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13 posts from April 2009

2009.04.28

ユーザーニーズに応えよう! 「飲む○○」の挑戦!

飲料業界に「飲む○○」が流行するようになったのはいつの頃からだろうか。最近では、「飲むプリン」、「飲むゼリー」などなど、やたら目にする。しかし、その歴史は意外と古いのだ。

例えば、「飲むプリン」。パイオニアはポッカコーポレーションだろう。1991年に上市し、18年の歴史を誇る「プリンシェイク」は、「飲むだけでなく、振って楽しめ、食感が楽しめる、デザート感覚の飲料」(同社ホームページより)という独自のポジショニングを追求している。「振って崩して飲む」飲料は、昨今ずいぶん数多いが、そんなとんでもないことを最初に考えてしまったのは、たぶんポッカだ。
ポッカの「飲むプリン」は、プリンの食感にこだわり「振って適度に崩れる固さの設定と、口でとろけるプリンの食感のバランス」(同)を追求し続け、今春、5代目のリニューアル商品が上市された。

だが、ちょっと待て。
「プリンはスプーンですくって食べればいいんじゃないのか?」という健全な疑問も排除することはできない。しかし、そこには職場の事情というものも少なからず作用しているように思う。
昨年6月、江崎グリコが行った調査では、職場でおやつを食べる習慣は定着しつつあるも、年齢の高い社員を中心としてまだまだ抵抗感を示す層も多いと伝えている。
まして、昨今の経済危機下では、ゆとりがなくなって殺伐としている職場も増えただろう。「オフィスグリコ」に手を出すこともはばかられる空気の中、「でも、お菓子が食べたいの!」と思ったら、飲むしかない。そんな職場だけではないかもしれないが。「抜け駆けおやつ需要」に「飲む○○」は応えているのではないだろうか。グリコもプリンの食感向上にさらに磨きをかけようというものだ。

そんな世の中のニーズをすくい取ろうというのか、大型ブランドも「飲む○○」に参入してきた。「飲むティラミス」。キリンビバレッジの「世界のキッチンから ティラミス・ラテ」が3月31日に発売された。

従来、「世界のキッチンから」、通称、「セカキチ」は、「世界を旅して、世界のお母さんの料理からインスピレーションを受けて」、独自の飲料に仕上げることをコンセプトとしている。その卓越したアイディアは、唸るような数々の味を実現してきた。期間限定商品が基本のセカキチシリーズではあるが、ロングセラー化しつつある「とろとろ桃のフルーニュ」など、はじめて飲んだ日には、感動で頬を涙がぬらしたものだった。

しかし、「ティラミス」である。インスピレーションを受けたオリジナルの味ではない。飲料によるスイーツの再現。セカキチ版、「飲む○○」だ。
シリーズの今までには、恐らく「飲む○○」は存在していなかったように思う。なのに、あえて、それを作ったのは、「でも、お菓子が食べたいの!」「だから飲むの!」という名もなき市井の人々の声に応えようとしたからか。
セカキチにとって、これは一つの危険な賭だったともいえよう。「飲む○○」は飲料によってどれだけ○○の味を再現できるかがカギだ。成功すれば、従来の「誰も体験したことのない新しい味」という切り口に加え、「○○の味の再現」というもう一つの切り口を手にすることができる。しかし、味の再現に失敗したら、従来の評価にも影響を及ぼすことになってしまう。

「ブランドエクステンション」という。
すでに成功しているブランド名を使って、新カテゴリーに商品を上市する戦略だ。新たなブランドを一から創造するより格段に低コストで、新カテゴリーに進出を果たすことができる。しかし、その戦略が外れて失敗した場合には、同一ブランド名を持つ全ての商品への影響は免れない。
危険な賭のリスクを軽減するためか、「とろとろ桃のフルーニュ」では大規模な販促攻勢を行っていたのに対して、この「ティラミス・ラテ」はほとんど広告が見あたらなかった。ユーザーからの味の評価が定まるまで、ひっそりと展開しようということではないだろうか。幸いにも、その濃厚な味わいはうまくティラミスの味を再現していると筆者は思った。
恐らく、一定期間で販売を終了させ、若干、味を調整した後に、大々的なリニューアル販売を行うのだろう。

一方、「飲む○○」カテゴリーにビッグネームも帰ってきた。元の商品の名前を知らない人は恐らくほとんどいまい。そして、数多くの人が愛して止まない商品。ハウス食品の「フルーチェ」だ。
そのフルーチェを「飲む」にしつらえ直した野心作、「飲むフルーチェ」の最初のチャレンジは2002年頃だったか、2004年頃だったか。PET容器入りのヨーグルトテイストの飲料として上市した。フレーバーは確かにフルーチェの定番であるピーチとイチゴである。しかし、ユーザーの評価は厳しかった。フルーチェの価値の根源である「とろとろ・ぷるぷる感」のない、サラサラ飲料。フルーチェの名を冠しているものの、別物と言ってよい仕上がりと人々から評された。

リターンマッチである。「フルーチェ ハンディータイプ」。
森永製菓「ヴィーダーinゼリー」に代表されるような、10秒で飲める、アルミパウチ包装のゼリータイプに変身したフルーチェだ。同社ホームページでは「昨今の個食・即食需要の高まりに対応した、いつでもどこでもすぐにお召し上がりいただける、初めての1人用フルーチェ」としている。
「個食化対応なら、なんで、4人前が1パックに入っている、牛乳と混ぜる普通のフルーチェを1人用個包装にしないかな~」と根源的な疑問もわき起こるが、「どうしても外で飲みたい!」とするニーズを持ったユーザーの声があったのかもしれない。考えているだけでははじまらない。飲んでみた。イチゴ味・ブドウ味。

イチゴ味はかなり懐かしいフルーチェのフレーバーを再現している。問題の「とろとろ・ぷるぷる感」に関しては、厳密にいえば「とろとろ」は少し足りないものの、「ぷるぷる」に関しては、ナタデココまで投入してかなり頑張っている。正直言うと、フルーチェ特有の「ぷるぷる」というより、食感はゼリーっぽく、炭酸抜きの日本コカ・コーラ「ファンタ・ふるふるシェイカー」という感じもする。
しかし、「どうしても外で飲みたい!」「すぐ飲みたい!」とするユーザーニーズに応えようとする努力はひしひしと伝わってくる。

この展開も「ブランドエクステンション」ではあるが、失敗を恐れず何度でも挑戦できるのは、母体となるブランドが強固であるからだ。「飲むフルーチェ」に失望しても、フルーチェが嫌いになる人はあまりいないはずだ。そんな強みを活かして、「フルーチェ ハンディータイプ」はさらにリニューアルを重ねるかもしれない。筆者も小学校5年生の家庭科の授業で、カレーの副菜としてフルーチェを初めて自ら作って以来のファンとして支持したいと思う。

ユーザーのニーズに応えるべく、多様化を見せる「飲む○○」。飲料メーカーでないハウス食品もこだわりを見せているのだから、もう一歩踏み込んでこんな商品はどうだろう。
「ご飯が食べたい!でも、食べられない!」。で、「飲むククレカレー」。

コンソメやコーンポタージュを缶入り飲料にした製品は数多い。食事代替需要を満たすものだ。また、沖縄には古くから米飲料の「ミキ」という飲料がある。ご飯を甘くにこんでとろみを出した甘酒めいた炭水化物飲料だ。忙しいときにご飯代わりに飲んだのが発祥だという。現在は缶入り飲料として当地で販売されている。
「食べたいけど、ご飯が食べられない」というニーズギャップに応えるべく、ハウス食品もお得意の「ククレカレー」で挑んではどうだろう。ブランドエクステンションで、何度か失敗しても、ククレカレーほどの強固なブランドならきっと大丈夫だ。

「マーケティングの基本は、顧客のニーズを発見し、それに応えること」である。「飲む○○」も、ますます多様な展開を見せてほしいと思う。


参考記事:「会社でお菓子を食べてはいけないの?」


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2009.04.27

「ケータイ疲れ」なユーザー動向・携帯電話業界はどう動く?

4月21日に『KDDI(au)の新ブランド「iida」。その先鋭的な狙いとは?』という携帯電話に関する記事を書いたばかりだけれど、その後、いくつか気になる報道を見つけた。
今回は、それらの情報をつなぎ合わせてので、携帯電話ユーザーの動向について少し深掘りしてみたい。

■「過去最低」の携帯電話出荷台数の真の原因は?

