Z会「わたしたちをこえてゆけ」がやすやすと超えていったもの
通信教育・Z会のCM。これが色々な意味でオモロイ。
http://oya-zkai.jp/movie/index.html
なんやら、やたらオッサンやオバサン(失礼・オネエサン)が出てくるCMだ。なんとなくオモロイ。しかし、通信教育が「続かなかった」というハナシを大勢のオッサン、オバ(失礼)が口にする様は、実にオッサンらと同年代である筆者も同じ挫折を経験しているところであるため、妙にトラウマをサワサワさわられているようで、気持ち悪くも忸怩たる思いでいっぱいになる。
CMは女子高生編・男子高生編があり、できひん子やったオッサンやオ(以下略)が、現役の高校生に口々に自らの挫折を告白し、「チャレンジする!」と宣言する女子・男子に拍手とエールを送るという内容である。
なんとなくオモロイと思った次には、よく考えれば「コイツはすごいCMだ!」と思った。その理由はいくつかある。
まず、メインメッセージが「わたしたちをこえてゆけ」だ。「私は続かなかった」「続けていれば今頃は・・・」などと登場人物のオッサンらが口々に言う。つまり、「こえていく」対象は、「通信教育が続かなかったわたしたち」の「死屍累々」だ。確かに同会は毎年東大合格者を何人も出す名門通信教育だ。死屍累々もやむないかもしれない。しかし、自社の挫折率の高さとも解釈されかねないメッセージを、ここまでしっかり出せるということには大いなる自信を感じる。
もう一つ。
「私は続けられなかったけど」というメッセージ、ある意味、下手をすればイヤミな感じになりかねない。わざとらしさが出たらアウトではないだろうか。しかし、このエキストラ的に大量に登場するオッサンらが実に自然で、ある意味、シロウト的で自然でイヤミがないのだ。聞けば、Z会の社員であるという。
社員を起用すると自社のサービスの質の高さをアピールせんと、不自然な演技になりがちだろう。しかし、実に自然なのだ。いや、むしろ楽しそうだ。
なぜ、そんなに自然にできるのか。もしかしたら、社員の人たちも、通信教育会社の社員でありながら、筆者同様に「通信教育挫折」のスネに傷を持っているのではないかと穿ってしまう。
その真偽はともかく、「挫折する人もいるけれど、続けられれば必ず結果が出る!」と、自社のサービスに強い自信とそれを支える自分たちに強い誇りを持っていることが画面から伺える。
と、考えると、このCMのキモは、大勢のオッサンや(以下略)を演じる社員の演技が、ちょっとシロウトっぽいけれど、自然で説得力があることであることがわかる。
シロウトっぽく社員を登場させるCMであれば、地方テレビのCMで、静止画で社員一同が映っている中古車販売店や不動産会社が各地方ではおなじみだろう。しかし、それらは単に「映っているだけ」でなんの意味もない。
一方、Z会のCMで今回社員達が果たした役割は大きい。
禁断の(?)、通信教育会社の社員が、真偽はともかく「私は続けられなかった」と告白するのは、顧客である受験生にとって、一気に親近感がわくのではないだろうか。「ああ、人の痛みがわかる人たちの会社なのだな」と。
一方、自らの過去(真偽はともかくとして)を告白して、「相手の痛みに触れる宣言」をした社員も後には引けない。「受験生サポート」はその産業の基本ではあるけれど、今まで以上に思い入れを持って顧客に接するだろう。モチベーション向上効果バッチリだ。
しかし、こんなにも大胆なCMをよく作れたなと思ったが、これはWebの動画広告としての使い方をメインにして作ったものなようだ。(もしかすると、テレビで流れたりすることがあるかもしれないけれど)。
従来の常識、従来の方法論を乗り越えて、従来の売り手と買い手(この場合は受験産業の担い手と受験生)の距離感を一気に縮めてしまった感触が画面から伝わってくる。従来のマスメディア、マス広告からは考えられない凄味がこの動画から感じられるのは筆者だけだろうか。
自社や自業界のタブーともいえるメッセージを発し、より顧客との距離感を縮める演出とメディアを使いこなす。Z会の今後に注目したいと思いつつ、CMの世界が大きく変わったということの証左を見せられた気がした。
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