「ペプシあずき」が美味しすぎて(マーケティング的に)心配だ!
「ペプシあずき」が美味しすぎて(マーケティング的に)心配だ!
3年ほど前から好例になっている季節限定の「変わり種ペプシ」。キュウリ味の「ペプシアイスキューカンバー」「ブルーハワイ」「ホワイト」、そして今年の夏は「ペプシしそ」であった。「和素材」がテーマだという今年の第2弾は「あずき」が昨日、10月20日に店頭に並んだ。
実は 当Blogでは10月1日に<「ペプシあずき」の味を大胆予測する!>という記事を掲載していた。歴代の変わり種ペプシの味から考察して、<「ブルーハワイ」以来の甘さ強め路線は継承し、さらに「ホワイト」のように甘みの中のクセを取り去って、「しそ」の「和素材」路線で勝負すると考えられる。甘さと「あずき」は「しそ」以上に相性も良さそうだ>として、<今回の変わり種コーラ、「ペプシあずき」の味は、歴代の中でも飛び抜けて「オイシイ!」はずであると、期待が高まる>と結論づけた。
果たして、その味は・・・。大当たり!であった。
実にオイシイのである。あずき色の液色ではあるが、汁粉のようににごった色ではない。しかし、蓋を開けた時点で既にあずきの香りが広がってくる。一口飲むと、強い甘みを感じつつ、その香りが口腔から鼻腔に抜ける。紛れもなくあずきである。予想通り、変わり種ペプシにありがちであった、微妙な苦みは全くない。そして、驚いたことに、「しそ」では比較的強く感じられ、「ホワイト」でも微妙に感じられたケミカルっぽさが全く感じられないのである。飲料のケミカルっぽさとは、一般には理解しにくいかもしれないが、「ドクターペッパー的な」といえば伝わるだろうか。ちなみに、筆者はドクターペッパー好きであり、ケミカルっぽさも嫌いではない。故に、今回の「ペプシあずき」は、予想的中ではあるが、ちょっと物足りないというか、拍子抜けするほど、素直なおいしさだと感じたのだ。
しかし、おいしいが故に心配である。
変わり種ペプシの戦略的な目的とは何か。当Blogではブルーハワイの時から記事に取り上げているが、その目的は一貫してペプシのチャレンジャーとしての基本であると解釈している。日本のコーラ市場においてはコカ・コーラは80%のシェアを握る圧倒的なリーダーである。ペプシは市場に「新しいことを常にペプシはやっているんだ!」とメッセージを発信しなければ、消費者からいつ忘れ去られてもおかしくない。そのための最もラディカルな施策が変わり種ペプシなのである。
日本においてペプシブランドを展開するサントリー食品の担当課長の貴重なインタビュー記事が日経ネットBizPlusに掲載されていた。
<「サントリー、ペプシPRへ話題作り シソ・アズキ…相次ぎ『奇策』」>
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/eigyo/rensai/ss.cfm?i=20091008e6000e6
記事中でサントリー食品食品事業部の石原圭子課長はインタビューに応え、<「2本目を買ってもらうことは期待していない」「限定品は味わいの驚きでブランドの新しさや楽しさを発信する手段。商品自体がペプシのPRになっている」>と言い切っている。
さらに記事では開発の苦労も伝えている。<奇抜さが売り物の商品。開発はアイデア頼みと思いきや、そうではない。着想から商品化までの期間は実に2年。一般的な清涼飲料の半年から1年よりはるかに長い。毎回40種類もの風味を「季節感」や「意外性」といった観点からふるいにかけ、1つに絞り込む>という。
差別化戦略のために、とにかく意外性にこだわることが重要とのことだが、しかし、今回のあずきは素直においしすぎないだろうか。「普通においしくてビックリ」という意外性を狙っているのだろうか。
変わり種ペプシは2007年の「アイスキューカンバー」の前年、2006年には5月16日にスパイシーな「レッド」、7月4日にトロピカルフルーツ味の「カーニバル」、10月10日にジンジャー味の「ゴールド」と矢継ぎ早に商品を投入したこともある。しかし、記事にあるような、今年であれば「和素材」のようなテーマを設定した展開は2007年からであるようだ。だとすると、今回のあずきが第5弾ということになる。
同記事にはサントリー食品の白井省三社長のコメントもある<「限定品がペプシブランドに親しむ『入り口』になってくれれば」>とのことだ。第5弾となった「ペプシあずき」は、意外性としては「素直においしい」という演出をして、ペプシの存在をアピールするだけでなく、より「親しみ」に重きを置いているということだろうか。
今年4月にサントリー食品としてグループを再編した時に、「飲料全体でのシェアはサントリー20%に対し、日本コカ・コーラが30%以上」という状況からの巻き返しを宣言した。そして、チャレンジャーらしく「勝てるところから取っていく」として、好調な「」ペプシネックス」のさらなる強化の方針を打ち出していた。
意外なほどおいしい「ペプシあずき」。それは、変わり種ペプシの役割が、ブランド認知だけでなく、白井社長のコメントにあるような、主力商品の入り口としての機能に変わってきたことを表わしているのかもしれない。だとすれば、チャレンジャー・ペプシは、リーダーであるコカ・コーラに今後、よりアグレッシブに挑んでいくことを予感させる。
なにやら、ハラハラする展開が見えてきて喉が渇いたので、昨日に続いて2本目となる「ペプシあずき」を飲みながら、そんなことを考えてみた。
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