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2009.02.23

「マックスコーヒー」33年目の全国侵攻・その勝機

「マジ ハンパなく バリ 甘い」。とにかく目立つクリエイティブとベタベタなコピーが目を惹く駅貼りポスターがそこかしこに掲げられた2月。それは、千葉県民・茨城県民のソウルドリンク、「マックスコーヒー」が全国に販売エリアを拡大した証だった。

千葉・茨城以外にも早期に埼玉・栃木に出荷され、その後徐々に一部関東圏に販売エリアを拡大していたものの、マックスコーヒーは全国的にはほぼ無名だろう。その特徴を端的に伝えるなら、まさに「マジ ハンパなく バリ 甘い」となる。原料の乳成分に100%練乳を用い、さらに砂糖を加えたその味はとにかく甘い。知らずに飲んだら、これがコーヒーか!と心底驚くことになるだろう。その意味では「マジ ハンパなく バリ」は特徴を適確に伝える秀逸なコピーであると同時に、適確な警告でもある。

全国拡大に際して、ポスターだけでなく初のテレビCMも放映された。また、公式ホームページもノリノリで作られている。 http://www.georgia.jp/max/ 

中でも、「プロジェクトMAX」と題されたコンテンツ(動画)が秀逸だ。
<千葉・茨城エリアを中心に30年以上もの間、愛され続けている「 マックスコーヒー」。そのやみつきになるうまい甘さを守り続けた 男たちの甘くないドラマ>
某国営放送のドキュメンタリーシリーズを彷彿とさせ、なんだか、中島みゆきの歌声が聞こえてきそうだ。しかし、パロディーではない。確かにマックスコーヒーを誕生させ、育て、守ってきた「男たちの」姿がしっかりと描かれたドラマなのである。

マックスコーヒー誕生と今日までの歴史は、上記「プロジェクトMAX」と、ウィキペディアの記述を併読するとよくわかる。

1970年代、コカ・コーラブランドには缶コーヒーが存在していなかったが、競合は自販機に次々に設置。自販機オーナーなどから、「缶コーヒーを入れなければ、自販機を撤去せよ」と言われたと、当時の利根コカ・コーラボトリングの商品企画担当者が動画の中で当時を振り返える。地域のボトラーが市場の要請に対して「潤沢な資金のない中での開発(動画より)」をしたという、まさに地域ブランドであるわけだ。県民の支持も集まろうというものだ。

もう一つの転機は、コカ・コーラの缶コーヒーのナショナルブランド「ジョージア」に組み込まれたことだろう。マックスコーヒーを追うように発売されたジョージアは全国区だが、千葉・茨城での<1990年の売上実数でジョージア460万ケース、マックスコーヒー430万ケースとほぼ拮抗する状態(ウィキペディアより)>だったという。
明らかにグループ内でのカニバリゼーション(共食い)を起こしている。同一カテゴリー商品を同一ブランドや自社内で展開する場合、相互補完的な関係が望ましく、カニバリは販売・経費効率の低下を招くため絶対に回避したいところである。
<日本コカ・コーラとの基本契約の中には「コカ・コーラのマーク、車、自動販売機ではコカ・コーラ認定の商品しか扱ってはならない」の一項があり>契約違反になる懸念があったという。様々な協議の末<1991年4月15日にマックスコーヒーの印象を一部残した「ジョージア・マックスコーヒー」という「新製品」として発売することとなった> という。

一つ注目したいのは、「ジョージア」ブランドに組み込まれても、全国区での発売とはならなかった点だ。ウィキペディアによれば、2006年に都内繁華街や駅及びその周辺に拡大。2007年北海道、2008年 愛知県・香川県・愛媛県・大分県・宮崎県などでの販売が拡大されているようだ。
このようにジワジワとした拡大路線であるのが、2009年に一気に全国拡大となったわけだ。ナゼ、この時期なのか。

上記から変化点と考えられる2006年~2009年の環境を分析してみよう。まずはマクロ環境分析のフレームワーク、「PEST」だ。
「Political(政治的な影響要因)」=健康保険法が改正され、厚生労働省は2008年度から健康保険組合にメタボ対策を義務付けた。
「Economical(経済的影響要因)」=戦後最長の「いざなぎ越え」ともいわれた好景気は徐々にかげりを見せ始め、格差社会が拡大。そしてついに、米国発の金融不安に端を発した経済危機が昨秋勃発した。
「Social(社会的影響要因)」=2005年テレビ東京が「元祖!大食い王決定戦」を放映。ギャル曽根を筆頭とした大食いタレントがもてはやされ、各局が追随し、大食い番組を制作。
2006年日本マクドナルドより、以後、牛丼、コンビニ弁当などにも商品大型化(メガフード)の影響を与える「メガマック」が発売される。2008年秋、さらに大型のクォーターパウンダーに引き継がれる。
「Technological(技術的影響要因)」=2005年~2006年にかけて日本のBlog人口は倍増。SNS人口は6.5倍の伸び。自身の体験を簡便に発信することが可能となった。

