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2009.08.31

売れる農業・儲かる農業のヒント

農業ビジネス花盛りの今、それがビジネスとして「儲かる」にはどうすればいいのかを考えてみる。

■「加工度」というキーワード

売れる農業・儲かる農業という課題を「新規ビジネスとして、もしくは既存の一次産業としての農業で生産された作物を、より高単価・高付加価値で売ってビジネスとしての成果をあげる」というテーマでとらえ直した時、そのキーワードの一つは「加工度」である。
筆者は過去に、地域活性化プロジェクトに参画したことがある。近隣の競合地域と比べ観光資源に乏しい地域であったため、地場の産物を販売して地域をもり立てようということになった。臨海地域故、海産物が豊富であった。しかし、それが問題で、新鮮な海の幸を武器にしようとした場合、保冷輸送のコストばかりがかかってしまい結局は売れる価格設定ができないのだ。生鮮品の場合、「関サバ・関アジ」のようなブランド化ができなければ、その地方でしか手に入らない珍しい産品でもない限り価格のプレミアム分が消費者に受容されないのである。
一つの解としては、「加工度を上げる」ことが挙げられる。
ゆずの生産で有名な高知県馬路(うまじ)村。山間の村で斜面に植えられたゆずは手入れが大変で、しかも農家は高齢化が進み、手入れをより困難にしている。それ故、出荷時にゆずの果実の等級は低くなってしまい儲けが出なかった。そこで村ではゆずを加工して出荷することにした。搾汁したり、煮たり、乾燥させたりと様々な加工を施した結果、玉で出荷するより加工度が高いため、高単価・高利益となったのである。
(参照:制約条件を活かせ!:馬路村の伝説 )

■加工度と価格プレミアムの関係

消費者に商品がどのような価格が受容されるかは、商品の価値構造と関係する。
例えば、飲料の場合、飲料を手に入れて実現したい「中核的価値」は「喉の渇きをいやせる」ことである。ミネラルウォーターの相場として100円としよう。さらに、清涼飲料は「炭酸でスッキリする」「甘くてオイシイ」「カロリーが低い」など、喉の渇きをどのようにいやせるのかという「実体的価値」が加わる。清涼飲料の平均価格は150円。100円のミネラルウォーターと比較した場合のプレミアム分が50円というわけだ。さらに、いわゆる「トクホ飲料」は189円が相場であるが、一般の清涼飲料より39円分のプレミアムが設定されている。それは、「喉の渇きをいやせる」という中核とは直接関係はないが、「脂肪を燃焼する」「血圧低下が期待できる」などの効果が「付随機能」がプレミアムとなっているのである。
以上のように考えると、加工度を上げるということは、その作物なり産品の中核的価値に実体や付随機能を付け加えていくこと極めて似た関係である。

■加工度向上と知覚品質

加工度向上と価値の追加は似た関係であるが、一つだけ留意したい点がある。それは、価値には馬路村がゆずを搾ったり、煮たり、乾燥させたりと物理的に加工して価値向上を図ることと、消費者が商品・サービスを購入するにあたって感じる信頼性や雰囲気などの「知覚品質」の両面があることだ。
筆者の知人は新潟県南魚沼郡でコシヒカリを生産している。いわゆる「ブランド米」である。彼はそれを農協に出荷すると同時に、独自で顧客に向けて直販も行っている。そして、独自販売の方が高い価値を追加することができているのである。
独自販売の米は「減農薬・合鴨農法」で生産している。完全無農薬にすると、田植え前の除草の手間がかかりすぎるので、一度だけ農薬を散布するという。それは、直接苗にかけているわけではないため、影響は極めて軽微だという。田植え後は、合鴨に除草させるため、自然有機栽培となる。
価値の構造を考えてみる。中核的価値は「おいしい米が食べられる」である。「南魚沼郡産」というブランドが、「おいしい」という価値を裏書き(endorsement)してくれるのが実体価値である。通常であれば、ここまでで十分な価値であるのだが、彼の活動にはさらに付随機能がある。「減農薬・合鴨農法」がそれだ。しかし、その活動の成果が最終製品としての米にどの程度影響を及ぼしているのか、一般の消費者にはほとんどわからないはずだ。にも関わらず、それを価値と考えるのは、生産者の顔が見えて、その生産に対するこだわりに共感しているからに他ならない。つまり、それは工業的な品質向上ではなく、知覚品質が高まっている状態なのである。

■販路という課題

「より高単価・高付加価値で農産物を売る」という課題は上記の通り、加工度を高める。もしくは、知覚品質も含め価値構造を重層化していくことが一つの解である。そしてそのためには直販・通販がその価値を顧客に伝達しやすいことは、合鴨農法・南魚沼産コシヒカリの事例からもわかる。同様に、前掲の馬路村のゆず加工品も通信販売で大きく販売量を伸ばした。
中間に流通チャネルを通さない直販・通販は「ゼロ段階チャネル」といわれる。量販店で販売する。卸を通じて小売店で販売する。一次卸・二次卸を通じて小売店で販売する。それらは、間に入るチャネルの数によって1段階チャネル~3段階チャネルと呼ばれる。
中間にチャネルが入るほど商品の流通スピードは遅くなり、チャネルマージンが上乗せされ、生産者のメッセージが伝わりにくくなり、顧客の声も届きにくくなる。つまり、物流・商流・情報流の3つの大きな流れがいずれもコントロールしにくくなるのだ。
つまり、チャネルを介した販売を行う場合、「価値構造を重層化」は、その価値を顧客と共有するだけでなく、チャネルも理解しファン化するようなしくみがなければ顧客にその価格に見合った価値が伝わらなくなるのである。
しかし、チャネルを介在させる大きなメリットも存在する。それは、市場のカバレッジが高くなるのである。独自に顧客を開拓するのは容易ではない。一方、チャネルは各々が顧客を有している。チャネルの力を使って、その顧客に販売してもらう方が、より数を捌くには適している。
最終的にはこのチャネルの設計をどのようなバランスの上に成立させるかという点が「より高単価・高付加価値で農産物を売る」課題となるのは否めない。

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