個食化と少人数世帯化に対応するキーワードは「ピッタリ感」
中味は同じ食品。発売元もブランドも全く一緒。295グラムで180円と150グラムで160円。あなたはどちらを選ぶだろうか。
単価計算をするまでもなく、295グラム入りの方がオトクなのは誰でも分かる。しかしあえて、このメーカーは150グラム入りの商品を追加発売するという。
<手作りトマトメニューをおいしく、簡単に!「基本のトマトソース」295g リニューアル~少人数世帯向けの小容量150gレトルトパウチも新登場~ >
http://www.kagome.co.jp/news/2008/090205.html
トマトといえばカゴメというぐらいにトマトにこだわる同社が、<消費者の節約志向による内食回帰を要因に、トマト調味料の市場は、拡大傾向>にあると商機を見てパッケージリニューアルし、拡販を狙っている。それと同時に<少人数世帯向けの小容量タイプを追加することで、トマト調味料市場の更なる拡大>を図るという。
狙いは確かに分かる。しかし、ナゼに単価換算すると全く釣り合わない2つの商品を発売するのかと疑問に想う方も多いだろう。しかし、消費者心理は経済合理性だけでは説明できない部分があることを巧みに見抜いた価格戦略なのだと考えられる。
昨年末のニュースだが、コンビニに関する以下のような記事があった。
<ファミマ、生鮮食品の扱い拡大へ 全店舗の半数で>
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/081228/biz0812280123000-n1.htm
記事では<最近は、スーパーが自転車や車で行ける距離でも、歩いていけるコンビニで少量だけ欲しいというニーズは高齢者や独身者を中心に想像以上に強い>と分析しているが、「少量、使う分だけ買える」という要素もかなり強いはずだ。少人数世帯の進行と共に各自が好きな時に好きなものをバラバラに食べる個食化も進んでいる。買い込んだ材料で大量に料理する習慣は失われつつあるということだろう。
その影響からか、スーパーでは一玉150円でキャベツを売り出すより、半玉150円で売り出した方が売れ行きがいいという現象も起きているという。一体どういうことか。
少人数家庭化、個食化の現状では一玉を使い切るうちにダメにしてしまうことも少なくない。みすみす、自分が代金を投じて購入するものを廃棄するリスクを考えると手を出すのを躊躇する。半玉であれば使い切れそうなので、気軽に購入する。そうした消費者の心理が働くからだ。
半分ダメにするのではなく、三分の二使って、三分の一廃棄すれば一玉の方が特になるのだが、そうした合理性では割り切れないのが人のココロ。トマトソースも半分使って、半分を保存容器に入れるなり、冷凍すればいいのだが、そうした面倒なことはしたくない。
少人数家庭化、個食化はまぎれもない環境の変化である。そうした変化に対応するためには、消費者の心理に対応した戦略立案が欠かせない。少し古い事例であるが環境の変化で売れ行きが激減し、「個食化」に対応して見事な復活を遂げた食品がある。
<フジッコ―低迷した主力商品を生き返らせる>
http://president.jp.reuters.com/article/2008/12/02/4B105C72-BD16-11DD-A79D-1C123F99CD51.php
<煮豆市場は1998年頃から長期的なダウントレンドに突入。2000年に約5400円だった100世帯あたり購入金額が、05年には約4700円に減少していた>といい、市場調査により煮豆を食べない背景として<「一人暮らしになったから」「夫婦ふたりきりになったから」>という<家族形態の変化を契機とした”煮豆離れ”>が起きていることがわかった。
つまり、<内容量が平均で160グラムある家族向け商品の「おまめさん」は、個食化が進んだ時代に合致しない商品になっていた>ことがわかったのだ。
そこで同社は<食べきれる量目・食べやすい容器・そのまま食卓に置ける>をコンセプトに商品開発を進め、新製品「やわふく」を発売。<工場の能力が追いつかないほどの売れ行き>となった。
既存製品と差別化するために製品の品質も向上させたが、「売れる価格」を実現するためにコストの積み上げではなく製造コストの削減も図ったという。しかし、それでも既存製品よりグラム単価は高くなっている。だが、新しい容器は家庭内で食べたい人が一人でも食べられるような個食対応だ。無駄な食べ残しをしない。自分用に「ぴったり」だという感覚。これこそが単価計算で判断されるのではない、価値観への訴求なのだ。
原材料の高騰に始まり値上げが相次いだ食料品や外食産業。そこに経済の低迷が追い打ちをかけ、消費者の財布の紐は固くなり、企業は厳しい対応を迫られるようになった。安易な値上げは顧客離れを招く。競合との値上げのガマン比べに負ければ顧客を奪われる。
そんな中で、価格は同等か若干引き下げ、内容量を減らす「量目調整」が行われているケースも散見されるようになった。消費者に気づかれにくい「実質値上げ」となる量目調整はネガティブにとらえられがちだ。しかし、上記の3つの例はどれも、実質的には割高なのにもかかわらず、消費者に選ばれるのだ。
その昔、米国での話。公園で若者がポップコーンを売っていた。さっぱり売れない。そこで、公園に来ている人々をつぶさに観察することにした。数多くの老人。小さな子供の手を引いた母親。彼は気づいた。老人や小さな子供では自分が売っているポップコーンでは量が多すぎて食べられないのだと。
量を半分にして売りに出してみると、狙いは的中。多くの人が買いに集まったという。
量目は製品戦略の一部だ。そして価格戦略。それらは密接に関連しているが、それだけを考え悩むのではなく、まずはターゲットを明確にして、そのニーズを探ることが肝要なのだ。そして、ターゲットが「自分にピッタリ」と思えるものを提供する。relevant(適切な・妥当な・実際的な価値を持つ)という英単語の方がしっくり来るかもしれない。
環境変化に柔軟に対応し、ターゲットにレレバントなものを提供する。マーケティングの基本にも通じるが、忘れてはならないことである。
« 膨張し続ける「キットカット」のマーケティング | Main | 「異色のコラボ」の狙いとは? »
■内需拡大はなるか?麻生総理は最もトレンディーな総理か?-Yahooのブログ・キーワード人気度より見られる傾向
こんにちは。キーワード分析重要だと思います。最近は、いろいろなツールが提供されていて便利ですね。キーワード分析をすることにより、SEO対策のみならず、世の中の動きが良く見えてくると思います。現在日本では、ブログの数は300万以上になっています。ブログの運営者も、一昔まえなら「オタク」ぽい人が多かったのですが、最近はそんなことはありません。女性も増えてきています。こういった方法が、今後マーケティングなどにも多様されてくると思います。私のブログでは、内需の拡大や、麻生総理など例にとって分析方法など掲載してみました。詳細は是非私のブログをご覧になってください。
Posted by: yutakarlson | 2009.02.16 03:15 PM