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14 posts from July 2009

2009.07.28

TOSHI × ロート製薬=1粒で3度オイシイ!

目薬発売100周年のロート製薬。同社が展開する様々な社会貢献とキャンペーン。目玉はX JAPANのTOSHIが歌うキャンペーンソング。そのコラボレーションはCSRとマーケティングのお手本のような展開である。

ロート製薬といえば、現在30品目以上の目薬を発売し、OTC医薬品(薬局・薬店で購入できる医薬品)の目薬市場ではトップシェアを誇っている。そして、業界リーダー企業として、国内外において、目を大切にしようという「アイケア」啓蒙活動として疾病予防や視覚障害者支援、医療研究者助成などの数多くの社会貢献活動を展開してきた。

ロート製薬がが当時流行していたトラホームなどの眼病治療のため「ロート目薬」を発売したのは創業10年目の1909年のこと。今年は創業110周年、目薬発売100周年にあたる。
そんな同社は4月から「Look Next ~みるみる、次の喜びを~」と称する「目薬発売100周年」の取り組みをはじめ、一層の社会貢献を展開中である。
その取り組みは大きく3本の柱からなっている。従前の対外的な社会貢献にはより一層注力しつつ、社員による点字絵本の制作やアイバンク登録の勉強会など、さらに社内的な啓蒙活動にも注力していることが特徴的である。もう一つが企業広告。「Look Next ~みるみる、次の喜びを~」のコンセプトに従いTOSHIが楽曲「大切なもの」を提供。CMソングとして歌い上げるている。

同社の取り組みの素晴らしいところは、単に「目を大切に」と啓蒙するだけではなく、視覚障害者への支援を通じて、「見えないことを理解した上で、見えることを大切にしよう」と訴えかけていることだ。
但し、支援活動は一過性のものでは意味がない。社会に貢献する活動も、企業自身に何らかの効用がなければ長続きはしない。その点、ロート製薬の取り組みは自社のブランド価値向上に貢献しているといえるだろう。価格で勝負しない「非価格対応」はリーダー企業の定石であるが、同社がトップシェアを持つ目薬業界においては価格競争が勃発していない。ブランド価値を確立したリーダーが存在していなかったり、リーダーが脆弱だったりする場合、業界全体が価格競争の負のスパイラルに突入する。
ブランド価値向上だけでなく、間接的に収益に貢献する効果もある。目を大切にするという「アイケア」に対する消費者の意識が向上し、眼病予防、花粉対策、コンタクト対応等、様々な薬効を持った製品を展開し、目薬シェアトップの同社製品が自然と売れていくコトになる。リーダー企業の「周辺需要創造」という戦略の定石でもある。

実のある社会貢献を展開する。
さらに、それを継続的に展開できるよう、企業の収益活動にも寄与するしくみとして設計する。ここまでで、同社の取り組みが1粒で2度オイシイことがわかる。
さらにもう1つオイシイことがあるのだ。

同社の取り組みにおいては、社内的な効果も見逃すことができない。
単体で1200人を超える社員を抱えるロート製薬が、全社社員旅行を開催した。同社の公開情報ではないが、実はTOSHIのBlogにその記述がある。

<暑い沖縄熱いロート製薬の皆さん>
http://ameblo.jp/blog-toshi/entry-10293631373.html

<昨日、ロート製薬の全社員が集う創立110周年記念ツアーイン沖縄のスペシャルイベントでのシークレットライブのために沖縄入りしました><夜の特設ステージでのコンサートはホントにもの凄すぎるほど盛り上がって、最高でした!><「大切なもの」の大合唱はホントに感動だった><ロート製薬さんのルックネクストキャンペーンCMで「大切なもの」がテーマソングとしてオンエアされてますが、山田会長、吉野社長はじめホントに素敵なハートフルな熱いそして若さあふれる会社。楽しく感動的な沖縄の激しい熱い夜でした><ロート製薬の皆さん、ありがとうございました>。

全社員を沖縄に集結させ、TOSHIを呼んでライブをさせ、活動のテーマソングを全員で大合唱させる。なんという一体感醸成。
社会貢献活動を本社が企画し展開するも、末端の社員は全く関与しなかったり、あまつさえ何をやっているか知らなかったりということも少なくない。ロート製薬の社員は大合唱の熱狂の中にも、自社の活動を深く意識したに違いない。

実のある貢献活動、それを支える収益化のしくみ、末端の社員までの浸透策。ロート製薬の取り組みは、1粒で3度オイシイ、グッドスパイラルを創り出すしくみであるといえる。

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2009.07.27

地味にあなたを待ち受ける「駅ナカ自販機」の戦略

駅ナカにある飲料の自動販売機。それはただ置いてあるのではない。ただ静かに設置してあるのではなく、いつ、誰に、どう買わせるか?商売のキモともいうべき設計がきちんとなされているのである。

JR東日本管内の自動販売機にポスターが掲出されて、キャンペーンが展開されている。「ホテルのソトアサ オフィスのセキアサ」。
ニュースリリースによると<自販機を利用する多くのお客さまが通勤・通学時間帯であることから、“朝の過ごしかた”を今回のプレゼントとして提案>する意図だという。景品は「メトロポリタンホテルズ共通朝食券」やオフィスの自席で朝食を摂る時に飲料の保温・保冷に使える<アイス・ホット両対応USBカップクーラー&ウォーマー>。
何気ないキャンペーンだが、このキャンペーンテーマは駅ナカ自販機戦略の本質を明確に表わしている。

駅ナカ自販機の運営会社はJR東日本ウォータービジネス。JR東日本の株主総会で40歳代子会社社長が続々登場して話題になったが、その一人、田村修氏(41歳)が二代目社長を務めることとなった企業である。社長としては二代目であるが田村氏は2006年8月のウォータービジネス社立ち上げ時点から携わってきた立役者である。JR東日本管内ではなじみ深いミネラルウォーターの『名水「大清水(おおしみず)」』を『谷川連峰の天然水「From AQUA(フロムアクア)」』にリニューアルして、「大清水」の3倍・年120万ケースの販売に成長させた立役者でもある。

JR東日本ウォータービジネスの最大の特徴は、今回のキャンペーン主旨にもあるように「自販機を利用する多くのお客さまが通勤・通学時間帯であること」という、ターゲットと購買機会を明確にしている点にある。駅のホームや構内という恵まれた顧客接点をおさえている故にできる戦略ではあるが、その選択と集中は見事である。
TPOで考えれば、Time(時間)は通勤・通学の途中、朝である。Place(場所)とoccasion(場面)は電車に乗る前、乗り換え時に喉を潤す。または、駅を出る前に職場や学校で飲む物を購入する。
STPせ考えれば、セグメンテーション(S)は通勤・通学をする人、ターゲット(T)は毎日その自販機の前を通りかかる人、ポジショニング(P)は忙しい時間に手間なく最適な商品を購入できる。

自販機で取り扱っている商品は、そのTPO・STPを整合させる提案型商品となっており、それによって、よりターゲットを拡大してポジショニングを明確にする効果を発揮している。
同社がこだわるのは「朝」だ。
各飲料メーカーとコラボレーションして、専用商品を開発し、自販機で販売している。
伊藤園と共同企画して誕生した緑茶「朝の茶事」。カゴメとは野菜ジュース「朝にすっきり野菜と果実」。日本コカ・コーラとはコーヒー「ジョージアキックオフ 」。アサヒ飲料ともコーヒーの「朝のカフェオレ」を作った。全て「朝」がテーマで、一貫してポジショニングを強化している。
とりわけ、2007年5月に初の共同企画商品として投入された「朝の茶事」は価格面でも特徴を出している。価格140円。自販機で販売されている他の飲料より10円安い。コンビニエンスストアに立ち寄り、期間限定などで割引されている商品をわざわざ購入するのでない限り、わずか10円であるが、確実に安い。事実、その理由から通勤・通学途上にこの商品を買うという人も多い。囲い込み策として効果を上げているわけである。

