ニンテンドーDSi LLは誰を狙うのか?
10月30日に行われた任天堂の2010年3月期 第2四半期(中間)決算説明会での岩田社長の発言から「ターゲティング」の本質を考えてみたい。商品は『ニンテンドーDSi LL』である。
11月21日発売予定の『ニンテンドーDSi LL』の最大の特徴は液晶サイズの大きさだ。Dsi3.25型であるのに対し、4.2型。数字以上に比較画像を見ると「でかい!」と実感できる。しかし、大画面化の代償は重さに跳ね返ってくる。214gのDSiに対して314gとキッチリ100g重くなっている。たかが100gというなかれ。ポータブルゲームという製品特性を考えれば、この重量をずっと支えるのは結構骨が折れるだろう。「この重さで携帯ゲームやるのは辛いわ」とネット上でも突っ込みが相次いでいる。
本体カラーは「ダークブラウン」「ワインレッド」「ナチュラルホワイト」と今までにない渋いラインアップ。ジャスト20,000円と価格は若干高くなったが、「ちょっと脳を鍛える大人のDSiトレーニング文系編」「ちょっと脳を鍛える大人のDSiトレーニング理系編」「明鏡国語 楽引辞典」という3種類のDSiウェアも標準で付属されているからだ。
大画面で小さな文字も辛くない。渋いカラーに、これまた渋いソフトのラインアップから考えて、「年寄り向けだろ」との声も多く上がっているが、実は決算説明会で岩田社長はそれを完全否定している。
ちょっとマニアックなゲームサイトがその発言の主旨を取り上げている。
<岩田社長「DSi LLは年配向けってわけじゃない」>(ザ・ゲーム情報ブログ・メディア Kotaku JAPAN)
http://www.kotaku.jp/2009/11/dsixl_not_senior.html
岩田社長のコメントは<「任天堂は限られた目的のみのために新しいプロダクトを開発するようなことはしません。」>とのことである。さらに、製品特性としては、液晶が大きいことだけが重要なのではなく、<ニンテンドーDSi LLのスクリーンは斜めの角度から見ても美しさを保>つことを強調している。そしてDSi LLのポジショニングを<周りの人も一緒にプレイすることが出来る初のポータブルゲーム機>としている。その製品コンセプトは<誰かがプレーしているのを覗き込もうとモニターに寄らなくてもいいのです。プレイしている人が周りにいれば、一緒に楽しむことができる。ニンテンドーDSi LLはそんな新しいスタイルを提供します>とのことなのだ。
では、ターゲットは誰なのか。普通に考えれば「中高年」であり、その層はゲーム人口が少なくまだまだ開拓余地もあって、しかも競合が参入する気配はない。Wiiの失速やiPhoneの追撃によって業績の下方修正を余儀なくされた任天堂にとって、オイシイ「ブルーオーシャン」であるといえるだろう。しかし、岩田社長はそれを否定している。
例えば、マクドナルドの大型ハンバーガー「クォーターパウンダー」のターゲットを考えてみよう。水泳の北島康介選手や歌手の安室奈美恵、またイベントで登場したモデルの益若つばさなどのイメージキャラクターを考えれば、普通に考えれば「若者」ということになるだろう。しかし、日本マクドナルドはそのターゲットを明言はしていない。
クォーターパウンダーの前身というか、日本独自メニューの大型バーガーであった「メガマック」は誰がターゲットだったか。同商品はもっとターゲットを明確にしていない。そして、その実ユーザー像はというと、30代40代の男性が最多であったという。メタボ検診が本格化し、健康ブームも高まる中、その反動的な需要を持つ層も少なくない。また、単品350円と高単価ながら、1個で約750キロカロリーと普通のハンバーガーの3倍の高カロリーで確かな満足が約束される、コストパフォーマンスの高さも受けた。クォーターパウンダーの実ユーザー像は不明ながら、メガマックと実際には同様なのではないだろうか。
ターゲットを単純に性・年齢などのデモグラフィックで定義すると、そのターゲット像から外れるが実際にはニーズを持っている層が敬遠して取り込めなくなる。前述のメガマックは「30代40代の男性」が中心だったわけだが、正しくターゲットセグメントを表わすなら「コストパフォーマンスの良いボリューム感を求める層」であるのだ。それを「お腹を減らした若者へ!」とメッセージしていたら、「30代40代の男性」は取り込めなかったかもしれない。同様に、クォーターパウンダーもギリギリのところで「若者」の明言を避けているのではないか。
再びニンテンドーDSi LLに話を戻そう。
ニンテンドーDSi LLのスペックや付属ソフトを考えても、実際には「中高年」を狙っているのは明らかだ。しかし、それは明言しない。岩田社長は否定する。しかし、その層が反応して売れていくのは歓迎なはずだ。但し、一番狙いたいのは「ポータブル機でも周りの人と一緒に楽しみたい」というニーズを持った層だ。それは「中高年」とは一致しない、「ニーズで括ったセグメント」である。
実際のところ、そのニーズを持った層が、どのような実ユーザー像なのか、任天堂はまだ完全につかめてないのだろう。もし、それが明らかならそれに適したソフトを同時に投入してくるはずだからだ。しかし、そのニーズは感じる。故に、ハードを投入し、「中高年」以外のユーザーがどのように受け入れ、使用するのかをこれから注意深く見守るのではないかと思われる。
「20代男性」とか「F1層(20~34歳の女性)」といった、ありきたりなデモグラフィックに縛られない、ニーズで括ったセグメントは的中すればメガマックの例のように大ヒットの可能性がある。しかし、実際には言うは易く行うは難しである。任天堂の挑戦がどうなるか、今後も要チェックだ。
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