<2008年度の携帯電話出荷台数が過去最低を記録――2010年度まで減少傾向>
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/cnet/20090423-OYT8T00686.htm

MM総研の調べによる2008年度通期の国内携帯電話出荷状況を次のように報じている。<2000年度の調査開始以来初めて4000万台を下回り、過去最低となった>。そして、2つの原因を挙げている<新端末の価格高騰やキャリアによる期間拘束型プランの浸透や消費低迷などによる買い替えサイクルの長期化><通信キャリアが大幅な在庫調整を実施し(中略)市場の端末を売り切るためにメーカーからの仕入れを抑えたため>

業界筋の分析としてはそうなるのだろうが、真の原因を捉えてはいないように思う。
前者の「買い替えサイクルの長期化」は確かにユーザー動向を表わしている。そして、わかりやすい原因としては「価格高騰」「期間拘束型プラン」「消費低迷」も間違っていないだろう。しかし、ユーザーのココロの中をもう少しのぞいてみたいところだ。
後者は在庫調整が必要になったのは、ユーザーの買い換えが鈍化したから。前者と原因は共通する。

■ユーザーは「ケータイ疲れ」していないか?

ユーザーと携帯電話の関係を表わす、おもしろいインターネット調査の結果が発表された。
<約半数が、家の中でも「携帯電話を持ち歩く」――ネプロジャパン調べ>
http://japan.internet.com/wmnews/20090424/10.html

記事のタイトル通り、もはや現代人にとって、携帯電話は切っても切れない関係になっていることが示されているが、反面、ネガティブな意見も目立つ。
<携帯電話が手元にないと不安になるかどうかを聞いたところ、「不安になる」という回答が6割近く(58%)を占める><携帯電話による悪影響については、「携帯電話に縛られるようになった(18%)」>など。
筆者はユーザーの「ケータイ疲れ」を見て取ったが、どうだろうか。

■飽きられはじめた先進技術?

携帯電話といえば、かつてはモデルチェンジが頻繁になされ、その度高機能化していくのが常だった。そして、多くのユーザーがそれを熱狂的に追いかけた。筆者もその一人だ。
先のMM総研の調べをもう一度見てみよう。メーカー別の出荷台数だ。
<AQUOSケータイのシャープが4年連続で1位となった。ただし、出荷台数は前年同期比35.3%減>、2位はVIERAケータイの<パナソニック モバイルコミュニケーションズで、出荷台数は同13.6%減>。
目玉の高画質ワンセグ携帯を抱えていてもシェアの低下に歯止めがかからない。その背景には、高機能を追求していくユーザーの減少が隠れているのではないだろうか。筆者も、昨年末、久々の機種変更をしたのだが、もはや新機能を追いかけはしなかった。

■「安けりゃいいじゃん!」「新しくなくてもいいじゃん!」

販売奨励金を使った0円携帯が市場から一次姿を消したが、姿を変えて2007年頃から「ほぼ0円」が復活しはじめた。不景気の影響でさらに買い換えの長期化が顕著になり始めた昨年末に、投げ売り状態の「実質0円」が活発化したという。
<投げ売り激化で「0円携帯」復活も 携帯業界に市場拡大の打開策はあるか>
http://diamond.jp/feature/mobile_dw/10002/

実質0円で提供されるのは、人気がなく、在庫化している型落ちの機種だ。しかし、かつてなくそれがよく売れているという。もちろん、販売方式の変更による端末価格の高騰に不景気が重なった影響は大きい。しかし、それ以上に、新機種や高機能を求めるキモチがユーザーから急速に消失していっているのも大きな原因ではないだろうか。

さらに、中古携帯活況だという。
<不況の影響? 「中古」携帯電話が広がる>
http://www.j-cast.com/2009/04/15039410.html

中古品の買取・販売会社の広報担当者は語る。<「昨年(08年)の10月に中古携帯電話を取扱い始めてから、販売も買取も、毎月数百台単位で増加していますよ」>。
<機器が故障してしまった人や、とにかく安く機種変更をしたい人、短い利用期間で機種変更したい人>が店を訪れるという。
かつては携帯は自分自身の分身のような存在で、どんな機種を持っているかが重要だった。ちょうど、自動車がステータスシンボルであった時代のように。その自動車はステータスシンボルとしての機能をすっかり失った。携帯以上に乗り換えサイクルは長期化している。
携帯に対するユーザーの関心の低下は、自動車のそれを後追いしたような感がある。

■今後の携帯業界を占う「iida」?

「LIFE > PHONE」というコピーが印象的なauの新ブランド「iida」。2001年から脈々と続いたauのデザインプロジェクトを引き継いだ意欲的な展開である。
「機能競争は終わった」と小野寺社長が語るが、同社も各社同様に高機能路線は継続している。つまり、デザインやライフスタイルを訴求する「iida」と既存路線は二枚看板なのだ。
ここまで見てきたユーザーの動向から考えると、高機能路線は苦戦が予想される。しかし、auには、デザインプロジェクトの支持層という手堅い票田があるはずだ。その層が反応してくれるかどうか。そして、「iida」の魅力が伝わって新たなユーザーが取り込めるか。今後の動向を占う上では極めて重要なポイントだといえるだろう。
「iida」はデザインプロジェクトを引き継ぐ、auにしかできない独自のニッチャー戦略である。もし成功すれば、他のキャリアは、高機能路線から転換して、「自社ならではの価値」をどのようにユーザーに訴求していくのかを血眼で模索することになるだろう。
一方、「iida」が不発に終わったら。同時に高機能路線も縮小傾向が顕著だったら。その時は、機能を絞り込み、とにかく安くといった携帯ばかりになるのかもしれない。

もはや、筆者は携帯に以前のような熱い思いは抱かなくなっているが、さりとて、全く無個性な携帯ばかりになってしまったら、それはそれで少し悲しい。今回、携帯業界のユーザー動向を考察してみて、まずは「iida」の成功を祈り、各社も何とか、ユーザーが反応するような独自の価値を見つけ出してもらいたいと思った。
やはり、このままではダメだ。ユーザーは疲れ、関心を失っている。


※関連記事:『KDDI(au)の新ブランド「iida」。その先鋭的な狙いとは?』

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2009.04.24

ミネラルウォーター市場の今後を占う

日本コカ・コーラが「おいしい+環境にいい」ミネラルウォーターを発売した。果たして、市場はどう反応するのか。

新製品は『い・ろ・は・す(I LOHAS)』という。ちょっと変わったネーミングの由来は、<「いろは歌」の最初の三文字>と<「LOHAS (ロハス)」を掛け合わせ>たもので、<国産の天然水であることを表現するとともに、消費者に対して環境への配慮が具体的な行動となるきっかけを提案>しているという。なんて深いんだ日本コカ・コーラ。
http://www.cocacola.co.jp/corporate/news/news_20090423.html

以下、Fuji Sankei Business iに、同商品の紹介記事として、その背景などがまとめられているので、それを見てみよう。
<日本コカ・コーラ、ミネラル水「い・ろ・は・す」>
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200904240011a.nwc

日本のミネラルウォーター市場に構造的な変化が起こっている。日本ミネラルウォーター協会によると、市場全体の伸びは大幅鈍化。特に、輸送コストが転嫁され割高になっている輸入品が2桁の落ち込みを見せている。対して、10~30円安い国産品が微増しているという状況だ。
生活者が財布の紐を固くした影響はこんなところにも如実に表れている。つまり、ミネラルウォーター飲用者の、「輸入品にこだわる・こだわらない」というセグメントは崩壊傾向にあり、「価格の安さにこだわる・こだわらない」というセグメントの、「安さ志向」が増えているわけだ。
しかし、日本コカ・コーラは「安さ」を全く訴求していない。「い・ろ・は・す」の店頭価格は520ミリリットル入りで126円。価格だけならさらに安い商品もあるからだろう。

狙いは名前の通り「エコ」だ。売り物はその容器。重量が12グラムと国内最軽量であり、<従来の容器に比べ樹脂の使用量を4割減らしたことで、製造時の二酸化炭素(CO2)の排出量を一般家庭 600世帯弱分に相当する年3000トン削減できるという> 。また、キャップ、ラベルも極限までの軽量化を実現したとニュースリリースにある。
「ポカリスエット」のペナペナなペットボトルは18グラム。それが発売された時にも驚嘆したが、さらに軽い。しかも強度を十分確保しているという。なんという技術。

しかし、なぜかもう一つの重要なアピールポイントを前面に出していないのが気になる。
「いろは」で<国産の天然水であることを表現>しているなら、輸入品の「フィードマイレージ」について指摘すればいいのにと、筆者は思う。フィードマイレージとは、食料を輸送することによる環境負荷を量と距離をかけて数値化したものだ。そして、生産地から消費地までの距離が短い食料を選ぶことが提唱されている。水の場合は特に「ウォーターマイレージ」と呼ばれることもある。
うーん、いい訴求ポイントを考えてしまった。日本コカ・コーラに教えてあげようか。などと考えたが、ミネラルウォーターのシェアNo.1はサントリーの「天然水」。南アルプス、奥大山、阿蘇と、しっかり国産をアピール。定着している。ウォーターマイレージを言わないのは敵にも塩を送ることになるからだろうか。ちょっと穿ちすぎか?

