ケータイはどう進化するのか?
携帯ショップ運営会社が実施したアンケート調査「携帯電話の現在・未来」の結果から、ユーザーの求めるケータイの進化のカタチを考察する。
調査を行った携帯電話販売と通信サービスを提供するネプロジャパンは、「調査会社とは違った視点」にこだわり、携帯コアユーザーの生の声を定期的にレポート発信している。今回のレポートは「携帯電話の現在・未来」として、ユーザーの携帯電話に対する満足度や要望を明らかにした。
<レポートPDF> http://files.nepro.jp/jp/mobile/pdf/72.pdf
レポート中で注目すべきは、<(実現性は別として)次のうち最も魅力的な携帯電話は何ですか?>という項目。「落としても壊れない携帯電話(34%)」、「自分でデザイン・設計できる携帯電話(20%)」「同時通訳してくれる携帯電話(18%)」という選択項目が上位となった。他に自由回答としては、「パソコン並の大容量を使ったり送受信したり出来る」「プリンター機能」「話し相手になってくれる携帯」「ホッカイロ機能」「蚊取り付き携帯」などが目につく。
製品の価値構造を分析するP.コトラーのフレームワーク「製品特性3層モデル」で上記回答を分類してみると興味深いことがわかる。
その製品を手に入れることで実現したい中核たる便益を「中核価値」という。
携帯電話であれば、「外にいて移動しながら通話できる」がそれにあたる。1999年2月にNTTドコモによってiモードが開始されて以来、中核に「ブラウジング」と「メール」が加わった。
このように、製品の価値は時代の要請とテクノロジーの進化で変化を遂げる。
では、次に求められるのは何なのか。「パソコン並の大容量送受信」などは、中核に加えられよう。現実にiPhoneやアンドロイド携帯をはじめとしたスマートフォンは、携帯とパソコンの垣根をを消失させつつある新たな進化である。
しかし、注意しなければならないのは、ターゲットユーザーを誰に設定するかによって、求められる価値が異なることだ。「自分でデザイン・設計できる」は、現在のユーザーが全てを扱うことができないほど高度化した機能を、自ら選択してシンプル化したいという要望の現れであるともいえよう。「シンプル・カスタマイズ携帯」も求められる一つのカタチであることは間違いない。
中核たる便益を実現するために欠かせない価値を「実体価値」という。
通話にしろ、ブラウジング、メールも、つながらなければ始まらない。故に、「いつでもつながる」が「実体価値」である。その点については他項目の不満足状況で「通信状態が悪い(9%)」となっていることから、実体価値は実現されていることがわかる。
その他、回答中の「落としても壊れない」は、使用し続けるために欠かせない実体価値として多数のユーザーから求められている重要な要素であることがわかる。
現在のところ、落とす以外の壊れるパターンである水没・水濡れは、防水携帯の普及が進んでいることから、今後、ユーザーニーズに応えるためにはさらなる普及が求められる。加えて、落としても壊れないという、ヘビーデューティーの実現が望まれる。ノートPCでは、机の上の高さから落としても壊れない耐衝撃性を各社競い合っている。携帯電話は立って使ったり、ポケットに入れて歩いたりするため、より高い耐衝撃性を求めるのはユーザーの真情である。メーカーの努力に期待したい。
その要素がなくとも中核価値は実現できるが、それがあることによってより魅力的になる要素を「付随機能」という。
アンケート中の回答には大きく2つのパターンがある。「プリンター機能」などは、メール、ブラウズなどの中核価値をさらに高める付随機能としてわかりやすい。
おもしろいのが、「話し相手」や「ホッカイロ機能」「蚊取り付き」だ。見事に中核価値と全く関係がない。しかし、それらを求める人もいる。ケータイは24時間いつでも自分の最短距離にある存在だ。だとすれば、生活に必須な要素を盛り込んで欲しいと考える人も存在するだろう。それが、ある人は話し相手であり、ポケットの中で手を温めてくれるカイロであり、首から提げれば蚊を寄せ付けない蚊取り線香の機能なのだ。ここは、いかにユーザーの声を拾い集めるかがキモになるということだろう。
アンケートから見えてきたユーザーが求める「携帯電話の現在・未来」。
一つは、高機能なスマートフォンの方向性。そして、それをさらに便利にする周辺の機能である。プリンタなどは内蔵ではなくとも、auのiida・G9が専用のコンパクトなプロジェクターをオプションとして発売したような形態も考えられるだろう。ケータイとパソコンとの垣根は今後ますます消失していくことは間違いない。
もう一つは、シンプルにして頑丈。そして、ユーザーが個別カスタマイズできるケータイだ。ユーザー自身が理解できないような機能は自分で取捨選択・設計して削ぎ落とすことができ、納得して持ち歩くことができる。決して壊れることなく、常に身近で活躍する自分の相棒のような存在である。それは、現在のメーカーが考えている複雑な付随機能とは別の、極めてシンプルではあるが、携帯電話と全く関係のない身近な便利機能が求められているという事実だ。相棒に何を求めるか。寒い時には手を温め、夏には蚊を追い払うなど、それはユーザーによって十人十色なので、ターゲットユーザーの分析とニーズの見極めが欠かせない。
技術の進歩によってケータイの実現可能性は大きく高まってきた。しかし、それがユーザーのニーズと乖離しないように、ユーザーの求める価値提供がなされることが、「携帯電話の現在・未来」には重要なのだ。
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