自販機はその存在自体が売り場でもあるが、同社はその売り場の魅力を高める努力も昨年秋から展開している。JR東日本管内に1万台設置されているという自販機を全て「acure」ブランドに統一している。デザインを統一し視認性を高め、さらに自販機の横にスリムな空容器投入口も設置した。ペットボトル、缶、ビンと3つに分かれた投入口は使いやすく、ホームや駅構内でさっと飲んでスッと捨てるという人の利便性を向上させているのだ。

なにげな~く置かれている駅の自販機。地味ながら、そこには様々な設計や工夫がなされているのである。


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2009.07.24

オトコ化を加速する「爽健美茶」

「爽やかに、健やかに、美しく」。女性から圧倒的支持を集めるブレンド茶のトップブランド、爽健美茶がオトコ化を加速している。その背景にあるものは何だろうか。

「ハトムギ・玄米・月見草~」。商品名を聞いただけでフレーズが浮かぶCMソング。キャラクターは歴代、どこかピュアさを秘めた女性タレントが務め「爽やかに、健やかに、美しく」とのブランドコンセプトを体現する。美しくありたいオンナゴコロを見事にとらえ、ブレンド茶カテゴリーの7割を超えるシェアを誇っている。

そんな爽健美茶に異変が起きたのは今年に入ってのこと。CMキャラクターに竹野内豊が加わったのだ。モデルの杏は昨年からの続投。CMソングを歌うシンガーの福原美穂と女性キャラクター健在だが、男性が単独で起用されたのは14年間のブランドの歴史で初めてのことだ。この時点でターゲットを男性にまで拡大したことが推測できた。

ボトルネックにプレミアムを付けるのはコンビニエンスストアでの清涼飲料の定番的販促である。総付景品といわれる購買を刺激するためのオマケ。いかに低コストでセンスのいいものを考えるかが担当者の腕の見せ所である。例えば、サントリーの伊右衛門は和風テイストたっぷりの手ぬぐいを付けたり、京都の有名な飴を付けたりと、ブランドの世界観を高める効果的な販促を展開している。
そのベタ付けキャンペーンで爽健美茶はこの夏、さらに男性層獲得を強化する展開を密かに行っている。総付け景品は「ゾイド」のフィギュア付きストラップ。「ゾイド」とは1980年代前半にトミー(現タカラトミー)が販売していた動物型ロボットの玩具である。日米欧豪で発売され一大ブームを巻き起こし、80年代後半にはファミコンソフト化され、90年代後半にはアニメ化もされた。つまり、30歳代中盤から40歳ぐらいの男子にとっては懐かしいことこの上ない存在なのだ。

最後の仕上げは新製品の発売である。ニュースリリースは以下のようにある。
<-発売15周年を迎える「爽健美茶」から、男性向けの新商品が登場- 「爽健美茶 黒冴(くろさえ)」 8月31日(月) 新発売 健康黒素材を配合、カラダをしゃきっと冴えさせる烏龍ブレンド茶 ><健康意識が高く、忙しく働く30~40代の男性をターゲットにした新製品>。前述の総付け景品のターゲットとピッタリ一緒。本格的男性ターゲット商品の登場である。

竹野内豊のCMで、「爽健美茶は男性が飲んでもおかしくないんだよ~」というと訴えかけて、消費者のパーセプションを変化させる。ゾイドの景品を付けて、ターゲットの男性に購買させる。フィギュアは8種類あるという。何度か続けて購買する人も多いだろう。そうこうして、本格的に男性を狙った新商品が投入されるころには、男性も爽健美茶=女性向けという購買に対する抵抗感がすっかり薄れているという寸法だ。

カテゴリーシェアを7割も獲得していたら、ターゲット層を広げなくてはもはや成長は望めない。しかし、既存ターゲットと乖離した新たなターゲットを取り込むことは、既存ターゲット層の離反の危険性もはらんでいる。それをおして展開する理由はなんだろうか。
日本コカ・コーラには爽健美茶以外にブレンド茶カテゴリー商品に「からだ巡茶」がある。2006年5月の発売と同時に、目標を3割上回る売れ行きを記録し、2年経っても衰えることがなかったという。女性ターゲットはからだ巡茶に任せて、爽健美茶はターゲット拡大をしてさらなる成長を目指す戦略が見えていた。
一つの誤算は、からだ巡茶とかなりポジショニングがかぶる、キリンビバレッジの「潤る茶」が、昨年のリニューアル以来、絶好調であることだろう。リニューアル発売以来、2ヶ月で100万ケース突破を記録し、快進撃が続いている。爽健美茶とからだ巡茶の2枚看板で万全な、日本コカ・コーラのブレンド茶カテゴリーに見事に切り込んだのである。
女性向けとしてはからだ巡茶をさらに強化し、潤る茶との直接対決に注力する。一方で、爽健美茶はターゲット拡大。ブランドの役割を明確にしてカテゴリーシェア7割という牙城を死守するのが、一連の展開の理由であると考えられるのである。

CMや景品、そして新製品。消費者がなにげなく触れているマーケティング施策の裏側には、メーカーの深謀遠慮が隠されている。そんな裏側をのぞきながら商品を手に取ってみると、いつもの品物もちょっと違った表情に見えてくるのではないだろうか。

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2009.07.22

ロッテリア返金保証とマクド0円コーヒーに見る選択と集中

立て続けに世間をあっと言わしめた、ロッテリアの「絶妙バーガー返金保証制度」とマクドナルドの「プレミアムローストコーヒー無料配付」。奇策に見えるが、両社の事情を考えると、極めて忠実に商売の基本に則った戦略であることがわかる。

売上げ=客数×客単価。
イロハのイであり、基本のき。アタリマエすぎる話である。しかし、そのバランスをどこに求めるかは、各企業が腐心するところだ。そのバランスをどう取ろうとしているのかを読み解いて、返金保証と0円コーヒーの狙いを考えてみよう。

■客数を増やせ!

まずはマクドナルド。かつてマクドナルドは59円バーガーなどによる価格破壊によって「デフレ時代の勝ち組」と言われたが、その後、収益性の悪化で長く苦しんだ。つまり、客数を追い求めすぎて客単価が低下した結果であり、同社にとっては一種のトラウマである。
一方、最近の動きでは、客単価は高価格のクォーターパウンダーがヒット中であり、さらにそれを押し上げる「日本バラ色計画」のキャンペーン効果があがっている。しかし、7月10日に発表された6月の販売実績は、売上高は既存店ベースで前年同月比4.4%減。1年2ヶ月ぶりの前年実績割れである。その内訳を見ると、客単価は1.0%の微増ながら客数が5.4%減と2ヶ月連続ダウンとある。つまり、現在は客数向上が課題である。
会長兼社長兼CEO・原田泳幸氏も明言している。7月2日の「IT Japan 2009」特別講演において「選択と集中戦略」として「新規顧客獲得」「投資の継続」「People Excellence(人材)」を挙げ、中でも顧客数を増やすことに高い優先順位を付けると述べた。

■タダより効果的なものはない!

新規顧客をどこから集めるのか。マクドナルドを知らない人はいない。故に「知っているけど来店しない人」を集めるのだ。昨年からマクドナルドが力を入れているのが「コーヒー」。ホットもアイスもプレミアムコーヒーへとレベルアップさせ、消費者から好評である。スターバックスなどのカフェのコーヒーを上回る評価を集めているアンケート結果もある。
「0円コーヒー」の狙いはズバリ、お試しをさせ、スターバックスやタリーズ、ドトールなどカフェの客をぶんどって、自店に定着させることである。
昨年のアイスプレミアムコーヒーの発売時に、いくつかの店舗では店先や周辺で「お試し」として、コーヒーの街頭配布が実施されていた。「0円コーヒー」は今回が初めてではない。但し、違いは今回は、店で提供すること。道行く人に配布するのではなく、店舗に来させて一人一人に手渡す。
同社はメニューの見直しと同時に店舗改装にも力を入れている。一昔前のプラスチック製の什器や子供好みのカラフルな店は都市部ではもはや少数派だ。シンプルで機能的な店内。特にお一人様席などは意外にも居心地がいい。逆に、ソファーがなくなり、席も詰め込み気味な、サードプレイス感を喪失したカフェを考えると「これで十分じゃん!」と感じてしまう。それ故、店に呼び込んで、味を試させ、店内の雰囲気をわからせることが重要なのだ。
もちろん、0円コーヒーと共に他商品を注文させるクロスセリングを狙っているという見方もできるが、無料配付時間の8:00~9:00は100円、120円メニューやサイドメニューが乏しいため、まずは0円でも来客させることが主目的であると考えて間違いないだろう。

■客単価を増やせ!

