ファミマの「お得意様優遇」を考える
ファミマはお得意様優遇サービスを今秋から開始するという。従来の画一的な顧客への対応・販売から優良顧客囲い込みへさらに一歩踏み込むことになる。その意味をを、偉大なるマーケターであり、ダイレクトマーケティングの父である、レスター・ワンダーマンの視点で考えてみよう。
ファミリーマートの新展開が09年3月25日日経新聞朝刊の9面に掲載された。NIKKEI NETの記事は概要のみだが、リンクは以下の通り。
<ファミマ、お得意様を優待 大手コンビニで初>
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090325AT1D2406I24032009.html
ファミリーマートは従来、Tカード提携陣営の1社として、ファミマTカードによって、購入者にポイント付与を行っていた。そのポイントも<月間の購買金額が多い顧客らに対して、買い物に使えるポイントを多く付与、事実上、商品の提供価格に差を付ける>という。また、ポイントだけでなく<売前の商品を優先的に販売するといった特典も設ける>という。
顧客の利用・購入状況に応じてランキング管理し、優遇する考え方は新しいものではない。日経本誌では<百貨店や一部スーパーが以前から採用している>として、イトーヨーカドー、いなげや、オギノ、その他百貨店などの例を挙げている。どのような特典を提供するかは別として、そうした顧客管理の方法の基本は、古く1960年代に米国通販会社でスタートしている。「RFM分析」である。
RFM分析とは、R(recency・最新購買日)=どれぐらい直近に購入しているか、 F(frequency・累計購買回数)=どのくらいの頻度で購入しているか、 M(monetary:累計購買金額)=いくら購入しているかという3つの指標をポイント化して、顧客を管理する手法である。
単に購入状況のデータを活用するだけではないようだ。本誌にある記載、<化粧品の購入回数が多い女性区客は、ファミマと化粧品メーカーが開くイベントへ招待、開発された新商品を発売前に試し買いすることができるといった特典も計画している>という。POSデータもフルに活用され、購入客の性別・年代や購入品目を考慮した展開がなされるのだ。
この取り組みのキモとなるのは、顧客データ。コンビニでのデータ活用といえば、POSデータで商品の仕入れなどを判断することが知られているが、ポイントカードのデータはほとんどが顧客のポイント管理としてしか使われていなかっただろう。
購買データを、個々の顧客データと紐付けて、購買促進に活用する。そうした取り組みは、ダイレクトマーケティングやリレーションシップ・マーケティング、CRM(Customer Relationship Management)といった手法の中で数々試みられた。しかし、問題はその情報処理コストが非常に高く、低廉な商品・サービスではなかなか見合わないということにあった。昨今のITの進歩によって、コストは低減し、さらにきめ細かいデータ処理も可能になる。そうした背景が、ファミマの展開にフォローの風となっているのだろう。
では、今回のファミマの取り組みを、ダイレクトマーケティングを生み出した人物の言葉から考えてみよう。タイム誌が選んだ「20世紀の3大広告人」の一人でもあるレスター・ワンダーマンである。
彼の言葉には次のようなものがある。
<「あなたの価値は、持っている知識の量によって決まる。(You Are What You Know)」・・・情報となり得るデータを集めること。それがひいては知識となる。知識があってこそ、成功が約束され、失敗が最小限にくいとめられる。企業は、持っている知識の範囲以上の存在にはなり得ない。>(ワンダーマンの「売る広告」翔泳社)
まさに情報活用の重要性と有用性を表した名言だといえるだろう。
しかし、そのデータや情報をうまく活用する先には何があるのか。データや情報で、顧客のRFMを向上させ、「囲い込み」を実現することだろう。ファミマの展開もそれを目指したものだ。しかし、この「囲い込み」という言葉がくせ者だ。
囲い込みが成功した顧客を称して「ロイヤルカスタマー」と呼ぶ場合が多い。しかし、レスター・ワンダーマンは「ロイヤルティー(loyalty)」という言葉を強く否定している。
その言葉は本来「忠義」を表わすものであり、顧客が企業や商品・サービスに「忠義」を抱くことはあり得ないと。「ダイレクトマーケティングのゴールは、顧客のロイヤルカスタマー化である」という解釈をする人も多い中、その創始者の言葉としては意外かもしれないがスター・ワンダーマンの顧客との関係のとらえ方は非常に現実的なのだ。
同様に、ダイレクトマーケティングから派生したCRMについても、彼は否定的にとらえている。Relationshipについてである。「顧客とのリレーションシップは幻想に過ぎない。例えば歯ブラシを通じて顧客は企業と”つながり”を意識するのか。否である」と。
Relationshipの代わりに、彼はRelevantという言葉を示している。「大切なのは、顧客に”自分にピッタリだ!”と思ってもらえる、適切性、”relevant”である。”relationship”ではない」。ということだ。歯ブラシならずとも、実際のところ、企業や商品・サービスに顧客は自らとの強い関係を感じていないし、望んでもいない。それを、無理矢理関係付けようとするところに失敗の芽が潜むことになるのだ。
その意味からすると、コンビニエンスストアと顧客との関係は、まさに「歯ブラシ」のようなものだろう。コンビニを心から愛している顧客はまず少ない。特定店舗への来店頻度が多いのも、立地なのか、取扱品目なのか、何らかの「利便性」が自分に「ピッタリだ」と思えるからである。
ファミマの取り組みが成功する要件としては、その情報の活用の仕方が、顧客にとってRelevantな価値提供になっているかという点につきよう。
「「あなたの価値は、持っている知識の量によって決まる。」・・・しかし、そのデータや情報に振り回されないようにすることが肝要である。そそて、顧客視点で考え、顧客にとってRelevantな価値提供となる情報の活用が行われれば、ファミマの取り組みは成功するだろう。
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