と、ここまで考えると、さらにキケンな香りがしてくる。
明言しなくても、国産でなにげに安さを醸しだし、エコをアピールする「い・ろ・は・す」。
しかし、もう一歩進めて考えれば、「そもそも、ペットボトルのミネラルウォーターを飲まなきゃ、一番お金かからないし、一番エコなんじゃね?」と気付いてしまうからだ。
事実、浄水ポットが売れている。
<浄水器市場で伸びる「ポット型」 健康、エコ、経済性の三拍子揃う>
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090416/192103/?P=1

ポット型の「ブリタ」をはじめ、オフィスで使うタンブラー型などが売れ行き好調だという。ブリタは売上げ2割増だ。経済効果も高い。<ブリタの場合、フィルター1個で約200リットルの濾過が可能>なので、<1リットル当たりに換算すると、約7円>。ペットボトルと格段の差だ。
エコについても、経済産業省3R政策はずいぶんと認知が広がり定着化を見せているといえるだろう。Reduce (削減)、Reuse(再使用)、Recycle(再資源化)。ペットボトルの使用機会を減らすことが一番エコなのだ。

水を飲むということは人間全てに当てはまる。そのうち、「水の味や安全性を気にする・気にしない」というセグメントができる。その気にするセグメントも、「浄水する手間を面倒に思う・面倒に思わない」というセグメントができる。さて、このセグメントは、不景気とエコロジーの高まりという環境の変化でどう動くかだ。
国内産で、エコなペット容器、価格も安め。「い・ろ・は・す」は時代に適合した鋭いポジショニングを取っているといえる。現在の日本のミネラルウォーター市場で最も有利なポジションだ。
しかし、もう一歩、環境変化によって生活者の意識が変われば、「い・ろ・は・す」とてキケンな状況になるかもしれない。成長鈍化が顕著な市場にあまり明るさは見られないようだ。

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2009.04.23

ネットブック夏モデル発表・各社の覚悟と思惑は?

パソコンメーカー各社から「夏モデル」の発表が相次いでいる。注目は小型低価格の「ネットブック」と呼ばれるカテゴリーだ。各社の戦略とその覚悟はいかなるものだろう。

<東芝、6万円の新ネットブック「dynabook UX」など夏パソコン発表>
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090419/1025573/
<富士通がネットブックを国内投入(略)>
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090419/1025574/
<シャープがネットブック参入(略)>
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090421/1025643/

各社の夏モデル発表において、ネットブックの投入が顕著になっている。しかも、驚くべきことに、それらの機種には各社のメインブランドの名前が冠されているのだ。例えば、東芝は自社のネットブックには、「NB100」という名を付けて販売していた。それが、「dynabook」ブランドを初めてネットブックに付けたのだ。富士通も海外だけで展開していたネットブックを国内市場に投入。メインブランドの「FMV-BIBLO」を付けた。シャープは約1年間沈黙を守っていた「Mebius」を投入。それが、ネットブックの形で現れるとは多くの人は予想していなかっただろう。

メインブランドをネットブックに付けるということはどういうことか。確かに国内においてもネットブック市場は伸長している。一方で各社の競争は激化し、価格は5万円が目安である。確かに売れる。しかし、価格は安い。となると、メインブランドのノートPCとの価格差は非常に大きくなる。折しも不景気の影響で財布の紐は固くなっている。買い換えを考えていたユーザーが「こっちでもいいか!」と、同ブランドのネットブックを選択したら、自社内のカニバリ(喰い合い)が発生し、安い機種のシェアが伸びてしまうことになる。それを避けたいために、今までメインブランドを付けなかったり、ネットブックの投入を各社は見送ったりしてきたのだ。

PCが売れない。当面売れ行きが回復する気配はない。とすれば、売れているネットブックを売るしかない。
その売り方に、成功事例がチラつく。ソニーの「バイオtype p」だ。「軽い・小さい・美しい」というコピーで売り出し、小さいにもかかわらず、優れたキータッチと、非常に質感の高い美しい仕上げで、価格はネットブックとしては破格の9万円台後半を付けた。高い。でも、売れた。
もちろん、熱心なソニーファン、バイオファンが2台目以降のサブマシンとして購入した例もある。だが、あのバイオが9万円ならと、多くのファーストユーザーを取り込んだともいわれている。ヘビーユーザーにはCPUがAtomでは少々力不足かもしれないが、質感の良さはバイオの名に恥じない。

各社の価格は東芝「dynabook」、富士通「FMV-BIBLO」ともに6万円台だという。シャープ「Mebius」は後述するが、野心的な付加機能で8万円前後。いずれにしても、海外メーカーのネットブックに対しては、質を上げ、ブランドネームも付加して高く売る戦略だ。

その中で、最も野心的なのが「Mebius」。<タッチパッド部分に同社独自デバイスである「光センサー液晶」を搭載した>という。<タッチパッド部分にさまざまな情報や画像を表示できるほか、タッチ操作や手書き文字入力ができる>という今までにない新機能で勝負をかけている。
想定している使用方法は<メールに手書きイラストを添付したり、写真にコメントを付けたりできる>というものや、指を動かして操作するボーリングやピアノのゲームだというが、本命は<手書き文字入力を使った辞書検索機能>だろう。つまり、ネットブックで電子辞書の手書き検索機能や学習ソフトと同等の機能を担おうというのだ。
ネットブックでブラウジングやメール、その他PCのソフトを使い、電子辞書としても使える。1台で2度オイシイ。そんなポジショニングを狙っているのではないだろうか。
シャープは電子辞書に関してはシェアはカシオに負けていて第2位だ。カテゴリーをまたいだ自社内カニバリよりも、カシオの電子辞書シェア奪取もこのネットブックで視野に入れているのではないだろうか。シャープにとっても1台で2度オイシイ。

夏モデルの主戦場はネットブックと思って間違いない。付加価値を競う日本メーカー各社の戦い。価格が安い海外メーカーとの戦い。既存のメインブランドへの影響。それらがどうなるかはまだわからない。当面目が離せない展開であることは間違いない。

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2009.04.22

「政策マーケティング」は真のソリューション提供を望む

<自民党は次期参議院選準備で、各選挙区で有権者がどのような政策を望んでいるかを分析する「政策マーケティング」という手法を導入する>という。

日本経済新聞4月19日号に総合・政治面の小さな囲み記事で報じられた。自民党の系列シンクタンクが全国300選挙区のうち、自民党候補が当落線上にあると見られる100の激戦区を調査。<治安や社会保障、中小企業支援、地元道路の渋滞問題など、各選挙区でどの政策項目に関心が高いか順位を付けする>ということだ。関心事が高いこと。つまり、有権者の「ニーズの把握」をしようということのようだ。

ニーズとは「理想とする状態と現状とのギャップ」を表わす。ニーズの把握、その掘り下げはマーケティングの最も重要なキモであるといっても過言ではない。そして、注意点は「ニーズ」と「ウォンツ」を取り違えないことである。

ニーズとウォンツ。その関係はハーバードビジネスレビューの元編集長であり、名論文「マーケティング近視眼」を記したセオドア・レビットの言葉がわかりやすい。
「顧客はドリルが欲しいのではない。穴を開けたいのだ」。
ニーズは「穴」。その人物は、何かネジでもねじ込みたいのが、目の前に穴が空いていて欲しいと考えている。「穴が空いている」それが理想とする状態。しかし、現状は「穴が空いていない」。なので、そのギャップとして「穴を開けたい」。それがニーズ。そして、ドリルはニーズを満たすための対象物だ。

ニーズとウォンツを取り違えるとどんな問題があるのか。自身が工具店主になったつもりで考えてみるといい。「ドリルをください」「はいどうぞ」では、顧客の本当に必要とするモノ、真のウォンツを提供できている保証はない。ニーズの掘り下げが必要だ。
何のために、どんな「穴」が必要なのか、工具店主として顧客に確認してみよう。「子供の工作を手伝いたい」と答えるかもしれない。だとしたら、大げさなドリルではなく、安価な「キリ」ぐらいでいいのではと提案できるだろう。「家の前の私道の修理」と答えるかもしれない。だとしたら、その顧客は何か勘違いをしているのだろう。ドリルで道路は直せない。道路工事用の機材が必要だ。店には機材はある。しかし、その顧客は年に何回その機械を使うだろうか。「3軒先に工務店があるから、そこに発注した方がいいですよ」とアドバイスできるだろう。

ITの世界ではよく使われる言葉、「ソリューション(Solution)」。日本語にすれば「問題解決」だ。問題解決策を提案し、それを実行するためにはニーズを把握し、掘り下げ、それを満たす適切なウォンツを見極めなくてはならない。
<治安や社会保障、中小企業支援、地元道路の渋滞問題>。政策の提言が明らかになっていないため、まだ判断はできないが、生活者のニーズがしっかりと掘り下げられていることを望む。諸問題に対する予算を付けるだけではソリューションにならない。

一つ、ニーズを掘り下げたすばらしいウォンツであり、ソリューションを提供した事例を見つけた。

「Q Drum」。 http://www.qdrum.co.za/

生活に欠かせない「水」を手に入れるため、アフリカでは何十Kmもの道程を重いポリタンクで運ぶ子供や女性が数多くいる。円筒形のポリタンクにロープを通し、コロコロと引っぱり転がして運べば、その労力と時間は劇的に削減できる。上記サイトのトップページにある画像がわかりやすい。「Efficient & Fun」と題され、楽しげにQ Drumを運ぶ子供たちの表情が印象的である。
「水をください」はウォンツだ。真のニーズは、日々の水を手に入れる苦労と時間を削減することである。それを見極め、実現するウォンツ、ソリューションを提供すること。水を簡便に、楽しく手に入れる手段であるQ Drum。
「政策マーケティング」そのレベルまで掘り下げがなされることを望みたい。


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2009.04.21

KDDI(au)の新ブランド「iida」。その先鋭的な狙いとは?

