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2009.08.20

「デュラムおばさん」はサッポロ一番のプロジェクトXか?

上戸彩がイメージキャラクターを務める「デュラムおばさんのカップパスタ」が発売以来好調な売れ行きを見せているという。その開発の背景を考察してみると、並々ならぬ開発の執念が感じられるのである。

「サンヨー食品」という社名を聞いてどんな会社かすぐに思い浮かばない人も多いかもしれない。しかし、「サッポロ一番」と聞けばすぐに即席麺の代表的ブランドを思い出せるはずだ。
サンヨー食品がサッポロ一番を発売したのは1961年。「サッポロ一番味噌ラーメン」は俳優の藤岡琢也が逝去する2年前まで35年間CMキャラクターを務め、その姿と共に人々の記憶に深く刻まれているに違いない。1975年にカップ麺の「サッポロ一番カップスター」をラインナップに加え、以来、即席麺一筋の商品開発を展開してきている。

いや、正確には「即席麺一筋」ではない。
同社の商品ラインナップを見るとよくわかる。袋麺、カップ麺ともに商品名には全て「サッポロ一番」の名が冠してある。その名は初代社長が全国のラーメンを食べ歩いて札幌ラーメンに感動して付けた名だという。サンヨー食品は「即席麺一筋」である以上に、「サッポロ一番一筋」であるのだ。

その一筋さからすると、今回の「デュラムおばさんのカップパスタ」は異例である。確かにパスタに「サッポロ一番」の名を冠するのはイタダケナイ気はするが、創業以来、サッポロ一番の発売以降は期間限定商品などを除けばその名がついていない商品は存在したことがないからだ。

開発には3~4年を要したという。その頃、2002年2月から始まった景気拡大はまだ継続しており、「いざなぎ景気越え」という声も聞かれていた。しかし、企業業績が労働配分に廻されない、「実感できない好景気」に消費者はランチや外食の価格抑制に動きはじめていたのだ。吉野家やすき家の店頭に人があふれている。コンビニ弁当の売れ行きも向上している。
外部環境は追い風だ。低価格で手軽な新商品ををコンビニなどで展開すれば勝機であると踏んだのだろう。そのためにはサッポロ一番だけでなく、商品の幅が欲しい。新商品を開発して既存の顧客に提供したい。そこからがサンヨー食品のプロジェクトXの始まりであったはずだ。

自社の戦力と顧客ニーズと競合環境に目を向けてみる。
手軽なカップ麺製品であれば、ラーメン類に加え定番のカップ焼きそばが挙げられるが、それは「オタフクソース」とのコラボ製品がある。だとすれば、パスタが狙い目である。
しかし、パスタには当時強敵がいた。日清食品の「スパ王」だ。
1分間湯煎でスピーディーにシコシコ食感の生麺が楽しめるというコンセプトのラーメン「ラ王」が市場に衝撃的なデビューを果たした。その派生商品として登場した「スパ王」も、1995年の登場以来「クセになる味」と根強いファンを持っていた。
生麺で人気のスパ王に対して自社にあるのは即席乾麺の技術。生麺に新たに踏み込むのか、即席乾麺で勝負するのか。議論百出だったのか、意外と結論はすぐに出たのか。

8月19日の日経MJ15面コラム「フーズWho」に「デュラムおばさんのパスタ」開発者インタビューが紹介されている。<「即席麺の分野にパスタを根付かせたい」と意欲を見せる>と語り。開発に際して<既存の生麺を使う商品は、麺の中心にコシが残る「アルデンテ」が実現できず不満を感じていた>という。
つまり、すぐに「自社の即席乾麺に技術でいく!」との意志決定がなされたのではないかと推察できる。

しかし、意志決定してもすぐに実現できるとは限らないのがプロジェクトXだ。
<パスタは、小麦のでんぷん質を高温で「改質」して食べられる状態にする。乾パスタは、この改質を施さないまま乾燥してあるので、沸騰した湯でゆでる必要がある>という。火加減、ゆで加減が命なのである。
そこで、同社の即席乾麺の技術が活きる。
ゆでるのではなく、カップ麺の蒸す技術で改質し乾燥させる。それによって5分という短時間、注いだ熱湯の持つ熱量だけでアルデンテができあがるようにしたのだ。
ほかにもパスタならではの苦労を克服したという。本格派のデュラセム種100%にこだわったが、それはコシが強く固い。ラーメンと異なる蒸し方を工夫した。さらに、パスタには丸麺のスパゲッティー以外に、今回商品化されている平麺のフィットチーネなど、ラーメンと異なる様々な形状がある。乾パスタと同じ高圧押し出し製法を取り入れたという。

既存の即席乾麺の技術をパスタに応用する試行錯誤が3~4年続き、地域限定のテスト販売も成功し、この8月、全国展開が行われた。そこで同社には思いもよらなかったであろう幸運が待っていた。
なぜ、取扱がなくなっているのか理由はわからない。しかし、開発当時、超えなければならないと意識した競合である「スパ王」がコンビニ店頭から姿を消しているのだ。「最近発注画面でも見あたらない」とあるコンビニチェーンの店長は姿を消したスパ王を振返る。
わずかに冷凍のスパ王や、レンジで仕上げるタイプがいくつかのチェーンで確認できるだけであった。
開発の努力を重ねて3~4年。完成した時には、店頭の棚にライバルの姿はなかったというわけだ。そのおかげもあって、各店はいくつものフェイスを提供している。
上市の時期もよかった。夏といえばカップ焼きそば類のフェイスが増える。その中で新発売のカップパスタは珍しく、店としてもついつい、棚を多めに用意したくなるのだろう。

自社の得意技、独自技術を一筋にみがいて、さらにそれに改良を加えて市場の勝機をモノにする。サンヨー食品のプロジェクトX、「デュラムおばさんのカップパスタ」に敬意を表しつつ、その姿に学びたいと思った。


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