0円でシンプルに集客を図るマクドナルドと比べると、ロッテリアの返金保証は少々クセ球だ。ロッテリアは昨年の「絶品バーガー」の成功で、業績回復の兆しが見えたものの、その後、低価格競争に巻き込まれ、競合に顧客が流出するという事態を迎えた。そのため、5月にハンバーガーやドリンクを値下げし自社顧客奪還をかけた。バンズや具材を変更し低価格化を実現。競合、特にマクドナルドのセットメニューより常に安い価格を設定したのだ。
しかし、永遠に低価格路線を続けては、収益的に疲弊してしまう。そこで、今回の勝負をかけたのだ。ロッテリアに過ぎたるともいえる至宝は、絶品バーガーを開発したフランス料理の奇才、嶋原シェフ。その手によって、さらなる傑作、「絶妙バーガー」が誕生した。
「おいしくなければ返金」と、実際に味が問題で返金を求めてくる客はほぼ皆無に近いことはロッテリアはわかっていたはずだ。純粋な言いがかりや愉快犯だけであれば、極めて数少ない。それよりも、世に喧伝される効果が高い。
低価格メニューに加え、そのメニューを目当てに来店する高単価客を集客する。そして、全体としての客単価を向上させる。近年、マクドナルドが最も腐心している、高低単価メニューのバランスをうまく取る「マージンミックス」の手法をロッテリアも取り入れるための切り札が、「絶妙バーガー」であり、さらにそれを加速させるための「返金保証」なのである。

売上げ=客数×客単価。アタリマエすぎて全ての商売に当てはまるではないかとの論もあろう。しかし、ついつい、二兎を追ってしまうのが実情だ。そんな中、返金保証と0円コーヒーの裏の意図は、両社の課題を解決する狙いが絞り込まれていたのである。
奇策を真似るのではなく、その「選択と集中」に学びたい。

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2009.07.21

オオカミの皮を被るヒツジ・はるさめヌードルの妙

「カロリーバランスとってる?」44歳にして引き締まった肉体美を誇る俳優・ミュージシャンの高橋克典がCMで語りかけるエースコックの「はるさめヌードル」。そのポジショニングが絶妙なのだ。

エースコックが「スープはるさめ」を発売したのが2001年。翌2002年に「はるさめヌードル」が発売された。はるさめシリーズは同社のドル箱商品であるが、その発売はエポックメイキングなできごとであったといえるだろう。なぜなら、エースコックといえば、1988年に「大盛りいか焼そば・スーパーカップ1.5」を発売した、今日に続く、「大盛り・がっつり系カップ麺」のパイオニアでもあるからだ。
はるさめシリーズの特徴は何といってもローカロリーであること。スープはるさめは90kcalから多くても150kcal未満。はるさめヌードルも140kcalから200kcal未満。ちなみに、コンビニのおにぎりが1個150kcalから200kcalだと思えばいい。おにぎり1個では寂しすぎるが、麺類1杯食べてそれなりの満足感が得られるのがこの商品のポイントなのだ。

もともとは、お昼休みの女子社員の「カロリー気になるけど、麺類食べたいの~」という切なる願いに対応するべく登場した。スープはるさめは今も「ワンタン」「かきたま」「野菜とわかめ」など、あっさり味中心のラインナップである。一方のはるさめヌードルは「豚キムチ」など、オトコ系がっつり味を充実させてきた。そのラインナップにターゲットユーザーの切なる願いと、それに対する商品の明確なポジショニングが現れている。

「特定健診・特定保健指導」。つまり「メタボ検診」が始まったのは2008年のこと。はるさめヌードルの発売はその遙か以前である。別段、法律に定められた健康診断で、「あなたはデブです」「あなたはデブ予備軍です」などと指摘されなくても、誰しも自分のカラダのことはよくわかる。ぷっくりでっぷりしたおなか。大胸筋じゃない、揺れる胸板。パンツに乗っかる腰まわりのでっぱり。ワタシ脱いだら凄いンです・・・。
そこで、『女もすなる「超低カロリーはるさめ食」といふものを、男もしてみむとてするなり』と、はるさめに興味を示したイノベーティブな男性ターゲットをいち早くとらえ、ポジショニングを変更したのである。

ポジショニングマップで表わすならば、縦軸が↑「がっつり味」↓「あっさり味」。横軸が →「健康第一!」←「不健康上等!」といったところだろうか。スープはるさめは「あっさり味」×「健康第一!」のポジションであることはわかりやすい。
「がっつり味」×「不健康上等!」の根性の入ったポジションは、ラーメン店であれば究極は「ラーメン二郎」だろう。ラーメン二郎のパワーは説明するまでもないだろうが、エースコック本来のがっつりっぷりも二郎に負けていない。
「スーパーカップ1.5」は「この味、やみつき、がっつリッチ!」とがっつりさをストレートに訴求している。「最後の一滴まで飲み干したくなる本格スープ」とする「飲み干す一杯」シリーズもまぎれもないがっつり系である。この「がっつり味」×「不健康上等!」の象限こそが、エースコック本来の姿であることがわかる。

そんな、魅力あふれるがっつりワールドから泣く泣く離れなくてはならないオトコたちに、「がっつり味」×「健康第一!」という象限に投入されているのが「はるさめヌードル」だ。本来、「がっつりで健康」という成立しづらいポジションを可能にしているのは、がっつりブランドとして確立しているエースコックならではのことだ。「うま辛チゲ」「胡麻ねぎ豚骨」「熟成ルゥカレー」「とんこつ醤油」「豚キムチ」など一杯の満足を期待させるラインナップ充実である。でも、カロリー200kcal未満。
『サラリーマン金太郎』や『特命係長・只野仁』で見事な肉体と格闘アクションを見せつけた中年の星・高橋克典が「カロリー制限すべきだよ!」と語りかける。「オレもあんな大胸筋に!」という憧れを醸成し、「低カロリーだけど、がっつり味なら自分もダイエットできるかも!」と手に取らせるポジショニング。

低カロリーで健康的な食べ物を、敢えてがっつりフレーバーにすることで、「ダイエット」に踏み切れない多くのオトコたちの背中を押す。ヒツジにオオカミの皮かぶせるようなッ絶妙なポジショニングが、このはるさめヌードルの妙である。

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2009.07.19

加ト吉×永谷園=「製品」ではなく「商品」。

8月25日から加ト吉は、自社の無菌包装米飯と、永谷園の具材入り粉末味噌汁をを組み合わせた新商品「明日の朝ごはん 味噌汁付」を発売する。忙しい朝に向けた"朝専用のご飯"をコンセプトに開発した提案商品で、食品業界初のコラボレーションだという。

ご飯にみそ汁という当たり前な組み合わせだが、同社はニュースリリースで<無菌包装米飯は電子レンジで2分加熱するだけ、味噌汁はお湯を注ぐだけで>と利点を強調する。「忙しくて、つい朝食を抜いちゃう!」という人にとっては画期的なソリューションとなる。コンビニで前夜にもう1品ぐらい総菜を買っておけば、完璧な和朝食の完成である。農水省は朝食欠食問題の解決のため「めざましごはんキャンペーン」を提唱している。時流をとらえた商品でもある。

