1億本突破!「い・ろ・は・す」はナゼ売れるのか?
コカ・コーラシステムが販売するミネラルウォーターが絶好調で売れているという。確かに特徴のある商品だが、ナゼ、それほどまでに売れるのか?
9月2日、新聞のカラー全面で『あなたと「い・ろ・は・す」が世界を変えはじめました』と題する広告が掲載された。それは同製品の販売1億本突破のお礼であり、「環境にいい」というポジショニングを裏付ける、CO2の削減効果の算出の報告でもあった。
同製品の売れ行きはメディアも報じている。
<「い・ろ・は・す」絶好調!発売後97日で1億本を突破(東京ウォーカー)>
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090902-00000002-tkwalk-ent
ナゼ、これほどまでに売れるのか?環境にいいから?・・・それだけで売れるほど単純なものではない。
はじめに外部環境の影響を考えてみよう。CO2の削減に対する世界的な取り組みが進行している。社会的にもまさに継続性のある環境不可の低い生活をしようという、商品名の由来にもなっているLOHASに注目が集まり、実践も進んでいる。
ミネラルウォーターの市場を考えてみよう。取水地を国内とする製品以外にも、海外勢が多数存在する。取水地から日本まで輸送するために消費される環境負荷「ウォーターマイレージ」を考えれば、国内勢は圧倒的に環境アピール効果が高い。
国内勢の競合に対しても、「い・ろ・は・す」は独自の技術でわずか12gという省資源ペットボトルを実現している。
つまり、エコやLOHASを訴求するには、自社の技術を活かして絶対的に有利なポジションを獲得していることがわかる。
しかし、環境に適応したいい商品(Product)であるというだけで売れるほど世の中は甘くはない。
売れている理由は、コカ・コーラシステムの圧倒的な販売力がバックボーンとなっていることは間違いない。コカ・コーラの力の源泉は、全国に約100万台を展開する自動販売機。街に出れば、そこかしこにあるコカ・コーラの自販機に数フェイス並んでいる「い・ろ・は・す」が目につくだろう。マーケティングミックスの4つのP(Product・Price・Place・Promotion)の一つである、Praise(販路)の強さが売れている理由の一つだ。
価格的には特に安売りをしているわけではない。しかし、上記リンク先の東京ウォーカーの記事に購入者の声が載っている。「520mlという容量にお得感がある」と、競合より増量して割安感で勝負しているのである。Price(価格)も売れる原動力になっている。
Promotionも広告がよくできている。「飲み終わったらクシャッとつぶせる」という製品特性を表わすため、見事なまでにひねり絞られたボトルの上から、緑の葉っぱが顔を出している表現。エコ気分満点である。その効果があって、東京ウォーカーの記事にも「子どもが喜んでボトルをつぶし、資源回収に出してくれる」との声がある。製品や価格だけでない、情緒的な価値も消費者に評価されているのである。
と、ここまでで十分成功要因が挙げられているように見えるが、それだけが大ヒットの理由だろうか。商品が売れるためには、マーケティングミックスの4つのPの整合性が欠かせない。しかし、それ以前に魅力あるターゲットを取り込むことができていることと、そのターゲットから評価されるポジショニングが獲得できていることが重要なのである。
もう一度、振り返って考えてみる。
本当に環境負荷軽減、エコを考えるなら、例え国内取水であっても水道水を浄水して飲んだ方が輸送の環境負荷はかからない。省資源やリサイクルしやすいペットボトルは素晴らしいが、マイボトルを用いてペットボトルを消費しなければ、環境負荷は発生しない。
環境負荷だけではない。マイボトルで浄水した水道水を飲んだ方が、「増量でお得」よりも、もっと自分の財布にやさしい。最近急増している「マイボトル派」なら、そんなことをすぐに考えつくだろう。
「い・ろ・は・す」のポジショニングを二軸のマップで描いてみれば、縦軸がお得感、横軸が環境負荷軽減への貢献となるだろう。「増量でお得で、一番省資源でリサイクルに適したボトル」はミネラルウォーター同士の競合環境では一番有利になる。しかし、「マイボトル」とは比べるべくもない。
しかし、筆者も「マイボトル派」で、SIGのボトルにブリタで浄水した水道水を入れて持ちあるっている。だが、正直白状してしまうと、面倒でなかなか実施に踏み切るまでには時間がかかった。実際にはそんな人は多いはずだ。
「い・ろ・は・す」の売れる理由。それは、「マイボトルほど面倒なことはしたくない。けれど、環境負荷軽減に関してはやはり気になる」というターゲット層が多いからだ。無理なエコは続かない。何より「LOHAS」は「ムリせず継続できること」を重視するものでもあるのだ。その意味で、ターゲット層のニーズをズバリとらえたポジショニングを実現しているのだ。
では、急増中の「マイボトル派」がさらに増えたら、ターゲットの成長性はなくなってしまうのかといえば、その点でも優位だ。マイボトルを何本も持ち歩けないし、時には忘れたり、荷物が多くて持てないこともある。そんな時には「マイボトル派」も「い・ろ・は・す」を選択することになる。
マクロ環境・競争環境・ターゲットとポジショニング・4Pがきれいに整合した「い・ろ・は・す」の快進撃はまだまだ続くだろう。「それゆけ、次は2億本」というところか。
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Comments
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販売店側からしてみれば、TVCMのプロモーション価格分仕入れ価格が高く売りたくない商品です。
競合である、クリスタルガイザーはエコボトル(つぶせないが薄い)で
環境負荷は「いろはす」とほとんど変わりません。TVCMなどのサポートも遜色ありません。
顧客視点もいいですが、販売店視点も大事にしてほしいものです。
Posted by: 有時 | 2009.10.05 07:33 PM