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2009.02.06

膨張し続ける「キットカット」のマーケティング

バレンタイン商戦真っ盛りの店頭で、強い存在感を示している商品がある。キットカット。フィリップ・コトラーも賞賛した、その独自の戦略を見てみよう。

バレンタインコーナーの横で販売されている「キットメール」。受験生への応援メッセージを記したキットカットがそのまま郵便で送れるというパッケージである。今年の「キットサクラサクよ。」キャンペーンの目玉的商品といっていいだろう。今まで、受験生に手渡しされることが多かったキットカットを、離れた人からでも届けられる。メッセージも送れるという、画期的な商品だ。
http://www.breaktown.com/09sakura/

マーケティングの大家、フィリップ・コトラーが自著に取り上げ話題にもなった「受験キャンペーン」。その内容と成功のヒミツに関しては、ネスレコンフェクショナリーの高岡社長の講演記事と、担当クリエイターである関橋英作氏のコラムで、当事者の分析を確認していただきたい。
<「我々のマーケティングは宣伝,広告から離れることから始まった」--ネスレコンフェクショナリーの高岡社長 >
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080617/308431/<あのフィリップ・コトラーが、キットカット受験キャンペーンを取り上げる意味>
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20080827/169009/?P=1

上記の2つの記事で成功要因とされているのが、マス的アプローチから離れてターゲットを見極め、ターゲットが求める価値を提供したということだ。そのアプローチは受験キャンペーンだけではなく、キットカットというブランドの力の源泉となっている。それはバレンタイン商戦に参戦している商品にもしっかり活かされているようだ。
<女子中高生の声を反映して開発された「キットカット キット、想いとどく。」は2つに“はんぶんこ”して、パッケージ中面のメッセージ欄にメッセージを書いて渡すことができます。>
http://www.breaktown.com/omoitodoku/
何という絶妙なターゲット設定とニーズの拾い方であろうか。「本命」には手作りの風習が、中高生女子には根強いという。10代向けの雑誌にはこの時期、手作りチョコ特集が花盛りだ。「意気込んだ手作りはちょっと恥ずかしい。市販のチョコなら、軽い気持ちで伝えられるかも。でも、特別な思いは伝えたい」。そんな微妙なオトメ心とターゲットを見極めた戦略なのではないだろうか。

ターゲットとそのニーズを見極めるという、マーケティングの原点ともいうべき戦い方に力を注ぐようになった以前のことについて、関橋氏コラムで述懐している。<それまでのキットカットの価値は、ウエハースが入ったチョコでサクッと食べて気分転換。つまり、物理的な機能に焦点が当たっていました。逆にそれが、ビジネス的に限界を作っていたのです>。
「キットメール」や「キット、想いとどく」は物理的には「レギュラー製品のパッケージ変更」だが、その意味はもっと深い。「ウエハース+チョコ=サクサクしたお菓子」という商品特性を離れて、それを包むパッケージで、ターゲットがどのように用いたいニーズとの適合を図っているのだ。ターゲットを見極めていればこその展開なのだ。

一方で、製品を作り替えることもキットカットは得意としている。2000年にストロベリーフレーバーを期間限定で発売し、続く01年にバナナを発売。03年に期間限定商品を5種に増やし、現在では毎月のように限定モノが発売されている。単なる話題喚起ととらえるには、かかる労力は凄まじい。
メインターゲットとなる若年層のキモチは移ろいやすい。常に刺激を与え続けなければ、簡単に他の商品にスイッチしてしまう。もしくは購買頻度が低下する。つまり、「キットカットは常に新しいフレーバーを提案し続けます」というメッセージをターゲットに送り続けているのではないだろうか。それはブランドからのプロミスであり、価値の提供でもある。
新たなものを求めるターゲットに対して、製品自体もマス・プロダクトを離れ、細分化させる。当然、生産効率は悪くなるだろう。しかし、あくまで新たな価値提供を目指しているのだと解釈できる。

お土産需要を取り込むご当地キットカットもある。例えば昨年発売されていた「キットカットしょうゆ風味 」。<東京に根付くしょうゆ文化を表現した>という。東京限定で都内の空港、駅、サービスエリアなどで販売されていた。これもまた、商品の細分化戦略である。
http://p.nestle.co.jp/kitkat/limited/kk_shoyu.htmlターゲットだった若年層も、やがてキットカットを離れていく人もいる。筆者もその一人だ。お土産を探しているうちに、もしくはお土産としてもらうことで、キットカットとのリレーションが復活することもあるだろう。そのきっかけ商品としても機能するのがこのご当地キットカットではないか。

マス的アプローチから離れてターゲットを見極め、ターゲットが求める価値を提供する。その課程で、ターゲットの細分化したニーズをすくい取るために提供価値も、商品自体もどんどんと膨張していく。一見、効率的に見えない展開だが、もはや「消費者」という一個のカタマリでとらえていては生き残ることはできない時代である。細分化しつつ膨張を続けるキットカットの戦い方に学ぶところは多い。

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