« November 2008 | Main | January 2009 »

16 posts from December 2008

2008.12.29

「六甲のおいしい水・その成長戦略とこだわり」:定番のヒミツ第11回

日本実業出版社の季刊誌「ザッツ営業」好評発売中です。

ザッツ営業 http://www.njh.co.jp/that/that.html

同誌に連載中のコラム「定番のヒミツ」第11回が掲載されています。

「ミネラルウォーターなんてみんな同じ」と思っていませんか?
いやいや、「売れ続けている定番」には、ちゃんと「売れ続けるヒミツ」があるのです。

さて、それは・・・?

以下、記事転載。

--------------------------------


世の中には常に売れ続ける「定番」と呼ばれるものがある。なぜ定番は売れ続けることができるのか。当連載はその謎をマーケティングのセオリーから考察する。


「六甲のおいしい水・その成長戦略とこだわり」

現在、広く普及しているような、ペット容器にミネラルウォーターを充填し販売するというしくみを作ったのはハウス食品株式会社だ。商品は「六甲のおいしい水」。発売は1983年のことである。
 同社は飲料メーカーではなく、食品メーカーだ。それ故、小売店の棚を確保することも困難なスタートを切った。しかし、主力商品のカレー売り場の横で「カレーと一緒に」とアピールしたり、ご飯を炊くための水として米売り場の横に置いたりと、徹底したクロスマーチャンダイジング策で普及を図ってきたのである。
 経済学者のイゴール・アンゾフは、企業の成長戦略を4つにパターン化した。既存の顧客を対象にするのか、新規の顧客を狙うのか。既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのか。顧客・製品、新規・既存の掛け合わせの4パターンだ。六甲のおいしい水という製品を用いてハウス食品が展開した成長戦略は、飲料単体で購入する新規顧客を狙うのではなく、自社にとっては既存顧客である「食品購入客」を狙っているところに特長がある。つまり、新製品を既存の顧客に販売する成長パターンで、しっかりとした顧客基盤に展開したことが成功のカギであったのだと解釈できるだろう。
 国民1人当たりのミネラルウォーター消費量は1986年の年間0.7リットルから、2006年には18.4リットルへと拡大した。(日本ミネラルウォーター協会調べ)その分、外国勢、国産入り乱れてライバル商品も数多くなった状況であるが、六甲のおいしい水は独特のこだわりでファンをしっかりと確保している。
「神は細部に宿る」という言葉がある。六甲のおいしい水のペットボトルの上部には、「水」を表わす点字と「>|<」という記号が浮き出るような表面処理がなされている。視覚障害者向けの点字表示は様々なところで用いられるようになっているが、停電や災害の時などに、点字が読めない健常者でも暗闇で「水」が判別できるような工夫がなされているのである。神戸という地に拠点を置き、震災を経験したからこそ考えられた配慮である。
ミネラルウォーターという差別化の難しい商品ではあるが、日本におけるパイオニアとしてのこだわりを見せ六甲のおいしい水は売れ続けている。

| | Comments (2) | TrackBack (1)

2008.12.27

おしらせ:「公開研修」やります!

今日は読者の皆様にお知らせです。

クイックウィンズ株式会社の主催で、公開セミナーの講師を務めることになりました。
同社は「インサイトナウ」(http://www.insightnow.jp/)というサイトを運営しており、私のこのBlogの記事もほぼ毎回転載をしていただいています。
マーケティングだけでなく、人事や調達、会計など様々な分野のスペシャリストが集っているサイトなのです。

そのクイックウィンズ社が各スペシャリストを講師としてセミナーを開催しています。
マーケティング領域のトップバッターに私が指名をいただきました。

タイトルは「話題のあの企業をマーケティングのフレームワークと顧客視点で読み解く!」です。

セミナーといっても、そこはカナモリのこと。受講者をいじらねば気が済みません。
一方的な「講演」ではなく、インタラクティブレクチャーによって、受講者が自ら「気付いて学ぶ」ことを目指します。
そして、グループワークも行います。
全く異なる企業・業種の参加者が5人程度のグループを作って、与えられたテーマについて討議し、決められた時間の中で結論を出してプレゼンをしていただきます。

検討するための「フレームワーク」はマーケティング全体の体系に沿ってきちんとレクチャーしますので、初めての方でも討議に後れを取ることはありません。

「話題のあの企業」はできるだけ新しいケースを取り上げようと考えています。
「あ、このまえ新聞読んだ!」「ニュースで見た!」ぐらいの、鮮度の良いネタを、参加者同士で「ヒットした理由」を分析してみましょう。
フレームワークがアタマに入ると、自分の業務に役立つことはもちろん、日々、新聞やニュースを見ることが楽しくなりします。

さて、こんなにお得なセミナーですが、お値段はたったの7,000円!
さあ、年明け早々に、会社で「研修参加申請」を上司の方に提出しましょう!

あ、まだ参加を悩んでいるか方がいますね。
では、スペシャルプレゼントです。
ご参加の方には、もれなく、「カナモリとの握手権」を差し上げます!
・・・いらないって・・・。
じゃなくて、研修後は参加者同士、異業種交流会にもなる懇親会付きです。
さあ、もう参加しない理由はない!(テレビショッピング風のつもり)


というわけで、開催日時は
1月28日(水)13:30-17:30 (16:45から懇親会)
場所は新橋汐留(金森の事務所のメチャクチャ近所です)。
ヴィラフォンテーヌ汐留 会議室7・8(東京都港区東新橋1-9-2) です。

詳しくは、以下のセミナー案内ページをご覧いただき、フォームからお申し込みください。

http://www.insightnow.jp/events/seminar0128

あ、一つだけ注意点です。
グループワークをちゃんとやるために、人数制限をしました。
ご参加いただけるのは、たった25名だけなのです。
スミマセン。先着順です。

では、お会いできることを楽しみにしています!!



| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.12.24

伊藤園「ウオーター グリーンアップル」の挑戦

ファミリーマートの飲料のショーケースで見知らぬ商品を発見。早速購入し、一口飲んでみると衝撃の味が。さらにラベルの栄養成分表示にはなんとも不思議な事実が記載されていた。なぜ、そんなことに・・・?

商品は「ファミリーマート限定」とされて販売されていた「伊藤園・ウオーター グリーンアップル」。ミネラルウォーターに、ほのかなフレーバーを加えた「フレーバーウォーター」というたぐいの製品であることが推測できる。
同様な名前を冠した製品には「ボルヴィックフルーツキス グリーンアップル」が思い出される。ふわりとした軽やかな香りが開栓と同時に広がり、ジュースのような甘さとは全く異なる、ほのかではあるけれども、ボルヴィックの硬度60という軟水の特性をより飲みやすくする甘さとすっきり感が口中から鼻腔に抜ける。いつも水ばかり飲んでいて飽きたときに、ちょっとした気分転換ができる秀逸な製品だと思う。

さて、伊藤園の「ウオーター グリーンアップル」はというと、開栓と同時に「これは青リンゴです!」との主張をもった香りが漂ってくる。口に含むとさらに「青リンゴ」は強力な主張を増す。但し、その「青リンゴ」は例えるならば、「青リンゴガム」の味と香りだ。しかし、これはジュースではない。あくまで「フレーバーウォーター」。青リンゴの味と香りはするものの、青リンゴの存在を明確に感じるほどの強さはない。さらに例えるならば、青リンゴガムを噛んで、その噛んでいる途中で水を飲んでしまったときの舌に感じる味と鼻に抜ける香りとでも言えばいいのか。失礼ながら、中途半端な感が否めない。

しかし、驚きはその味と香りだけではない。改めてラベルを見る。「果汁10%未満」「砂糖・甘味料不使用」と明記されている。中途半端と思ってしまったが、青リンゴの味と香りは天然成分であったのだ!

