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2009.09.11

競合を突き放す「990円ジーンズ」ジーユー・低価格戦略のヒミツ

今年3月、「990円ジーンズ」で衝撃の低価格路線強化を発表したファーストリテイリング傘下のカジュアル衣料品ブランド「ジーユー(g.u.)」。990円ジーンズは日経MJヒット商品番付2009年上期版にもランクインするほどの大ヒットとなったが、流通各社が同等の990円から、さらなる低価格な808円などで巻き返しを図ってきた。
しかし、ジーユーはこの秋の新商品発表でそれらを余裕で突き放す戦略を発表したのである。その狙いと力の源泉はなんだろうか。

990円ジーンズは、今年3月の衝撃のデビューから半年。当初の販売目標であった50万本を倍の100万本に上方修正し、それすらも「目標達成は確実」と同社はメディアに発表している。
市場で大好評を得ているのは、節約志向・低価格志向を強める消費者のココロをとらえているのは間違いないが、そのプライシングの大胆さがウケたのは間違いない。ジーユーブランドのデビュー以来3年間は、言ってみれば鳴かず飛ばずの状態であった。その理由は「ユニクロの価格の概ね2/3」という中途半端なプライシングにあったのだ。
それを、今年3月に「全商品の8割をユニクロの半額以下にする」という大胆な価格改定を行った。その象徴的な存在が990円ジーンズだったのだ。

消費者の低価格志向は当面留まる気配はない。そのため、流通各社も手をこまねいているわけにいかず、対抗的に目玉商品として同等価格のジーンズを相次いで投入してきた。ザ・プライス:980円、ダイエー:808円、イオン:880円。イオンはジーユーと同じ100万本の販売目標を掲げている。
価格比較をすると、一見ジーユーが早くも劣後するポジションに追い込まれているように思えるが、そうなのだろうか。各社と同ブランドの戦略をもう少し深く読み解いてみよう

それを読み解く一つのキーワードが「価格弾力性」。
商品価格の変動に対する需要の変化の大小を示すものであり、価格が下がれば売上げが急増し、上がれば激減する商品は「価格弾力性が高い」といい、その変化が少ないものは「価格弾力性が低い」ということになる。
通常、米などの生活必需品は価格弾力性が低い。同じ食品でも毎日一定量を消費する米と違い、嗜好品的な意味合いの強い飲料などの価格弾力性は高い。また、食品と異なり、保存がきき買いだめができるトイレットペーパーやボックスティッシュなども価格弾力性は高いタイプの商品である。
では、ジーンズはといえば、今日のカジュアルウェアとしては欠かすことができない存在であるが、多少古くなってもはき続けることはできる。従来の5,000円~1万円近くする商品であれば、昨今の景気低迷期には手が出しづらいが、安くなっていればついつい欲しくなる。ということは、価格弾力性が高い商品であることがわかる。

価格弾力性が高い商品は、価格を低下させれば大量の販売が見込める。大量生産・販売すれば、商品1つあたりの固定費率を低減できる「規模の経済」と、変動費率を低減できる「経験効果」が効き、より低価格化が可能となる。これが、各社の戦略の基本である。

価格弾力性の高い商品は、前述の商品の例を見るとわかるとおり、スーパーやドラッグストアなどで「目玉商品」として設定されているものが多い。
目玉商品の設定とは、採算度外視で集客し、他商品の購買を促進することで収益化を図る戦略である。目玉商品を「ロスリーダー」、その価格設定を「ロスリーダープライシング」という。
各社の対応を見ると、イオントップバリュでは880円ワイシャツやネクタイなど、880円衣料を強化しているが、ジーンズとワイシャツ&ネクタイはコーディネートしないし、ダイエーは808円ジーンズと関連する商品は見受けられない。同様にザ・プライスもその後の展開が見えない。とすると、各社の1,000円未満ジーンズの展開は前述の「ロスリーダー」であり、超低価格衣料への本格参入にはまだ踏み込んでいないのではないかと考えられる。

対するジーユーは、「全商品の1/3が990円」「(秋冬物にもかかわらず)トップスとボトムをコーディネートして全身で5,000円以下」と全体としての安さを強調し、競合を突き放す。
安いだけではない。もはや最高品質といっても過言ではないユニクロの品質基準を守る、「ユニクロ生産管理チーム」が常に製品の品質やシルエットを改良しているという。同チームにはユニクロの海外生産拠点で厳しく現地指導を行っている熟練アパレル職人で構成される「匠(たくみ)」チームも参画しているということから本気ぶりがうかがえる。
アパレルのバリューチェーンは大別すると、【商品企画】→【原材料(生地)調達】→【縫製】→【流通】→【販売】という流れになる。
ユニクロ、ジーユーを展開するファーストリテイリングはSPA(衣料品の製造小売り)という業態に早期に転換し成長の軌道に乗った。流通各社もバリューチェーンの最適化に取り組んでいるが、既存業態のしがらみもあって、ファーストリテイリングに追随することは難しいだろう。

一定以上の品質も担保しつつ、低価格を徹底。さらに、商品展開の幅の広さでユーザーのクロスセリング(複数購入)を図ってしっかりと収益を確保する。あまりの低価格さにジーユーの展開はラディカリズム(過激主義)的に映るが、ユニクロとの2枚看板としてファーストリテイリングのポジションをより強固にする戦略に支えられているのである。


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