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【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

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2009.10.02

足し算・かけ算・引き算:新型洗剤の潜在力をチェックする!

 花王の「スタイルフィット」「アタックNeo(ネオ)」、P&Gの「さらさ」など、昨今ニュータイプともいうべき衣類用洗濯洗剤の登場が相次いでいる。洗剤は普段なにげなく使っているコモデティー品の代表格といってもいい。それらは長く進化を止めているようにも見えるが、そのままで生き残っていられるほど現代の市場環境は甘くはない。では、ニュータイプ洗剤は進化の過程でどのような力を獲得していったのだろうか。
 
 まず、商品における「進化」とは何かを考えてみよう、「進化」とは広辞苑によれば「生物が世代を経るにつれて次第に変化し、元の種との差異を増大して多様な種を生じてゆくこと」とある。「生物」ではなく、消費者から選ばれ、買われなければ生き残れない「商品」で考えれば、「元の種との差異を増大」は、選ばれるために商品の「価値構造」を変化させ、価値を高めることに他ならない。

■洗濯石けんから粉末洗剤へ

 衣類の洗濯には、古くは天然油脂を原料とする、いわゆる「石けん」が用いられていた。
洗濯石けんを用いることによる「中核的価値」は「衣類の汚れが落とせる」である。特に、水洗いでは落とすことのできない皮脂などの、水に溶けない汚れを落とすには欠かせない存在である。
 洗濯石けんは、電機洗濯機の普及によって洗濯が人力から機械化されたと共に、より水に溶けやすい性質を持つ、「洗濯用粉末洗剤」にその座を明け渡すことになった。洗剤は「汚れが落とせる」という中核的価値を実現する欠かせない要素である「実体価値」に、「よりきれいにする」「より白くする」という要素を付け加えることになった。漂白剤による汚れの分解と、蛍光剤による増白である。

■コンパクト洗剤が実現した価値

 次の変化は1987年に起きた。世界に先駆けて日本で開発された、「コンパクト洗剤」である。それまでの洗剤に比べ容量で1/4、重量で1/1.6という画期的な小型化を図ることができた。コンパクト化で増大した価値は、中核的価値に影響を直接及ぼすものではないが、それによって商品の魅力がより高まる要素である「付随機能」である。今までかさばって邪魔だった洗剤の大きな箱が占拠していたスペースが節約できた。さらに、空き箱のゴミも減る。使用量が少ないため、洗濯機から排出される汚水が環境に与える負荷も低減できるという要素である。

■液体洗剤の普及がもたらした価値

 経済産業省によると、衣料用洗剤のうち液体のシェアは2003年には15%(販売金額ベース)であったが、節水型のドラム式洗濯機の普及で2009年に入って40%へと上昇したという。販売数量の伸びによって、規模の経済が働いたためか、メーカー各社から従来よりも低価格な設定の商品が発売されたことも普及を促進したと思われる。欧米に比べて液体洗剤シフトが日本で遅れたのはやはり、「液体はいいけど高い」という消費者の判断があったからだ。では、その消費者が感じている液体洗剤の価値は何かといえば、粉末洗剤の「粉が飛び散る」「溶け残る」「洗剤の自動投入口に残る」といった問題点を解消し、「汚れのひどい所に部分的に塗る」という新たな使い方ができることである。つまり、それらは、「汚れが落とせる」という中核的価値を実現するのに欠かせない要素である「実体価値」を強化していることになる。製品の価値構造において、中核的価値により近い部分に要素が付け加わったり、強化したりということが実現すると、それは消費者に大きなメリットをもたらすため大ヒットにつながる場合が多い。洗濯機が新しくなり、価格も安くなった液体洗剤を使った消費者は手放せなくなり、普及が大きく加速したのだ。来年には粉末と液体はシェアが逆転すると業界は見ているようだ。

■液体洗剤の勝負のしどころ

 粉末の問題点を解消した液体洗剤であるが、実は主成分である界面活性剤が液体であるため、実体価値である、「よりきれいにする」「より白くする」を実現するための酵素剤、キレート剤、酸素系漂白剤などが、水に溶けて安定しているものが少なく入れにくいという弱点が存在したという。そのため各社の勝負は、いかに実体価値を高めるかに注がれることになり、「輝く白さ」や「色柄ものの鮮やかさ」などの仕上がりを競い合うようになったのだ。

