「六甲のおいしい水・その成長戦略とこだわり」:定番のヒミツ第11回
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同誌に連載中のコラム「定番のヒミツ」第11回が掲載されています。
「ミネラルウォーターなんてみんな同じ」と思っていませんか?
いやいや、「売れ続けている定番」には、ちゃんと「売れ続けるヒミツ」があるのです。
さて、それは・・・?
以下、記事転載。
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世の中には常に売れ続ける「定番」と呼ばれるものがある。なぜ定番は売れ続けることができるのか。当連載はその謎をマーケティングのセオリーから考察する。
「六甲のおいしい水・その成長戦略とこだわり」
現在、広く普及しているような、ペット容器にミネラルウォーターを充填し販売するというしくみを作ったのはハウス食品株式会社だ。商品は「六甲のおいしい水」。発売は1983年のことである。
同社は飲料メーカーではなく、食品メーカーだ。それ故、小売店の棚を確保することも困難なスタートを切った。しかし、主力商品のカレー売り場の横で「カレーと一緒に」とアピールしたり、ご飯を炊くための水として米売り場の横に置いたりと、徹底したクロスマーチャンダイジング策で普及を図ってきたのである。
経済学者のイゴール・アンゾフは、企業の成長戦略を4つにパターン化した。既存の顧客を対象にするのか、新規の顧客を狙うのか。既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのか。顧客・製品、新規・既存の掛け合わせの4パターンだ。六甲のおいしい水という製品を用いてハウス食品が展開した成長戦略は、飲料単体で購入する新規顧客を狙うのではなく、自社にとっては既存顧客である「食品購入客」を狙っているところに特長がある。つまり、新製品を既存の顧客に販売する成長パターンで、しっかりとした顧客基盤に展開したことが成功のカギであったのだと解釈できるだろう。
国民1人当たりのミネラルウォーター消費量は1986年の年間0.7リットルから、2006年には18.4リットルへと拡大した。(日本ミネラルウォーター協会調べ)その分、外国勢、国産入り乱れてライバル商品も数多くなった状況であるが、六甲のおいしい水は独特のこだわりでファンをしっかりと確保している。
「神は細部に宿る」という言葉がある。六甲のおいしい水のペットボトルの上部には、「水」を表わす点字と「>|<」という記号が浮き出るような表面処理がなされている。視覚障害者向けの点字表示は様々なところで用いられるようになっているが、停電や災害の時などに、点字が読めない健常者でも暗闇で「水」が判別できるような工夫がなされているのである。神戸という地に拠点を置き、震災を経験したからこそ考えられた配慮である。
ミネラルウォーターという差別化の難しい商品ではあるが、日本におけるパイオニアとしてのこだわりを見せ六甲のおいしい水は売れ続けている。
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ミネラル水って本当に差別化が難しいでしょうか? コーヒーやカレールーのように混合物が多く混ざっていると、そのコーヒー豆やスパイス単体が旨いのか不味いのか私には分かりません。
しかしながら、味の無いミネラルウォーターは個人個人でボルビックが好きとかエビアン、コントレックスが好きだと理解した上で買っているんじゃないでしょうか。
Posted by: 大関 | 2008.12.29 11:24 PM
大関さん、コメントありがとうございます。
ちょっと、以下のサイトを見てみてください。
http://www.tepore.com/koe/060126/index.htm
特に、下の方の「こだわり派」の自由回答による、購入理由が面白いです。
私はセミナーや研修で、毎回ミネラルウォーターのボトルを持っている人に、それを選んだ理由を聞いてみているのですが、中にはおっしゃるように「銘柄の指名買い」をしている人もいます。
海外の硬水にこだわる人は「指名買い」が多いようです。
また、比較的価格が安く、どこでも手に入るという理由で、ボルビックやクリスタルカイザーを選んでいる人も見かけます。
「○○さんがダイエットに良いとテレビで言っていたから」と高価なものを買っている人もいました。
このように、マーケティングの4P的な要素で、差別化し指名買いされている例も多くあります。
しかし、指定銘柄なしの「たまたまそれを選んだ」と回答する人が、過半を占めるのも事実です。
たぶん、「指名買いのポジション」を獲得するまでが大変なのだと思います。
その意味からすると、「六甲のおいしい水」は初期段階での顧客獲得と、製品におけるこだわりの示し方(=差別化ポイント)がうまいなと思い、取り上げた次第です。
たぶん、調べれば、他のミネラルウォーターでも同様な検証はできると思います。
以上、回答になっていますでしょうか?
今後ともご愛読いただけますようお願いいたします。
Posted by: 金森 | 2008.12.30 01:00 PM