「ボルヴィックフルーツキス グリーンアップル」の原材料を見てみる。
<ミネラルウォーター・転化糖・砂糖・酸味料・香料・保存料(安息香酸Na)>
大まかにいえば「水と砂糖と香料と保存料」だ。爽やかな味と香りを演出しているのは、問題のある成分ではないものの、自然志向の消費者にはあまりうれしくない名前が並んでいる。

では「伊藤園 ウオーター グリーンアップル」の原材料はというと、ラベルに栄養成分表示として記されている事項から推測する。<エネルギー・たんぱく質(0g)・脂質(0g)・ナトリウム(0mg)・ショ糖>とある。
わざわざ<※ショ糖は全て果実に由来するものです>とまで表記してあるので、あくまで天然成分にこだわったのであろうことが推測できる。ラベルの注意事項には<時間の経過により、液色が変化したり、果実の成分が沈殿することがありますが、品質には全く問題がありません>との但し書きがある。

これは、「フレーバーウォーター」ではないのかもしれない。
伊藤園はミネラルウォーターでは、カルピスから引き継いだ「エビアン」がある。エビアンをベースとした「フレーバーウォーター」ではなく、「低果汁ウォーター」とでもいうべき新たなカテゴリーを、ファミリーマート限定で実験的に展開していると言うことなのではないだろうか。実験商品である証拠に、同社のWebサイトの製品一覧にその記載がない。ニュースリリースも出ていない。

もっと驚くべきことが栄養成分表示から読み取れる。
<エネルギー 10~31kcal・炭水化物 3.5~7.0g・ショ糖 0~1g>・・・何と、幅があるのだ。
余談だが最近、宿泊価格に幅のある表示があるホテルに、実際の価格は幾らなのか問い合わせたところ「少し高めに表示してあるのと、季節の繁閑の差によって変わるので、オフシーズンの今なら一番下の料金の”だいたい6掛けぐらい”です」と言われてあまりのユルさに笑ったことがある。
ホテルなら季節の繁閑で、果実なら季節による熟成度の違いで、数字にある程度のユルイ幅ができるのはしかたがないという同様の事象なのだろうか。
「ウオーター グリーンアップル」の成分に幅があるということは、季節によって旬があって、美味しい時と、そうでないときがある?もしかすると、製品ロットによって、美味しいボトルと、ハズレのボトルがあるとか?
「ウオーター グリーンアップル」はこれはれっきとした工業製品である。製法上、仕方のないことなのだろうか?それを推してまで「低果汁ウォーター」という新たなコンセプトの製品を開発し、テスト販売に踏み切ったということだろうか?

今までにない、イノベーティブな製品を開発することは容易なことではない。
消費者からのアンケート調査も使い物にならない場合も少なくない。「まだ誰も見たことのない商品」を語れる消費者はそう多くはないからだ。
その場合、何を寄るべきよすがとして、製品開発を行うのか。伊藤園は自社の事業理念に回帰したのではないかと考えられる。
「コーポレートブック」を見てみよう。
http://www.itoen.co.jp/company/corporatebook/inv.pdf

<ひたむきにお客様のことを考え、人々の生活に潤いと健康を届けるため、「自然」「健康」「安全」「良いデザイン」「おいしい」という5 つのコンセプトで製品づくりにチャレンジし、新たな可能性を追求し続けております。>

「ウオーター グリーンアップル」の場合、最後の「おいしい」は、まだビミョーな気がするのだが、砂糖・甘味料不使用で、果汁にこだわり、添加物も使っていないところをみると、「自然」「健康」「安全」というコンセプトに沿って開発がなされたものであると考えられる。

ちょっとビミョーナ味の「ウオーター グリーンアップル」は、既存の「フレーバーウォーター」とは異なる、「低果汁ウォーター」ともいうべき道なき道を歩み始め、イノベーションを起こそうとしているのだろう。筆者としてはエールを贈りたい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.12.22

「内定取り消し問題」大前健一先生に反論!

大先生に反論をするのはどうにも度胸のいることだけれど、今回ばかりは看過したくないので一言いってみたい。

大前氏が主催する「ビジネス・ブレイクスルー」のSNSと連動した「AGORIA(アゴリア)」のメルマガを毎朝拝読している。短いながらも世相のことや、ワークスタイルのこと、そして大前語録などが紹介され、非常にためになる。

昨日のテーマは「内定取り消し問題」であった。
<経済の悪化を理由に、内定を取り消しとなる学生が増えていますが、これに対し、大前は。「少し大袈裟すぎる」と感じているといいます>。とある。さすが、大所高所からものを見る大コンサルタントは視点が違うなぁと思いつつ、先を読む。
<内定取り消しの対象は数百人。何万人という規模であれば話は別だが、今回の規模のことを考えるとここまでせけんで大騒ぎをするほどのことではない。とのこと。>とある。どうにも看過できない違和感がある。
そして<もし自分が今回の内定取り消しを受けた学生の立場だったら、「早めに対処してくれてよかった」と感じると言います。試験を受けてみる、別の会社を受けてみるというように、まだこれから再チャレンジができるから、だそうです>。

賛同できない。2つの方向から見てである。
大学で「ベンチャーマーケティング論」を教えてる。3・4年生が対象であり、まさに就職活動に必死になっていたり、就職前の段階にいる学生たち相手だ。少し前までは「売り手市場」ではあったものの、彼らが本当に必死で活動している姿をずっと見てきた。色々相談にも乗った。その努力が一瞬で無になる事態に「再チャレンジするいい機会だ」などとはどう考えても言えない。

学生の側からだけではない。企業側にとっても「内定取り消し」は大きなリスクがあると言わざるを得ない。就活学生のネットワークは横にも縦にも広がっている。内定取り消しをした企業は、来年度以降、また景気が回復した以降も学生たちからその事実を忘れられることはないだろう。優秀な学生の確保が困難になることは必定だ。

新入社員を採用しないというリスクも大きい。バブル経済崩壊以降のいわゆる「失われた10年」で企業は新規採用を控えたり、採用人数を極度に絞り込んだ。その10年間、採用が手控えられて結果、ニート、フリーターとならざるを得なかった若者も多く、非正規社員としての雇用が増えたのは社会的な問題だ。
一方、企業内部では年齢人員構成に大きなゆがみを抱る事となった。いつまでたっても後輩や部下がいない「ぺーぺー」のままの社員。教育も十分与えられていない。それか、「いざなぎ越え」といわれた好景気期に大量の新入社員が採用され、「部下の指導ができない先輩・上司」という問題を生んだのは記憶に新しい。内定取り消しは新人が入ってこないという問題とイコールだ。また同じことが繰り返されるのである。

人員削減は新人採用の手控えや、「派遣切り」などの非正規社員の削減、または若年層の削減などが行われることが多い。しかし、その慣行は大きな間違いだ。
筆者の会社員時代、業績の低下に伴って人員削減が検討されたことがあった。ご多分に漏れず、派遣・契約社員、若年層がターゲットとなった。当時、筆者は部長職にあったがその階層のメンバーは結束が堅く、「切るなら上から切れ」と会社に詰め寄ったものだった。
米国ほどではないが、階層の社員と上級職の社員の給与格差はかなり大きい。上級職員は本当に給与に相当した働きをしているのか。まずはそこから見直すべきであろう。希望に満ちて春を待っている内定者を切り捨てる前に、まずやることがあるはずだと考えた次第だ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.12.19

キリン スパークリングホップ:「これはビールではありません」というポジショニング?

ニンジンが嫌いな子供に母親は、その形状が見えないようにみじん切りや、すり下ろして料理に混ぜ込むなどの苦労をして食べさせる。そこで好き嫌いがなくなればよいのだが、そんな苦労をしても、子供から大人に成長すると食べなくなってしまう人も少なくない。
やはり、人は嫌いなものはどうやっても食べないのだ。ましてやそれが嗜好品だったら・・・。

かつてビールと言えばキリンであったものの、アサヒスーパードライのヒット以来首位陥落し、現在、発泡酒シストをしていると言っていいだろう。
<キリンは発泡酒、第3のビールでは合計48.6%のシェアを持ち、2位のアサヒ(22.9%)を圧倒している。一方、ビール単体のシェアでは28.9%と、アサヒの50%の半分程度(2007年データ http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz07q2/529996/ )>
しかし、その発泡酒を含めて、ビールカテゴリーともいうべき飲料から客離れが続いている。主たる離反層は若者だ。

キリンビールが2004年に行った調査を見てみよう。
<「20代のお酒の飲み方」に関する調査結果>
http://www.kirin.co.jp/company/news/01/15/041006_2.html
<好きなお酒ではビール(28%)がトップながら、カクテル(25%)、チューハイ
(17%)の人気が肉薄>とある。また、98年の調査と比較し<チューハイ、カクテルの人気が高まっている>と危機感を募らせ始めた。

その動きはさらに進行した。今年の中間決算ではサントリーを除く各社が、販売計画を下方修正した。
<若者のビール離れが進む? 販売計画も下方修正>
http://www.j-cast.com/2008/08/06024766.html
<価格の安い発泡酒や第3のビールにお客が流れていることが指摘されているが、最近では若者がビールを飲まなくなったともいわれている>という要因が主に指摘されている。
<キリン食生活文化研究所が4月にまとめた「新社会人の飲酒意識と仕事観」に関する意識調査によると、社会人1年生に「ふだんよく飲むお酒は?」と聞いたところ、自宅で飲むお酒のトップはチューハイ、飲食店ではカクテルだった。ビールは自宅で第2位、飲食店では第3位だった>という。

