う。手に取ればボトルはペットボトルではなくボトル缶で、暖かさが直接手に伝わってくる。手袋をはめた両手で包み込むか、コートのポケットで暖かさを楽しむかしながら、職場に向かうという風情である。街中で缶の蓋を開いてゴクゴク飲む男性の購買行動との違いをよく考えた設計である。また、職場の席で飲む時に蓋を開けばフルーティーなりんごの香りがふっと広がるように、ホット専用に調整したという。リピーターとなるファンも増えそうだ。

 自販機は完全なる飽和時代。ただ、置いておけば売れるということはもうない。
 「顧客起点」を掲げるJR東日本ウォータービジネス社の外部環境の変化をとらえ、内部データを活用し、誰に、どのように買ってもらうのかという購買行動の細部まで設計した展開には、自販機や飲料だけでなく学ぶべきところが大きいといえるだろう。

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2009.11.02

こどもを狙う永谷園「生姜部」の「ジンジャー君」戦略

 永谷園が9月より秋冬期間限定で発売しているという、こども向け生姜入りのホットレモン飲料『つよいぞ!ジンジャーくん』。「こどもに生姜?」という感もあるのだが、実はここには同社の精緻な戦略が仕込まれているのである。

<永谷園『つよいぞ!ジンジャーくん』商品紹介サイト>
http://www.nagatanien.co.jp/r_products/index.php?pnum=n211

 永谷園といえば「お茶づけ海苔」というイメージがすぐ浮かぶが、同社には知る人ぞ知る「生姜部」というものがある。社内部門を横断し、職位も超えて「生姜」という素材にこだわって研究し、新製品やレシピを開発して、新たな価値創造を目指している。専用農場を持ち、部員の求心力を高める「生姜部の歌」まであるのだ。
 生姜部は活動の成果として今までに、冷え性の女性の悩みを解決する『「冷え知らず」さんの生姜シリーズ』として、カップスープ、みそ汁、飲料などを世に出している。そして、今回発売されたのが、ターゲットを「こども」とした製品なのである。

 こどもは生姜を食べたり飲んだりしたがるのか?少なくとも筆者の幼少時代は独特の風味と辛みが何とも苦手で、忌避する食品の一つであった。しかし、そこは生姜部の弛まぬ努力でレモン果汁とハチミツでまろやかな味わいに仕上がっている。これならこどもも大喜びだ。
 飲めばこどもにも美味しい「ジンジャー君」。しかし、生姜部の努力によって「女性の冷え性には生姜!」という認識は広がっているものの、生姜をわざわざ「こどもに飲ませましょう」と思うかまだまだギモンである。こども自身が「生姜ハチミツレモンを飲みたい!」と言い出すのも望み薄だろう。

 そこで、効果を発揮するのが、コントラストの強い色彩とキャラクターを全面に出した「ジンジャー君」のパッケージである。キャラクターも絶妙だ。いわゆる「ゆるキャラ」でも、ましてや「萌えキャラ」でもない。小さなこども好みの「アンパンマン」を彷彿とさせる(?)キャラクターでアピールする。母親にスーパーに連れられてきたこどもが「ジンジャー君買って!」とねだる様が目に浮かぶ。
 こどもにねだらせ、母親に手に取らせばパッケージには「寒さに負けるな!」「たっぷりビタミンC!」とのメッセージが目に止まる。「あら、こどもにいいわね」と思う。さらに、冷え性対策などに生姜を今まで愛用していなかった母親だったとしても、「私も飲んでみようかな」と思うようになる効果も期待できる。

 モノを購入する際の意志決定に関与してくる様々な人々のことをDMU(Decision Making Unit=購買決定単位)といい、BtoB(企業間取引)のマーケティングでは絶対に欠かすことのできない要素である。誰がどんな関心事を持って、どのような過程で購入意志決定がなされるかを想定して、働きかけを行うことが欠かせないのだ。

 「ジンジャー君」もDMUへの働きかけの設計が絶妙である。
 通常母親に働きかけをするところを、こどもにもキャラクターでアピールする。生姜に興味がない母親だったら、生姜飲料は目に入らない。それを想定して、こどもも狙っているのだ。こどもが「買ってー」と稟議を挙げる。母親は生姜の効用を認知して、購入を決断。さらに、自分でも飲んでみるという意志決定をする。二人で飲めば、消費量は2倍である。

 生姜に対する熱い思いを伝えたくても、興味のない人には届かない。しかし、そんな人にこそ、生姜を試して欲しい。逆説的な課題を解決するのが「ジンジャー君」というキャラクターであり、『つよいぞ!ジンジャーくん』という商品なのだ。
 ただ思うだけではなく、しっかりとした顧客へのメッセージ伝達経路を設計している「永谷園・生姜部」の戦略に脱帽である。

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