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2009.04.16

PEST分析の事例:紙芝居師業界の栄光と今後を考える

紙芝居師、安野侑志(やすの・ゆうし)氏をご存じだろうか。「ヤッサン」の名で親しまれ、芸歴37年というキャリアを誇るプロの紙芝居名人だ。京都国際マンガミュージアムを中心に、地域イベントやデパートや不動産の展示場での活動を展開。1回の講演料は20~30万円、年収1000万円を稼ぎ出すという。
その紙芝居師の現在と未来をPEST分析で考えてみよう。

<不況でも年収1000万円? プロ紙芝居師が高収入の理由>
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0902/24/news058.html

上記「Business Media誠」の記事によると、<2003年までは年収500万~600万円だった>のだが、<学校の週5日制が定着し、文部科学省や市町村教委の支援を受けながら、毎週土曜日に町内会や地域の行事で紙芝居を行うようになり、それにつれて収入もアップ。それまでは5万~10万円だった1件の公演料が20万円に急増し、いまは30万円に達している>という。地域イベントでは1回の講演料は1回5万円が限界だが、企業が主催する販促イベントで30万円の講演料を稼いでいるという。

R25にも紹介されている。
<1500万円を稼ぐ紙芝居師にプレゼンテクを聞いた!>
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090409-00000005-rnijugo-ent

「誠」の掲載時点からさらに500万円年収が上がっているのみはオドロキだが、その高い講演料のヒミツが書いてある。<デパートや不動産の展示場など、子ども向けイベントスペースでの公演も増加。企業が1回30万円の公演料を払ってでも依頼するのは、子どもがその場を離れず、親が買い物に集中する環境を作れるから>とある。

年収1000~1500万という紙芝居師業界の好況は、どうやらマクロ環境と関連が深そうだ。PEST分析でメディアに掲載されているファクトを整理してみよう。時間軸は2004年から現在の少し手前で考える。


Political=完全学校週5日制は1999年導入だが、その影響が遅れてやってきたと考えられる。子供の時間に余裕ができたことは確かに大きい。
Economical=2004年当時、いざなぎ越えとも言われた好景気に日本は沸いていた。不動産業も好調だった。販促費も潤沢である。
Social=活躍の舞台ともなるショッピングセンターは建設ラッシュ。増える競合に対する集客合戦もはじまっていた。目玉イベントが欲しいところだ。
Technological=ニンテンドーDSやプレイステーションポータブルの発売年であるが、反面、ゲームなどではなく親子で楽しめる娯楽も求められていた。子供が家でゲームばかりしないよう、親は外に連れ出そうとする。親子で楽しめる、どこか懐かしい紙芝居のイベントなどうってつけだ。
以上のように、PESTの各要素が全て追い風になっていたことがわかる。

しかし、昨秋にはじまった経済危機で時代は変わってしまった。紙芝居師の世界も恐らくそのままでは済まないだろうことが、再びPEST分析を現在の時間軸で行うとわかる。

Political=教育制度改革はゆとり教育を改め、授業時間と学習項目を増やす方向だ。学校の時間が長くなり、宿題も多くなるだろう。肝心の子供の時間が減っていく。
Economical=不況の影響は大きい。不動産業はメタメタだ。販促費は絞らざるを得ない。ショッピングセンターも過当競争で撤退する物件もではじめた。そうでなくとも販促費などのコストは絞られるだろう。
Social=不景気の影響で「巣ごもり」を生活者がはじめた。生活防衛のため、財布の紐は固くなりショッピングセンターへも足が遠のく。
Technological=巣ごもりをして、楽しむなら、今日では「Wii」がある。ポータブルゲームと違い、これなら親子や家族でも楽しめる。
以上のように、すっかりPESTの各項目が向かい風に豹変してしまっている。

「誠」の記事では、これからも<大きなイベントでなくても、1件3万円前後の公演ならば全国各地で引く手あまたといい、安野さんは「初心者でもこまめに営業すれば、年収1000万円も目指せる」と太鼓判を押す>とある。
強気な市場の読みで、これからも後継者育成に力を入れるとのことだが、業界自体は逆風化にあるのは間違いない。
プロの紙芝居師のヤッサン、御年65歳。是非とも、30万円の講演料でなくとも、3万円の講演料をコツコツ積み上げる地道な努力ができる若者を育ててもらいたいと思う。

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Comments

金森先生:

お久しぶりです。
今こそ通っていないが、グロービス名古屋でお世話になりました。
マーケティングの講義で大変だったが、面白かったです。ありがとうございました。

ところで、今勉強しているビジネス英語で、PESTのことがあったので、ネットで検索したら金森先生の例文がありました。読んでみたら懐かしいですね。

Posted by: YEO BOON TZONG | 2009.10.17 07:13 PM

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Tracked on 2009.04.17 08:42 AM

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