ビールのコクや味わいを追求してきたキリンビールが、「キレ」や「鮮度」という新たな価値観を持ち込まれ敗退。価格優位性がある発泡酒に牙城を築き、一矢報いたものの、その発泡酒すら飲まれなくなってきたという状況が今日だ。

発泡酒はビールの代替として、「いかにビールらしい味わいやのどごしを再現するか」に注力されていたのが事実だろう。しかし、その味自体が忌避されるようになってしまっては、全く新たなポジショニングを取る以外に生き残りの路はない。
そしてその答えが「キリン Sparkling Hop(スパークリングホップ)」なのだろう。昨年10月に発売され、今年の11月26日にリニューアル発売された。
http://www.kirin.co.jp/brands/sparklinghop/index.html

ニュースリリースを見てみよう。
http://www.kirin.co.jp/company/news/2008/0924_01.html
<【味覚特長】 ニュージーランド産ホップのフルーティで華やかな香りをさらにグレードアップさせるとともに、よりすっきりした軽快な味わいに仕上げた >とあり、<【コンセプト】 香りまで楽しめる、心地よい刺激の新ジャンル。さらにフルーティに >だという。
明らかにもはや、「ビール代替」というポジションではなく、<新ジャンル>としてのポジショニングを明確にしている。「ビールが嫌いなら、ビール味のものは飲んでいただかなくて結構。新たな味わいを提案します」ということではないだろうか。

飲んでみると「Sparkling」という部分をいかに強調すべ くモノ作りをしたかがわかる。分かりやすくいえば、「ポップフレーバーのスパークリングワイン」といった風情なのである。軽やかな口当たりと爽やかに広がるホップの香りが清々しい。
これならビールを飲まない人にも新しい飲料として受け入れられるのではないだろうか。シャンパンを「甘すぎる」と感じていた人にも受け入れられる可能性もあるだろう。CMでも繰り返し表現されている、「くるくる」という動作を導くキーワードも、わかりやすいのに新鮮だ。この言葉一つで、商品を介したコミュニケーションがその場に生まれるだろう。
アルコール度は5%と若干低めといった程度だが、度数以上に軽く感じられる。

シャンパン、ワインにレモネード。パーティーやイベントで飲まれる「ビールより洒落た」飲み物市場に、発泡酒ならではの低価格で投入されたスパークリングホップ。ハレの場で味を占めた若者が、「コンビニでチューハイとおつまみ買って、ちょっと一人で家飲みしよう」というケの日常習慣の中に組み込んでくれれば…という意図ではないだろうか。

ニュースリリースをもう一度見ると<【パッケージ】 ホップのフルーティさ、弾ける炭酸感を伝える現代的で新しさ・正統感を感じさせるデザイン>とある。正統感という意味では確かに麒麟が描かれているが、文字を見るとかつてキリンビールの製品では見たことのないフォントが使われている。缶自体もシャイニーだ。「現代的な新しさ」を演出しようという意図だろう。その意図はCMや販促物にも徹底されている。


嫌なものはどうやっても食べない。その当たり前なことに立ち返り、鮮やかなポジショニングチェンジをして、メインターゲット新たな提案を行った「キリン Sparkling Hop」。今後の売れ行きを見守ってみたい。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.12.18

あなたは「ありがとう」と言えていますか?

年の瀬が近くなると、なんとなく今年の出来事を振り返ってみたくなる。様々なことがあった。大きな事件も。
しかし、筆者がずっと気になっていたのはごく小さなコトなのだ。
ネット上では割と大きな話題になり、様々な議論がなされたコトではあるけれど。

YAHOO知恵袋に書き込まれた一つの問題提起。今年の2月頃のことである。
<店員に「ありがとう」と言う人が大嫌い。おかしいのでしょうか。。。>
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1114818296

<会釈ならいい>のだが、<なんで声に出す?>という疑問。
<知り合いでも何でもないのに、馴れ馴れしくない?>という感覚だという。
そして<私自身、コンビニでバイトしてたときに、「ありがとう」と言われたことあります(関西の発音の人が多かったような。。。)
正直、内心で「友達でもないのに何様?」と思ってました。別にお礼言われるようなことしてないし、と。>
しかし、こうも言う<でも年配の方とかが笑顔で「ありがとう」と言ってくれたら素直に嬉しい。この気持ちは何でしょう。。。>

比較的、最近知り合った人がいる。ちなみに、奇しくも先の書き込みにあった「関西の人」だ。
彼と一緒に仕事をして行動を共にして気がついたことがある。
「ありがとう」だ。
書き込みにある<関西の発音>なので、関東の人間からすると、こころもち、「ありがとう」の「と」の音がすこし強くなる特徴的な発音で、大きな声で「ありがとう」を言う。
まさにコンビニでも、商品を受け取るときに「ありがとう」と大きな声で言う。

筆者もコンビニや様々な店舗で商品の受け取りや、釣り銭の受領時に礼を言う方だ。しかし、彼を見ると決定的な違いに気付かされた。
自分は、おずおずと、小さな声で「どうも」などと言っているだけだ。
これではいけないと、彼と知り合ってからその態度を改めようと、大きな声で「ありがとう」を言ってみるようにした。しかし、まだ何かが違う。
声の大きさなら自信がある。講師業をしていると、大きな声が出せるようになる。腹式呼吸によって、腹から声を出す。喉でしゃべっていては長時間持たないので、自然に身についたものだ。
しかし、問題は声の大きさではないようにも思えた。大きな声で「ありがとう」を言っても、相手に伝わっていないように思えたのだ。

再び、彼と会って営業に同行した。途中、店に入り彼の「ありがとう」を聞いた。
意外にも声は大きくなかった。
そして、自らとの決定的な違いが発見できたのだ。

きちんと相手を見ている。
忙しいコンビニの店員と目を合わせるのは難しい。先の書き込みにあるように店員自身が、礼を言われるとも思っていないかもしれない。しかし、釣り銭や商品の授受の際に、ほんの一瞬目が合う時がある。その瞬間に「ありがとう」の言葉を大きな声で発しているのだ。

YAHOO知恵袋の書き込みは「ベストアンサー」に選ばれたこんな書き込みで収束している。
<「ありがとう」を言った人の表情、声の感じ、雰囲気など瞬間的に察知してしまいます。同じ言葉でも年輩の人の言葉が良く感じられるのは、言葉だけでなく、表情、声のコントロールが上手になるからだと思います。
若い人の「ありがとう」の軽さ、日本の文化だと言うのなら、言葉の重さっていうのを、理解して発して欲しいんです。
ありがとうを言うのはいいことでが感謝の意を表す、趣きのある言葉あってほしいとも思うのです。
ありがとうが形だけのものになってしまわないように。>

名言だと思う。さすがにベストアンサーに選ばれただけのことはある。
そして、関西の彼にできていて、筆者にできていなかったことの本質を突いている。
筆者の「ありがとう」は<形だけのもの>、つまり形骸化した謝辞であったのだ。
その証拠に、相手を見ていなかった。

「ありがとう」の語源をひもとくと、「有り難し」にあり、枕草子には「この世にあるのが難しい」、つまり「過ごしにくい」という文脈で用いられている。そして、仏教の教えではその「過ごしにくい」世の中で、仏の慈悲で「自分では得難いものを得ている」という仏への謝辞で「ありがとう」が用いられるようになってきたとされている。

人と人とのつながりが、ますます希薄になっていく昨今、仏にすがりたくもなるが、まずは人として本来当たり前言葉である、「ありがとう」をきちんと言えるようにしたいと思った次第である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.12.17

スターバックスが「らしさ」を失いつつある理由

スターバックスの大ファンであるが故に、何度もその問題点を指摘してきた筆者であるが、ある記事で問題の本質に触れることができた。その記事の要点を元に、再度、ここで警鐘を鳴らしたい。

スターバックスが初のアジア圏進出を果たしたのは1996年のこと。日本第一号店は銀座松屋の裏の小さな2階建て店舗だった。エスプレッソを主体とした「シアトルスタイル」と呼ばれるカフェの新規性がウケ、多くの客がつめかけた。筆者もその一人である。
以後、破竹の勢いで出店攻勢が続き、新たなカフェの形態の先駆けとして隆盛を誇ったのである。