加ト吉と永谷園のコラボレーションは実は初めてのことではない。今年4月に永谷園の「松茸の味お吸い物」を加ト吉の「冷凍さぬきうどん」と生玉子とをからめて作る「釜玉うどん」をCMキャラクターとして玉木宏を使って提案している。
加ト吉×永谷園の、「松茸風味釜玉うどん」は、いわゆる共同販促であるが、今回の「明日の朝ごはん 味噌汁付」は無菌包装米飯に粉末味噌汁が1つずつセットされて商品化されている。コラボレーションが一歩進んだ状態であるといえるだろう。

カテゴリーをまたいで、商品を関連づけてレシピや使用用途提案をすることを、流通の現場では「クロスマーチャンダイジング」という。店頭の棚の配列は、カテゴリーできれいに分類され目的を持った買い物客には利用しやすい。反面、買い物客には買い回りをさせることになる。
例えば花火をしようとすれば、花火セットにロウソク、ライター、バケツと各々のコーナーで商品を探さねばならない。「花火遊びコーナー」を作っておけば、顧客の利便性は向上する。
顧客の利便性向上だけが効果ではない。第一にさらなる関連商品販売効果が期待できる。「花火遊びコーナー」に虫除けスプレーを置いておけば、「おっと、虫除けも大事だな」ともう1品売れる。
第二の期待は「ああ、夏だから花火もいいなぁ」と、需要を喚起できることだ。加ト吉×永谷園の「明日の朝ご飯」も「やっぱり朝ご飯はきちんと食べなきゃ!」という需要を喚起する提案であるといえる。

ソニーの創業者、故・盛田 昭夫氏は著書「21世紀へ」の中で「製品を商品としようとする場合には、その製品を手に入れたいという欲求を人々の間に喚起させなければ、いかに優れた製品であっても商品にはなり得ない」と述べている。
流通の現場では頻繁に行われている、消費者目線での組み合わせ提案である、クロスマーチャンダイジングも、メーカー同士の壁を越えての組み合わせ例はなかなかない。しかし、「当社の製品をどうぞ」と、市場に投入し、広告をし、店頭に並べただけではそれはただの「製品」だ。
何気ない組み合わせでも、それが消費者にとって有益な提案になっていれば、売れる。単に製品を店頭に並べていても、売れないのである。

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2009.07.16

隅っこの価値で白地を狙う・PC低成長時代のHPの戦略

そのPCは明らかにスペックがヤバかった。インテルAtomプロセッサ N270、60GB ハードディスクドライブ。はっきり言って、ネットブックとしても1世代前の仕様。昨今のモデルならプロセッサはN280、HDDは160GBが相場なはずだ。聞けば、2009年1月発売だという。でも、買っちゃった。なぜって、デザインがステキだったから。

HP Mini 1000 Vivienne Tam Edition」。ニューヨークの中国系デザイナー、ヴィヴィアン・タムがデザインした10.1インチのネットブックは筐体全部が真っ赤。キーボードまでも。そして天板には鮮やかな芍薬の花が大きく描かれている。

ヨドバシカメラの店員は「プレゼントですか?」と聞いてきた。メーカーであるHPが女性向けとして発売したモデルであり、実際に6~7割は女性が買っていったという。
まぁ、女性向けであったとしても筆者のハートはわしづかみされてしまったのである。ヨドバシのPCコーナーから足が遠くなっていたし、デジタルものの物欲もすっかり萎えていたのだが、こんなステキなPCが店の片隅でひっそりと、ワタシを待っていてくれたとは・・・即購入。

今日、ネットのニュースを見ると、ちょっと悲しいお知らせが。
日本HPが花柄の新ネットブック、女性層獲得に本腰
懸念したとおり、夏モデルとして後継機が発売されていた。スペックも予想通り、一回り良くなっている。
本来なら歯噛みして悔しがったであろうデキゴトなのだが、不思議と悔しくない。強がりではなくて。
メインマシンのレッツノートのように30万円オーバーの買い物ですぐに新機種が出てはショックだが、実際には5万円もしない買い物であったのだ。何とパソコンとは気軽に買えるカジュアルな存在になったことだろう。

新機種のHP Mini 110は、スペックアップした代わりに、前機種と比べればデザインはずいぶんとおとなしくなった。有名デザイナーとのコラボではなく、カラーも天板の柄も控えめだ。淡紅藤 (うすべにふじ)色という、淡いピンクの天板にはカンナの花をモチーフにしたという模様が薄い色彩で描かれている。
報道のタイトルにあるとおり「女性向け」としては、より幅広く、多くの女性が手に取りやすくなったといえる。<女性層獲得に本腰>とあるように、Vivienne Tam Editionのような、実験的コンセプトモデルのような製品ではなく、女性向けで本気で売ろうというHPの本気度が感じられる。

本日の他の報道では<パソコン世界出荷、4~6月は3.1%減 IDC調べ>とあった。ネットブックが出荷台数を押し上げつつ、単価下落が顕著であったマーケットも、ついに台数までマイナスに転じたのだ。もはや、売れるところはどこでも切り開いていくしかない。
その点、確かに女性マーケットはまだまだ開拓しがいがある白地だ。ネットブックに火が付いた頃、いままでケータイで色々と済ませていた女性たちが、Eモバイルが仕掛けた「100円パソコン」に手を出しPCを所有するようになった。しかし、当時のネットブックはスペックが低く、ずいぶんとストレスのたまるものであった。その買い換え需要も狙えるし、現在のスペックであれば、十分使用に耐えられるので初めての人にもオススメしがいがあるだろう。価格の安さも手を出しやすくしている。

「値段も安いし、買っちゃおうかな」「買い換えちゃおうかな」と思わせる要素を、デザインやカラーという価値においているのは、もはやそれ以外に差別化要素を作れないからに他ならない。
フィリップ・コトラーのフレームワーク、「製品特性分析5層モデル」で考えれば、製品の一番重要な価値は「中核」といわれる、製品・サービスを手に入れることで実現できる中核となる便益である。つまり、パソコンであれば「ドキュメントの作成や計算が効率よくできる。インターネットの利用ができる」。ということ。それに対して、女性向けとしてHPが勝負をかけている色や柄は、一番隅っこというか、外側の「潜在」という「期待はされていないが、実現できれば価値を増大させる」という要素である。

「絶対に欲しい!」という強い物欲ではなく、「あらカワイイ、買っちゃおう!」という筆者同様の購買行動を期待してのHPの戦略である。
もはや、PCは完全にコモデティーとなっている。何年も前に、筆者は電卓のようにビニール袋に入れられて、壁からつり下げられて売られるようになると予想した。当らずとも遠からずだ。
電卓のように十把一絡げで売られないために、中核たる便益から遠い隅っこの価値の部分でも強化して差別化をし、市場の白地を探して売り続けなくてはならないのが今日のPC市場なのだ。ステキなHPの製品の裏に、同社とその業界の苦しさが透けて見えて、少し切ない。

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2009.07.15

「空気読んでる」・西友の翻訳力

ウォールマート流が日本の風土に合わず苦戦していた西友が、2008年からはじめた「KY(カカク ヤスク)」戦略以来、大きく転換している。イマイチ「空気読めない(KY)」だった外資手法の直輸入を日本市場に受け入れやすくする、抜群の「翻訳力」を身に付けたのだ。

セゾングループの中核企業であった西友が、バブル経済崩壊後の経営失敗の影響から抜け出せずにウォールマートの資本参加を受け入れたのは2002年のこと。以降、あれよあれよという間に資本比率は高まり、2008年についに完全子会社化され上場廃止に至ったのは記憶に新しい。

米国流通大手は資本だけでなく販売手法も輸入してきた。ウォールマート流のキモは「EDLP(エブリデー・ロー・プライス)」。いつでも低価格であるということを訴求・定着させチラシを用いず週末にまとめ買いを促す。しかし、日々チラシをチェックしてこまめに買い物に来る日本の主婦の購買行動にはEDLPは適さずに苦戦が続くこととなった。

