オトコ化を加速する「爽健美茶」
「爽やかに、健やかに、美しく」。女性から圧倒的支持を集めるブレンド茶のトップブランド、爽健美茶がオトコ化を加速している。その背景にあるものは何だろうか。
「ハトムギ・玄米・月見草~」。商品名を聞いただけでフレーズが浮かぶCMソング。キャラクターは歴代、どこかピュアさを秘めた女性タレントが務め「爽やかに、健やかに、美しく」とのブランドコンセプトを体現する。美しくありたいオンナゴコロを見事にとらえ、ブレンド茶カテゴリーの7割を超えるシェアを誇っている。
そんな爽健美茶に異変が起きたのは今年に入ってのこと。CMキャラクターに竹野内豊が加わったのだ。モデルの杏は昨年からの続投。CMソングを歌うシンガーの福原美穂と女性キャラクター健在だが、男性が単独で起用されたのは14年間のブランドの歴史で初めてのことだ。この時点でターゲットを男性にまで拡大したことが推測できた。
ボトルネックにプレミアムを付けるのはコンビニエンスストアでの清涼飲料の定番的販促である。総付景品といわれる購買を刺激するためのオマケ。いかに低コストでセンスのいいものを考えるかが担当者の腕の見せ所である。例えば、サントリーの伊右衛門は和風テイストたっぷりの手ぬぐいを付けたり、京都の有名な飴を付けたりと、ブランドの世界観を高める効果的な販促を展開している。
そのベタ付けキャンペーンで爽健美茶はこの夏、さらに男性層獲得を強化する展開を密かに行っている。総付け景品は「ゾイド」のフィギュア付きストラップ。「ゾイド」とは1980年代前半にトミー(現タカラトミー)が販売していた動物型ロボットの玩具である。日米欧豪で発売され一大ブームを巻き起こし、80年代後半にはファミコンソフト化され、90年代後半にはアニメ化もされた。つまり、30歳代中盤から40歳ぐらいの男子にとっては懐かしいことこの上ない存在なのだ。
最後の仕上げは新製品の発売である。ニュースリリースは以下のようにある。
<-発売15周年を迎える「爽健美茶」から、男性向けの新商品が登場- 「爽健美茶 黒冴(くろさえ)」 8月31日(月) 新発売 健康黒素材を配合、カラダをしゃきっと冴えさせる烏龍ブレンド茶 ><健康意識が高く、忙しく働く30~40代の男性をターゲットにした新製品>。前述の総付け景品のターゲットとピッタリ一緒。本格的男性ターゲット商品の登場である。
竹野内豊のCMで、「爽健美茶は男性が飲んでもおかしくないんだよ~」というと訴えかけて、消費者のパーセプションを変化させる。ゾイドの景品を付けて、ターゲットの男性に購買させる。フィギュアは8種類あるという。何度か続けて購買する人も多いだろう。そうこうして、本格的に男性を狙った新商品が投入されるころには、男性も爽健美茶=女性向けという購買に対する抵抗感がすっかり薄れているという寸法だ。
カテゴリーシェアを7割も獲得していたら、ターゲット層を広げなくてはもはや成長は望めない。しかし、既存ターゲットと乖離した新たなターゲットを取り込むことは、既存ターゲット層の離反の危険性もはらんでいる。それをおして展開する理由はなんだろうか。
日本コカ・コーラには爽健美茶以外にブレンド茶カテゴリー商品に「からだ巡茶」がある。2006年5月の発売と同時に、目標を3割上回る売れ行きを記録し、2年経っても衰えることがなかったという。女性ターゲットはからだ巡茶に任せて、爽健美茶はターゲット拡大をしてさらなる成長を目指す戦略が見えていた。
一つの誤算は、からだ巡茶とかなりポジショニングがかぶる、キリンビバレッジの「潤る茶」が、昨年のリニューアル以来、絶好調であることだろう。リニューアル発売以来、2ヶ月で100万ケース突破を記録し、快進撃が続いている。爽健美茶とからだ巡茶の2枚看板で万全な、日本コカ・コーラのブレンド茶カテゴリーに見事に切り込んだのである。
女性向けとしてはからだ巡茶をさらに強化し、潤る茶との直接対決に注力する。一方で、爽健美茶はターゲット拡大。ブランドの役割を明確にしてカテゴリーシェア7割という牙城を死守するのが、一連の展開の理由であると考えられるのである。
CMや景品、そして新製品。消費者がなにげなく触れているマーケティング施策の裏側には、メーカーの深謀遠慮が隠されている。そんな裏側をのぞきながら商品を手に取ってみると、いつもの品物もちょっと違った表情に見えてくるのではないだろうか。
« ロッテリア返金保証とマクド0円コーヒーに見る選択と集中 | Main | 地味にあなたを待ち受ける「駅ナカ自販機」の戦略 »
« ロッテリア返金保証とマクド0円コーヒーに見る選択と集中 | Main | 地味にあなたを待ち受ける「駅ナカ自販機」の戦略 »





















Comments