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2009.01.09

これがモスバーガーの生きる道!

「モス史上最高!国産肉100%のうまさ」を豪語する、モスバーガーの「とびきりハンバーグサンド」が、暮れも押し迫った昨年12月27日に発売された。確かに美味い。が、その味以上にモスフードサービスが自社の戦略ポジションを活かした「巧い」商品戦略であることが覗える。

「ハンバーガーと言えば、やっぱりモスだよねぇ」とかつては固く信じていた筆者であるが、正直ここ数年、足が遠のいていた。「できたて」にこだわり、ファストフードではなく、むしろスローフードを目指すポリシー。二等立地にも足を運ばせるファンづくり。そんな本来の魅力が見えなくなった感じがしていたからだ。
高級路線を狙った「緑モス」への転換において、ファンとしてはどうにも中途半端に思えるメニューのラインナップが続き、さらに高級バーガーとして投入された「匠味」も原材料高騰のあおりを受けてか、ネット上でも多くのファンが指摘しているように味の低下も顕著だった。加えて、低迷脱却の次の一手として、櫻田厚社長が決算会見の席上で「200円前後の低価格メニューの開発を進めている」と発表は、筆者に「モスは終わった・・・」と失望に追い打ちをかけた。

が、モスは終わっていなかった!「とびきりハンバーグサンド」。その戦略が実に見事なのだ。
バンズに挟まれているのはパティと刻みキャベツだけ。ソースは王道のトマトデミソース。かなり直球勝負の気合いが感じられる。「バンズからお肉がはみ出している」とのコピーに偽りはなく、こんがり焦げて香ばしい香りを放つパティがしっかりその存在を主張している。90グラムとなかなかのボリュームだ。
もっと重要なのが、「ハンバーグに使用しているお肉は100%国産です」と明記していること。昨今の食の不安を払拭してくれるのがなんともうれしい。
それでいて390円という、かつての「匠味」のような高価格を打ち出していないのも良心的。肉は国産の牛・豚合い挽き。豚肉独特の風味がかなり感じられるので、豚の配合率は高そうだが、筆者の好みには合っている。「合い挽き」の選択は価格にも大きく反映されていると思われる。

同社のWebサイトにはこう記されている。
<本当に美味しいハンバーグを、手軽に食べてもらいたい。そんな気持ちでモスがたどり着いたのは、ハンバーグに使用するお肉を100%国産にする、というシンプルな答えでした。美味しいものに恵まれた国、日本に生まれてよかった!と思えるようなハンバーグ>

マクドナルドが挑発的に「ニッポンのハンバーガーよ、もう遊びは終わりだ」と、いかにも「本場米国から黒船上陸」といった演出をしたのに対し、「日本人の好みにあったハンバーガーを提供する」というモスバーガーの創業の理念に立ち返ったポジショニング。
そして、「100%国産肉」という要素は、マクドナルドだけでなく、ほかの多くのハンバーガーに対しても大きな差別化要因として機能する。

モスバーガーの属する「ハンバーガーショップ業界」においては、モスバーガーはもはやフォロアーのポジションにあったといえよう。後発のフレッシュネスバーガーに、その「作りたてにこだわる」という点など、ユニークさを模倣され、業界における差別化ポイントを失ってしまっていたからだ。
業界の「リーダー」にも挑戦できる「チャレンジャー」と、ひたすら存続のみを目的として生き残りを図る「フォロアー」のポジションにおける決定的な違いは何かといえば、「差別化」ができるかどうかにかかっている。コーラ業界におけるリーダーであるコカ・コーラに対して、ペプシコーラがレモンフレーバーを効かせたり、変わり種コーラを上市したりするのもチャレンジャーとしての差別化策である。

差別化には2つの種類がある。一つはリーダー企業が同じような施策を被してくる、「同質化」を図ってくるのを覚悟で、先んじて行うことを価値として展開する施策だ。コーラの例でいえば、レモンフレーバーは同質化されることを覚悟で行った施策であったと解釈できるだろう。もう一つが、リーダーが決してできないことを行う差別化である。変わり種コーラ、昨年発売されたペプシの青いコーラ、「ブルーハワイ」など、コカ・コーラには決して手を出さないはずだ。コーラらしからぬコーラに手を出すことは、リーダーにはリスクが大きすぎる。

モスバーガーの打ち出した、「合い挽きの100%国産肉」は、リーダーであるマクドナルドは絶対に同質化戦略はかけてこないだろう。なぜなら、同社が掲げてきた「100%ビーフ」というポリシーに反してしまうからだ。マクドナルドにも細長いバンズにポークパティをはさんだ「マックリブ」や、100円マックの「マックポーク」が存在するが、あくまでメインストリームではない。まして、「合い挽き」をうまさの最上級と位置づけることはあり得ないだろう。
リーダーが訴求してきたことと別の方向性を打ち出して、手出しができないようにすることを「理論の自縛化」という。今までビールの「コクや旨み」を訴求してきたキリンビールが、アサヒスーパードライの「ビールはキレです」という新たな価値観を打ち出されても、それに追随して同質化できなかったのが過去の例としてあげられる。

調達力において、コストリーダーであるマクドナルドに圧倒的に劣後するモスバーガーは、価格的な追随などすべきではない。徹底した差別化戦略をとるのが正解だ。「200円前後の低価格メニュー」ではなく、極めて戦略的に計算された差別化のポジションを実現した、今回の「とびきりハンバーグサンド」の登場は、かつてのファンとして極めてうれしい。
また、モスバーガーに通ってしまいそうだ。ダイエット中なのに・・・。

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