スターバックスの成功のヒミツは何であろうか。
それは、今まで満たされていなかった顧客ニーズを見事につかみ取ったことだ。
96年当時は、旧来の「喫茶店」は衰退し、ドトールやベローチェに代表される新興の「低価格カフェ」が伸長していた時期だった。
マーケティングの4P的にいえば、提供される製品は旧来の喫茶店はサイホンで淹れたり、様々な工夫をしていたが、低価格カフェは機械で淹れる簡便なものだ。コーヒーのラインナップとしては、双方とも「ブレンド」か「アメリカン」ぐらいのバリエーションである。
価格は旧来の喫茶店が500~700円。低価格カフェは150円~180円。
それに対して、新たに日本に上陸したスターバックスは、エスプレッソマシンで淹れるコーヒーに、様々なフレーバーやトッピングを施し、最初のうちは客がうまくメニューを選べないほどのバリエーションを展開して見せた。その魅力的な商品を、「本日のコーヒー」であれば280円。トッピングやバリエーションを指定してもだいたい500円弱という中間価格帯で提供したのだ。

では、スターバックスの価値、言い換えれば「らしさ」はコーヒーのバリエーションと価格だけの魅力なのであろうか。いや、そうではない。
スターバックスという「商品」を構成する魅力は、ぞのコーヒーを淹れる従業員も要素の一つだ。「バリスタ」という社内資格を取得しなければコーヒーを入れることは許されない。創業の理念を共有し、技を磨き、明るく顧客対応をする。これは世界共通の同社の魅力であり、「らしさ」の中核をなすものであろう。

魅力的な人材が活躍するには、最高の舞台も重要だ。店舗。客の側から見ればむしろこちらがコーヒーという商品と同等以上に重要な要素かもしれない。旧来の喫茶店の、どこか垢抜けない店舗とも、低価格カフェにおけるカウンターのスツールに腰掛けると、両隣の客と肘が触れてしまうような狭さとも異なるゆとりの空間。
ゆったりとした椅子やソファー、テーブル間の距離も十分取ってある。さらに照明や店内音楽、壁に掛けてある絵画にまでオシャレさに気を遣って、「店内空間も付随期機能としての商品価値の一部である」と十分認識された設計であった。

前文の文末はあえて、「であった」とした。過去形だ。今、スターバックスでこの原稿を書いている。狭い。隣の客の体温が伝わってくる程の席の詰め込み方だ。かつての各店に置かれていたソファーなど跡形もない。たまにソファーのある店も見かけるが、数が少なくなり、そこに座れたためしはない。安らげない。下手をすると、かつて商標をめぐって訴訟問題になった、模倣的存在であるエクセルシオールカフェの方がゆったりしている店も多い。

商品を構成する価値構造において、「付随機能」は、それがなくとも「中核価値」に影響は及ぼさない。この場合の中核価値とは美味しく、様々なバリエーションが楽しめる、適正な中価格帯のコーヒーである。
しかし、「ゆとりの空間」という、スターバックスの「らしさ」を構成する付随機能がどんどん失われ、詰め込み型の店舗ばかりが増えていくのは事実だ。価値構造の一部が失われていっている。その原因はどこにあるのかといつも考えていたが、ある記事でようやくその理由がわかった。」

<スターバックスに“死角”はあるのか?(Business Media 誠)>
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0812/08/news011_2.html

記事によると、ブルー・マーリン・パートナーズの山口揚平氏は以下のように指摘する。
<日本と米国のスターバックスの間には「○○年○○月までに、これだけ出店しなければならない」という契約がある。契約内容を見ると、日本での出店数が目標を下回った場合、不足店舗分のライセンス料を米国のスターバックスに支払う必要がある>という。

つまり、「出店目標ありき」なのであったのだ。「なぜ、こんな場所に?」と思わざるを得ない狭小な場所にも出店がなされるようになった。どう考えても「ゆとりの空間」は確保できない。「いつでもどこでも、スターバックスを楽しめるようにかなぁ?」などとも思っていたのだが、どうにも納得ができないでいたが、ようやく得心がいった。

「米国との契約」は大切かもしれない。しかし、米国においては強気の出店攻勢が裏目に出て、大減益に陥り、店舗も大幅な縮小を余儀なくされている。
日本市場においてはまだまだ成長基調にあるが、前出の記事で山口氏は<出店すればするほど出店ペースは鈍化していく。そこでライセンス料などの契約によって、収益が悪化する可能性が高い>と指摘している。

スターバックスの熱烈なファンとして言いたい。「ゆとりの空間」という付随的であるが「らしさ」を構成する重要な要素を失わないで欲しいと。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2008.12.16

派遣切り「2009年問題」・事務職は大丈夫か?

熟練労働者の大量定年を迎えるにあたり、いかに技術伝承をするかということがテーマとなった2007年問題の話ではない。景気後退に際して派遣社員の計画期間満了に伴って、契約を大量の実質的失業者が出るという問題だ。しかし、それは製造業の現場だけではなく、事務職のサポートを行う派遣社員にも飛び火しているという現実がある。


「派遣」という言葉は、2007年には流行語大賞にもなった。新しい雇用形態として注目され、多くの労働人口がその雇用形態に移行した。
今日、いわゆる「正社員」ではない「非正規雇用」の社員は320万人が存在するという統計がある。その労働環境の中で、景気後退の影響が「非正規雇用社員」(そもそもこの言葉自体、筆者は非常に好まないものではあるが)を直撃している。
「2009年問題」とは、製造業への派遣期間の上限である3年の契約期間の満了が、2009年に一斉に到来することにより、従来の派遣契約をそのまま続けることは許されなくなるため、製造派遣の現場での大混乱が予想される問題を表わしている。そもそも、事の発端は、<2004年の労働者派遣法の改正によって、これまで認められてこなかった製造業への労働者の派遣が認められるようになった。派遣期間について、当初は1年間という制限が設けられていたが、2007年の同法改正によりそれが3年間へと延長になった。その後、2006年に発覚した偽装請負の問題が起こり、製造業界側は何かと規制が厳しい請負から派遣へ労働力をシフトをした。(Wikipediaより)>という経緯がある。

つまり、2009年問題を考えると、製造業の現場にフォーカスされることが多いのであるが、2009年を待たずにすでに現在進行形で、景気後退に対する企業の防衛策として事務職における「派遣切り」が行われているという事実がある。そして、「新しい雇用形態・働き方」として「派遣」が最も注目された2006年からの3年間の期限切れを迎えるのが来年、2009年であるのは製造現場と同じだ。

製造現場においても派遣労働者の担う役務重要なものであることは間違いないが、事務職の現場における派遣労働者の役目は、いわゆる「ホワイトカラー」のサポートとして欠かせない戦力となっている。従来より経済や経営学の問題として指摘されてきたことではあるが、日本のホワイトカラーの労働生産性は世界的に見ると低いとされている。その原因や解決方法は別途論じることとして、それを補っているのが、派遣労働者のサポートであると今回は定義したい。またここに同様に、企業が有期で直接雇用している契約社員も同義で加えるべきだろう。

様々な職場で、派遣労働者は、「縁の下の力持ち」的に数多くの事務サポートを行っている。今回の3年間の期間満了において契約切れとされるような人材は、3年間、様々な気働きで正社員をサポートしてきたのだろう。派遣労働者の定着率は3年間を待たずして利殖する者も多い。それを3年間勤め上げているということ自体、評価に値するといっていいはずだ。

その、ある意味「熟練派遣労働者」が、今日の景気後退に伴う経費削減という企業の防衛策で切り捨てられようとしている。しかし、それはあまりにも浅薄な選択肢ではないかと筆者は思うのである。
筆者の専門領域であるナレッジマネジメントの観点から指摘してみたい。

前述の通り、事務サポートを行っている派遣労働者は、正社員の陰となり、様々な業務をこなしてきた。そして、その多くは「マニュアル」や「手順書」などに記されていない(そもそも、ホワイトカラーの業務にはそうしたものが存在していないことが多いのだが)業務である。そして、派遣社員が辞める時には、正社員の知らぬところで派遣社員同士で簡単なメモと口伝で引き継ぎが行われる。数日間、派遣社員同士でOJTという形での引き継ぎが行われる例もあるようだ。そこで、暗黙的なナレッジの継承が行われているのである。

2007年問題における熟練労働者のナレッジ継承はどのようにおpこなわれてきたのだろうか。企業によって様々であるが、筆者は米国において開発された「シャドウイング」という手法を提唱し、同様な手法をとった企業も多かったと聞く。

バックナンバー:<毎日新聞社「週刊エコノミスト」2007年問題特集>
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2005/07/2007_cb00.html

端的に言えば、熟練労働者の技術を伝承するためにアナリスト張り付いて、熟練の技を観察し、一挙手一投足を余すところなく記録し、分析し、形式知化するとという手法である。

このように、2007年問題においては極めて慎重に行われてきた「暗黙知の伝承」が、今回の2009年問題においては、極めて短絡的に契約延長をしない、つまり実質的な解雇というだけの、突然の断絶という現象を引き起こしている。
「暗黙知の伝承」が全くなされる気配がない。その根底には、「派遣社員が抱えている暗黙知などたかがしれている」という驕りがないだろうか。しかし、派遣社員は陰の存在として、様々なサポートをしてきた事実は無視できないはずだ。しかし、突然の実質的解雇では、正社員への引き継ぎが十分になされる気配もない。また、なされたとしてもかなり形式的なものに留まっているように見える。

ホワイトカラーのパートナーであり、サポート役である派遣社員、または契約社員も含まれるが、その「暗黙知」を軽視しない方がいい。
筆者として2009年を予想すると、この問題によって、ただでさえ生産性が低いと指摘される日本のホワイトカラーの生産性はさらに低下するだろう。低下だけではなく、混乱を来すかもしれない。
対策は、派遣社員や契約社員を切らないことだ。しかしながら、経費削減をどうしても行わなくてはならないのであれば、引き継ぐべき正社員に対して、引き継ぎを十分な期間を取って行うことである。そうすることによって、企業としては暗黙的なナレッジを含めた業務プロセスの逸失が防ぐことができるし、派遣社員・契約社員も新たな雇用先を探す猶予期間を得ることができる。
もしそれがなされなければ、2009年は景気後退の進行に加えて、職場の混乱という大きな問題が発生すると考えられるのである。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2008.12.11

手帳の高橋とED治療薬の相似点?

