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2009.01.28

“現場に効く”マーケティングの基本理論・第12回

Big mistake! 読者の方からメールでご指摘いただきました。
一昨年から昨年10月までインタラクティブマーケティングの専門誌「月刊im press(アイ・エム・プレス)」で連載をしていたシリーズ、「現場に効く”マーケティングの基本理論」。
毎月、1ヶ月遅れで当Blogに転載をしてきたのですが、最終回のアップを忘れていました!

今さら感はありますが、最終回らしく結構キモなことを書いたつもりなので、改めてアップします。
「12回をまとめて読みたい」というご要望もいただいていますので、近々、連載12回分のリンクを左ナビゲーションかどこかに設定します。もうしばらくお待ちください。

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「“現場に効く”マーケティングの基本理論」

あまりに“基本”と思われ、忘れられているようなマーケティング理論。しかし、日々の業務が行われる“現場”で今一度振り返ってみれば、思わぬ“再発見”があるものだ。

第12回「マーケティングの要諦とは何なのか?」

 1年間にわたってお届けしてきた当連載も今回で最終回となる。「マーケティングとは何か?」から始めた12回。今回はそのキモを確認して締めくくりたい。


■マーケティングは循環する

 マーケティング戦略の立案・実行手順はしっかりと覚えられただろうか。外部環境・内部環境の精査→市場機会・事業機会の発見→STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)の立案による戦略の方向付け→4Pによる具体的施策の展開である。
 しかし、実際の業務では個々のパーツだけを検討せざるを得ないこともある。「新たなバリエーション製品を企画せよ」。「この製品の価格改定を検討せよ」。「新たなチャネルを開拓せよ」。などなど……。よく見れば、いずれも4Pの課題である。しかし、4Pそこだけを考えていても答えは出ない。もしくは、結果の正否の原因がわからないため、成功が再現できなかったり、失敗を繰り返したりすることになってしまう。出した答えが正しいのか、結果が思わしくなくても何がいけなかったかがわからないのだ。
 製品(Product)の課題を考えたとしよう。「新しいバリエーション商品として、より高級なラインを展開しようか?」。そうしたら「価格は従来品とどのように差をつけるのか? 競合品との比較は? そもそも、その価格で顧客は買ってくれるのか?」と価格(Price)を検討が待っている。そして「高級ラインの展開は、従来の取扱店だけでいいのだろうか?」とチャネル(Place)の課題を検討することになる。当然、従来品と異なる価値の訴求をどのように広告や販売促進で伝えていくべきなのかというコミュニケーション(Promotion)の課題も解決しなくてはならない。4Pはすべて整合しなくてはならないのである。
 整合が求められるのは4Pだけではない。そもそも、高級ラインは「誰が買ってくれるのか?」というターゲティングをもう一度考え直し、そのターゲットに対し、どのような打ち出し方をするのかという、ポジショニングも再度検討しなくてはならない。4Pと同時にSTPも見直すことになる。さらに、「高級ライン」は自社の開発や生産能力で本当に実現できるのかという内部環境も再検討する必要があり、そもそも、昨今の経済環境の中で「高級」がどれだけ受け入れられるのかという外部環境も十分考慮すべきであることは言うまでもない。
 「マーケティングは循環する」。冒頭、マーケティング戦略の立案・実行手順として再確認した流れは、逆からも考える必要があるのだ。日常業務において、マーケティングの一部だけを検討するシーンは多いだろう。しかし、実際には「部分最適」だけで解決できることはほとんどないと認識すべきなのである。