企業戦略を読み解くにはフレームワークやセオリーが有効だ。しかし、それに縛られすぎると本質を見失うことになる。そんな事例が最近のKDDI(au)の展開だといえるだろう。

結果から見ると大敗である。
<2008年度携帯電話純増数>
1位 ソフトバンク 204万6,700
2位 ドコモ    121万3,000
3位 イーモバイル  99万8,700
4位 KDDI    50万3,700

端末価格を積極的に0円にし、iPhoneすら無料にしたソフトバンク。ネットブックをタダ同然でセット売りしたイーモバイル。ドコモは多種多様な端末で大攻勢をかけた。2008年度の携帯電話各社の展開においてKDDI(au)の出遅れ感は否めない。

そんなKDDI(au)は二つの戦略で反転攻勢をかけている。

「auケータイでサプライズな日々を」。と、ジャニーズの人気グループ嵐を前面に押し出して訴求する春のニューモデル群。音楽特化モデル、3D付きケータイ、タッチパネル対応モデル、世界で使えるグローバルパスポート機能搭載モデル、フルチェンケータイと、各機能特化モデルが花盛りの様相だ。

一方で、戦略的には論理不整合を起こしているともいえる展開を見せている。
<「機能競争は終わった」と小野寺社長 新ブランド「iida」で「次の競争」へ>
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0904/07/news076.html

記事によると<iidaブランドで実験的かつ多彩なデザインの端末を投入し、多様化するユーザーニーズの探知機にしていく。「デザインのau」のイメージを回復させ、次の成長につながるステップとしたい考えだ。>という。

機能特化は既存のauブランドでしっかり競合各社への対抗策を展開している。
では、この新たに立ち上げたiidaブランドは何を訴求しているのだろうか。それは上記の<「デザインのau」のイメージの回復>に他ならない。
2003年10月、携帯ユーザーに衝撃的なデザインを提唱した「INFOBAR」を皮切りに、2004年「taldy」、2007年「MEDIA SKIN」など、古くなってもいつまでも使い続ける愛用者を
抱える名機を発売。他にも数々のコンセプトモデルで携帯電話とユーザーの新しい関係を提唱し続けた「au Design Project」。
東京原宿のKDDIデザイニングスタジオでは、その実験的な取り組みがいくつも繰り返された。
現在、プロジェクトは、新ブランドiidaに吸収された形を取っているが、iidaの基本思想
を紐解くには、2007年のコンセプトモデル発表会である「ケータイがケータイし忘れたもの展」のメッセージを思い出してみるといい。
『考えてみると、ケータイは使っている時間より、ただいっしょに「過ごしている」時間の方が長いのかもしれない。人とケータイが共有する、すべての時間を「デザインする」こと。それがauの考える「ユーザー・インターフェイス」。』
使用する機能ではない。恐らく人が最も身近に置き、長い時間を共有する機器である携帯電話という存在そのものの「価値」を問い直した展開なのである。

もっとキレイにワンセグを見たい。ケータイでもっと楽しく遊びたい。音楽を聴きたい。デジカメ並みの写真が撮りたい・・・。そんな機能特化ニーズを持った多くのユーザーはKDDI(au)ブランドで取り込む。競合に差別化を図る高機能で勝負するのは、純増数では最下位となったとはいえ、チャレンジャーとしてのポジションを維持するためには欠かせない戦略だ。
通常であれば自社のポジションに適合した戦略に絞り込むのが戦略のセオリーであるが、KDDI(au)は戦略をあえて二枚看板で展開する。それがiidaである。
デザインプロジェクトの支持層のように、携帯電話に機能ではなく、何らかの価値観を求める層が少なからず存在していることをKDDI(au)は見逃していない。その人々に、新たな価値を提示して、「この指止まれ」と発信し続ける。プロジェクトではなく、新たなブランドの立ち上げという形に踏み切ったことで、戦略をより明確化させたということだろう。恐らく、競合各社は同様な展開を売ってはこまい。デザインプロジェクトを引き継ぐiidaはKDDI(au)のニッチャー戦略であるといえる。
ニッチャーは独自の生存領域の確保こそが戦略の要。<「デザインのau」のイメージの回復>はデザイン支持層というユーザーセグメントと、ポジショニングを強固にするための明確な方向性であるといえる。

ユーザーニーズの機能強化とそこから離れる方向の二分化に対応した、KDDI(au)のチャレンジャー戦略とニッチャー戦略。どちらかに絞り込めない苦しさはあるものの、8年間のデザインプロジェクトの結実である「iida」に賭ける思いは明確に伝わってくる。今後の展開から目が離せない。


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2009.04.20

ファストファッション戦争とファーストリテイリングの真の狙い?

日本第1号店である銀座店オープン時の長蛇の列が記憶に新しいH&M(Hennes & Mauritz:ヘネス・アンド・マウリッツ)に続き、ファストファッションの黒船が続々押し寄せ、戦争が激化している。しかし、この戦争の影には単純な構図で読み解くことのできない、ユニクロを抱えるファーストリテイリングの戦略が見えてくる。

ファストファッションという言葉もだいぶ定着してきた感もあるが、「手早く、安く、オシャレなファッションが手に入る」という、ファストフードになぞらえた言葉である。世界の御三家はH&M(スウェーデン)、ZARA(スペイン)、TOPSHOP(イギリス)。
安く提供できるヒミツはSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)という、製造から小売までの垂直統合した事業形態にある。

しかし、SPAという業態はファストファッションブランドの本質ではなく、あくまで「オシャレでカワイイ」ことが重要だ。H&M原宿店のすぐ横に、ロサンゼルス発のファストファッションチェーン「FOREVER 21(フォーエバー 21)原宿店」がもうすぐオープンする。同社は企画・生産を多数のアパレルメーカーにアウトソーシングしており、商品の幅広さが醸し出すバラエティーさという武器をもっている。また、何といっても価格も強力な武器だ。「100ドルあれば服からバッグ、アクセサリーや靴までコーディネートできる」ことをコンセプトにしているという。

黒船に対抗する日本勢もある。10以上のブランドを抱える株式会社ポイントは自社の7つのブランドを集積した「コレクトポイント原宿店」をオープンさせ黒船を迎え撃つ構えだ。
原宿から新宿に目を転じると、ユニクロがH&Mに戦いを挑んでいる。その様子は以前の記事「ユニクロ+丸井=ユニクロガールズが新宿大戦争を激化させる?!」で伝えたとおりだ。従来、「品質重視」であったユニクロはファストファッションとは一線を画していたのだが、リニューアルオープンした「新宿マルイ カレン」に出店し、コラボレーション店「ユニクロガールズ」を展開。11月に新宿進出を計画していると噂されるH&Mを迎え撃つ構えを見せている。

面白い分析をしている記事を見つけた。
<オンワードがH&Mに対抗! 無名の米大型衣料店を出店へ>
http://diamond.jp/series/inside_e/09_04_18_001/

<米国の新興セレクトショップ「オープニングセレモニー」の日本における商標権を獲得、今年秋に都内に売り場面積2000平方メートルの大型店を出店する計画>であるとし、<「3000円のカットソーから40万円のドレスまで揃うような、ファッション感度の高い店にしたい」(奥田彰・オンワード樫山常務)としているが、業界内ではH&Mの手頃な価格帯にぶつけてくるとの見方が強い。>と報じている。
つまり、オンワードでさえ、ファストファッションに参戦!と解釈しているわけだ。確かに、百貨店売上比率が高い同社は、百貨店の地盤沈下に付き合えば心中するしかなくなる。記事の解釈は正しいかもしれない。

ところが、その「無名」とされている「オープニングセレモニー」に既に目を付け、コラボ商品を世に出している企業があるのだ。ファーストリテイリング、ユニクロだ。
http://www.uniqlo.com/dip/jp/ (Opening Ceremonyの項をクリック)
何やら、鳶に油揚げのような展開に見えるが、ユニクロの戦略はそんなに矮小なものではない。
今年最大のニュースは「ジル・サンダーとの契約」である。
<UNIQLOがジルサンダー氏とコンサルティング契約締結>
http://www.fashionsnap.com/news/2009/03/uniqlo-jil-sander-2.html