■「足し算」の花王・スタイルフィット

 上記の「よりきれいにする」「より白くする」という実体価値は、各社の努力で一通り実現されたようであるが、そうなると、再び付随機能での勝負が始まる。もともと、製品の価値構造は、中核的価値から一番遠い付随機能を付加する方が一番バリエーションも多くやりやすいといえる。多くの製品がコモデティー化すると、カラーバリエーションに走るのはこのためだ。例えば、ノートパソコンが何色であっても、ドキュメントの作成やインターネットの利用という、中核的価値には何の影響も及ぼさない。しかし、もはや差別化は色ぐらいでしか図れないため、在庫リスクの上昇というデメリットを承知で各社はカラーバリエーション展開をしているのだ。
 液体洗剤の付随機能として、花王は「香り」に注目した。米国製の柔軟仕上げ剤「ダウニー」は、仕上がってからも強烈に香りが残る。従来の日本製にはないそうした要素が若年層や若い主婦に受けて、主にECサイトを中心として大人気となった。そこで花王は、2009年6月のスタイルフィットの製品リニューアル時に、セット商品の柔軟仕上げ剤と共に「香り」の要素をさらに強調するようになった。

■「かけ算」の花王・アタックNeo(ネオ)

 花王のチャレンジはスタイルフィットのような、付随機能の足し算だけでは終わっていない。2009年6月に新CIを定め、環境宣言を掲げたのと時を同じくして、そのポリシーをそのまま製品化したかのようなアタックNeo(ネオ)を発表。8月末から発売を開始した。同製品は、液体洗剤を従来の2.5倍という高濃度に圧縮し、少量でも、抜群の洗浄力を発揮するという。そして一番の眼目は、繊維に残りにくく、すばやく泡切れするという新洗浄成分の特徴を活かし、従来すすぎを2回していた洗濯のしかたを、すすぎ1回ですむようにしたことだ。
 濃縮度を上げて使用量を減少させたのは、粉末時代のコンパクト洗剤と同じく、環境負荷軽減に役立つが、さらにすすぎ1回は水と電気の使用量を削減できるという効果がある。当然、水道代、電気代の低減できるため財布にもやさしい。さらに、すすぎ1回、10分間という時間も短縮でき家事の負荷軽減も実現する。それは、洗剤の「汚れが落とせる」という中核価値の実現を支える、実体価値を何倍にも高める「かけ算」であるといってもいいだろう。

■「引き算」の P&G・「さらさ」

 P&Gはたぐいまれなるマーケティング力によって、世界の様々な市場において圧倒的な力を誇っているが、こと日本の衣料用洗剤市場では花王、ライオンに次ぐ3番手と後塵を拝している。従来、米国を始め世界市場での成功商品を日本に持ち込む展開をしていたが、今回は満を持して、同社の力の源泉である綿密なマーケティング調査を経て、日本専用商品を投入したのである。その名も「さらさ」と日本語である。
 膨大な消費者調査を行ったという同社が発見した日本の消費者ニーズは以下のようなものだ。(7月29日付け・同社ニュースリリースより)<全体の約3割が「本当に欲しいと思う洗剤に出会っていない」と感じていることが明らかになりました(P&G調べ)。この約3割のお客様は、「蛍光剤、漂白剤、着色料が入っていない洗剤を使いたい」という思いがより強く、「今ある洗剤では自分にとって必要ない成分まで入っている気がする」というものでした>。そして、蛍光剤・漂白剤・着色料を無添加を実現した製品に仕上げたという。
 これは、従来の「よりきれいにする」「より白くする」という実体価値の大転換である。新たな製品コンセプトを考える際には、中核・実体・付随機能という価値の要素に何かを付け加えることも重要であるが、何かの要素を削除したり、書き換えたりという「引き算」も重要なのだ。引き算のニーズを持っている顕在化したターゲット層は3割であるが、ロハス(LOHAS)の意識も高まっていることから、潜在的なターゲット層はもっと多そうだ。同社は「サステナビリティ(持続可能な社会)の実現」を掲げている。花王が新CIを体現した商品を投入したのと同じく、日本市場専用に開発されたこの商品にかける意気込みが伝わってくる気がする。

以上のように、洗濯洗剤の歴史と最近の傾向をひもといて、価値構造の変化を検証してみた。繰り返すが、「進化」とは、「元の種との差異を増大して多様な種を生じてゆくこと」であり、商品においては「価値構造を変化させ、価値を高めること」を意味する。どんな商品も進化なくして生き残ることはできない。常に、消費者からどのような価値構造が求められているのかに留意することが肝要である。

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