日本コカ・コーラの茶系飲料戦略を「4P」の整合性で読み解く
茶系飲料市場が縮小している。そんな中で、飲料業界ナンバーワンの日本コカ・コーラはどのように戦おうとしているのだろうか。
日本経済新聞6月4日号投資・財務面に「伊藤園、純利益53%減 緑茶飲料伸び悩む」との見出しが掲載されている。主力商品カテゴリーの縮小が直撃したわけだ。
緑茶飲料に取って代わったのは、カロリーゼロという新たな商品属性を獲得した炭酸飲料だといわれている。炭酸カテゴリーとなれば、日本コカ・コーラは笑いが止まらない・・・かといえばそうでもない。自社にもしっかり緑茶カテゴリーがあるからだ。しかも、緑茶カテゴリーは伊藤園の「おーいお茶」、キリンの「生茶」、サントリーの「伊右衛門」が3強でシェア7割を占める。そこにどうしても切り込めないというジレンマも持っているのだ。
そんな中、日本コカ・コーラの緑茶飲料「綾鷹」が、真田広之が主演するCMの新作を2年ぶりにオンエアしている。う~ん、真田さん、相変わらず渋い。無精髭と長髪がちょっと、もっさいけど。
わざわざCMを作るということは、テコ入れをしようという現れであろうが、あいにくマーケティングはPromotion戦略の一つであるCMで何とかなるほど甘くはない。
と、思っていたら、実はProduct(製品)、Price(価格)、Place(販路)まで改造していた。
綾鷹は2年前にわき起こった「プレミアム緑茶」カテゴリーの唯一の生き残りだ。150円を超える価格。500ml未満の容量。でもオイシイ。そんなカテゴリーを飲料各社が創り出そうとしたのだ。結果はどれも惨敗。確かに時代は「いざなぎ越え」などとうたわれた好景気の中にはあったものの、賢くなった消費者はNO!を示したのだ。
そんな中でも、綾鷹は425ml PETで147円(税別)と、比較的、容量も価格も標準に近く、飲んでみれば確かにおいしいことから生き残っていたのだ。しかし、消費者の低価格志向は高まり、食品は軒並み値下げ傾向である。もはや、綾鷹のプレミアム戦略もこれまで。
ニュースリリースによると、現行の425ml PET 147円(税別)も継続するものの、500ml 150円(税込み)の標準的な価格・容量のものも発売するという。
ペット容器も専用の切り子調スリムボトルから共用品に変更している。つまり、CMだけでなく、ProductとPriceも変更している。そして販路であるが、同リリースではメインの自販機やコンビニだけでなく、販路を拡大するとある。割高なものが敬遠されるスーパーやディスカウントへの展開だろう。つまり、綾鷹の4Pは全て変更されたことがわかる。
4Pが変わると、ターゲットやポジショニングにも影響する。
リリースではターゲットとポジショニングが次のように述べられている。<「綾鷹」のメインターゲット層である本物志向の30代~50代の男性のみならず、豊富なラインナップで家族を始めとするより多くの方々に、本物の緑茶の味わいをお届けしてまいります>。
おっと、ちょ~っとまった。つまり、フツーな人々に幅広く、150円でオイシイお茶をふるまってしまおうということだ。となると、自社商品内でのカニバリゼーション(喰い合い)が心配されるが、大丈夫だろうか。
大丈夫ではないだろう。「一(はじめ)茶織」。
「中嶋農法で作られたお茶」という独自性が与えられているが、やはり、従来型150円の普通の緑茶飲料であるのは変わらない。どうする「一」。
恐らく、今後、綾鷹の拡販が進めば「一茶織」は徐々に市場からフェードアウトしていくのではないだろうか。その代わりに、「一」の派生商品の拡販を強化する。いや、既に強化されている。
「一(はじめ) 茶花」だ。<ロート製薬株式会社との共同プロジェクト素材である、茶花(お茶の花抽出物)を配合した健康緑茶>という、明確なポジショニングも与えられている。
武者姿のキム兄こと木村祐一のオナカのボタンが毎回はじけ飛ぶCMは、ウエイトやウエストが気になる人という明確なターゲット設定もなされている。
ターゲットとポジショニングがかぶっていないので、綾鷹とのカニバリは回避できているということだ。
飲料業界のリーダー企業でありながら、緑茶飲料カテゴリーではチャレンジャーの日本コカ・コーラ。その縮む市場という環境変化を巧みにとらえた戦略には、脱帽である。
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