「カルピス」~変えてはいけないもの、変えるべきもの:定番のヒミツ第13回
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同誌に連載中のコラム「定番のヒミツ」第13回が掲載されています。
・・・が! 残念なことに「ザッツ営業」誌は今号で休刊とのこと。
「定番のヒミツ」も最終回となってしまいました。
季刊で13回なので、3年ちょっとの連載でしたが、もっとロングランにしたかったのです。
奇しくも90年間という超ロングセラー商品が、最後に紹介する定番商品となりました。
以下、記事転載。
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世の中には常に売れ続ける「定番」と呼ばれるものがある。なぜ定番は売れ続けることができるのか。当連載はその謎をマーケティングのセオリーから考察する。
『 「カルピス」~変えてはいけないもの、変えるべきもの 』
今年で90周年だという。日本初の乳酸菌飲料として生まれたカルピスは、まぎれもなく国民的飲料だ。「おいしくて、からだにも良く、安心して飲め、経済的であること」。創業者の思いを受け継ぎ、90年間を過ごしてきた製品である。
製品の源となる乳酸菌と酵母菌からなる「カルピス菌」で脱脂乳を発酵させて作った、「カルピス酸乳」。それが、製品の甘酸っぱさの秘密であり、製法も90年間変わらないという。その甘酸っぱい味を一度も口にしたことのない人は、恐らくいないはずだ。
しかし、口にする形態は実に様々になっている。
カルピスの原液は非常に高濃度だ。通常は2.5~5倍程度に希釈する。濃いゆえ、腐敗しない特性が普及に大きく寄与した。冷蔵庫のない時代でも家庭で保存しやすいという、消費者のニーズに適合していたのである。
しかし、高度成長期を経て豊かになった消費者は、いちいち希釈する手間を厭うようになった。冷蔵庫も各家庭に普及し保存の心配もない。何も手を打たなければ、カルピスは時代の波間に消えていったことだろう。
カルピスは原液を炭酸で希釈し、缶飲料の形態にした「カルピスソーダ」を発売。乳酸炭酸飲料ブームの先駆けとなった。高度成長最後年、1973年のことだ。炭酸飲料とすることによって、子供を中心としたユーザーを若年層や大人にまで広げる効果もあった。
「炭酸もいいけど、普通のカルピスを手軽に飲みたい」というユーザーニーズに応えるには、保存技術の開発が必要で時間がかかった。1991年、ついに「カルピスウォーター」を発売。大ヒットとなる。
同年、味の素グループとなって、両社の飲料事業を統合した頃から、カルピスのバリエーション展開は加速する。味の素の得意なアミノ酸を使ってダイエット志向の消費者にゼロカロリータイプを提供。酒をたしなむ層には、カルピス味の低アルコール缶飲料を。さらには、血圧など健康を気遣う層にはカルピス酸乳の特性を活かした特保飲料まで開発し
た。沖縄ならゴーヤー、シークワサー、パイン。信州は林檎、北海道なら夕張メロン。各地のお土産需要にも対応し、ご当地カルピスも展開する。
創業者の思いと製法を90年間継承し、様々な形に展開していったカルピス。変えてはいけない意志とこだわり。適合させるべき環境の変化と消費者ニーズ。
90年の歴史から学ぶところは大きい。
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