西友の変化は何といっても2008年11月から開始されたKY戦略からだ。「KY(カカクヤスク)で行こう!」というスローガンのもと、生鮮品や冷食を中心とした一層の値下げを敢行し、さらに「他社のチラシに掲載された特売価格が西友よりも安い場合に販売価格を引き下げる”他社チラシ価格照合”制度」を開始した。
西友は大手スーパーの中でもプライベートブランド(PB)商品の比率が10%程度と低く、他店と比較しやすいナショナルブランドが多いという背景が前提の戦略であるが、自社の状況だけでなく、毎日チラシをこまめにチェックするという日本の主婦の購買行動を的確に捉えた戦略であるといえる。

本家米国ウォールマートの最近の大きな動きといえば、家電製本の強化だ。家電量販大手のサーキットシティが昨年11月に連邦破産法11条の適用を申請。今年1月に再建を断念して清算に踏み切った。その宙に浮いたシェアを手中に収めるため、全米のウォールマート3500店舗で家電売り場を拡充。その戦略が奏功し、従来顧客より所得の高い層の取り込みまで実現し活況を呈しているとメディアが伝えている。ウォールマートの巨大な調達力が家電製品を引っぱってくる。当然、米国内だけでなく海外にも供給する余力がある。それが西友に向かってくる。
ところが、その打ち出し方からは「ウォールマートの調達力で、日本の家電価格を引き下げるぞ!」的な強権さは微塵も感じられない。CMが絶妙なのだ。


「コジマさーん」
「ヤマダさーん!」
「あ、ビックさん!」「ハーイ!」
「タカタさん!」
「どうしたの、みんな西友にあつまっちゃって!」
だってスーパーの冷蔵庫がスーパー安いんだもの。
家電も安く。西友。


競合はスーパーではなく大手家電量販店。ウォールマートの調達力を活かして、それに負けない安さを実現しているという訴求ポイントは強烈。しかし、そんなことはひと言もいわず、あくまでシュールにおちゃらけを装っている。正面切っての競合比較を好まない日本市場をよく理解した表現である。

Georgeブランドを投入した「SEIYU FASHION PROJECT」もおもしろい。H&M、Forever21、トップショップなどが支持を集めるファストファッション。「低価格だけどオシャレ」がウケている理由だ。そんな流行の一端に乗ろうというプロジェクトだが、「自分たちのブランドは良いんです!」というストレートな主張はしない。

プロジェクトに関して西友は『西友ファッションプロジェクト あなたが思っているかもしれない「スーパーの服は安いけどダサイ」を、「安いけどカッコイイ!」に変えるプロジェクト』と公表している。

コピーでは「スーパーの服は安いけどださいとおもっている あなたへ」と敢えて受け手が心に思っていることを出している。「西友はスーパーですよ。けどね、結構いいと思いません?スーパーにしちゃぁ!ほらほら、見てみて…」という感じ。
ファストファッションやユニクロに真っ向勝負を挑まずに、むしろさっさと負けを認めて開き直り、結果として「結構いいじゃん」と思ってもらう作戦。こうする事で、消費者は「そうそう、自分をわかってるじゃん、西友。で、今回はどうなの……あ、結構良くない!?見に行ってみようかな」となる訳だ。

長きにわたる外資流の日本市場への不適合を、「空気を読む」んで、日本流に翻訳をして辿り着いた「KY(カカクヤスク)」戦略。西友の変化は、自社の都合や流儀ではなく、顧客をしっかり見て、顧客に適応することの重要性を示してくれていると言えるだろう。

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2009.07.09

丸美屋「納豆ごはん専用ふりかけ」のチャレンジ!

昭和35年に「のりたま」を発売して以来、「”ふりかけ”といえば丸美屋」というポジションを獲得している同社だが、来月発売が予定されている新商品、「納豆ごはん専用ふりかけ」はかなりチャレンジな商品だ。

今回の商品に先駆けて、丸美屋は今年2月に「たまごかけごはん専用ふりかけ」を発売している。たまごかけごはんは2005年に行われた「たまごかけごはんシンポジウム」を機にブームがわき起こり、「たまごかけごはん専門店」も登場。岡山の専門店では年間7万食もの売上げを記録したとメディアが報じていた。ブームに乗って、全国各地で「たまごかけごはん専用醤油」も相次いで発売され、その数は優に50種を超えるといわれている。

たまごかけごはんブームは現在も続いており、専用醤油もさらに銘柄を増す中、丸美屋のチャレンジは、その専用醤油をふりかけで代替させようというものだった。同社ホームページの商品説明によれば、<醤油のかわりにまぜるだけ!>という使用方法が紹介され、明らかに「醤油ではなくふりかけで味付けを」という提案である。

今回の「納豆ご飯専用ふりかけ」は、先の「たまごかけごはん専用」の延長線上にあるかといえば、実は微妙に違う気がする。ビミョ~に。

丸美屋はふりかけ屋だ。(・・・と言い切ってしまっては他の商材もあるので失礼だが、一消費者として考えると、そう見えてしまう)。
白いご飯という大地が広がっていなければ、ふりかけの入り込む余地はない。たまごかけご飯がブームになった時には肝を冷やしたに違いない。何しろ、多くの人が、ふりかけではなく生玉子で白いご飯を覆い尽くしはじめたのだから。
しかし、幸いなことに前述の通り、ブームは専用醤油なるものを生み出すに至った。「醤油をふりかけで代替させる」というアイディアを思いつくのに時間がかかったのか、開発が大変だったのか、ブームから4年目にして発売された、「たまごかけごはん専用ふりかけ」は遅すぎるくらいである。

しかし、今度の「納豆ご飯専用ふりかけ」は先行商品の代替ではない。筆者は「納豆には醤油派」なのだが、多くの人は納豆に付属した専用タレを使用する。付属ではない専用タレも発売されているが、ごく少数しかない現状である。
つまり、「タダで付いているものを使わずに、明らかにコストがかかるものを使用させる」という、需要創造をしなくてはいけないのが今回のチャレンジなのだ。既にたまごかけご飯がブーム化しており、さらに先行して専用醤油が数多く発売されている状況と、納豆ご飯は状況が違う。
しかし、同社があえてチャレンジするのは、もうしばらくは続くと思われる不景気の影響で、食卓ではたまごかけや、納豆、ふりかけなどが多く使われるという商機を活かしたかったのであろう。たまごかけには対応した。あとは、納豆に奪われた白いご飯を、納豆の中に入り込むことによって、自社のビジネスの場としようという同社の執念を感じる。その執念は、プラスαのコストを消費者に納得させることができるだろうか。

有望な市場ではある。6月にアイシェアが行ったインターネット調査<食べて満足!ご飯の友ランキング http://release.center.jp/2009/06/1002.html >によると、ご飯にかける好きなものとして、複数回答で<トップは「海苔」60.4%、2位は「納豆」59.7%、3位は「明太子」55.6%。次いで「生卵」が54.3%、「ふりかけ」が52.8%>という結果である。
ふりかけを上回る人気の納豆にうまく用いられれば、「白いご飯制覇シェア」はますます上昇するのである。

今回は、ブームに乗るのではなく、需要創造し、自らブームを創り出そうとする同社のチャレンジ。温かく見守りたい。・・・というより、発売されたらすぐに食べてみよう!と思う。
発売の8月20日までまだ1ヶ月以上あるが。

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2009.07.08

品質のこだわりと柔軟な店舗展開を進めるユニクロの未来

※今回はインタビューに回答する形式で「ユニクロのヒミツ」を語ってみました。インタビュー&構成はライターの原 勝也 氏にお願いしました。
 尚、今回の記事はライターの著作権に配慮するため、他メディアへの転載はご遠慮させていただきます。

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成長を遂げ続けるユニクロのこれまでの流れ、これからの動きをどう考えればいいか。金森マーケティング事務所取締役社長であり、屈指のユニクロウオッチャーの金森努さんにインタビューしてみた。

ユニクロは「規模の経済」である

 ユニクロは、かつてカラーヴァリエーション豊富なフリースをヒットさせた企業というイメージはあっても、どうしてここまで成長できたのか、よくわからないという人も多いと思います。

