「職人Blog」と「たけしの言葉」が教えてくれること
町の時計店の店主で時計修理職人でもある人物が記しているBlogがある。
「正ちゃんの時計修理blog( http://pub.ne.jp/takaraya/ )」という。
町で長きに渡って商いをしてきた時計店の3代目店主が、閉店後に顧客から預かった時計を修理する。修理は日に1~3つの時計を扱う。その修理の過程と作業の様子が、時に自分の感想やプライベートのことなどを交えつつ、唯々、淡々と綴られているのである。
朝日新聞にも取り上げられた。
<お宝の時計なおします@たからや>
http://mytown.asahi.com/osaka/news.php?k_id=28000000909020002
関西の朝日テレビ「おはようコールABC」でも取り上げられた。
<唯一無二!町の時計屋さん>
http://www.asahi.co.jp/call/maru/main.html
記事によれば、安価な時計を使い捨てる風潮と、大手量販店の進出で、町の時計店は立ち行かなくなると感じ、数年前に技術を学んで修理をはじめたという。
Blogをはじめたのは新しい顧客を獲得しようとしてではない。
<ブログを始めたのは、客から「修理した時計の写真が見たい」と言われたのがきっかけだ。自分の修理の記録にもなると、次第に日々の作業を細かく書き込むようになった(asahi.com)>とのことだ。
真摯な姿勢を見せることで、大量消費という時代の流れや、「安い」「便利」という量販店の攻勢を跳ね返す、「職人としての信頼感」が作り上げられたのである。
町の小さな時計商であり、一人の修理職人でしかない人物が信頼を得て、今では全国から修理の依頼が舞い込むという。「インターネットの時代ならではの成功談」としても解釈できるが、注目すべきはそこだけではない。
店の仕事が終わってから取り組む修理の仕事はさらに集中力を要し、終えた時にはヘトヘトになるという。さらに、その様子をBlogに書き込むのもさらに労を要する。しかし、それらをコツコツと毎日行っている。成功はインターネットというツールの力だけではなく、本人の努力があってこそなのだ。
しかし、もう少し考えてみれば、日々の努力を重ねることは容易ではない。それが実現できているのは、職人魂だったり、職人のこだわりがなせる業なのだろうかとも思う。そして、職人ならぬ我々には実現できないことなのだろうかと。
タレントであり映画監督の北野武氏の言葉がある。
「やるべきことを普通にやる それでいいんじゃないですか? こだわりってそういうことでしょ」
「正ちゃんの時計修理blog」をもう一度見直してみる。
やはり、実に淡々と修理の様子が綴られていることがわかる。目の前に修理を依頼された時計がある。自分には習得した技術がある。その技術で顧客が満足するように修理を施す。
それがBlogという「こだわり」の形になったのだろう。
北野武氏はこうも言う。
「未来というのは結局この一瞬一瞬の積み重ねなんだ。この今の延長に未来がある。遠い未来もこの瞬間の積み重ねなんだよな」
日々淡々と、修理の仕事をこなし、Blogを更新する。それらの積み重ねが、メディアに取り上げられたり、Blogを通じて全国に知られたりして、修理依頼が増える。全ては積重ねの結果なのだ。
「できることを日々淡々と積重ねること」。当り前でも、なかなかできないことの大切さを、時計修理職人のBlogは教えてくれる。
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