<コンサルティング契約は、ユニクロの商品メンズ/ウィメンズ商品全体にジル・サンダー氏がデザイン・クリエイティブ監修を行い、また特定のコレクションのデザイニングそのものを行うことが主な内容となっている>という。
あの、ジル・サンダーがユニクロの、最近頑張ってはいるけれど、どこか頑張り切れていないシルエットを指導する。中には直々にデザインする。ユニクロ価格でジル・サンダー。何ということだ。ファストファッションなどというコトバが、なんとも言葉通りに安っぽく感じてしまうのは筆者だけだろうか。いや、そうではあるまい。どのブランドとも一線を画してしまう凄味がある。
しかも、<なお、Jil Sander氏は現在、オンワード傘下のブランド「JIL SANDER」からは離れており、今回の契約に「JIL SANDER」ブランドとの関わりはない>という。ここでもユニクロはオンワードを突き放す。

しかし、ここでまた限定的な見方をするとファーストリテイリングの戦略の全体像を見失う。目標は、「2010年グループ売上高1兆円・経常利益1500億円」である。
こんな分析もある。<絶好調ファーストリテイリング 目標売上高1兆円の死角は“ユニクロ以外”>。
http://diamond.jp/series/inside/10_24_001/

ユニクロ事業だけで2010年に7000億まで見えてきたが、残り3000億をその他のブランドでいかに稼ぐかが課題であるとの論である。
確かにファーストリテイリングは傘下の「ジー・ユー」ブランドを大きくテコ入れした。今年に入って990円ジーンズを目玉に、全体にユニクロの1/2~1/3という低価格路線を明確化したのだ。ハイエンドも強化した。1月、「Theory(セオリー)」をTOBによって完全子会社化したのである。

ファーストリテイリングはブランドポートフォリオを巧みに使って、グループ戦略を強化しているということになるのだろうか。ある意味それは正解だ。そして、そのポートフォリオをうまく読み解くには、「バリューライン」を考えるといい。
横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取る。すると、「安くてそれなりの価値のもの(安かろう、悪かろう)=エコノミー戦略」「そこそこの価格で、ほぼ妥当な価値のもの=中価値戦略」「高くて価値の高いもの=プレミアム戦略」という比例した関係が出来上がる。これがバリューラインだ。
バリューラインを下回る、例えば「中間的な価格で価値が低い」ようなものは、市場から撤退を余儀なくされる。逆に、バリューラインを上回るものは、消費者の支持が得られ強力なパワーを発揮できる。
例えば「低価格なのに中間価格と同等の価値=グッドバリュー戦略」「中間的な価格で価値が高い=高価値戦略」「低価格なのに高価格のものと同等の価値=スーパーバリュー戦略」という存在になる。
バリューラインの縦軸「価値」は企業の戦略によって異なる。多くのファストファッションブランドは、「ファッション性」の価値を訴求する。「安くてオシャレ」である。つまり「グッドバリュー」戦略だ。

では、ファーストリテイリングのバリューラインの「価値」軸は何だろうか。品質で考えれば、柳井社長が990円ジーンズの発表記者会見で語った言葉が読み解ける。
<「ユニクロは(全国規模で販売される)ナショナルブランドの商品と比べても品質は高いが、最低価格では提供できない。まあまあの品質で低価格のものを求める人はジーユーでお願いしたい」>
「品質は高いが、最低価格では提供できない=ユニクロ」は中価格・高品質という「高価値戦略」。「まあまあの品質で低価格のもの=ジーユー」は低価格・中品質という「グッドバリュー戦略」である。

従来は「価値」が「品質」であったため、ファストファッションブランドとは棲み分けがなされていたが、「ユニクロガールズ」の展開や、従来以上に「Opening Ceremony」などのブランドやデザイナーとのコラボを強化している動き。そして、ジル・サンダーとの契約で完全に「ファッション性」という価値も手に入れた。もはや無敵の存在だといえるのではないだろうか。

もう少し考えると、「2010年グループ売上高1兆円・経常利益1500億円」のシナリオが少し見えてくる。それは、7000億を稼ぐユニクロ本体を強化し、さらに収益性を増そうという戦略ではないだろうか。

ジル・サンダーがユニクロのファッション性をより高める。その代わり、若干、ユニクロ商品単価を上昇させるのではないだろうか。価値が高まったのであれば、その理由は付く。
ファッション性はいらないという顧客はジーユーですくい取る。顧客流出は極小化を図る。
また、価格上昇といっても、同じく傘下の「Theory」ブランドほど高くない。しかし、ジル・サンダーの手によるシルエットが手に入る魅力を訴求する。
その意味からすると、傘下のブランドポートフォリオ管理はユニクロの強化を主眼においているのではないかと考えられるのだ。強大なユニクロブランドの価値をさらに高め、その収益性を向上させる。それが、ファーストリテイリングのい戦略ではないかと推察した。

「2010年グループ売上高1兆円・経常利益1500億円」。ファーストリテイリングの視線は、足下のファストファッション戦争の遙か先を見ているのだろう。


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2009.04.17

牛丼値下げ戦争・きっと吉野家はすき家に対抗すると思うワケ

牛丼チェーンが値下げ合戦を繰り広げている。生活者としてはこの不況期にありがたい話だが、一方で「大丈夫なんかいな?」とも思ってしまう。しかし、大丈夫ではなくとも値下げせざるを得ない事情がある。そして、恒常的な値下げに慎重と見られる吉野家はすき家のシカケに渋々と乗らざるを得ないように考えられる理由が見える。

<不況で熱々 牛丼戦争再び?>
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090416-00000114-san-bus_all

上記メディアが報じるところでは、すき家は<主力の牛丼とカレーの価格を今月23日から値下げすると発表した。すでに期間限定で値下げした吉野家と松屋に対抗し、恒常的な値下げに踏み切ることで来店客を増やして増収につなげるのが狙いだ>という。
客単価、売上げとも低下している同社には危険な賭に思えるが、<値下げで価格に敏感な消費者の来店を促す>といい、不況期で財布の紐が固くなった消費者を呼び込むことを優先した意志決定をしたことになる。

牛丼チェーンはもともと低単価、薄利多売のビジネスモデルだといえる。「いやいや、吉野家は営業利益率10%だと言うじゃないか」という論もあるだろう。そんなときは、坂口孝則・著『牛丼一杯の儲けは9円―「利益」と「仕入れ」の仁義なき経済学』 (幻冬舎新書)を読むと納得するだろう。同書はバイヤーの立場で書かれた良書であり、仕入れを下げることによって利益率をひねり出すことの重要性を説いている。つまり、利益率の高さは、強大なバイイングパワーのなせる業だ。
バイイングパワーの源泉は何か。それは「規模」だ。強大な仕入れ量を前提としたコストリーダーの戦い方の基本は規模こそ命である。規模の経済によって徹底的に固定比率を低下させるのだ。

利益構造の厳しい業界ではあるが、今回のすき家のシカケには同社の勝算がにじみ出している。メディアの分析によると、<吉野家と松屋は米国産の牛肉を主に使用しており、すき家がメーンとする豪州産よりも単価が約1・5倍高いため、(本来)コスト的に(恒常的な)値下げは難しい>という。自社も痛むが、競合はもっと痛むので値下げ対抗を抑止するという戦法だ。

しかし、利益率を保つため、対抗値下げをしなかったらどうなるのか。顧客を奪われることになる。つまり、規模が縮小するのだ。コストリーダーはシェアこそが命。シェア死守のため、必ず対抗値下げに踏み切るだろう。業界筋の見立てもそのようだ。

ただでさえ値下げ傾向にある業界において、価格設定は徹底したペネトレーションプライシングになっているのだ。ペネトレーションとは「浸透」。いかに市場に広く行き渡る、浸透する価格を設定するかがキモであり、シェア重視の価格設定法である。
利益は規模の経済で固定比率を圧縮しつつ、人件費は習熟度を高め高効率化し、原材料費の仕入れも抑えるという変動費部分の圧縮も欠かせない。つまり、顧客が奪われる、シェアが低下するということは、ペネトレーションが破綻することを意味しているのである。恐らく、対抗値下げは実行されるだろう。

不況によって、様々な業界で低価格化が進んでいる。そして、価格はペネトレーション型になっていく。かつてマーケティングは「シェア至上主義」であったといえるだろう。しかし、市場の飽和期を迎え、消費者が「買わない自由」を意識した時からいたずらに市場全体のシェアを追わず、一人一人の顧客のシェアを高める「顧客シェア」重視に変化していった。高付加価値、高単価型である。ところが昨今の経済環境はそうは問屋が卸さないのだ。
同じ低価格商品の競争であっても、うまく棲み分けができている例もある。ファストフードではなく、アパレルの話。「ファストファッション」と呼ばれる低価格衣料の世界だ。
昨年日本に上陸して話題になったH&M、その他、ユニクロ、トップショップ、フォエバー21。いずれのブランドもお互い戦っているようで、テイストの違いで微妙な棲み分けがなされている。また、ユニクロがファッション性を強化しH&M対抗色を強めているような動きも見せているが、それとても、消費者はどちら一つしか選択しないのではなく、どちらの商品も購入するという決定もできる。
しかし、牛丼は一度の食事で2杯を食べ歩くことはしない。各々のチェーンに固定的な熱心なファンもいるが、商品としての差別化が大きいわけではないため、価格差が明確なら一般の消費者は安い方に流れる。

