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2009.05.08

サントリーの新製品「ZOOCE」の狙いは何だ?

“動物園のようにワクワクする、みんなの炭酸飲料”がコンセプトだという「ZOOCE Sparkling フルーツパレード」。そこに隠された狙いを読み解く。

カラフルな色や模様で描かれた、数々の動物たちのシルエットが踊るパッケージ。発売日は4月28日。ズバリ、ゴールデンウィーク前日。春のレジャーのお供にということなのだろう。狙い澄ましたタイミングだ。
でも、誰に向けて?

「ZOOCE」(ズース)とは、「ZOO」と「Juice」を掛け合わせたネーミングだという。うーん、ダジャレのような、ダジャレにもなっていないようなネーミング。でも、なんだかかわいい。カラフルな動物がら。舌足らずの子供が「ジュース」とうまく発音できず、「ズース、ズース」と言っているかのような名前だ。
子供向け飲料なのか?と最初は考えた。

ネットの書き込みを見てみると、掲示板やブログでは女性の書き込みが多い。かわいいパッケージ。おいしいと高評価だ。女性をターゲットにしたのか?とも思った。

サントリーのニュースリリースを見てみると、冒頭に記したコンセプト、“動物園のようにワクワクする、みんなの炭酸飲料”との表記がある。「みんなの」だ。
なんというワイドレンジなターゲティング! マーケティングエクセレンスなサントリーにしては珍しい展開だと思う。

考えてみれば、飲料業界においてサントリーほどチャレンジャーのポジションにある企業はないだろう。
飲料業界第2位。現在、コーラ市場においては第1位の日本コカ・コーラを猛追中だが、サントリーのペプシは常にコークの後塵を拝してきた。
もう一つの戦場が昨夏から戦いに熾烈さを増したサイダー市場。ゼロカロリーコーラによって炭酸飲料が伸張し、その流れで緩やかに同じカロリーゼロの緑茶市場が下降。それが、飲料市場の大きなトレンドだといっていいだろう。
それにつられた形で炭酸カテゴリーにおいて、ゼロカロリーではないもののサイダーも急伸した。
サイダー市場の巨人は三ツ矢サイダー。アサヒ飲料である。発売以来125年。サイダー市場のシェアを60~70%握っているが、2004年に製品リニューアルをして以来、さらに毎年売上げを順調に伸ばしている。
もう一つがキリンビバレッジのキリンレモン。発売80年を迎えた昨年、同じく
製品リニューアルして、やはり売上げを大きく伸ばした。
そこに割って入ったのがサントリーである。
「ラッキーサイダー」。「思い通りにならない毎日に、”ラッキーな気分をくれる友達”」がコンセプトだといい、ターゲットは10代から20代。主に中・高校生が対象だという。

チャレンジャーの戦い方は「差別化」が基本だ。
キュウリ味やブルーハワイなどシビレるような味が記憶に新しい。それらの毎年投入されるペプシの「変わり種コーラ」も差別化戦略の一環である。

もう一つのチャレンジャーの戦い方の特長は、「セグメントが巧み」だということ。
リーダーのように全方位で戦う力はない。故に、勝てるところをみつけて確実にそこで勝っていくのだ。その意味からすると、今回の「ZOOCE」の「みんなの炭酸飲料」は少々合点がいかない。謎である。

悩んでも仕方がないので飲んでみた。サントリーホームページにある製品紹介では「りんごやオレンジ、パイナップル、バナナなどのフルーツフレーバーをバランスよくミックスし、様々なフルーツの味わいを想像しながら楽しめる、爽やかでやさしい味わい」とある。
確かに言われればフルーツジュース的なフレーバーが感じられなくもないが、さほど強烈な主張はない。うす甘く、ほんのりと酸味も感じられる味わい。炭酸は軽めだ。なぜだか懐かしい。

あ、と気付く。「これ、ラムネ味じゃねぇの?」。

「ラムネとサイダーの違い」。ググってみればわかるが、ネット上でも百家争鳴である。
諸説あるが、その出自や語源に言及はされているが、味に関する明確な定義は発見できなかった。故に、ZOOCEを炭酸カテゴリーの中で明確にラムネ味と定義できる論拠はないのだが、大事なのは「どこか懐かしく感じる味」であることだ。懐かしい感じが筆者にはラムネを想起させたのだ。理由は深く問い詰めないでいただきたい。

で、誰にとって懐かしいのかと言えば、「親世代」だ。かわいいパッケージに惹かれ、子供が「ズース、ズース」とせがむ。「子供に炭酸が飲めるか?」と思いつつ、購入する。最初に親が試しに飲んでみる。炭酸が弱いので、大丈夫と判断して子供に渡す。が、試し飲みの時点で、「懐かしい味」にしっかり親もハマる。子供がせがめばまた買ってやるだろうし、かわいいパッケージは母親なら、そのかわいさにもはまって自分買いもするだろう。
つまり、親子二面作戦だ。うーん、何という巧みな戦術。

消費者の購買に至る態度変容モデルはAIDMAが有名だが、AMTULというモデルもある。
Attention(注意)→Memory(記憶)と、ここまではAIDMAと同じ。続いてTrial(試用)→Usage(日常的使用)→Loyalty(ファン化)となる。
つまり、ZOOCEはAMTULのステップを狙ったものではないだろうか。

パッケージが目に止まる→記憶する→子供にねだられ試し買いする→親子ではまって買い続ける→ZOOCEファンになるという巧みな設計である。

チャレンジャーはリーダーの10倍アタマを使わなければ生きていけない。ましてや、新製品のうち生き残れるのは1000に3つといわれる飲料業界だ。サントリーのZOOCEには、深謀遠慮が感じられる。
ZOOCE、1000に3つを生き抜いてほしい。その力はあると分析した。

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Comments

こんばんは。
約1ヵ月前、某IT企業にて2日間、先生の講義を受講した者です。その節はありがとうございました。
最前列にいた、ヘンにデカい電卓を持っていた者です。

先生のご紹介を受けてこのweblogをRSSで拝読しておりましたが、
この記事を読んで、この商品を飲んでみたくなりました(笑)。

先生の冒険心ある分析から、実際の購買行動に繋がっているかた。
けっこう読者のかたには多いかもしれない!なんて邪推した次第です。

今後も楽しく読ませていただきますー♪

Posted by: yadb | 2009.05.09 12:35 AM

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