金森 ユニクロのフリースはカラフルというイメージがありますが、最初からカラーヴァリエーションがあったわけではありません。成功へのステップはもっと以前からありました。バブル崩壊後、アパレル関連の売上げが平均30%減だった中、ユニクロはロードサイド店を中心に出店攻勢をかけ、1996年に一部上場を果たしています。フリースのヒットではなく、ロードサイド店の積み上げで成長していった企業なんです。理由はSPA(製造小売業)でした。SPAによって「安いけれど、品質が良い」というスタンスで、当時の他のロードサイド店よりも人気を集めた。現在もそうですが、ユニクロの凄いところは「品質へのこだわり」です。アパレル業界だと通常は抜き取り検査なんですが、ユニクロは全品検査をしていると聞いています。某大手アパレル業者から「品質だけでは、もう大手企業はユニクロに勝てない」と言われるほど、品質にこだわっています。そして98年、原宿店出店によってフリースブームが起こります。
 ユニクロの特徴は「規模の経済」なんです。それは現在も変わっていない。この点、ユニクロはノンセックス、ノンエイジ、さらに当時はファッション性を追求するのではなく着る人が組み合わせて考えてくださいというアイテムだった。規模化もしやすかったわけです。

「まとめ買い」から「ついで買い」への変化

 2000年からフリースのカラーヴァリエーションが話題となり、安くて、品質が良くて、シンプルなデザインというのがユニクロだった。これ以降の流れはどのようなものだったんでしょうか。

金森 基本的にはブランド力をいかに高めるかということでしょう。ただし、新しい動きも出てきました。ユニクロはロードサイドを中心に展開をしてきましたが、2000年前半から「駅ナカユニクロ」というような小規模店が目立つようになってきた。車で店に向かって「まとめ買い」をするものだったユニクロは、近くに行ったついでに買うという「ついで買い」のショップに変化しつつある。さらに銀座店などの都市型店舗が増加したことで消費者との距離感が大きく変わりました。消費者との接点を増やし、都市型あるいは小規模店を増加させた。「まとめ買い」から「ついで買い」へと進化したと考えられます。

 一方、ユニクロは「大型店化」へと進んでいます。都市型にも数坪の小規模店と銀座店、新宿店のような大型店があるのはなぜでしょうか。

金森 もともとユニクロは規模の経済であり、規模を拡大する必要があるわけです。「規模の経済」というキーワードでいえばブラトップも一例ですね。去年300万枚を売上げて、今年は900万枚を日本中心に販売しようとしている。日本の16歳から50歳まで、約2.5人にひとりの女性をターゲットにしている。とてつもないことですよね。多く売るためにも消費者と接触し、多く集客する必要がある。接触率の上がる都市型店舗の「ついで買い」が有力。ただし「まとめ買い」がなくなったわけじゃありません。事実、カラーヴァリエーションも増えています。つまり商圏を広げ、品揃えを見せるためにも大型化がどうしても必要。だから「都市型」店舗が自然と大型化していくケースも多いはずです。

「ファッション性」を獲得するユニクロ

 銀座店のように、最初に出店してフロアの増床をするというようなタイプですね。今後も登場していきそうですか。

金森 そう思います。銀座店の成功を考えると、もうひとつユニクロに大きな動きがあります。それは「ファッション性」。安さ、品質、機能性を持ち合わせユニクロが次に欲しいのは「ファッション性」です。これはジル・サンダー氏との契約につながってきます。ジル・サンダー氏はユニクロのデザインに関して全アイテムをチェックするとも言っていますし、ユニクロ価格でジル・サンダー氏のデザインした服を着ることができるという。これもすごいことですね。H&M、FOREVER21などのファストファッションブランドの日本展開に対抗する意識もあるのでしょう。

 ただ、ユニクロは出店も多いですが、閉店も多い。これからはどのようなタイプのショップが閉まっていくのでしょうか?

金森 ロードサイド店がどんどん減っていくと予測します。ファッション性を獲得しつつあるユニクロにとって、ロードサイド店を維持することに積極的になる必要性をあまり感じません。コアターゲットである20~50代の車離れが少しずつ進んでいることも要因です。逆に都市型店が増加するでしょう。駅ナカタイプの小規模店は、都市交通を利用するかたちでの集客を狙うことになります。都市部では大規模店の補完的な役割で小規模店が点在することになるでしょうね。消費者との密着度を高めるための戦略として。

 以前、マクドナルドが、サテライトショップとして大規模店の周囲に小さな店を次々とオープンさせた時期がありました。あれに近い戦略でしょうか。

金森 ミニマックですね。それに近いと思います。生活密着度を上げるために大規模店と小規模店をうまく同エリアの中に混在させる。ただしこれまでのロードサイド量販店とは大きくノウハウが異なるはずです。小規模店はユーザーがどのような品揃えを好み、何をどのような手に取ったかを細かく観察しなくてはいけない。これまでのロードサイド店にはない接客ノウハウです。それをいまユニクロは獲得しつつある。

 金森さんのお話を聞いてよくわかったのは「ユニクロでは店長の裁量権が大きい」と言われている点です。顧客密着度を増すためには、ショップごとに対応していかなければいけない。どうしても店長の権限を大きくしなければいけなくなるわけですね。では、最後にユニクロの弱点を敢えてあげるとすると?

金森 弱点が見当たらないんですよ(笑)。ユニクロとジーユーとの差別化としての値上げをどのようにするのか、ですね。近いうちにユニクロは値上げをすると思います。ユニクロの母体であるファーストリテイリング株式会社柳井会長は「ユニクロはナショナルブランドの商品と比べても品質は高いが、最低価格では提供できない。まあまあの品質で低価格のものを求める人はジーユーでお願いしたい」と言っています。つまり、ある程度の価格で高品質な商品ならユニクロ、品質はユニクロほどではないけれど価格が安いものはジーユー、という位置づけをファーストリテイリングは考えていると思います。ふたつのブランドの差別化の意味でも、ユニクロの値上の可能性は大きいと思います。
 いずれにしても、ユニクロの大きな強みは、品質へのこだわりを常に持っていること、同時に店舗展開を含めて、変わるべきところはどんどん変えるという柔軟性を兼ね備えている点。本当に顧客ニーズの変化を良く見ていると思います。ファッション性を獲得し、安くて、品質が良いとなると無敵ですよね。

 確かにそうですね。今日はありがとうございました。

2009/6月青山学院大学構内にて取材。
インタビュー&構成、原 勝也

「無断転載拒否」
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2009.07.07

ちょっとお得な「生茶」の新製品。その狙いは?

おっと、今度の生茶はちょっとお得な555ml入り。消費者としてはうれしい限りだが、その太っ腹の意図はなんだろうか?

7月16日発売予定のキリンビバレッジ「キリン やわらか生茶」は、<カフェイン50%オフ(2009年「生茶」比)ですっきり飲みやすい>という。そしてうれしい容量は、<暑くてたくさん飲みたくなる夏ならではのご提案として、555ml増量ボトルを採用>なのだ。味わいは生茶特有の緑茶の甘みを、低温抽出法でさらに強化している。
(ニュースリリース:http://www.beverage.co.jp/company/news/page/news2009061102.html

製品(Product)は上記の通り、スッキリとした甘みの緑茶で、カフェイン抑えめ。容量は通常より11%増量。
価格(Price)は通常通りの税別140円。コンビニでの店頭価格は税込みの147円。
販路(Place)は自動販売機でも販売するであろうが、ペットボトルを専用の凝った造りにしていることから、コンビニエンスストアの店頭で目立つことを狙っていると思われる。
販促(Promotion)はまだ目立った動きはないが、生茶ブランド全体で最近また強化している「生茶パンダ先生」の展開が予想される。

