TOSHI × ロート製薬=1粒で3度オイシイ!
目薬発売100周年のロート製薬。同社が展開する様々な社会貢献とキャンペーン。目玉はX JAPANのTOSHIが歌うキャンペーンソング。そのコラボレーションはCSRとマーケティングのお手本のような展開である。
ロート製薬といえば、現在30品目以上の目薬を発売し、OTC医薬品(薬局・薬店で購入できる医薬品)の目薬市場ではトップシェアを誇っている。そして、業界リーダー企業として、国内外において、目を大切にしようという「アイケア」啓蒙活動として疾病予防や視覚障害者支援、医療研究者助成などの数多くの社会貢献活動を展開してきた。
ロート製薬がが当時流行していたトラホームなどの眼病治療のため「ロート目薬」を発売したのは創業10年目の1909年のこと。今年は創業110周年、目薬発売100周年にあたる。
そんな同社は4月から「Look Next ~みるみる、次の喜びを~」と称する「目薬発売100周年」の取り組みをはじめ、一層の社会貢献を展開中である。
その取り組みは大きく3本の柱からなっている。従前の対外的な社会貢献にはより一層注力しつつ、社員による点字絵本の制作やアイバンク登録の勉強会など、さらに社内的な啓蒙活動にも注力していることが特徴的である。もう一つが企業広告。「Look Next ~みるみる、次の喜びを~」のコンセプトに従いTOSHIが楽曲「大切なもの」を提供。CMソングとして歌い上げるている。
同社の取り組みの素晴らしいところは、単に「目を大切に」と啓蒙するだけではなく、視覚障害者への支援を通じて、「見えないことを理解した上で、見えることを大切にしよう」と訴えかけていることだ。
但し、支援活動は一過性のものでは意味がない。社会に貢献する活動も、企業自身に何らかの効用がなければ長続きはしない。その点、ロート製薬の取り組みは自社のブランド価値向上に貢献しているといえるだろう。価格で勝負しない「非価格対応」はリーダー企業の定石であるが、同社がトップシェアを持つ目薬業界においては価格競争が勃発していない。ブランド価値を確立したリーダーが存在していなかったり、リーダーが脆弱だったりする場合、業界全体が価格競争の負のスパイラルに突入する。
ブランド価値向上だけでなく、間接的に収益に貢献する効果もある。目を大切にするという「アイケア」に対する消費者の意識が向上し、眼病予防、花粉対策、コンタクト対応等、様々な薬効を持った製品を展開し、目薬シェアトップの同社製品が自然と売れていくコトになる。リーダー企業の「周辺需要創造」という戦略の定石でもある。
実のある社会貢献を展開する。
さらに、それを継続的に展開できるよう、企業の収益活動にも寄与するしくみとして設計する。ここまでで、同社の取り組みが1粒で2度オイシイことがわかる。
さらにもう1つオイシイことがあるのだ。
同社の取り組みにおいては、社内的な効果も見逃すことができない。
単体で1200人を超える社員を抱えるロート製薬が、全社社員旅行を開催した。同社の公開情報ではないが、実はTOSHIのBlogにその記述がある。
<暑い沖縄熱いロート製薬の皆さん>
http://ameblo.jp/blog-toshi/entry-10293631373.html
<昨日、ロート製薬の全社員が集う創立110周年記念ツアーイン沖縄のスペシャルイベントでのシークレットライブのために沖縄入りしました><夜の特設ステージでのコンサートはホントにもの凄すぎるほど盛り上がって、最高でした!><「大切なもの」の大合唱はホントに感動だった><ロート製薬さんのルックネクストキャンペーンCMで「大切なもの」がテーマソングとしてオンエアされてますが、山田会長、吉野社長はじめホントに素敵なハートフルな熱いそして若さあふれる会社。楽しく感動的な沖縄の激しい熱い夜でした><ロート製薬の皆さん、ありがとうございました>。
全社員を沖縄に集結させ、TOSHIを呼んでライブをさせ、活動のテーマソングを全員で大合唱させる。なんという一体感醸成。
社会貢献活動を本社が企画し展開するも、末端の社員は全く関与しなかったり、あまつさえ何をやっているか知らなかったりということも少なくない。ロート製薬の社員は大合唱の熱狂の中にも、自社の活動を深く意識したに違いない。
実のある貢献活動、それを支える収益化のしくみ、末端の社員までの浸透策。ロート製薬の取り組みは、1粒で3度オイシイ、グッドスパイラルを創り出すしくみであるといえる。