■B to Bマーケティングに学ぶ:4Pに隠れた「時間」という重要事項

 とはいえ、最終的な打ち手は4Pで考えることになるのだが、そこに隠された重要事項をBtoB(企業対企業取引)から学びたい。
 モノ作りの現場における最重要課題は「QCDの向上」であるとされている。QCDとは、品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の略だ。しかし、モノ作りだけでなく、QCDはB to B取引の必須要件なのだ。「品質」×「価格」×「納期」。この変数をどう組み合わせるのか。
 例えば、日本で一番高収益な企業として知られる、生産設備向けセンサーのメーカーである「キーエンス」。「品質」は、納入先企業の課題解決を徹底的に検討し、汎用品にベストなカスタマイズを行って提供する「超高品質」である。その代わり「価格(コスト)」は倍~数十倍。ただし、いち早い課題解決のため、基本は翌日納品という「超短納期」を実現している。極めて高価格でも、モノ作りの現場で支持される同社の秘密はそれだ。
もっと身近な例もある。文具通販の「アスクル」。小規模事業所向け文具通信販売としてスタートした同社は、「品質」は当初、親会社のプラスの製品からスタートし、他社製品の取り扱いに拡大。PB商品も数多く開発した。しかし、突出した高品質で勝負しているわけではない。「コスト」も定価販売からスタートし、独自のプライシングを行うようになったが、「最安値宣言」などをしているわけでもない。成長の秘密は「納期(Delivery)」である。小規模事業所にとって、注文すれば翌日(場合によっては当日)に確実に納品してくれることが一番の価値であったのだ。
 前記の通り、品質(Quality)・コスト(Cost)は4Pで考えれば製品(Product)と価格(Price)でカバーされている。しかし納期(Delivery)の要素は、つい忘れがちではないだろうか。特に「時間」という要素。誰もが忙しく生活している現代。人に最も平等に与えられている条件は、1日は24時間、1年は365日であるということだ。その時間をどのように戦略に組み込むのか。航空券をはじめとした早期割引制度などの例もある。しかし、もっと工夫の余地があるはずだ。また、競合との戦略を考える時なども、時間軸上でどのように差別化を図るかをもっと考慮すべきである。


■4P+2P

 4Pと同時に考慮すべき「時間」に加えて、ずいぶん前から筆者が提唱している「4P+2P」という概念がある。即ち、「Process」と「Person」。「どのような手順で」「誰が実行するのか」ということである。
 モノだけではなく、それに付随したサービスが重要視されるようになって久しい。無形のサービスそのものを商材とした時「サービス・マーケティング」という領域も生まれ、そこでは、特に上記の「Process」と「Person」を組み合わせ、どのようにサービスを提供するかが検討されている。しかし、それはサービスという商材において語られるべきことではない。どんな商売でも「顧客接点」が存在する。そこで、どのような手順で、誰が「価値」を提供するのかが問われるのだ。例え、定型的な商品であっても、顧客接点における提供のされ方ひとつで、顧客が感じる価値は異なってくるはずなのだ。
 「マーケティングとは価値の交換活動である」と連載当初に述べた。顧客に価値を認められ、対価を得るに値するか否かは、あらゆる商材、あらゆる取引において、最終的にはもう2つのPである「Process」と「Person」にかかっていることを忘れないことだ。


■主人公は顧客であることを再認識し、より顧客を理解すべく努力を続けよう

 筆者の最も尊敬する人物は「レスター・ワンダーマン(Lester Wunderman)」である。タイム誌に「20世の3大広告人」の1人として選ばれた、「ダイレクトマーケティングの父」。
 彼は「主人公は商品ではなく、顧客である。(The Consumer , not the Product must be the hero.)」と、マスプロダクトの黄金期から、一貫して「顧客中心主義」を提唱した人物である。
 当連載の最後に、彼の言葉を紹介したい。
 「あなたの価値は、持っている知識の量によって決まる。(You Are What You Know.)~情報となり得るデータを集めること。それがひいては知識となる。知識があってこそ、成功が約束され、失敗が最小限にくいとめられる。企業は、持っている知識の範囲以上の存在にはなり得ない。」(翔泳社『ワンダーマンの売る広告』より」)
 マーケティングの要諦は「顧客の心の中を洞察し、顧客をよく見続けること」である。
昨今、「マーケティングとは何か」という答えとして「売れ続けるしくみ作り」という言葉が使われる。単に「売り込む」のではなく、顧客を理解し、自ずと商品が売れていく仕組みを作ることこそがマーケティングであるという解釈だ。それは非常にわかりやすいのだが、そのためには「しくみ」だけではダメなのだ。より顧客をよく見る。顧客の心に触れる。顧客のことを常に考え続けることこそが、マーケティングのキモなのだ。
なぜなら、「主人公は商品ではなく、顧客」なのだから。

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