イケメン四天王が狙う資生堂・uno FOG BARのターゲット
妻夫木聡・瑛太・三浦春馬・小栗旬というイケメン四天王がCMで活躍する新発売のスタイリング剤、uno FOG BAR。この商品の販売促進(Promotion)を中心としたマーケティングミックスが実によくできている。
商品のターゲットは恐らく20代前半がメインだとすれば、このCMが往年のビートルズへの見事なオマージュになっているのは分らないかもしれない。だが、それを知らなくともスタイリッシュな映像には間違いなく目を引きつけられるはずだ。惜しげもなくタレントを1つのCMに投入するのがお家芸ともなっている資生堂ではあるが、この4人が集合しているのは何とも豪華で目が離せない。
つまり、AIDMAのAttention(注意喚起)はバッチリだ。
「ワックスにさよなら」という、製品(Product)の本質を突いたコピーもいい。
つまるところ、男性がヘアスタイルを気にするようになったここ四半世紀のスタイリング剤は、髪のホールド感とサラサラ感、そして近年はそこにいかに動きを出すかにのチャレンジである。
ヘアジェルはホールド感抜群であるが直線的に固まってしまう。ムースは自然な仕上がりだがホールドが弱い。スプレーは髪全体が面で固まってしまう。
そんな不満を解消すべく数年前に登場したのがワックスだ。よく伸びる粘着性の素材を髪になじませれば、適度に動きを付けてしっかりホールドできる。しかも、何度でも手ぐしでスタイルを直すこともできる。しかし、如何せんベタベタ感は否めなかった。
「シュッシュッ」という擬音でスプレーよりも大まかな霧を噴き出す様を表現し、イケメンたちが、サラサラ感を残しつつ、自由な形にしっかりホールドした髪を何度でも直せる様子を演じる。「おっ、よさそうかも」と思わせる、AIDMAのInterest(興味喚起)もバッチリである。
この商品の販売促進にはWebサイトにかなり力が入れられている。
新しい使い方と製品特性を理解させるのが欠かせない商品であるため、それをしっかり伝えるために、ヘアスタイリストが実演したり、使い勝手の良さを語ったりしている。興味を持たせてから、実際に「これなら欲しい」と思わせるAIDMAのDesire(欲求喚起)への橋渡しをしっかり担っているのだ。
Webサイトには自分の顔の画像を撮影してアップすると、はめ込み合成で自分が主人公になるオリジナルCMを作れるスペシャルサイトがある。作ったCM動画をメールで人に知らせて共有することもできる。能動的に知人や仲間内へのクチコミ発信者にすればもはや商品を忘れない。AIDMAのMemory(記憶)達成である。やがて店頭で手にして、AIDMAのAction(購買)に至るという設計なのだ。
非常に良くできた製品(Product)を、優れた販売促進(Promotion)が後押しするという構造であるが、さらにそれ以前にターゲティングの絶妙さがWeb サイトでよくわかる。
一見男性向けであるこの商品が、女性が使用するとどんなスタイリングに使えるかというコンテンツがしっかり存在しているのである。
この製品は、メインターゲットは男性であろう。しかし、明確にサブターゲットとして女性を設定している、つまり「ターゲット2倍化作戦」をとっているのだ。
しっかりスタイルが決められて、しかも動きが出せて、何度でも直せるという製品特性は、確かに女性のスタイリングにも最適だ。その製品特性を活かした展開なのである。
女性自らが認知して、試して、購入するというパターンももちろんあるだろう。だが、それ以上に男性からのオススメが発生するように設計がなされているのではないだろうか。
イケメン四天王のCMで女性のAttentionも獲得しておく。そこにWebサイトで製品にInterestを持った男性から「これ、いいかも!」と紹介させるというコミュニケーション設計だ。
オリジナルCM動画も「オレ、こんなの作ったから見てみて!」と男性から女性へのアプローチさせるのにピッタリなツールとして仕掛けているとも考えられる。
女性に勧めた男性はもちろん、購入意志を固める。もしくは既に購入済みである。勧められた女性もCMで認知しているし、店頭で見てみれば、赤・白・水色と3タイプのきれいな商品パッケージは女性にも魅力的に映る。
ターゲットユーザーの従来商品に対するニーズギャップが解消できるたら、それでさらなるターゲットを拡大することができないか考えてみることが極めて重要だ。男性に加え、女性も取り込めれば、最大、ターゲットは2倍である。
ターゲティング→ポジショニング→マーケティングミックスと一通り完成させれば終わりではない。貪欲に、もっと狙えるターゲットはないかと考えることの重要性を一連の展開は教えてくれている。
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正直、べたべたして使えない、新し物好きでカッコいいから買ってはみたけれど。。。
Posted by: keiji | 2009.09.08 10:10 PM