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2009.03.09

モスバーガーの堂々たるチャレンジャー戦略

「やっぱり、日本が、一番うまい!」 ・・・そんなキャッチコピーを引っ提げてやってくるのが、3月24日発売予定のモスバーガー「とびきりハンバーグサンド」の第二弾だ。それだけではない。モスでは信じられない100円台メニューや、ガッツリ系のパテ2枚バーガーなどが順次登場するという。モスの狙いはなんだろうか?


約2か月間で620万食を売り上げ、モスフードサービスの業績回復に大いに貢献した、「とびきりハンバーグサンド」の第二弾、「とびきりハンバーグサンド トマト&レタス」と「とびきりハンバーグサンド レタス」が3月24日から発売されるという。
http://news.walkerplus.com/2009/0305/17/

その商品情報を見た時、筆者は思わず「美味い!」ならぬ、「巧い!」と唸ってしまった。
モスファンとはいえ、一般人である身には、その味を試すためには発売日まで待たねばならぬ。しかし、その戦略の巧緻は十分味わえたのだ。
ごちそうさま!!(マーケティング的な意味で)。

何が巧いのかといえば、その商品の特徴付けだ。前作の具材はパティと刻みキャベツだけ。ソースは王道のトマトデミソースという直球勝負であったもが、今回は何とも大胆にキャベツが挟まっており、まるでキャベツが主役であるかの風格が漂っている。
パティは変わらず、安心の「国産肉100%の牛豚合い挽き」だ。それに、さらに安心の「国産レタス」がたっぷりという、安心の二段重ねという周到さだ。

製品発表の記者会見では、生産農家の『鈴木さん』が<「ウチのレタスは、除草剤も殺菌剤も使っていません。この時期、一番おいしくなるレタスは、歯ごたえも甘みも充分。生のおいしさを味わってください」と、笑顔でコメント>したという。なんという、生産者の顔が見える、安心感の演出。・・・ちなみに、『鈴木さん』はモスバーガーのWebサイトにある「産地だより」というコンテンツにも登場している、知る人ぞ知る、モスを支える有名人(?)だ。

上記のような、国産へのこだわりと生産者や生産方法へのこだわりは、決してリーダー企業であるマクドナルドには取れない。極めて巧いチャレンジャーの差別化戦略であるといえる。「除草剤殺虫剤不使用」の農法は、ともすれば作柄の不安定や病害虫の被害と背中合わせのリスクを抱えている。また、大量生産にも向いておらず、標準・均等な品質も完全には保証できない。
圧倒的な「規模の経済」を誇るマクドナルドは、標準化された原材料を低廉に大量に仕入れるバイイングパワーが、一つの力の源泉である。そのため、上記のようなリスクのある原材料は使いにくい。それがマクドナルドほど規模が大きくなく、標準・均等な品質よりも従来から自然に近い原材料や食への安心といったこだわりを優先してきたポジショニングが生きてくるのだ。
また、消費者には第一弾で「国産肉100%」という安心感を訴求し、その反応を見てイケる!と確証してから、第二弾でさらにレタスという新たな具材を用いて安心感を強化するという、念の入ったプロセスを踏んでいるのだ。大胆かつ、手堅い戦略であるといえる。

もう一方、従来とは全く異なる戦略も見せている。100円台の「お手頃バーガー」を発売するという。
http://news.walkerplus.com/2009/0305/18/

しかし、モスフードサービスの櫻田社長は「値下げではない」という。<あくまで新価格レンジの一つです。中高生をターゲットにした“小腹メニュー”として提供していきたい>とのコメントだ。そして<通常のハンバーガーパテに比べ、重量を3/4程度にした専用パテを使っている以外は、バンズや具材など通常と同じもの使用する>というから、実のところは「量目調整」であるわけだ。
食品や外食産業においては、量目調整は「実質的な値上げ」と受け取られ、既存顧客の離反につながるリスクがある。しかし、この展開はあくまで従来、モスに足を運ばなかった新たなターゲットを獲得する施策なのだ。
新たな若年ターゲットを取り込まなければ、自社の顧客層はやがて年齢が上がり、ファストフードという業界のターゲットでなくなっていくかもしれない。そのリスクを低減するためには、新たな若年ターゲットを取り込む必要がある。可処分所得が少ない若年層にはモスバーガーの価格はハードルが高い。しかし、品質を下げて安価にすれば、既存顧客層の離反を招く。そのバランスを取る解が「量目調整」であったわけだ。
なんとも微妙さじ加減を行う戦略であるが、リーダーと比べれば遙かに小さい体力で戦うチャレンジャーは、巧みなセグメントで勝てるところ、または、勝つべきところを着実におさえることが求められるのだ。

もう一方は、ともすれば、フォロアー的なリーダーの戦略の模倣とも映る展開だ。
3月24日発売の「W(ダブル)モスバーガー」(400円)は、ガッツリとパテが2枚入っている。マクドナルドがメガマックでその禁断の扉を開け、クォーターパウンダーでさらにパワーアップさせた「メガ系」の風情がある。「メガフード」とも呼ばれるようになったボリュームを売り物にしたメニューはファストフードやコンビニ弁当ですっかりおなじみになった。モスもついにその路線に進出し、ガッツリ系愛好家を呼び込もうとする戦略かとも思えるが、多分そうではない。
メガフード流行りの理由は諸説あるが、健康志向の高まりや、メタボに対する風当たりの強さに対する反動であろうと、筆者は分析している。そして、メガ好きな層は確実に増えているように思う。
そんな市場環境の中で、モスのメニューはボリューム的に見ると、やはり「お上品」だといえるだろう。パテが90グラムと、モスメニューの中では重量級だった、第一弾の「とびきりハンバーグサンド」も、実際に食べてみるとボリュームは感じられない。モスバーガーの既存顧客の中でも、ボリュームを求める層やメガ好きになった層が一定数存在するとしたら、既存メニューだけではマクドナルドをはじめとした他店への流出を招くことになる。その意味からすると、「Wモスバーガー」は既存顧客の流出を防止する「守りのメニュー」だと考えられる。


「とびきりハンバーグサンド」の第一弾で、味と国産材料の安心感で新たな顧客を呼び込み、第二弾でさらなる呼び込みと、既存顧客の定着化を図る。100円台のメニューで若年層を取り込み、ボリュームメニューで顧客流出を防止する。
自社のマーケティング課題を、差別化要素を活かして確実に解決するモスバーガーに、チャレンジャーとしての戦い方のお手本を見た。

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