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2009.04.21

KDDI(au)の新ブランド「iida」。その先鋭的な狙いとは?

企業戦略を読み解くにはフレームワークやセオリーが有効だ。しかし、それに縛られすぎると本質を見失うことになる。そんな事例が最近のKDDI(au)の展開だといえるだろう。

結果から見ると大敗である。
<2008年度携帯電話純増数>
1位 ソフトバンク 204万6,700
2位 ドコモ    121万3,000
3位 イーモバイル  99万8,700
4位 KDDI    50万3,700

端末価格を積極的に0円にし、iPhoneすら無料にしたソフトバンク。ネットブックをタダ同然でセット売りしたイーモバイル。ドコモは多種多様な端末で大攻勢をかけた。2008年度の携帯電話各社の展開においてKDDI(au)の出遅れ感は否めない。

そんなKDDI(au)は二つの戦略で反転攻勢をかけている。

「auケータイでサプライズな日々を」。と、ジャニーズの人気グループ嵐を前面に押し出して訴求する春のニューモデル群。音楽特化モデル、3D付きケータイ、タッチパネル対応モデル、世界で使えるグローバルパスポート機能搭載モデル、フルチェンケータイと、各機能特化モデルが花盛りの様相だ。

一方で、戦略的には論理不整合を起こしているともいえる展開を見せている。
<「機能競争は終わった」と小野寺社長 新ブランド「iida」で「次の競争」へ>
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0904/07/news076.html

記事によると<iidaブランドで実験的かつ多彩なデザインの端末を投入し、多様化するユーザーニーズの探知機にしていく。「デザインのau」のイメージを回復させ、次の成長につながるステップとしたい考えだ。>という。

機能特化は既存のauブランドでしっかり競合各社への対抗策を展開している。
では、この新たに立ち上げたiidaブランドは何を訴求しているのだろうか。それは上記の<「デザインのau」のイメージの回復>に他ならない。
2003年10月、携帯ユーザーに衝撃的なデザインを提唱した「INFOBAR」を皮切りに、2004年「taldy」、2007年「MEDIA SKIN」など、古くなってもいつまでも使い続ける愛用者を
抱える名機を発売。他にも数々のコンセプトモデルで携帯電話とユーザーの新しい関係を提唱し続けた「au Design Project」。
東京原宿のKDDIデザイニングスタジオでは、その実験的な取り組みがいくつも繰り返された。
現在、プロジェクトは、新ブランドiidaに吸収された形を取っているが、iidaの基本思想
を紐解くには、2007年のコンセプトモデル発表会である「ケータイがケータイし忘れたもの展」のメッセージを思い出してみるといい。
『考えてみると、ケータイは使っている時間より、ただいっしょに「過ごしている」時間の方が長いのかもしれない。人とケータイが共有する、すべての時間を「デザインする」こと。それがauの考える「ユーザー・インターフェイス」。』
使用する機能ではない。恐らく人が最も身近に置き、長い時間を共有する機器である携帯電話という存在そのものの「価値」を問い直した展開なのである。

もっとキレイにワンセグを見たい。ケータイでもっと楽しく遊びたい。音楽を聴きたい。デジカメ並みの写真が撮りたい・・・。そんな機能特化ニーズを持った多くのユーザーはKDDI(au)ブランドで取り込む。競合に差別化を図る高機能で勝負するのは、純増数では最下位となったとはいえ、チャレンジャーとしてのポジションを維持するためには欠かせない戦略だ。
通常であれば自社のポジションに適合した戦略に絞り込むのが戦略のセオリーであるが、KDDI(au)は戦略をあえて二枚看板で展開する。それがiidaである。
デザインプロジェクトの支持層のように、携帯電話に機能ではなく、何らかの価値観を求める層が少なからず存在していることをKDDI(au)は見逃していない。その人々に、新たな価値を提示して、「この指止まれ」と発信し続ける。プロジェクトではなく、新たなブランドの立ち上げという形に踏み切ったことで、戦略をより明確化させたということだろう。恐らく、競合各社は同様な展開を売ってはこまい。デザインプロジェクトを引き継ぐiidaはKDDI(au)のニッチャー戦略であるといえる。
ニッチャーは独自の生存領域の確保こそが戦略の要。<「デザインのau」のイメージの回復>はデザイン支持層というユーザーセグメントと、ポジショニングを強固にするための明確な方向性であるといえる。

ユーザーニーズの機能強化とそこから離れる方向の二分化に対応した、KDDI(au)のチャレンジャー戦略とニッチャー戦略。どちらかに絞り込めない苦しさはあるものの、8年間のデザインプロジェクトの結実である「iida」に賭ける思いは明確に伝わってくる。今後の展開から目が離せない。


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