「ソニーVAIO type P」がオンナ心をわしづかみ!
「予約しないと買えない!」とネットで話題騒然のソニーのバイオ・type P。しかし、実際に購入予約をしたり、検討したりしているのは熱狂的にBlogなどで記事をアップしているようなパソコンのヘビーユーザーだけではないようだ。
バイオ・type Pのキャッチコピーは”小さい、軽い、美しい。「ポケットスタイルPC」誕生”。
そのコピー通り、CMでは歩く女性の、ジーンズのポケットにtype Pがしっかりと収まっている。
http://www.vaio.sony.co.jp/ (バイオトップページにCM動画あり)
確かに「美しい」。カラーリングのキレイさや、仕上げの質感の良さが伝わってくる。まさか本当にポケットに入れて歩くことはしないだろうが、小さい、軽いもよくわかる。よくできたCMだ。魅惑的な女性のヒップラインに目を奪われることなく、商品に目が引きつけられる。
冷静になって、商品スペックを見てみる。
液晶は1600×768ピクセルと高解像度だ。メモリも標準で2GB載っている。ソニーらしくブルートゥースも搭載している。
が、CPUは「インテル Atom 」。この時点で、実はこれが「ソニーも”ネットブック(ミニノート)”市場に参戦」と噂されていた商品なのだと気付かされる。
5万円を切るか切らないかで激しい価格競争を繰り広げているネットブック、もしくはミニノートPCと呼ばれる低価格ノートパソコン市場に乗り込んだソニーは、オシャレな外観とちょっと豪華なスペックで9万円台という価格戦略を提示してきた。約倍近い価格をものとせず、購入予約をしているのはどんな人なのだろう。
「予約されている方の半数以上が女性ですよ」。ヨドバシカメラの店員が語った。
「ネットブックは本来セカンドマシンの位置づけなので、決してスペックが高いとは言えないので1台目のパソコンとしてはあまりお勧めしないとご説明しているんですが、女性の方は固くご購入を決めて予約されておりまして」と、予約者の様子も伝えてくれた。
バイオtype P、オンナ心をわしづかみだ。
顧客が製品を購入する主たる理由をKBF(Key Buying Factor)という。ノートパソコンで考えれば、軽さやバッテリーの持ち、画面の見やすさ、タイピングしやすいキーピッチなどが挙げられるだろう。確かにtype Pはそのいずれも満たしている。
しかし、予約者の過半を占めるという女性たちのKBFはそこにあるのだろうか。恐らくそれだけではないだろう。
P.コトラーの提唱した「製品特性3層モデル」で考えてみる。
ノートパソコンを購入するにあたって、顧客が手に入れたいと考える「中核となる価値」は、「持ち運んで便利に使えるPC」であることだ。そして、その「中核」を実現するための製品の「実体」は、「小さくて、軽くて持ち運びに便利」なことだ。電源の心配をしなくともいいという「バッテリーの持ち」も欠かせないだろう。さらに次の段階は、それがなくとも「中核となる価値」は損なわれないが、あればより魅力的な製品となる要素としての「付随機能」だ。ここにソニーは「美しい」という要素を持ち込んだのである。
プロダクト・ライフサイクルで考えれば、製品の市場が成熟化するに従って、製品を構成する価値の要素が、「中核」から次第に「実体」「付随機能」へと、3層の外へ外へと移行していくのが常だ。例えば、既に成熟期を迎えているコンパクトデジタルカメラの市場は、「キレイにデジタルで画像が残せる」という「中核」である画素数競争に始まり、薄さやコンパクトさという「実体」の競争を経て、昨今では「そのままBlogやSNSに画像をアップできる」とか、「プリント機能が付いている」といった「付随機能」の競争となっている。
ネットブック市場が早晩、成熟化することは目に見えていたと言えるだろう。しかし、ソニーの凄さは、そこに「価格競争」を持ち込まなかったことだ。9万円台といえば、相場の倍の価格。それを、「美しい」という付随機能で通常のネットブックとの戦いをあっさりと回避したのだ。
「ネットブックはセカンドマシン」という常識ではなく、女性の「ケータイからの乗り換え」を狙った、「小さい、軽い、美しい」メインマシンとして購入するのであれば、通常のノートパソコンに比べればその価格はむしろ割安に映る。ユーザーの利用ニーズがケータイからの乗り換えであれば、まさにネットブックらしい使い方であり、スペックの問題は全くない。
果たして、ソニーが女性層をtype Pで本当に狙っていたのかは定かではない。しかし、潜在的な女性のニーズをしっかりととらえたことだけは確かなようだ。
製品のスペックなどだけを考えるだけでなく、ターゲットと、そのKBFをじっくる考えることの重要性を改めて認識させられた気がした。
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