無敵のトクホ・新発売「ヘルシアスパークリング」の戦略
これは絶対に売れる。というか、誰が買わなくても、オレが買う。毎日。
ヒットするのは千に三つといわれる飲料市場において、久々の大型商品の予感だ。そんな、「ヘルシアスパークリング」は「足し算」の商品だと思う。
花王は1980年頃から「栄養代謝」の研究をして、それが大ヒット商品の食用油・エコナを生んだ。2000年、世の中の、今日のメタボに続く肥満問題に目を付けヘルシアのプロジェクトを立ち上げた。プロジェクトはスキンケア製品でも扱ったことのあるポリフェノールに注目し、茶カテキンに辿り着いた。そしてヘルシア誕生。「高濃度茶カテキン」という独自技術で誰もマネできないポジショニングを確立したのである。
ヘルシアは厚生労働省認可の「特定保健用食品」、いわゆる「トクホ」である。その効用は<高濃度茶カテキン飲料の継続飲用により脂肪の燃焼量が増加>するとされ、ちょいっとオナカ周りが気になる。もしくは、露わにメタボなヒトにはとっても必要な存在なのである。
だがしかし、筆者も試しはしたものの、挫折した。だって、まずいんだもの。
茶カテキンとはもともと苦みの成分であるという。体脂肪への効果を期待するなら1日およそ540mgの摂取が必要となる。普通のお茶のおよそ3~4倍。そりゃ苦くて渋いわ!と思う。それを独自技術で飲めるようにしたのだ。
「良薬口に苦し」。その独特の苦くて渋い味わいを信奉するファンもいる。だが、そうでない人のために、花王は技術の力で、飲み口を柔らかにした「ヘルシアまろやか」を開発。さらにグレープフルーツ味のスポーツドリンクタイプ飲料「ヘルシアウォーター」を開発した。
・・・だがしかし、飲みやすいお茶であれば、他のおいしい茶系飲料を飲めばいい。トクホを取得していなくても、「濃いお茶」は各社から発売されている。それは結構おいしい。だったら、「そっちでいいんじゃね?」と思ってしまう。
スポーツドリンクは常用する人とそうでない人は分かれる。「スポーツしないし」と思われれば手に取られない可能性が高い。
そんなヘルシアであるが、5月18日に発売された「ヘルシアスパークリング」は何とも無敵な商品に仕上がっているのだ。
「スパークリング」と言うとおり、炭酸だ。炭酸飲料は、飲料市場の中でもダントツに伸長しているカテゴリーである。ノンカロリーである緑茶市場の顧客層を、ゼロカロリー商品群が奪っていった形で市場が伸びている。ヘルシアも緑茶カテゴリーであるが、そのカテゴリーから、なんと、ブランドをそのままにして、流行の炭酸カテゴリーを派生させたのだ。花王、恐るべし。
シュワシュワの炭酸で、クエン酸の甘酸っぱい味が何ともおいしい。渋みや苦みはほとんど感じられない。しかし、しっかり茶カテキンは540mg入っている。つまり、ヘルシアと同じ。苦くて渋いのをガマンして飲んだあの日々はなんだったの?と私は花王に問いたい。そんな気分になるほどオイシイのだ。
ターゲットは今までにヘルシアのまずさに挫折した人、ただの炭酸好きもカラダにいいからと吸引し、ゼロカロリーよりはちょっとカロリーあるけどわずか21キロカロリーならチョコひとかけら分だから、まぁオッケーとゼロカロリー炭酸派も取りこもうっちゅう戦略なわけだ。
唯一のスクリーニング条件は189円という価格か。500mlペットボトル飲料の価格レンジは通常150円。トクホなりの価格帯に設定している。その価格を受容できる層を全て飲み込む戦略なのだ。
ヘルシアスパークリングの戦略は、「足し算」だ。高濃度茶カテキンという、他にマネできない独自の必殺技、バリュープロポジションが基本となる武器だ。それに、苦み・渋みが苦手な人にはマイルドにし、ビタミンたっぷりなクエン酸で味付けし、低カロリーにして流行りの炭酸を加えて仕上げる。独自技術を基軸として、消費者の望むものを足し算で整合させていく。その技術とニーズの吸い上げをするマーケティング力には感嘆するものがある。
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