文房具、カッコヨク言えばステーショナリーマニアである。ちなみに、文房具屋の孫息子でもある。ヒマなときは文具の老舗・銀座伊東屋を訪れる。
しかし、今の時期、あまりの混雑で近寄れない売り場があるのだ。手帳売り場。商品棚にも人垣ができ、レジは長蛇の列。ちょっとパスしてしまう。もとより、筆者は青山学院大学が支給してくれる教員手帳を愛用しているので、手帳自体はここ5年ほど買ったことはないのだが・・・。
ただ、問題は教員手帳は4月始まりなので、世間様と少々季節・時間感覚がズレがちになる。普通の手帳に替えようかなとも思う。書店に行くと、手帳売り場が師走には設けられる。そこで必ず目にするのが「高橋書店の手帳」だ。
日記・手帳・家計簿・カレンダー・暦の書店シェア41.3%と圧倒的な強さを誇っている。

「手帳は高橋」。駅広告やテレビコマーシャルの大量投下をしているが、その内容が凄まじいことになっている。

何を主張してるかと言えば、『2009年高橋のは、大サービス!「来年はGW5連休」』『2009年の高橋は、大サービス!「秋も五連休」』。

・・・ちょっと待て。別に高橋がサービスして平日を赤く染めた訳じゃない。日本中の手帳、春と秋は全国的に5連休だ。
なのに「大サービス」と言いきるあたり、むちゃくちゃな自信だ。
なぜって、肝心の「手帳の性能」について高橋は全く言及していないのだ。自社の手帳については絶対的な自信があるからだろう。


テレビコマーシャルはもっとすごい。
<今年のコマーシャルは”あの曲”で手帳が踊ります>
http://www.takahashishoten.co.jp/takahashishoten_cm/index.html (広告画像・動画あり)

衝撃壱
古めのアヤヤ。「なぜ?いまこの曲?」と興味をそそり、Attention獲得。

衝撃弐
踊る手帳。「なぜ?手帳が?」と釘付け。Interest獲得。

衝撃参
「大サービス、5連休」
いや、確実に高橋のサービスじゃねぇ! と突っ込みながらも、そんなすてきな休日いっぱいな手帳、是非欲しい!とDesire獲得。

そして「手帳は高橋」とコール、もうわすれられない。Memory。

消費者の購買行動への態度変容を表わす「AIDMA」。Actionの 一歩出前迄揺さぶられてしまう。恐らく、書店で目にしたら少なくとも手に取るだろう。

しかし、「日本中の手帳、春と秋は全国的に5連休」なのに、なぜ、高橋はこんな主張をするのか。それは、圧倒的シェアを誇る「リーダーの戦略」である「需要創造策」に他ならない。
売り場に行かせ、手に取り、買わせれば、そのシェアのパーセンテージ通り自社の商品が売れるのだ。需要自体が伸びれば伸びるほど、売上げは自社が一番伸びる。

おかしな例だが、かつてファイザー製薬がED治療薬「バイアグラ」の増販のため、「疾病啓発広告」を大々的に行った。「こんなあなたはEDかも。ぜひ病院へ」と。病院に行きさえすれば、自社の薬が処方されるというわけだ。
現在、バイエル社が「レトビラ」、イーライリリー社が「シアリス」という新薬を上市しているがまだまだ寡占市場故、各社ともインターネットを中心に広告を積極展開している。

手帳とED治療薬、一見何の関係もないものだが、高シェアを誇るリーダー企業や寡占企業の「需要創造策」。そんな展開もあると思うと、広告もまた、新しい興味で見られるのではないだろうか。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2008.12.10

「バリューライン」で考える、ユニクロとH&Mの戦い

昨今の大幅な景気後退局面にあって、なおも好業績を叩き出しているユニクロ。その力の源泉は何なのだろうか。また、銀座、原宿の店舗オープンから長蛇の列を形成したH&M(Hennes & Mauritz:ヘネス・アンド・マウリッツ)は、SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel:製造から小売までの垂直統合型アパレル事業)という同じ業態をとていることから比較されることが多いが、両社の目指しているものは何なのだろうか。

ユニクロの好業績は各紙が伝えるところであり、株価もストップ高だという。
<ユニクロの驚異的な伸長を高評価>
http://zai.diamond.jp/servlets/Query?SRC=zai/news/top&newsid=7617

同紙の記事でも<衣料品業界ではユニクロの1人勝ち状態が鮮明>としているように、11月度締めの各衣料品販売会社が軒並みマイナスの業績を発表している中、32.2%成長は驚きである。
その要因を<家計消費が抑制傾向にあるなか、機能性を兼ね備えた「ヒートテックインナー」、「プレミアムダウンジャケット」といった低価格商品を相次いで投入する同社が1人勝ちの様相を呈している。きわめてシンプルな営業戦略>と分析しているが、しかし、そのようなシンプルな構造ではないように筆者は思うのだ。

そもそも、ユニクロが成長の軌道に乗ったのは1997年頃のこと。SPAという業態は、米国GAPが1986年に発表したものであるが、ゆにくろはその時期に一気にSPAに業態転換をした。そして、成長の原動力となったのは、「プロダクトフォーカス」と呼ばれる戦略だ。定番商品に絞り込み、大量ロットで生産。大量の広告展開によって需要を喚起し、全量を残さず販売する。結果として低価格で高品質な商品提供ができる。
当時も景気は低迷しており、衣料品は前年比30%減益という大きな地盤沈下をしていた。
ロードサイド店を中心として、業績を伸ばし、成長軌道に乗った同社は97年に東証二部上場を果たした。豊富なキャッシュを手に入れ、それまでのチラシ中心の広告宣伝からメディア戦略に転換。長野オリンピックではユニフォームを提供し、98年には原宿に出店するなど、一気に注目度を高めたのである。

前述の通り、同社の力の源泉は「プロダクトフォーカス」であるが、その効果がどのようなものであるのか、もう少し詳しく考えてみよう。
「バリューライン」という考え方がある。横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取る。すると、「安くてそれなりの価値のもの(安かろう、悪かろう)」「そこそこの価格で、ほぼ妥当な価値のもの(市場相場的価値)」「高くて価値の高いもの」という比例した関係が出来上がる。これがバリューラインだ。消費者は市場価値と自らに提供される価値の相関で、価格を判断している。このバリューライン上のどこを選択するかは、消費者自身の価値観による。
当然、バリューラインを下回る、例えば「中間的な価格で価値が低い」ようなものは、市場から撤退を余儀なくされる。しかし、バリューラインを上回るものは、消費者の支持が得られることになる。例えば「低価格なのに中間価格と同等の価値=グッドバリュー」「低価格なのに高価格のものと同等の価値=スーパーバリュー」という存在になる。
ユニクロの場合、その「価値」は「品質」ととらえていいだろう。同社の生産拠点の多くは中国であるが、その生産管理へのこだわりは凄まじい。製品は全て全品検査がなされる。抜き取り検査ではない。生産現場は手抜きは不可能だ。ある大手アパレルメーカーの幹部は「品質へのこだわりでいえば、もはや大手ブランドでもユニクロにはかなわない」ともらした。
そして、ユニクロの新たな「価値」が新素材へのこだわりだ。人気の「ヒートテック」のような、人の体温を利用した、薄く暖かいインナーウエアは他の大手スポーツブランドも上市している。しかし、価格が何倍も違う。同等の機能で、何分の一もの価格で提供する。それを可能にするのも一つの技術である。冬物だけではない。夏の定番「ドライカノコポロ」は汗の吸湿性とさらさら感にこだわった素材づくりをして、毎年改良が加えられている。ユニクロの強さは、バリューラインのまさに「品質と技術という価値の軸」で「グッドバリュー」もしくは「スーパーバリュー」のポジションを消費者から獲得しているからなのである。