コストリーダーになれるのは業界でただ1社だといわれている。全てのプレイヤーがプールの底で息を止めあって、一番最後までガマンして残れるだけの体力があるのがコストリーダーだと例示される。自動車業界ならトヨタ。
リーダーになれない企業は差別化戦略をとるか、狭い独自の市場で生存領域を確保する。マイケル・ポーターの分析だ。

差別化の難しい牛丼業界では、生き残りを賭けた息の止め合いが激しさを増している。
原材料の産地によるコスト構造の違いから、すき家は一気にシェア奪取し、コストリーダーの吉野家の座を狙う戦略に出た。吉野家はきっと対抗するだろう。松屋はどうする。目が離せない。

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2009.04.16

PEST分析の事例:紙芝居師業界の栄光と今後を考える

紙芝居師、安野侑志(やすの・ゆうし)氏をご存じだろうか。「ヤッサン」の名で親しまれ、芸歴37年というキャリアを誇るプロの紙芝居名人だ。京都国際マンガミュージアムを中心に、地域イベントやデパートや不動産の展示場での活動を展開。1回の講演料は20~30万円、年収1000万円を稼ぎ出すという。
その紙芝居師の現在と未来をPEST分析で考えてみよう。

<不況でも年収1000万円? プロ紙芝居師が高収入の理由>
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0902/24/news058.html

上記「Business Media誠」の記事によると、<2003年までは年収500万~600万円だった>のだが、<学校の週5日制が定着し、文部科学省や市町村教委の支援を受けながら、毎週土曜日に町内会や地域の行事で紙芝居を行うようになり、それにつれて収入もアップ。それまでは5万~10万円だった1件の公演料が20万円に急増し、いまは30万円に達している>という。地域イベントでは1回の講演料は1回5万円が限界だが、企業が主催する販促イベントで30万円の講演料を稼いでいるという。

R25にも紹介されている。
<1500万円を稼ぐ紙芝居師にプレゼンテクを聞いた!>
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090409-00000005-rnijugo-ent

「誠」の掲載時点からさらに500万円年収が上がっているのみはオドロキだが、その高い講演料のヒミツが書いてある。<デパートや不動産の展示場など、子ども向けイベントスペースでの公演も増加。企業が1回30万円の公演料を払ってでも依頼するのは、子どもがその場を離れず、親が買い物に集中する環境を作れるから>とある。

年収1000~1500万という紙芝居師業界の好況は、どうやらマクロ環境と関連が深そうだ。PEST分析でメディアに掲載されているファクトを整理してみよう。時間軸は2004年から現在の少し手前で考える。


Political=完全学校週5日制は1999年導入だが、その影響が遅れてやってきたと考えられる。子供の時間に余裕ができたことは確かに大きい。
Economical=2004年当時、いざなぎ越えとも言われた好景気に日本は沸いていた。不動産業も好調だった。販促費も潤沢である。
Social=活躍の舞台ともなるショッピングセンターは建設ラッシュ。増える競合に対する集客合戦もはじまっていた。目玉イベントが欲しいところだ。
Technological=ニンテンドーDSやプレイステーションポータブルの発売年であるが、反面、ゲームなどではなく親子で楽しめる娯楽も求められていた。子供が家でゲームばかりしないよう、親は外に連れ出そうとする。親子で楽しめる、どこか懐かしい紙芝居のイベントなどうってつけだ。
以上のように、PESTの各要素が全て追い風になっていたことがわかる。

しかし、昨秋にはじまった経済危機で時代は変わってしまった。紙芝居師の世界も恐らくそのままでは済まないだろうことが、再びPEST分析を現在の時間軸で行うとわかる。

Political=教育制度改革はゆとり教育を改め、授業時間と学習項目を増やす方向だ。学校の時間が長くなり、宿題も多くなるだろう。肝心の子供の時間が減っていく。
Economical=不況の影響は大きい。不動産業はメタメタだ。販促費は絞らざるを得ない。ショッピングセンターも過当競争で撤退する物件もではじめた。そうでなくとも販促費などのコストは絞られるだろう。
Social=不景気の影響で「巣ごもり」を生活者がはじめた。生活防衛のため、財布の紐は固くなりショッピングセンターへも足が遠のく。
Technological=巣ごもりをして、楽しむなら、今日では「Wii」がある。ポータブルゲームと違い、これなら親子や家族でも楽しめる。
以上のように、すっかりPESTの各項目が向かい風に豹変してしまっている。

「誠」の記事では、これからも<大きなイベントでなくても、1件3万円前後の公演ならば全国各地で引く手あまたといい、安野さんは「初心者でもこまめに営業すれば、年収1000万円も目指せる」と太鼓判を押す>とある。
強気な市場の読みで、これからも後継者育成に力を入れるとのことだが、業界自体は逆風化にあるのは間違いない。
プロの紙芝居師のヤッサン、御年65歳。是非とも、30万円の講演料でなくとも、3万円の講演料をコツコツ積み上げる地道な努力ができる若者を育ててもらいたいと思う。

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2009.04.10

「細マッチョ・ゴリマッチョ」:サントリーの戦略を読み解く

2009年03月17日新発売のプロテインウォーター。CMは1975年代の大ヒット曲ヴァン・マッコイ&ソウル・シティ・シンフォニーの「ハッスル」に合わせて松田翔太と中村獅童が軽妙な動きで新しい「細マッチョ」の魅力を訴える。そのサントリーの戦略とは?

新商品「プロテインウォーター」はサントリーのソフトドリンクの中にある機能性飲料カテゴリーに属し、さらに「LIFE PARTNER」ブランドを冠した戦略商品だ。「LIFE PARTNER」ブランドの旗艦商品は「DAKARA」。2000年にスポーツ飲料カテゴリーに大塚製薬のポカリスェット、日本コカ・コーラのアクエリアスを追撃すべく市場に投入された商品だ。
DAKARAの戦略は、一橋大名誉教授の野中郁次郎先生の著書「イノベーションの本質」で一番目の事例として取り上げられているほど秀逸なものであった。サントリーは先行商品が「水分の体内への吸収の良さ」をセールスポイントとしており、後発商品では同じポジショニングでは勝てないと判断した。それ故、独自のポジショニングである「老廃物の排出」を訴求したのだ。
DAKARAの一番最初のCMを覚えているだろうか。小便小僧である。小便小僧は何をしているかといえば、オシッコをしている。つまり「排出」。それまでの水分の「吸収」をひたすら訴求していた先行商品に対して明確な差別化を図ったのである。そして、ネーミングはカラダと引っかけてダカラとし、真っ白なボトル缶に赤いハートを記してメディカルなイメージを演出した。メディカルを訴求するため、街頭サンプリングにもナース姿のキャンペーンガールを用いて話題になった。

そのDAKARAの赤いハートの周りに書かれている言葉が「LIFE PARTNER」。現在、同じ名を冠している商品は「ビタミンウォーター」と「プロテインウォーター」である。
LIFE PARTNERはサントリーのホームページなどには明確なブランド定義がなされていない。しかし、消費者は、LIFE PARTNERといえばDAKARAと認識している。商品を扱っている社外のECサイトや個人ブログではビタミンウォーターとプロテインウォーターを「ダカラ・ビタミンウォーター」「ダカラ・プロテインウォーター」と表記していることが多い。正確にはDAKARA傘下の商品ではないので、ある意味、勘違いともいえるのだがそれこそがサントリーの戦略だといえる。

ビタミンウォーターはビタミンC、ビタミンB6、ローヤルゼリーの摂取ができることを訴求している。今回のプロテインウォーターはプロテインの摂取だ。DAKARAは「排出」を訴求する。そして同じLIFE PARTNERを冠した商品は、「余分なものを排出したら、欲しいものを取り込もう」というメッセージを発信しているのである。

ビタミンウォーターはすっかり定番商品として定着した。しかし、LIFE PARTNERシリーズでも辛酸をなめた商品もある。2007年に上市された「ダイエットウォーター Let's」である。
サントリーは<毎日を軽やかに過ごしたい”という気持ちをサポートするダイエット系飲料>というポジショニングで、含有成分として<カルニチンとカフェインを配合>し、<レモン・フレーバーを加え、すっきり爽やかで、飲みやすい味わいに>という仕立てで市場に挑んだ。その意気込みは商品パッケージにも表れている。独自の形状のボトルを作ったのだ。<ダンベルをモチーフにした、斬新なボトルデザインを採用。思わず、手にとってカラダを動かしたくなるようなデザイン>と自負する。
CMも<カラダを動かしたくなるような>という点を一貫して訴求した。コピーは<ナマケモノに、ダイエットウォーター レッツを与えてみました。 ナマケモノでも、思わず動きたくなる。 ダイエットウォーター レッツ>であった。
しかし、あまり売上げは上がらなかったのか、早々に店頭から姿を消すという結果に至った。