以上のファクトからどんな「意味合い」が抽出できるのか。
まずは、「大食いブーム」に注目してみたい。当初、エンターテイメント的に扱われていた大食いとメガフードであるが、景気の悪化に伴う消費者の可処分所得の減少によって、「コストパフォーマンス(コスト・パー・カロリー)のいいもの」と受け取る層も増えてきた。
一方、メタボ防止のためにカロリー摂取に関してうるさくいわれる環境が蔓延し、その動きに反発する層も一部で増加した。さらに、各種メガフードを食べ、体験をBlogやSNSで発信する人も増え、メガフードファンがさらに拡大した。
つまりこの時期に、高カロリー食品に対して、「メタボだなんだとうるさくいわれたくない!」という反発心と、ファストフードなどに代表されるように、コストパフォーマンス良く「その一品で満足できる」というものが求められ、ネットなどを通じてファン層を拡大したのだ。

この「ファン層」というと、「若者」とか「体育会」などと考える人が多いようだが、実のところそうではないようだ。例えば「メガマック」のコアユーザー層は30~40歳代男性が多かったという。コストパフォーマンスと、メタボへの反発、カロリーを気にしない満足を求めてかもしれない。
女子の世界でもメガはある。「サーティワンアイスクリーム」の「チャレンジ・ザ・トリプル」キャンペーン。<たくさんのフレーバーの中から、お気に入りの3つを選んで、さぁ、トリプルにチャレンジしよう!>ダブルを買うと、もう1カップが付いてくるキャンペーンでは、店に行列ができるという。「スイーツ別腹」という女子特有の身体構造ゆえかもしれないが、これも立派なメガだろう。

さて、マックスコーヒーはこうしたマクロ環境の中で、どうとらえられるのだろうか。
缶コーヒー中最大の糖質を誇り、さらに練乳の仕様により糖質量以上に甘く感じるその味は、間違いなく「1本で満足」を得られる。缶コーヒーらしい甘みを感じる「ジョージアオリジナル」の1.5倍近いカロリー(100gあたり50kcal)はカロリーなど気にしたら飲むことはできない。
この飲料における「メガ感」。公式サイトで多くのファンが動画でその「甘さ」の魅力を伝え、「疲れた時にピッタリ」と語る「充実感」。そこにカロリーなどという言葉は微塵も登場しない。そして、「コアなファン」が実に多くのBlogを立ち上げ、その魅力を熱心に喧伝している。こうした一連の動きは実に今の時代にぴったりだといえるのではないだろうか。

では、その他の、数多ある缶コーヒーブランドの中で戦っていけるのかを、競合環境を分析する「3C分析」で見てみよう。
まず、「カスタマー(Customer)」。市場の環境と顧客のニーズを見る。
公式サイトの動画「プロジェクトMAX:第4話「マックスコーヒーを守れ!」篇」にも取り上げられているが、缶コーヒーにも「無糖化」の流れが押し寄せてきた。そこで利根コカ・コーラボトリングは市場調査を行った。そして、マックスコーヒーの「甘さ」を求める「ヘビーユーザー層」の存在を確認し、味の変更を行わないことを決めたという。
つまり、時代の流れとしては健康志向に伴う無糖化があるものの、コアユーザーのニーズにはマッチしている。さらに、前項のPEST分析で明らかにしたような、「メガ化」の流れもあるのだ。
では、「コンペティター(Competitor)」、競合の動きはどうだろう。
前述の通り、缶コーヒーは無糖化や低カロリー化が進んでいる。マックスコーヒーほど、ヘビーな商品は存在しない。だとすると、競合の動きには、明らかなカスタマーニーズとのギャップが存在する。
そして「カンパニー(Company)」、この自社は、利根コカ・コーラボトリングではなく、マックスコーヒーをジョージアブランドに組み入れ、今回全国販売を決めた日本コカ・コーラで考えた方がいいだろう。「メガ化」を中心としたニーズをいかにすくい取るか。それには自社のジョージアブランドの中で新製品を開発するより、地域限定ではあるものの、既にコアなファンも抱えているマックスコーヒーを全国化する方がリードタイムもかからず、成功率も高いと判断できるだろう。

「マジ ハンパなく バリ 甘い リアルにコーヒー ちょー元気 続きMAX!」。
これが今回の全国侵攻に際して作られたコピーだ。
健康志向ではなく、極端な甘みによって1本で十分な満足を得られる独特のポジショニングを持ったマックスコーヒー。地域飲料としての33年の歴史を経て、世相の変化に対応し、初の全国展開をスタートさせた今後の動きを見守っていきたい。

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