「エコバッグ型」新入社員に寄せる期待と不安
4月が終わると、ここ数年、いくつかの企業で担当している新入社員研修の仕事も終わる。学生の面影から、一歩、社会人の顔つきに成長した彼ら・彼女らを振返ってみる。
「エコバッグ型」だそうだ。
昭和48年から続いている生産性本部による今年度の「新入社員のタイプ」のネーミングである。
http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/lrw/activity000912.html
<環境問題(エコ)に関心が強く、節約志向(エコ)で無駄を嫌う傾向があり、折り目正しい。小さくたためて便利だが、使うときには大きく広げる(育成する)必要がある。
酷使すると長持ちしない(早期離職)が、意外に耐久性に優れた面もあり、活用次第で有用となるだろう。>
毎年好例の発表だが、その時々の流行とからめた妙のあるネーミングだ。「毎年そんなに傾向が変わるんかいな?」と思われるかもしれない。しかし、面白いことに変わるのだ。研修講師の立場からするとよくわかる。
昨年は「カーリング型」、であり、<育成の方向を定め、そっと背中を押し、ブラシでこすりつつ、周りは働きやすい環境作りに腐心する>とあった。しかし、筆者が受けた印象は、当時の流行語でもあった「空気読む」傾向が強く、例えば、新入社員同士が行うグループワークなどでも議論の対立を避け、うまく折り合いを付ける傾向が強かった。その意味では、今年の「エコバッグ」のように、「小さくたたむ」ことがうまかったといえるだろう。
では、今年はどうかというと、意外としっかり自己主張できる人物が多いように思う。議論すべくはしっかり議論し、課題を解いていく様は、自信に満ちてなかなかに頼もしい。売り手市場であった選考過程でも、自信にあふれしっかり自己主張してきた傾向が見える。
そんな、彼ら・彼女らの中に少しだけ見える不安な要素がある。ビミョーな「勝ち組意識」だ。
昨秋発生した経済危機によって、当面は「最後の売り手市場世代」となるだろう。今年は一変してかつての就職氷河期時代を思わせる。そんな環境下で、今年はあり得ないであろう2桁に上る内定を獲得してきた彼ら・彼女ら。生産性本部がブランドもののエコバッグに行列ができた様とからめて、<ブランド物に人気が集まった(根強い知名度の高い企業志向)>と分析するように、数ある内定の中から、選りすぐりの就職ができた人も多いだろう。
しかし、メディアが伝えるような「内定取り消し」や「自宅待機」になる同世代もいた。そんな憂き目にも遭わず、入社の日を迎え、研修を終えて配属先に向かう心の内には少なからず「安堵感」が見てとれるのだ。環境の激変を滑り込みセーフで免れた経験が、その意識に少なからぬ影響を与えているのではないか。
就職はゴールではない。スタートラインに立っただけだ。はやく、各々が働くことに対して目的を持ってほしいと思う。そうすれば、<使うときには大きく広げる(育成する)必要がある>などと言われずに、スタート点から自分の背中をぐいぐいと押すことができるだろう。
作家の志賀直哉は言った。「仕事は目的である。仕事をはっきりした目的と思ってやっているやつにとって、結果はたいした問題ではない」。
これから実際の仕事を進める上で、いくつもの業務目標を与えられるだろう。しかし、ぞれとは別に、自分自身が働く「目的」を自律的に考えみるといい。なかなか答えの見つからない問いではあるけれど、考える過程こそ意義がある。
「仕事が楽しみならば人生は極楽だ。仕事が義務ならば人生は地獄だ」ロシアの作家、マクシム・ゴーリキーの言葉だ。
諸君らの成長と活躍に期待したい。
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