サントリーが力を込めたダンベル型ペットボトルを引き継いで上市されたのが今回のプロテインウォーターだ。<“スタイルが気になる現代人”のための、プロテイン補給飲料>というポジショニングを掲げているが、キーワードはやはりCMで繰り返し表現されている「細マッチョ」である。

プロテインは筋肉をつけたい人が摂取する栄養素。本来、粉や錠剤で筋トレの後に飲んだり、寝る前に飲んだりして理想の筋肉を育てるもの。それには、ムキムキのイメージ、マッチョなボディビルダー、水に沈むほどたくましくも重々しいイメージがつきまとう。今回のプロテインウォーターのCMでは「ゴリマッチョ」とい表現している。
しかし、日本でゴリマッチョの居場所はあまりない。もてはやされるのも、宴会とか、話の種とかだ。世間一般女子に「わーっ、すごい!」と言われても「わーっ、かっこいい!」と言われた経験のあるゴリマッチョは少ないだろう。「ムキムキに抱かれたい!」「マッチョの動く大胸筋にそそられる」という女子はマイノリティ。ゴリマッチョは「日本女子規格」からははみ出てしまっている感が否めない。
日本のマッチョは、ウルトラマン、ヤッターマン、仮面ライダー、ガッチャマン。
アメリカンマッチョは、ターザン、バットマン、エックスメン、スポーン。
日本女子はどちらかというと、ジャニーズのそれとか、サッカー選手の筋肉とか、ボクサーの筋肉にきゅんとくる潜在数が多いのではないだろうか。

しかし、世は空前のマラソンブームに代表されるような、スポーツブームであることは間違いない。ランナーの細くしなやかなムチのような筋肉をまとった肉体もまた「細マッチョ」だ。「スリムなのに、脱ぐとそこそこいい筋肉がついてる」という細マッチョの潜在的な人気を見抜いてCMを仕立てたのだろう。
いかにもやってる感たっぷりなゴリマッチョではなく、「意外とあいつ、いいカラダ」というちょっとしたサプライズは、男子には「あいつすげぇじゃん、やべえ」と焦燥感。女子には「あれ、結構かっこいいかも」と好印象を与える。
LIFE PARTNERの旗艦商品、ダカラは現在のCMでは「余分三兄弟」を配し、健康的な生活のためによくないものを排出しようと喚起して、メタ坊やら、濃い味好きやらの不安を水に流す。生活習慣を改善したら、次のステップ。「理想のカラダをつくりましょう」ということで「日本女子にもてはやされる、細マッチョなカラダづくり」を提案しているわけだ。

サントリーは潜在的なニーズを顕在化させ、男子を中心としたターゲットを拡大した。
・・・次の商品とターゲットは深田恭子がヤッターマンのドロンジョで目指した、女子の「くびれ」か?

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2009.04.06

我が道を行く小岩井・第三次野菜ジュース戦争の戦い方

昨今の飲料市場において野菜ジュースカテゴリーは縮小傾向にあった。そんな環境の中、各社からテコ入れのため新商品の上市や既存商品のリニューアルが続いている中、されているが、そんな中、異彩を放っている商品がある。

昨今の飲料市場のトレンドを一言でいうなら「スッキリ」だ。もう一つ付け加えるなら「低カロリー」もしくは「ゼロカロリー」ということになるだろう。緑茶飲料でカロリーゼロに目覚めた消費者は、ゼロカロリー炭酸飲料でよりスッキリした味わいを嗜好するようになった。そんな中で、ドロッとした口当たりと意外に高いカロリーで野菜ジュースは敬遠されるようになってしまったのだ。
そんな環境において、野菜ジュースもスッキリを目指しはじめた。その戦端を開いたのはカゴメと伊藤園だ。過去の記事を参照されたい。

<第三次野菜ジュース戦争勃発・今度のキーワードは「スッキリ」?>
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2009/03/post-70db.html

スッキリ・低カロリー系のトップバッターとなったのは、サントリーの「野菜カロリー計画」だ。「野菜ジュースのカロリーは意外に高い」と問題提起をして、それを解決する商品として明確なポジショニングで戦いを始めた。

<「びっくらこいた~」に込められたマーケティング戦略>
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2008/04/post_0dbb.html

そして、今度はスッキリとは明言しないものの、明らかに味わいはスッキリした新商品「I love vege」を発売した。サントリーは野菜ジュース市場のトレンドを牽引する気満々と見える。
新商品の上市だけではなく、既存製品も「スッキリ」に軸を移してリニューアルを図っている。例えばカゴメは野菜ジュースの大ブランド、「野菜生活100」を「甘さをおさえてすっきり」というポジショニングに切り替えた。新製品「やさいしぼり」もスッキリ系なので、自社の野菜ジュース全体のポジショニングチェンジをしたことになる。

そうした市場全体のトレンドに明らかに適合していない商品がある。キリンビバレッジが小岩井ブランドで発売している「しっかり摂れる濃い野菜」だ。トマトミックスとにんじんミックスの2種があるが、どちらも飲んでみると確かに濃厚だ。
商品が発売されたのは2008年の6月と10ヶ月前だ。サントリーが「野菜カロリー計画」を発売したのが同年4月なので、両社は全く違ったアプローチで市場に切り込んだことになる。
キリンビバレッジの当時にニュースリリースには以下のような記述がある。
<「野菜を摂取した納得感と、朝食代わりとしての腹持ちの満足感」を得られる「濃い」味覚が特に重要視されています(当社調べ)>とのことだ。

市場のトレンドが明確になったのはその後だが、キリンビバレッジはどのような戦略をとるのだろうか。
トレンドに適合していない商品を展開しているのはマズイのではないか。何といっても飲料業界第2位のサントリーが市場の方向性を牽引しているのだ。その動きは加速する可能性はたっぷりあるだろう。

しかし、筆者の予想としては、「しっかり摂れる濃い野菜」が製品の中核価値である「濃い」という部分をリニューアルしてスッキリ系に移行することも、商品自体が廃番になることもないと考えている。
キリンビバレッジの自社調査である<「濃い」味覚が特に重要視>という消費者が現在どの程度存在するかわからないが、ある程度のボリュームは確実に存在するはずだ。だとすれば、その層を確実に取り込む「ニッチャー」としての戦い方を展開するのが正解だろう。飲料大手であるキリンビバレッジとしてはニッチ戦略はなかなかとりにくいであろうが、傘下の小岩井ブランドであれば、自社のブランドイメージへの影響も少ない。

市場のトレンドをとらえることは重要だ。しかし、追随するだけでなく、自社が勝てるところを発見し、そこで活かせるブランドという武器を使って確実に勝っていくのはさらに重要なことだといえるだろう。「鶏口牛後」の例えもある。小岩井ブランドでのニッチ戦略。しばらく見守ってみたい。

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2009.04.03

あっぱれ、森永製菓の顧客志向と社会志向のマーケティング

ピーター・ドラッガーは「マーケティングとは、販売の必要性をなくすことだ」と説いた。その心は「売り込む(セリング)」のではなく、「顧客のことを理解し顧客の要望に合わせれば、おのずと買ってもらえるようになる」ということだ。その意味では全てのマーケティングは顧客志向であるべきである。さらに今日の企業活動では、ひとりひとりの顧客の要望に応えるだけでなく、社会全体の要望に応えることも求められている。

ドラッガー大先生の言葉から大げさに入ってしまったが、森永製菓の展開がすごいのだ。
まずは小さなところから。
<割ってひとくち約20kcal! カロリーをカウントできる板チョコレート>
http://www.morinaga.co.jp/company/index_news.html

この商品は<1枚当たりのカロリーがちょうど200kcalで、きちんと10等分に割れる、ひとくち(ひとかけら)が20kcalの板チョコレート>だという。
太りやすい体質なのか、メタボ予備軍と標準のあいだを行ったり来たりして、ダイエットを心がけて体重計の数字に一喜一憂する筆者にはありがたい商品であるとここの上ない。
だがしかし、1枚200kcalと、チョコレートのカロリーの高さに改めて恐怖した。ご飯は100g当たり168kcal。小さめの茶碗に盛れば110g入って185kcalとなる。ダイエットではご飯などの穀類を摂取しない人も少なくないが、そのガマンを一瞬で水泡に帰させる悪魔の200kcal。なんという甘い誘惑。

