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2009.03.02

「世界のKitchenから」のマーケティング整合性に学ぶ

東京駅構内のコンビニ「NEWDAYS」。店は狭く、商品棚を確保するため各社はしのぎを削っている。そこで、一気に7フェイスを確保している飲料がある。キリンビバレッジの「世界のKitchenから とろとろ桃のフルーニュ」だ。その戦略の妙を考えてみよう。

「とろとろ桃のフルーニュ」は昨年3月以来の商品リニューアルだ。<煮こんだ桃とマンゴーを増量し、ますますとろとろおいしく贅沢になりました>と言い、新発売時以上に力を入れた展開をしている。

マーケティングミックスの4Pで考えると、この商品は極めて各要素がキレイに整合していることが分かる。
Product(製品戦略)は「世界のKitchen」の共通コンセプトである「世界の母さんがつくる料理からインスピレーションをうけたレシピ」という独特の仕上がりであり、他の飲料ブランドにその例を見ない独自性がある。「桃のフルーニュ」は乳原料を用いているので、乳酸飲料に似ていて、フルーツカルピスやヤクルトの一種にありそうな味ではあるものの、そのどれとも違う。
Price(価格戦略)は商品の量目とも関連関連しているが、320ml入りのペットボトルで150円(税別)。量的に少々割高だ。しかし、商品的に「手が込んでいる感」があり、それが高級感の演出につながる。
Place(流通戦略)は「桃のフルーニュ」という商品だけでなく、「世界のKitchen」シリーズの大きなポイントだ。ミクロ的に見ると、320ml入りのペットボトルは細身で棚のフェイスがおさえやすい。また、通常の飲料6本分で7本収まるので通常より1フェイス多く置ける。7本も揃っているとなかなか壮観だ。消費者もつい手に取りたくなる。店もそれを狙って、多フェイス設置に協力する。
もう少し大きな視点で考えると、「世界のKitchen」シリーズの多くは「期間限定」や「地域限定」で展開している点がポイントだ。「期間限定」は限定感という販促的な効果以上に、過剰生産・過剰在庫を持たないという、バリューチェーン上のメリットが大きいはずだ。
また、「地域限定」は一気に全国展開をするのではなく、市場の反応を見て順次展開するという飲料においては手堅い戦略の常套だ。期間限定と地域限定を組み合わせ、製品リニューアルを繰り返す。すると、常に新しい商品ということで、コンビニなどの流通チャネルの棚を確保しやすくなるのだ。
Promotion(コミュニケーション戦略)は棚確保にも小さなところで工夫が見られる。「桃のフルーニュ」はペットボトルに貼られたシールPOPが3種類あり、 「おまたせしました」「ますますとろとろ」「とろあまずっぱい」と色違いで展開している。最低でも店頭の棚を3フェース確保するためのものだ。また、商品の独自性と限定感は根強いファンを生んでいるが、そのクチコミを促進すべく専用のWeb「ファンサイト( http://kitchen-fc.jp/ )」が作られている。

4Pがキレイに整合していることは上記でわかるが、その前提にはポジショニングが極めて明確なことが貢献している。
キリンビバレッジのホームページ、「商品ラインアップ」のコンテンツでは、各商品が商品カテゴリー毎に紹介されている。<お茶飲料・紅茶飲料・コーヒー飲料・スポーツ/健康飲料・炭酸飲料・果実飲料・野菜飲用・水・乳飲料・その他>。この中で、「世界のKitchen」シリーズは紅茶・炭酸・果実・乳のカテゴリーに各商品が入っている。今回の「桃のフルーニュ」は果実にカテゴライズされているが、現在発売中の他商品のカテゴリーはバラバラだ。そのように多数のカテゴリーをまたいでいるブランドは同社には存在しない。
つまり、「世界のKitchen」シリーズは「世界の母さんがつくる料理からインスピレーションをうけたレシピで次々と新しい商品を展開する」という明確なコンセプトと、ポジショニングありきのブランドであるということなのだ。次は何が出るのだろうという期待感。そして期待を裏切らない新しい商品を限定的に上市し、さらに改良を重ねて再登場させる。そのポジショニングのもたらす好循環が、マーケティングミックスの4Pで実現されている。

マーケティングマネジメントの流れにおいて、ポジショニングの前はターゲティングと環境分析であるが、ここでもキレイな整合性が見られる。
昨今の飲料市場における動きは、「緑茶カテゴリーの成熟~衰退」と「炭酸飲料の伸長」が顕著なことだろう。「緑茶戦争」ともいわれ、多数のバリエーションや高級ラインの展開など、様々な工夫がなされたが、消費者の嗜好は「ゼロカロリー」の登場によって炭酸飲料に流れた。
しかし、市場にはもともとノンカロリーであるお茶や、甘みがあるがゼロカロリーの炭酸飲料を求めるセグメントだけが存在するわけではない。カロリーよりも、飲料としての「味わい」を優先する層も存在したのだ。
しかし、その他の、例えば紅茶や果実飲料、乳飲料などのカテゴリーはメインストリームではないため、目新しい商品はあまり開発されてこなかった。「(カロリー優先ではなく)美味しい飲み物が飲みたい」という層の「ニーズギャップ」を「世界のKitchen」シリーズは独自のポジショニングとコンセプトですくい取ったのだといえるだろう。

マーケティングの妙は「整合性」だ。環境の変化を的確に捉え、ターゲットとそのニーズをすくい取るポジショニングを固める。ポジショニングを実現するために、4Pの要素を組み上げる。その一連の整合性こそが力の源泉となるのである。
つい、施策の一部のみにアタマを使いがちになるが、「世界のKitchen」シリーズの事例から学ぶところは大きいだろう。

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