飲料全体と緑茶飲料カテゴリーのトレンドは、ここ1~2年、ゼロカロリー炭酸飲料ブームに押されて緑茶カテゴリーが失速している。しかし、季節要因を考えると、夏、特に気温が30度以上に上昇する真夏日が何日か続き出すと、甘みの強い飲料よりも茶系飲料やミネラルウォーターの売れ行きが増す傾向が顕著だ。つまり、7月中旬からが緑茶カテゴリーが盛り返すチャンスなのだ。
しかし、緑茶カテゴリーの最近のトレンドは「濃いめ」だ。カテキンの含有量を上げるため、特保を取得していない製品もこぞって高濃度製品を展開している。確かにカテキンはカラダにいいらしいし、独特の渋みも悪くない。だが、ゴクゴク飲むにはちょっとツライ。また、ゴクゴクたくさん飲んだら、さすがにカフェインも気になる。

その点、「やわらか生茶」のターゲティングとポジショニングは絶妙だ。暑い夏に「ゴクゴク飲みたい」ターゲットに対して、スッキリ甘くて低カフェインでカラダにもやさしい緑茶飲料を、お得な増量パッケージで提供するのだ。
コンビニでもこの展開は優位に働く。新製品は棚を取りやすく、さらにお得な増量パッケージとなれば、バイヤーや店主の発注量もついつい増えて、もう1~2フェース多めに棚を確保できるかもしれない。

ライバルの動きを牽制することもできる。緑茶カテゴリーは伊藤園の「おーいお茶」、キリンの「生茶」、サントリーの「伊右衛門」が3強で全体の6割のシェアを確保しているといわれている。そこに日本コカ・コーラが「綾鷹」で切り込んできた。
2007年にちょっと容量少なめの425mlで、価格ちょっと高めの157円というプレミアム緑茶として上市された商品である。しかし、世の低価格志向の高まりを受けて、日本コカ・コーラは今年5月に500ml、150円(税込み)の通常の飲料の価格と仕様に中味はそのままに引き下げてきた。自社の抱える「一(はじめ)茶織」とカニバリ(喰い合い)になるのを覚悟で、「高級本格派・緑茶飲料を手軽に買える」という戦略に出たのだ。

そんな「綾鷹」の戦略に対して、「夏は本格派より、スッキリ甘くてたくさんゴクゴク飲める方がいいでしょ!」という、「やわらか生茶」の戦い方は非常にシンプルだ。また、「綾鷹」は凝った造りのペットボトルを高級な中味を低価格で提供するためにが断念したが、「やわらか生茶」のボトルデザインはかなり店頭アピール力がある。昨今、ボトルのデザインは各社しのぎを削っているところだ。

「おっと、お得な増量パック」は単なる太っ腹の増量ではない。世の中の流れや業界の競争環境、そして何より消費者ニーズをしかりと深読みした結果の展開であるのだ。

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2009.07.06

さらにパワーアップ!『マックスコーヒーV』の狙いはなんだ?

なんと、「バニラ風味&ビタミン配合」である。練乳100%使用。「マジ ハンパなく バリ 甘い」とのコピーを引っ提げ、今年2月、発売以来33年ぶりに全国販売を開始した「マックスコーヒー」の新作だ。今度はどんな狙いが隠されているのか。

千葉・茨城県民のソウルドリンクともいうべき「マックスコーヒー」は利根コカ・コーラが独自開発し、後に日本コカ・コーラの「ジョージア」ブランドに組み込まれたもの。
(全国販売の経緯は過去の記事参照→ 「マックスコーヒー」33年目の全国侵攻・その勝機

マックスコーヒーの公式サイト( http://www.georgia.jp/max/ )では、以下のように製品を紹介している。
<[特徴]元気を補給してくれる、やみつきになるうまい甘さ。[成分]コーヒー+練乳 その他[原産]利根>

マックスコーヒーの超絶的な甘さに惹かれてヤミツキになっているコアなファンは多い。そのファンの声を同サイトが紹介しているが、多くが「疲れた時にこの甘さがいい」「甘さにホッとする」などの意見が多い。見事に、「疲れを癒して元気にしてくれる」というポジショニングを獲得しているといっていいだろう。

その商品にバニラ風味が添加され、ビタミンが配合されたという。それは何を狙っているのか。新製品のコピーは以下のようなものだ。
<ビタミン入りで バニラ味で ヤル気スイッチ入りMAX V!>

東京ウォーカーの同製品紹介( http://news.walkerplus.com/2009/0705/8/ )によれば、ジョージアの担当者が「何かをはじめる時に飲みたいチャージ飲料」というポジショニングを紹介している。
このポジショニングをオケージョン(occasion)という概念で考えると、新製品の狙いが見えてくる。
基本のマックスコーヒーが、何かをやった後、「疲れを癒し、元気にしてくれる」というポジションなのに対し、マックスコーヒーVは、「これからいっちょ、やったるか!」的な、何かをはじめる前に気合いと元気をくれるというポジションだ。明らかに別のオケージョンを狙っている。

「朝専用」などとして、1日のはじめに飲ませるというのは、缶コーヒーの常套手段だ。その意味では、マックスコーヒーもその定石にしたがったといっていいだろう。しかし、マックスコーヒーの場合、その意味合いはさらに重要だ。

同製品の中核価値である、超絶的な甘さは、恐ろしいほどのカロリーを伴っている。平均的な缶コーヒーの1.5倍だという。そのカロリーを摂取し続けるのを厭わない層は、カロリーが気にならないスレンダーなすてきなボディーをもった人々か、もはや、「メタボだなんだとか、関係ねー!」と反動的需要に走っているそうだといえるだろう。確かにコアなファンは抱えている。しかし、世の中の流れから考えて、その拡大はあまり望めない。

ターゲットを拡大できないとなると、ターゲットの購入機会を増やすしかない。そこで、「元気の補給」や「事後の癒し」というオケージョンに加えて、「これから気合いを入れる」というオケージョンに注目し、新製品を開発したわけだ。つまり、明らかに既存ユーザーへのアップセリング(買い増し)狙いである。

マーケティングのフレームワークは一見、MECE(モレなくダブリなく)になっているようで、実はそうなっていない。具体的な施策を検討する、マーケティング・ミックスの4Pには、時間の概念やオケージョンといった概念が含まれていないのだ。故に、実際の展開を考える際には、フレームワークに含まれない要素を見つけ、考慮することが求められる。
マックスコーヒーの新製品は、その一つの好例といっていいだろう。

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2009.07.02

これも王者の生きる道・花王「スタイルフィット」のリニューアル

6月15日にリニューアル発売された花王の「スタイルフィット」。液体洗剤&柔軟仕上げ剤だ。その競争戦略を読み解いてみよう。

「シワなくキレイ 香りもキレイ」。リニューアル前から訴求ポイントは概ね一貫している。ターゲットは「しっかりママ」だったか。
旧CMでは、働きながら、小さな子供を育て、夜はご主人を洗濯を済ませて軽い運動をしながら待つという、若いしっかりママが描かれている。演じるは自らも結婚4年目・2歳児の母である渡辺満里奈だった。

リニューアルにおいて大きく変わったのは、CMがとにかく賑やかで派手になったこと。
BGMは東京スカパラダイスオーケストラ。キャラクターは、しっかりママ代表・渡辺満里奈に加えて、ステキな奥様代表・真木明子(真木蔵人夫人)、カワイイギャル代表(?)・柳原可奈子と強化体制を組み、若年層に引き下げている。
CMは「私スタイルで洗おう」をテーマとして、キャラクター3人の洗濯の様子と洗濯後の様子を伝えているが、共通のコピーでは「香りと肌触りこだわってますから」「シワなくキレイ 香りもキレイ」と、「香り」を強調していることがわかる。香りはベルガモット、ローズ、フランキンセンス。<リラックス効果の知られる3つのアロマエッセンスを配合>したという。
製品の特徴としては、製品パッケージが全面リニューアルされている。いかにも「洗剤!」という顔つきのパッケージがオシャレに大変身。<化粧品などの有名ブランドを手がけるフランスのデザイン事務所とのコラボレーション>だという。(同社ホームページより)。