リリースには<食べた分や前もって決めた分だけカロリーを把握して食べることができる、便利な親切設計の板チョコレート>とある。
「どうしてもチョコが食べたいけど、食べると止まンなくなっちゃう!」という人、「どれくらいカロリーがあるかわからないから怖くて食べられない!」という人。そんな人には手を合わせたくなるほどの福音ではないだろうか。ちなみに、筆者は商品写真に感謝の祈りを捧げた。
ちょっと考えれば、「そんなにチマチマ食べられたのでは、儲らないんじゃない?」と思ってしまいがちだが、そんなことはない。上記のように「食べたいけど食べられない」という人のニーズギャップに、この商品はズバリとマッチしているのだ。
売上=客数×客単価である。一人一人がチマチマしか食べなくて、購入量や購入頻度が低く、客単価が上がらなかったとしても、潜在需要をもった顧客数は計り知れない。
「食べたいけど食べられない」という「顧客のことを理解し」、「セルフコントロールして食べたい」という「顧客の(潜在的な)要望に合わせ」た商品である。きっと、この商品は「おのずと買ってもらえる」ようになるのではないだろうか。顧客をよく見て、ニーズギャップに応えるという、顧客志向の一つのお手本だといえるだろう。

昨今では顧客には社会的責任が求められ、マーケティングも顧客志向であるだけでなく、社会志向が求められるようになってきた。森永製菓はそれにもバッチリ対応した取り組みをしている。
<森永製菓、賞味期限近い菓子を割安で販売 廃棄ゼロ目指す>
http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/top/index.cfm?i=2009033010381b1

<森永製菓は賞味期限が近づいた自社在庫の菓子を、スーパーなどで割安に販売する。詰め合わせで、価格は通常の売価から3割強引いた1050円に設定>だという。
今までは<廃棄処分にするほか、ディスカウントストアに安く卸したり、社内販売していた>というが、「もったいない」と思う一方、企業活動としては「仕方がない」ともいえる。ディスカウントストアでの販売は、購入客層が異なっていたり、菓子の購入シーンがスーパーでは食材のついで買いであり、ディスカウントでは菓子をまとめ買いするというように異なっていたりしたはずだ。しかし、スーパーにおいて3割引で販売すれば自社の新しい商品とカニバリ(喰い合い)を起こす恐れが多分にある。
この取り組みでは<10品目前後、約1600円分の商品>が袋詰めされて1050円で提供される。詰め合わせである程度まとめ買いすれば、新商品の購入頻度も低下してしまう恐れもある。

「モッタイナイ」のキモチで廃棄ゼロを目指す。社会的には意義のあることだが、企業の業績には悪影響を与えるかもしれない危険な賭けであり、もしかするとこれは、蛮勇なのではないか。大丈夫なのか、森永製菓。
・・・と、心配するには及ばないだろう。顧客も喜ぶ。社会的にも意義がある。でも、儲からないでは、もう一つの強力なステークホルダーが黙っていない。株主だ。同社には45,625名 の株主がいる、その納得を獲得することは企業としては欠かせない。

「廃棄ゼロ」というすばらしい取り組み。それが顧客に認識されれば、森永製菓への好感度が高くなる。菓子を購入する時に、同社の製品を指名買いすることも多くなるだろう。競合戦略としてしっかり機能するはずだ。
また、10品目の詰め合わせといっても、全ての商品ラインがカバーされているわけではないだろう。「格安のセットを買って、もう一つ欲しい商品は通常の価格で買って」という構内行動を引き出せれば、マージンミックスができて収益も確保できる。
もちろん、廃棄費用の削減というバリューチェーン上のメリットも見逃せない。

顧客のことをしっかり見て、その要望に応える。社会的な要請に耳を傾け、その実現にチャレンジする。しかし、キッチリと収益を確保する裏付けも用意しておく。その整合性が重要なのだ。あっぱれ、森永製菓。消費者として、社会の一員として拍手を送りたい。
そして、顧客として筆者は4月7日から1日に20kcalづつチマチマとチョコを食べ、5月からはお得な詰め合わせを子供のおやつとしてスーパーに買いに行くに違いないのであった。そして、顧客として筆者は発売日の4月7日から1日に20kcalづつチマチマとチョコを食べ、店頭に並ぶ5月からはお得な詰め合わせを子供のおやつとしてスーパーに買いに行くに違いないのであった。

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2009.04.01

チャレンジャー企業は刮目せよ・サントリーの戦い方

4月1日付で純粋持ち株会社に移行するサントリーは、新設する傘下の「サントリー食品」で飲料業界の勢力図を塗り替えるような戦略を展開するようだ。

<シェア奪取、まずは「ペプシ」で サントリー食品 攻めの新体制へ>
http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200903310101a.nwc

記事はFujiSankei Business iだが、今年の1月20日に発表されたサントリー食品に関するニュースリリースの内容より、かなりアグレッシブな目標に切り替わっている。
http://www.suntory.co.jp/news/2009/10315.html

サントリーは飲料業界第2位。第1位は日本コカ・コーラだ。両社の飲料全体でのシェアはサントリーが20%なのに対し、日本コカ・コーラが30%以上と、サントリーは大きな差を開けられている。その巻き返しをコーラ市場から展開しようというのだ。
コーラ市場の中でも主戦場として選んでいるのは、ゼロカロリータイプのコーラ市場である。

サントリーは「ペプシネックス」と「ダイエットペプシ」の2商品を持っているが、昨年の時点では2商品合わせても<シェアは44%と日本コカ・コーラにわずかに後塵(こうじん)を拝した>という。それを2009年の<販売数量を13%増><シェアも47%に引き上げる計画>であり、さらに<国内シェアを早期に約20~30ポイント上昇の60~70%に引き上げる>という大胆さだ。そのため、3月24日にペプシネックスの味を改良し、リニューアル商品を上市している。
現在の飲料市場は、緑茶飲料市場が成熟~衰退期に入っており、炭酸飲料の成長が続いている。その原動力が「ゼロカロリー」なのだ。同じゼロカロリーであれば、お茶よりも味わいやすっきり感のある炭酸飲料を選択するという消費者の嗜好を反映したものだ。
その意味からすると、ゼロカロリーの炭酸飲料の象徴である、ゼロカロリータイプのコーラ市場を席巻するのは非常に意義が大きいといえるだろう。

そもそも、飲料業界においてサントリーが日本コカ・コーラに対して形勢不利な状況に陥っているのは、販売チャネルの問題が大きい。<日本コカ・コーラが、飲料販売の約4割を占める自動販売機を国内に80万~90万台擁するのに対し、サントリーは44万台と劣勢>という状況だ。
しかし、チャネルはマーケティングの4Pの中でも最も厄介な要素だ。なぜなら自社だけでコントロールすることが不可能で、構築に時間がかかる。自販機といえども簡単に設置することはできない。
サントリーはシェア奪取のために<販売促進や広告展開などの強化>をするとしている。CMもキャラクターとして、トータス松本、松山ケンイチ、山田優と豪華な3枚看板で、新しいペプシネックスを訴求している。自販機数で劣後するサントリーは広告でアピールし、消費者が目に付く数が多いコカ・コーラ ゼロを選ぶのではなく、ペプシネックスを指名買いさせる戦略なのだろう。
商品は広告を出せば売れるものではないのだが、こと、飲料の場合は広告の出稿量と売上げの相関性は高い。今後、需要期の夏に向けて、さらに広告攻勢は強化されていくことが予想される。

FujiSankei Business iの記事で重要な箇所がある。<自販機数で劣るサントリーは巻き返しに向け、各分野ごとの“局地戦”で日本コカ・コーラを追撃し、それぞれの飲料ジャンルごとで首位商品を増やす戦略だ>。
リーダーの戦略の基本は「全方位戦略」である。規模と体力に優れたがリーダーは、あらゆる打ち手を講じてくる。チャレンジャーの戦略には同様の打ち手をかぶせる「同質化」によって、その動きを封じようとする。それに対して、チャレンジャーはかぶされても、とにかくまた別のポイントを突いて「差別化」を徹底して行うのが基本である。
差別化において重要なのは、「集中戦略」をとることだ。全方位で戦えないのであれば、勝てるところを探して、勝てるところからリーダーのパイを切り取っていく。「選択と集中」という言葉は経営者が好む言葉ではあるが、選択はできても、絞り込んで集中することが以外とできていないケースが散見される。
サントリーはまずは、ゼロカロリータイプのコーラ市場に集中する選択をした。戦い方は販路改造ではなく、広告攻勢をかけるという戦い方に絞り込んでチャレンジしているのだ。

記事中の局地戦とは「セグメント戦略」を意味しているため、ターゲットの年代のどこに集中するかや、地域的にどこを強化するかなど、さらに細かいセグメントで「勝てるところで勝つ」ことを徹底すると思われる。
例えば、広告では都内山手線でアドトレインが投入されていたが、都市部にまず、集中しているのかもしれない。

いずれにせよ、今後サントリーの飲料市場での動きは、チャレンジャーのお手本となる戦い方が予想される。ゼロカロリータイプのコーラ市場の戦いの後には、<各分野ごとの“局地戦”>として、他商品でも戦端が開かれるのは確実だ。しばらくは目が離せない。

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