では、同じSPAという業態で比較されるH&Mはどうなのだろうか。H&Mもバリューラインを超えることによって、消費者からの高い評価を得ているのは間違いない。しかし、その縦軸がユニクロと同じ「品質」ではないことは、店頭で商品を見たり購入したりした人なら誰でもわかるだろう。決して悪口を言うつもりはないが、その素材の品質、縫製の精度はかなり低いといわざるを得ない。質感としてはひとシーズン着られればいいかというレベルだ。仕上げの手間もほとんどかけておらず、通常の店舗であれば考えられないような、シワクチャな状態で商品が並んでいる。
では、なぜにあれほどの人気を誇るのかといえば、「デザイン性」「ファッション性」に他ならない。自社Webサイトでも<H&Mのコレクション製作には、約100のデザイナーがバイヤーとパタンナーと協力して取り組んでいます>と豪語する。また、「コム・デ・ギャルソン」のデザイナー川久保玲氏とのコラボレーションライン「エイチ・アンド・エム コム デ ギャルソン」などの話題の商品も手軽な価格で手に入る。「定番」で勝負するユニクロに対し、同じデザインの増産は決してしないのも特徴だ。

以上のことから考えると、「ユニクロ 対 H&M」という構造は成立しないことがわかる。バリュープロポジション(value proposition=競合に真似できない自社独自の顧客への提供価値)は、ユニクロの「品質」とH&Mの「ファッション性」を同質にとらえることはできない。つまり、各々のブランドを選んでいる顧客は、バリューラインの縦軸である「価値」を全く異なる要素として評価し、「グッドバリュー」もしくは「スーパーバリュー」のポジションにあるブランドとして選択しているのだ。
ユニクロとH&Mは戦っていないのである。

安価で気軽に着られる服を表わす「ファストファッション」という言葉が生まれて数年が経つ。景気の低迷はますます、消費者の低価格志向を促進するだろう。
しかし、ただ安いだけでは支持されない。あくまで「品質」を高めるか。「ファッション性」を目指すか。競合関係にあるか否かは別として、ポジショニングと提供価値の明確さが勝ち残りの必須要件になっていることは間違いない。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.12.08

値下げ戦略の効果を考える

景気失速に追い打ちをかけるモノの値上げラッシュ。しかし、逆張りの戦略で勝負を賭ける企業もいくつか現れてきた。その効果の程を考えてみたい。

先週、大きな話題になったのが「西友」の「比較値下げ戦略」だ。
<西友:チラシ見て「他社より高ければ値引き」 4日から>
http://mainichi.jp/select/biz/news/20081204k0000m020035000c.html

<西友は3日、他社のチラシに掲載された特売価格が西友よりも安い場合に販売価格を引き下げる「他社チラシ価格照合」制度を全387店で4日に始めると発表した>。
家電量販店などではこれまでにも行われてきた手法であるが、スーパーでは初の施策だという。
西友は大手スーパーの中でもプライベートブランド(PB)商品の比率が10%程度と低く、他店と比較しやすいナショナルブランドが多いからこそ、「いつでも地域で一番安い店」という「エブリデー・ロープライス(EDLP)」をアピールできる戦略に出たのだろう。
正直、地域のスーパー、特に地元の中小零細はたまったものではない。何といっても、西友は米ウォールマートの子会社である。その調達力が遺憾なく発揮されることになるだろう。

しかし、この戦略も万全ではないように思う。チラシをつぶさにチェックし、一円でも安い商品を探し、複数の店を渡り歩いて買い物をする客。いわゆる「チェリー・ピッカー」を呼び込むことは間違いない。さらに、どの商品でも必ず安いのであれば、一般の客でも取り込めるだろう。しかし、同じ価格だったらどうか。チラシと比較して、意外と安くなる商品が発見できなかったら、結局は馴染みのスーパーに戻っていくのではないだろうか。
また、混んだレジで店員(チェッカー)にチラシを提示し、値引き要求をするのもなかなか勇気がいるのではないだろうか。実際に、昨夕、西友に行き30分ほどレジを見ていたが、値引き要求をしている客は発見できなかった。
意欲的な取り組みであるが、効果を発揮するかはまだ微妙な気がする。

直接的な値下げではないが、実質的に値下げを行う手法について考えてみよう。
いくつか同時に商品を購入すると、一つが無料になるというしかけがある。例えば2つで1つ分の価格で購入できる「Buy One, Get One Free」などという手法だ。
これにはいくつかの狙いで実施される場合があり、一つは低関与度商品をまとめ買いさせる効果だ。半額にしたのでは、なくなったら他社商品を購入してしまう。しかし、2つ買わせ、使用しているうちにその商品に慣れさせて、次回の指名買いを狙うのだ。また、一旦値下げしてしまうと、値段を元に戻すのは容易ではない。しかし、一つが実質的にタダになるとはいえ、価格はそのままに据え置いている点もメリットだ。キャンペーンとして、一つ無料を終わりにしても、価格は元のままということである。

この「Buy One, Get One Free」はBOGOと略してマクドナルドが以前、よく行っていた。
チキンナゲットを一箱買うと、もう一箱無料というしくみである。ナゲットを一人で二箱平らげる猛者もいるが、これは二人以上の客を狙ったトライアル促進である。ナゲットをよく食べる客が、もう一箱を手に入れて、人に勧めることを狙っているのだ。実質的な半額値引きであるが、単純な値引きによるトライアル促進より遙かに効果が高いだろう。

吉野家も実質値引きとも取れるキャンペーンを展開している。
<吉野家 師走の「くいてえー!」祭り 3杯食べたら1杯無料>
http://www.yoshinoya.com/shop/campaign/index.html
牛丼1杯食べる事にチケットを1枚もらえ、3枚たまると次回の1杯が無料になるとのこと。
「同時に3杯食べればもう1杯無料」はさすがにムリ。なので、3杯食べれば、その次が無料になるというしかけだ。
目的は何だろうか。2008年9月末の国内店舗数においてゼンショーの運営する牛丼チェーン店「すき家」が1,087店となり、吉野家は1,077店を抜き去った。「店舗数だけの話!」と吉野家ファンの声もあるが、チェーン展開において店舗数は一つのチカラの象徴だ。店舗数において劣後すれば、強固な吉野家ファンでなければ、目の前に「すき家」あれば、「まぁ、こっちでもいいか」と思ってしまうだろう。
「くいてー!」は結局、4杯の牛丼を食べることになる。ファンのロイヤルティーをより強固にし、浮気をさせないための施策であることは明らかであり、単なる実質値引きではないと解釈できる。

この経済的な逆風かにおいて、値下げは消費者に大きなインパクトを与える。しかし、そのインパクトを受けるターゲットはどのような人なのか。それはその人にとって、どのように魅力的に映るのか。
価格はマーケティングミックス(4P)の一要素だ。しかし、4Pの前に、ターゲットとそのターゲットにどのように魅力を打ち出すかというポジショニングを考えることは欠かせない。値下げ戦略もその部分の設計がキモなのである。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.12.05

冬の京都・人気のヒミツを探る

今、冬の京都がアツい。いや、冬の京都は寒いのだが熱い視線を送る観光客が大幅に増えているのだ。それは、JR東海が「そうだ、京都に行こう」と頑張ってキャンペーンを続けてきたから・・・だけではない。寒くて人が呼べないという逆境を武器に替えたそのヒミツとは?