さて、ターゲット年齢を微妙に引き下げて、「香り」を強調。さらにオシャレなパッケージに変身させた意図はどこにあるのだろうか。

「ダウニー」。
売り切れ続出のアメリカ製の柔軟仕上げ剤だ。ダウニーは、アメリカンな強烈な香りが乾いたあとも残り、乙女な香りが女子の間で話題になっている。楽天市場の売れ筋ランキングではトップ10に入っている。
日本ではこの「嫌になるほど残る香り」の商品は今までなかったが、そのインパクトで売れまくっているのだ。アメリカンな香りといえば少々ビビルものはあるが、ダウニーには全11種類の香りがあるという。その中から好みの香りを見つけ出すクチコミも人気に一役かっている。さらにクチコミ人気は女子中高生をから、奥様、ママ層にも拡大している。

さて、花王はこの「ダウニー人気」をゴッソリ奪い取るために、スタイルフィットをリニューアルさせたのだろうか。確かにリーダーの戦略の定石は、「同質化」。下位のポジションにある企業やブランドの商品で成功しているものを見つけ、優れた開発力によって同等の商品を作り上げ、強大な営業力によってチャネルにくまなく送り出して市場を席巻。競合商品を市場から閉め出す戦略である。
だとすると、「ダウニー危うし」なのか。「ダウニー、にげてー」。

と、実は筆者は思っていない。
ダウニーが開いた強烈な香りの残る柔軟仕上げ剤というポジション。強力な支持層を作りはしたものの、今までの「さわやかに香る」「ほのかに香る」ぐらいの日本の仕上げ剤に慣れた消費者の多くは一気に移行はできない。
スタイルフィットの<リラックス効果の知られる3つのアロマエッセンス>ぐらいが落ち着く人は多いはずだ。
さらに、ダウニーのパッケージを見るとそのインパクトに驚く。とにかくサイズがデカイ。一体どんだけ使えるんだという、4リッター入り。そのラベルにはカワイイ白人の女の子が描かれている。いかにもアメリカン。
それに対して、スタイルフィットは<フランスのデザイン事務所とのコラボレーション>と、いかにも上品なヨーロピアーンな雰囲気を醸し出す。

アメリカンで大人気のダウニー。しかし、それが気になりながら、一歩踏み出せない人々が実はいっぱいいる。花王はそれに気付いたのだろう。
ダウニートうべく、「激しく香る」製品を出すより、その一歩手前で止めて、お上品路線でより多くのユーザーを獲得するという、微妙な棲み分け作戦だ。
市場の中で最強だったり、競合をことごとくねじ伏せるだけがリーダーの戦いではないと、スタイルフィットの巧みなリニューアル戦略から学ばせてもらった。

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2009.07.01

「スキマなし」。マクドナルドのプロモーション戦略

※ニフティー・ココログの障害のため、6月30日は表示できない時間帯があったり、更新ができなかったりと、ご迷惑をおかけいたしました。

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「マックでDS」を開始し、期間限定で「日本バラ色計画」を展開。これらのプロモーションには、全く「空白を作らない」というマクドナルドの狙いが隠されている。そして、売上げ・利益を確保するには、客数を増し、客単価を上げ、来店頻度を高めることが基本の「き」であるが、マクドナルドのプロモーションはそれがカッチリと励行されているのである。


■昼下がりの風景

不景気でファストフードが活況だ。マクドナルドはとりわけ快走中である。その店内を昼下がりにのぞいてみると、100円メニュー、120円メニューを組み合わせて食べたり、テイクアウトしているランチ価格抑制派の姿がずいぶんと目に付く。この人々が、マクドナルドの快進撃の一翼を担っているのは間違いない。しかし、低価格ランチ客のみではダメなのだ。もっと幅広い客層を確保し、さらに、その客がたまにではなく頻繁にきてくれるようでなくては。なぜなら、この顧客層は何もしなくても来店してくれる代わりに、客単価が低い層だから。
かつてマクドナルドは価格破壊によって「デフレ時代の勝ち組」と言われたが、その後ブランドイメージの低下と収益性の悪化で長く苦しんだ。その経験から、低単価・低収益メニューと高単価・高収益メニューのバランスを取る、マージンミックスに最も慎重になっているのだ。


■「マックでDS」http://www.mcd-holdings.co.jp/news/2009/promotion/promo0615.html

そんなターゲットの一つが親子連れだ。<無線通信装置を使い、市販ゲームのキャラクターの配信、スタンプラリー、市販DSソフトの体験版配信>
継続的なプロモーションであるが、6月19日から7月17日の期間第一弾は、DSのポケモンソフトを持参すれば、オリジナルキャラクターである、幻のポケモン「ジラーチ」の配信が受けられる。さらに<来店するごとに自分のDSへキャラクターが貯まっていきます>という、スタンプラリーも開催だ。
DSやポケモンにはまっている子供を持つ世帯は多い。たぶん大変な騒ぎだろう。「ジラーチもらいに行こう!」「またマクドに行って、キャラクターをもらおう!」と来店頻度が高まったこと、必定ではないだろうか。
お昼ご飯を作るのがちょっ面倒なお母さんは子供に促され「まぁ、しかたないわね」と。お父さんも一緒の時は、手軽で安価なレジャーとして「じゃぁ行こうか」と子供の利害とも一致する。家族2人~3人という高頻度の来店客確保ができるわけだ。


■「日本バラ色計画」http://www.mcdonalds.co.jp/quarter-pounder/

<“バラ色でいくぜ”という「BIG MOUTH!」を掲げ「クォーターパウンダー」を食べて、不況で暗くなっているニッポンを明るく幸せな“バラ色”に塗り替えていこうという計画>だという。
まぁ、平たくいえば、「クォーターパウンダーを食べましょう」と言っているだけなのだが、その持って回ったやり方が出色だ。
まずはオープニングイベントで、人気モデルの益若つばさとタレントの桃華絵里が登場。「バラ色缶バッチ」と「バラ色Tシャツ」を披露。さらに安室奈美恵を起用した超クールなCM・バラ色でいくぜ宣言「VS.」篇を展開。明らかに女子狙い。
高価格メニューであるクォーターパウンダーは、低価格メニューの利益率を補完するマージンミックスの要だ。しかし、メイン購買層は20代男性、サブが30~40代の男性。確かに女子には手を出しにくいボリュームを感じさせる。そこでこの、バラ色だ。
「バラ色Tシャツ、って本当にこんなの着られるの?」と大人の男性から見ればちょっと躊躇しそうなデザインだが、そこは夏を迎えるこの季節。クォーターパウンダーにノリで手を出す若い女性、主に学生の心理を突いているといっていい。
部活に、夏フェス、海に山に、花火に祭りになんやかんや。そんな楽しい夏の日々に着用すれば仲間内でウケること間違いない。さらに、シャツが欲しくて、食べまくるほどに貰えるバッチ。かばんに無数についたピンクのバッチもまた、ウケる。「なにそれ。あんた食い過ぎだよ!」というコミュニケーションも設計されているように思える。
黙っていても食べてくれる男性層はおいておいて、クォーターパウンダーにハマッてくれそうな元気な女子のハートをつかむ戦略が「バラ色」なのだ。無論、その女子につられて一緒に食べる男子の取り込みも狙っているのは間違いないが。


■次はどう来る?

「マックでDS」の第1弾であるポケモンのキャンペーンは7月17日。「日本バラ色計画」のバラ色Tのキャンペーンも7月16日まで。夏休み本番にはさらなるキャンペーンが用意されているのは想像に難くない。
手堅い支持層の低価格ランチ客とガッツリ食べたい男性客。それに、あしげく通ってくれる親子と、ノリでガッツリ食べてくれる女子を取り込んで、次はどこに行くのか。
夏休みに学生の利用は黙っていても増えるだろう。だとすれば、狙いは他の層。暑い夏場にちょっとあっさりヘルシーなメニューで、ガッツリ食べないお姉さん女子を狙うか、はたまた、暑さに負けるなと、ちょっと年齢の高い層に「土用のマクド」でも仕掛けるか。キッチリと白地を埋めていくマクドナルドのプロモーション戦略にも目が離せない。

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