第三次野菜ジュース戦争勃発・今度のキーワードは「スッキリ」?
熾烈な飲料の戦いにおいて、いまいちマイナーな存在である「野菜ジュース」カテゴリーであるが、再び2つの商品が戦端を開いた。しかし、その狙いはカテゴリーのトップを目指すだけではなさそうだ。
昨今の飲料業界のトレンドを一言で表わすなら、「緑茶飲料から炭酸飲料へのメインストリームの移行」である。緑茶飲料は、伊藤園「おーいお茶」の独占市場に、キリン「生茶」が進出して以来、サントリー「伊右衛門」も加わり、3強ブランドが市場の70%を占めた。しかし、各社が挑戦の手をゆるめないという、活性市場であった。しかし、業界内の競争ではなく、思わぬ代替品が市場の衰退を招いている。
ゼロカロリーの炭酸飲料である。ゼロカロリー甘味料の使用により、炭酸でさっぱりしながら、適度に甘みも感じるという製品が誕生。「カロリーは気にするが美味しいものを飲みたい」という消費者の嗜好にマッチして、炭酸飲料市場が急伸中である。
そんな中で、イマイチぱっとしなかったのが、野菜ジュースカテゴリーではなかっただろうか。しかし、約1年前の昨年4月頃から、新しい動きが始まっていた。
それまでの中心的ブランドであった、カゴメの「野菜生活100」「野菜一日これ一本」、伊藤園「充実野菜」「1日分の野菜」という二大メーカー、4強ブランドにサントリーが「野菜カロリー計画」で戦いを挑んだのだ。
サントリーの競争軸は「カロリー」。 「野菜一日これ一本」「1日分の野菜」のような、野菜汁オンリーではなく、果汁混合タイプでスッキリした味わいながら、糖質を20%オフ。さらに、今まで「絞りかす」として捨てていた繊維質をピューレ化することで100%摂取できるという健康志向強化も図っている。
スッキリしていて低カロリー。健康志向もより強化する。そんな野菜飲料のKSF(Key Success Factor=成功のカギ)が見え始めていたのだ。
そして、今春、カゴメと伊藤園は新たな戦いを市場の中で、もしくは野菜ジュース市場を超えて飲料市場に進出しようとしている動きがある。
3月10日から発売が全国で始まったのが、カゴメ「野菜しぼり」。
http://www.kagome.co.jp/news/2008/090128.html
なんともストレートなネーミングであるが、そのこだわりは原材料のチョイスと、ネーミングにある「しぼり方」である。
3タイプの味があるが、いずれも2~3種類の野菜しか使われていない。従来の「何十種類の素材をブレンド!」というものとは明らかに異なる。その厳選した素材を、<超高温・短時間殺菌で、風味を損なわず野菜の甘みを活かす>という製法によって、一切加糖しない野菜だけのスッキリした甘みを引き出しているという。
ターゲットは<野菜ジュースに『野菜本来のおいしさ』を求める、30代以上の男女>であり、<野菜ソムリエの活躍や、野菜レストランの出現、野菜スイーツの登場に見られるように、野菜本来のおいしさが注目され、野菜を味わうことを積極的に楽しむ>ターゲットの増加に対応したとのことである。
つまり、「野菜ジュースを飲む/飲まない」というセグメンテーションやターゲティングではなく、「本格的に野菜を好むオトナ」というターゲットに絞り込んで、野菜ジュースではあるが、むしろ「本格的な野菜加工食品」としてのポジショニングで打って出ようという戦略なのだろう。
もう一方で、さらにユニークな戦い方を挑もうとしているのが伊藤園だ。
野菜と果汁のミックスは従来路線だが、それに炭酸がブレンドされている。
「SPARKLING Vege(スパークリングベジ)」という新製品は本日発売だ。
緑茶カテゴリーのトップブランドである「おーいお茶」を主力商品として持つ伊藤園には、伸長する炭酸飲料カテゴリーに目立ったブランドがない。そこで、もう一つの得意技である野菜ジュースのノウハウを活かして炭酸市場に攻め込もうという戦略だ。
しかし、その方向性は安易な選択ではない。ニュースリリースが、明快な同社の戦略を端的に伝えており、実に面白い。
http://www.itoen.co.jp/news/2009/031204.html
同社が目指したのは徹底した、「ターゲット発見」とターゲットの「ニーズギャップの解消」と「ニーズの掘り起こし」である。
<野菜飲料・炭酸飲料の両カテゴリーともに、既存製品の味わいに「飽き」を感じているユーザー>というターゲットを発見。
さらに、<炭酸飲料ユーザーの中でも「健康」を気にされるユーザー>というセグメントに対し、<野菜と果実を炭酸飲料にミックスするという新しい味わいを提案>というソリューションを提供することを考えたわけだ。
そして、<野菜を20種類、果実を3種類><野菜汁が20%、果汁が30%><350mlあたり60kcal>というスペックで実現したのである。
結果として、流行りの炭酸市場へ、ゼロカロリーではないが「低カロリーなサラリとした野菜系炭酸飲料」というユニークなポジショニングで切り込んでいくわけだ。
より本格的な「野菜加工食品」としてのポジジョニングを目指すカゴメ。「ユニークな炭酸飲料」としてのポジショニングを目指す伊藤園。
伊藤園の分析にもある通り、従来のちょっとドロッとしていて垢抜けない野菜飲料というドメインは、昨今のスッキリ流行からすると、大きな伸長は望めないだろう。だとすると、そのドメインを拡張して、「飲料ながら本格派」だったり、「野菜だけど炭酸」だったりする、ドメイン拡張を行うことは、方向性は異なるものの、正解かもしれない。
今回の野菜飲料戦争は、直接対決ではないものの、どちらが市場に受け入れられ、生き残るか。興味が尽きない。
まずは、カゴメ「野菜しぼり」に続いて、本日発売の伊藤園「SPARKLING Vege(スパークリングベジ)」を試してみよう。
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