「ペプシあずき」の味を大胆予測する!
3年ほど前から好例となっている期間限定の「変わり種ペプシ」。10月20日に、今度は「あずき」味が発売されると報道され、ネット上ではブログやSNSで早くも大きな話題になっている。その戦略の意味合いから考察して、一足お先に、そのお味を予測してみたい。
変わり種ペプシが大きな話題となってブレイクしたのは2007年夏、キュウリ味の「ペプシアイスキューカンバー」からであるといっていいだろう。どこか青臭く、うす甘い味わいは「オイシイ!」というよりは不思議・・・というか、何ともオソロシイ味であった。その味にネット上は阿鼻叫喚の巷と化した・・・というのは大げさであるが、ちょうどブログやSNSのユーザーがうなぎ登りの時期であったことも手伝ってかなりの話題になったのは事実だ。
翌2008年夏は同名のカクテルの青を模した「ペプシブルーハワイ」。パイナップル風味は随分と甘味が強く感じられ、キューカンバーほどではないものの、クセは強かった。続いて同年、秋口から冬にかけて登場したヨーグルト味の「ペプシホワイト」は、甘みの強い傾向はそのままに、随分とクセがなくなって、普通にオイシく飲める味に仕上がっていた。
そして、今年夏のしそ風味の「ペプシしそ」。甘さの強い傾向は引き継がれた。しその香りと甘みが合うと感じるか否かで好みが分かれたが、多くのファンを獲得したのも事実であり、メディアによると「約30万ケースを売り上げた」とのことである。
ペプシが変わり種コーラを出すのは、チャレンジャーの戦略の基本・差別化戦略である。リーダーであるコカ・コーラが「すかっと爽やか(ちょっと古い表現)」というポジションからは言えないメッセージを発信する。「理論の自縛化」という戦術で、リーダー企業が同じ手を打ってくる「同質化」を回避する戦略である。「目新しいことを常にペプシはやっているんだ!」とのメッセージだ。そもそも、今日当り前になっていて、コカ・コーラからもすっかり同質化されているが、コーラにレモンフレーバーを導入したのはペプシが最初であり、変わり種コーラはその極端な発展形であると考えることもできるのである。
さて、「ペプシあずき」の販売目標は20万ケースであると報じられていたが、「しそ」の30万ケースも含めて、それは一体どれくらいインパクトのある数字なのかを考えてみる。ペプシを販売するサントリーが2009年に目標としている、全ペプシブランドの目標販売数は3000万ケースである。(2009年1月20日リリース「2009年サントリー食品事業方針」より)。つまり、数字的には全体の1%程度を稼ぐにすぎないのだが、その戦略的な意味合いは大きいと考えられる。
マーケティングの4P的に考えてみよう。製品(Product)は、見た目から変わったインパクトのある商品だ。それがどのようなところで活きるのか。価格(Price)は、通常の商品と変わらない。広告宣伝(Promotion)はどうかというと、変わり種コーラに関する広告宣伝はマスメディアでも、インターネット広告でもほとんどなされていない。もっぱら、ニュースリリースからのクチコミで勝手に盛り上がる。(当記事も含めて)。これほど安上がりなプロモーションはない。
では、販路(Place)はどうか。ここがキモだ。
日本コカ・コーラの力の源泉は自販機である。飲料販売の約4割を占める自動販売機を同社は国内に80万~90万台擁する。対して、サントリーは44万台と劣勢を余儀なくされている。残る戦場はコンビニだ。コンビニで最も重要なのは「棚を取ること」。しかも、数多く、有利な場所をおさえるのが、自販機と異なって競合製品と比較購入される状況においては欠かせない。
棚に並ぶまでにはコンビニ本部のバイヤーが取扱を決め、フランチャイズのオーナーが発注する際に棚に並べる数を決める。飲料において、棚を取るには、「ボトルネックに景品を付ける」「キャンペーン値引き価格の設定」という販促施策がよく用いられる。オーナーが「それなら他のものより売れるだろう」と期待するからだ。
それ以外には、純粋に「話題の新製品」であることがあげられる。それも、「期間限定」であれば、発注が得やすい。定番レギュラー商品から派生した期間限定商品の場合、定番レギュラー商品も同時に棚に並べられることが多い。つまり、変わり種コーラという存在があれば、コンビニという戦場でそれ自体で有利な棚を確保し、さらにペプシネックスなどの定番レギュラー商品の棚も確保できる。これが最大の効果が期待である。
では、その有利な棚確保ができるためにもう一度製品(Product)を見直してみたい。いよいよ「味」についてである。過去の例でいえば、販売実績は公表されていないながら、最も長期間、棚確保に成功した変わり種コーラは「ペプシホワイト」であろう。登場時には各店で3~4フェイス。その後も昨年内は1~2フェイスが確保されていた。期間限定といってもずいぶん長く置かれ、売れ続けたのはやはり、「味」の要素が強かったと思われる。歴代の変わり種の中では最も素直な味、よく仕上がった乳性炭酸飲料であったといえるだろう。
とすると、今回の「ペプシあずき」は、「ブルーハワイ」以来の甘さ強め路線は継承し、さらに「ホワイト」のように甘みの中のクセを取り去って、「しそ」の「和素材」路線で勝負すると考えられる。甘さと「あずき」は「しそ」以上に相性も良さそうだ。製品(Product)の一要素である、商品パッケージを見ると、「着物の地模様のようなデザインを採用し、商品ロゴを縦書きにすることで和の世界を表現した」とのことで、製品コンセプトとの整合もいい。
以上のように考えると、今回の変わり種コーラ、「ペプシあずき」の味は、歴代の中でも飛び抜けて「オイシイ!」はずであると、期待が高まる。・・・のだが、実態はどうだろうか。結果は発売日の10月20日。
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