京都の人気スポットといえばどこでしょうか?
<嵐山人気、清水寺に迫る 京の観光地 首位争い白熱 >
http://www.kyoto-np.jp/article.php?mid=P2008113000027&genre=I1&area=K00

地元紙、京都新聞が伝えている。記事の写真はまだ紅葉の頃であるが、熱い戦いは冬にも続く。やはり「アツい」のだ。
<トップの清水寺を、長く2番手に甘んじてきた嵐山が追い上げている。温泉やライトアップなどの魅力づくりに加え(以下略)>と伝えるとおり、京都の集客は大混雑する紅葉の季節にも、さらに集客を伸ばすために工夫が繰り返されてきた。寺社仏閣も拝観時間の延長など協力を惜しまない。

しかし、問題は冬だ。盆地の京都は底冷えがする。「地球温暖化だから大丈夫でしょう」などとナメてはいけない。さむいものは寒いのだ。どうしても不要不急の観光は腰が重くなる。
その観光客を京都全体で魅力を演出し、引っ張ってきているのが今日の成功をもたらしているのである。
前出の嵐山の温泉は<嵐山復活へ2004年に地元旅館が共同で開発した>という。
さらに見事なのは「京都・嵐山花灯路(はなとうろ)」である。<昨年12月に100万人近くを集めた>というから驚きだ。
参道を清掃し、打ち水し、灯籠を灯す。路面に明かりがほんのり反射し、路全体がぼうっと照り映える。竹林の小道にも灯籠が灯る。昼間の深閑とした薄暗い路も、暖かな光に満ちる。その幻想的な雰囲気は、全国の各観光地で行われる絢爛な発光ダイオードのイルミネーションと比べると、いかにも日本の雅な灯りで心和む。

頑張っているのは嵐山だけではないし、その効果は限定的なものではない。<市内観光客数が増えているため、拝観者数は昨年度、過去最高の500万人台に乗った>といい、清水寺は<「嵐山の人気が再び伸びてきたことは京都観光の底上げにつながり、非常に喜ばしい」と余裕をみせている>という。
冬の京都は市内各所で非公開文化財が特別公開されることでも有名だ。普段見られない非公開文化財の特別公開や多彩なイベントが目白押しなのである。

見るだけではない。「食」はどうだ。京都は冬の食べ物が美味しいことでも知られている。いた、特別なものでなくてもいい。メジャーな「湯豆腐」であっても、休みが取りやすいからという理由で訪れる暑い真夏ではなく、本当にあったまる事を実感できる季節に食してこそ、その本当の味わいがわかるというもの。さらに「酒」。人気なのが「冷やおろし」だ。春に誕生した新酒がひと夏を越してよい熟成酒になったこの冬に呑む。166年の歴史を持つ木下酒造に杜氏として迎えられた、フィリップハーパー氏の手による「玉川」。まったりと濃厚な旨味はアツアツの湯豆腐と合わせるならロックでもいける。

おっと、呑み喰いに筆がそれたが、ともかく、冬の京都は街全体で魅力を演出し、寒さで腰の重くなった観光客にアピールし、呼び寄せることに成功しているのだ。小さな心配りもなされている。京都をめぐる人力車。その座席には必ず毛布が用意され、乗客に対する温かさのもてなしを忘れない。

地域活性化や観光振興など、自治体が大きな資金を投じて行っている例は全国に散見される。しかし、誰かが旗を振るだけではダメなのだ。観光資源がある京都ですら、季節的なハンデを克服するため努力を積み重ねている。学ぶものは大きいだろう。

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2008.12.04

「価値構造の転換」映画を上映しない映画館・歌わないカラオケ

<映画館で会社説明、劇的効果>
http://company.nikkei.co.jp/news/news.aspx?scode=8053&NewsItemID=20081024NKE0480&type=2

シネコンの経営不振に対して設備稼働率を上げるための目的外使用。そう言ってしまえばそれだけなのだが、実はこうした動きは、設備産業において散見される。
しかし、思いつきでやってもうまくいくものではない。
<住友商事は九月末、子会社が運営する映画館「ユナイテッド・シネマ豊洲」(東京・江東)で会社説明会を開催した。大スクリーンと音響システムを使って映画の予告編さながらの映像を上映し、住友商事の八事業部門を紹介>とある。
参加した学生からの学生がこの施策の本質的な効果を示している。<座り心地が良くて眠そうだった学生も「映像や音がすごい迫力で目が覚めました」と感心していた> と。

別の動きもある。<ワーナー・マイカル、企業イベントで映画館「貸し切り」>
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081107AT3K0600Y06112008.html

<映画館をイベント会場などとして企業に貸すサービスを始める。第1弾として、11月にさいたま市と埼玉県羽生市の映画館で製薬会社主催のセミナーを開く>他にも<主婦向けのセミナーや学生向け会社説明会など幅広い目的での利用を見込む>という。

映画館というものの製品特性を分析してみる。中核価値は「映画が見られる」である。しかし、昨今、レンタルDVDもあり、ホームシアターも普及している。しかし、それらではやはり太刀打ちできない「迫力のある音響と大画面」が価値の実態だ。さらに、売店で購入できる様々な飲食やグッズが付随機能となる。
上記施策で面白いのが、「稼働率向上」という大テーマのために、「中核価値」を捨てていることだ。主に「実態価値」の部分を武器にビジネスを再活性するという、「価値構造の転換」をしているわけだ。

このような例は他にもある。例えば「カラオケボックス」。若者を中心としたカラオケ離れが一時顕著になっていたが、昨今、再活性化している。しかし、誰もが従来のように利用しているわけではない。また、設備側も工夫をしている。
ポイントの一つは「カラオケを歌う」という中核価値を場合によっては捨てた利用を受け入れていることだ。
利用されているシーンを少し見てみよう。稼働率の低い平日の昼間。ある部屋では、何と、会議やプレゼンが行われている。「個室」という空間はサービスの「実態価値」である。さらに、映像設備も実態の要であるが、今時の映像を映す液晶には、今時ほとんどPCの入力端子が付いている。しかも、結構画面が大きい。余裕でプレゼンができる。飲み物を個室に持ってきてくれるという「付随価値」も便利だ。
平日の昼下がり。ある部屋では若い主婦グループがランチを取りながら談笑している。やはり歌っていない。黎明期のカラオケボックスには乾き物のフードしかなかった。しかし、いつしか「付随価値」として登場し、むしろサービスの「実態価値」ぐらいの重要なファクターになってきた。その部分を利用しているのだ。さらに、「個室・防音」。子供が騒いでも周囲に気にすることもない。
日曜の昼間。楽器を持ち込みバンドの練習をしているグループがある。カラオケマシンは「中核価値」であるが、それを使わずに、音楽用のパワーアンプという設備を「中核価値」に置き換え、「個室・防音」という実態を活かして音楽スタジオ兼用施設としているのだ。

製品特性を意識することは、自社の製品・サービスのどこに重点を置くのか考えることに重要な役に立つ。しかし、新しい製品やサービスを考えるときには、その価値構造を組み替えたり、どこかを排除してみたり、または極端に拡張してみたりすると新たなアイディアが生まれるのだ。

さて、ついでにもう一つ。屋形船。昨今、「焼き肉屋形船」なるものも登場しているらしい。
「屋形船といえば、天ぷらでしょう!」と考えがちだ。確かに、船頭が揚げてくれるアツアツの天ぷらは美味しい。が、それはあくまで「付随価値」ではないだろうか。焼き肉であっても全くかまわない。むしろ、目新しさが受けているのだろう。

どのような企業もこれから固定観念を排除して生き残りをかけていかねばならないのだ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.12.03

クラブハリエ・行列のできるバウムクーヘンと製造会社のヒミツ

各地に店舗があるものの、どこも長蛇の列ができる大人気のバウムクーヘン、「クラブハリエ」。購入するまでに1時間近く待つことも珍しくないが、食した瞬間に「今までのバウムクーヘンのイメージが全く変わった」と多くの人が絶賛する。
その人気の秘密は何といっても、同社の職人が手間暇かけて焼き上げた味わいにあるのだが、果たしてそれだけだろうか。

知っている人は知っている豆知識。「クラブハリエ」( http://clubharie.jp/ )の母体は、滋賀に本拠地を置く和菓子の「たねや」。( http://taneya.jp/ )
和菓子店の洋菓子部門がクラブハリエであり、そのメインたる大人気商品がバウムクーヘンというわけ。

和菓子から洋菓子への進出。その成長戦略は、例えばアンゾフのマトリックスで考えれば、どう解釈できるのか。和菓子しか食べない!という頑なな人でなければ、顧客層は重なる部分も多いだろう。だとすると、既存の顧客に新しい商品を提供する「新商品開発」という成長戦略のパターンだ。
同様の和菓子から洋菓子への進出で人気商品を開発した例でいえば、「銀座あけぼの」の「銀座イチゴ」もあるが、たねやは「経営シナジー」を発揮している点もさらに注目できる。

事業会社内での人材や経営ノウハウを活かすことを「経営シナジー」という。
たねやはグループ内に「菓子職人訓練校」を抱えている。単なる企業内の研修制度ではない。
1998年に滋賀県知事より認定されている職業訓練認定校である。和菓子・洋菓子と製法は異なるものの、菓子作りという土台の上でここでもシナジーが発揮でき、さらに職人を創り出し、囲い込むこともできる。成長戦略のパターンとしてはかなり手堅いことがわかるのである。

企業風土も特筆すべきものがあるだろう。滋賀を拠点とするため、近江商人の「三方よし」の考え方が種谷の底流にはあるのだろう。クラブハリエで出される商品にならないバームクーヘンの両端は、養豚場の飼料としてリサイクルするなど、環境意識も高い。和菓子の原料を生産する農薬や化学肥料を使わない農園経営をし、地域には自然と触れ合う保育園の経営で貢献する。根強いコアなファンづくりに貢献していることは間違いない。

グループとしての魅力づくりだけで、あのバウムクーヘンの行列ができているわけではない。そのバックグラウンドを知らない人も多いのだから。では、バウムクーヘンの人気の秘密をもう少し掘り下げてみよう。
コトラーの製品特性分析3層モデルで考えれば、誰もが虜になるその「味」は、間違いなく中心としての価値「中核」だ。
さらに、夕方あたりにいいにおいを漂わせ、大げさにバウム クーヘン焼いて見せる。いわばおいしさの「見える化」である。そしてそこで活躍しているのは「菓子職人訓練校」の出身者なのだろう。クラブハリエのWEBサイトでは<バームクーヘンを焼き上げる技を身につけるには、熟練した菓子職人でも3年から5年の歳月が必要>と言い切る。その商品と職人の動きの「見える化」は、その味を作り上げるに欠かせない製品特性の第2層目である「実態」だ。
コトラーの定義によれば、製品価値の中核には影響を及ぼさないが、あればさらに魅力を訴求できる「付随機能」が第3層目の価値と定義できる。この場合、「パッケージ」がそうだ。クラブハリエのバウムクーヘンを購入すると、そのしっかりしたパッケージやリボンに驚かされ、「捨てられない」とするファンも多い。また、そのファン自身によるパッケージデザインコンテストなどの話題喚起も非常に効果的である。( http://www.taneya.jp/newyear/2009/ :今年度は終了)
このように、コトラーの3層分析で考えても、あたかもバウムクーヘンが幾重にも層をなしておいしさを形成するが如く、しっかりと価値構成がなされているのである。

最後に付け加えるならば、積極的な他店舗展開に加え、通信販売への注力が上げられるだろう。並ばなくても替える自家用に、ギフトにと、片手間ではなくたねやグループには「通販本部」が組織され、<15時までのご注文は、翌日中にお客様のお手元へ。美味しさをそのままにお届けいたします>という体制が整備されているのだ。さらに美味しいというクチコミ促進に貢献しているのは間違いない。

たまたま、何かのメディアに取り上げられ行列ができる店は数多い。しかし、一見客ばかりで結局は忘れられるケースは枚挙にいとまがない。
「マーケティング」とは「売れ続けるしくみ」である。行列のできるバウムクーヘン・クラブハリエと製造会社であるたねやにマーケティングの妙を見た。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.12.02

「東京ばな奈」の売れ続けるヒミツはなんだ?

「最後尾はこちら」のプラカードが掲げられている。ディズニーランドではない。東京駅のコンコースの真ん中。お土産売り場だ。並んでいる人々の目当ては「東京ばな奈」。
(ちなみに、ここまで書いて驚くのは、この原稿は一太郎で書いているのだが、変換はATOKが動いている。何と、「とうきょうばなな」と入力すると、一発で「東京ばな奈」と変換される。なんとメジャーな東京ばな奈)。
・・・話を元に戻そう。
景気が大きく後退している今日、人が列をなして買いに行く店などごく限られている。少し前なら、銀座、原宿と続けて出店し連日長蛇の列を作ったアパレルのH&Mか、忽然と表参道、渋谷に現れた黒船バーガーを装ったクォーターパウンダー(実はマクドナルド)かというところ。
しかし、「東京ばな奈」は最近話題だということではない。発売は1991年。年間売上げは40億円を誇るという。
この秋に実施されたインターネット調査gooランキング<旅行のときに買って行きたい、東京駅ナカお土産ランキング>でも、ダントツの一位を獲得し、「もはや東京土産の定番」と評価を得ている。
http://ranking.goo.ne.jp/ranking/013/ekinaka_present/

しかし、自分用の菓子に千円も二千円も払うことはそうないだろうに、土産と思うと、かくも列をなして買うのはなぜだろう。主力商品の東京ばな奈「見ぃつけたっ」は、8個入りで1,000円、16個入りで2,000円。1個125円の計算になる。

土産の用途とは何だろうか。大別すれば、お土産を「大切なあのひとにあげたいな」と思う「ピュア土産」。お客さんや深い付き合いのない知人ではあるけど、見下されたくな い相手への「見栄土産」。何もなしでは格好つかないから仕方なく持つ「義理土産」。そんなところだろうか。
東京ばな奈に列をなす人々は老若男女、家族連れ、カップル、出張客などなど、種々雑多。その人々が様々な理由で求めていくのが「東京ばな奈」なのだ。
東京土産としての「東京」を明確に主張するネーミング。1つあたり125円という、安すぎず高すぎない価格。そして、主力の「見ぃつけたっ」だけではなく様々に展開された派生商品のバリエーションも魅力なのだろう。

ウィキペディア(Wikipedia)の東京ばな奈の項には<老若男女誰にでも喜ばれる味ということでバナナが採用された>とある。
マーケティング的に考えれば、ターゲティングが明確でない「老若男女誰にでも喜ばれる」ような商品はなかなか売れないように考えられる。しかし、年間40億円。列をなす人々が現実にいるのだ。

万人受けする味と、絶妙なネーミングとプライシングが、「ピュア土産」「見栄土産」「義理土産」という購入動機のいずれにも適合した妙といえるのだろう。
「最大公約数的な商品は売れない」とつい考えがちだが、その反証の事例が目の前にあることにも注目すべきだと、土産売り場で少し学んだ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2008.12.01

フィットネスクラブがピンチだ!

相次ぐ値上げラッシュの中で、フィットネスクラブの大手も値上げに踏み切るようだ。原油価格の高騰や電気料金の値上がりを吸収しきれずに会員に転嫁するとの判断であるが、果たして大丈夫なのだろうか?

<フィットネスクラブにも値上げの波 原油高騰など理由>
http://www.j-cast.com/2008/11/27031099.html

報道では最大手のコナミスポーツ&ライフとティップネスが各々315円の値上げと伝えている。コナミスポーツ&ライフは2度目の値上げだという。

値上げで心配されるのは顧客離反だ。特に、フィットネスクラブの利用は必需品ではないため、不景気による消費者の生活防衛意識が高まりる中では、切り捨てられてもおかしくない存在だからだ。

顧客が受け入れられる価値を「カスタマーバリュー」という。その価値に見合った価格の設定が欠かせない。それに対して、原価志向の価格設定は、自社でかかる固定費・変動費にどれだけ利益を上乗せするかという考え方になる。今回の値上げは、どちらかというと原価志向を反映した決定ではないだろうか。
この場合怖いのは、カスタマーバリューを原価志向で決定した価格が超えてしまった場合である。企業側で考えた価格が、顧客の値頃感を上回ってしまうことになる。例えば、今年、カップヌードルがメーカー希望価格を15円値上げした。結果的には店頭価格が30円値上がりし、100円を超える値段で売り出された。結果は値上げ前月比-56%の売上げダウンだった。つまり、カップ麺のカスタマーバリューは100円を超えてはいけなかったのだ。
315円の値上げ。たかが、それくらいの金額とは言っていられない。フィットネスクラブのカスタマーバリューを超えていないか。その金額の多寡の問題だけでなく、閾値を超えていないかが問題なのだ。

プライシングでもう一つ留意すべくは競合の価格だ。大手同士が揃って値上げということだが、代替となる存在があれば、そちらに顧客は流れてしまうかもしれない。
例えば女性専用のサーキットトレーニング・ジム「カーブス」。設備を絞り込み、トレーニングをセルフサービス的に提供するビジネスモデルは、消費者の低価格志向を見事にとらえ会員をどんどん伸ばしている。カスタマーバリューの閾値を超えてしまえば、「別にプールがなくたっていいか!」と割り切ってスイッチするユーザーも多くなるだろう。

さらに気になるのが、「幽霊会員」の存在だ。筆者にも身に覚えがあり、忸怩たる思いがあるのだが、入会金を払って月々の会費を払っているにもかかわらず、なかなか足を運ばない会員は実は相当数に上る。現実に全ての会員が押しかければ、設備的には破綻するはずなのだ。フィットネスクラブに限らず、会員サービスは活性度の低い会員に支えられているビジネスモデルでもある。その「幽霊会員」が、値上げの報に「この際やめちゃおう!」と思う可能性は低くない。

政治の世界に目を移せば、消費税率のアップが論議されているが、必ずセットで考えるべき歳出削減の議論が非常に希薄である。企業の値上げも、原価上昇を吸収ししれないという苦しい事情があるのかもしれないが、値上げの前に今一度、思い直すことが必要なのではないだろうか。「入りを生じて出を制する」がビジネスの基本なのだ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« November 2008 | Main | January 2009 »