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14 posts from November 2008

2008.11.27

アリガトウ

今日はとても個人的な話です。お付き合いいただける方のみ、読み進めていただければと思います。


本日、また一つ齢を重ねました。43才になりました。

孔子によれば「四十而不惑」、つまり孔子の考えに一点の惑いもなくなった年齢から、私は3年が過ぎていますがまだまだ迷ってばかりです。

ショーペンハウエルは「人はその生涯の40年間で本文を著述し、これにつづく30年間において、前者についての注釈を付加する」との言葉を遺しています。その意味からすると、私の本編は既に完結しており、注釈を綴っていることになるのですが、いささか事情が違うように思います。

人生の転機といってもいい独立をしたのが39歳の時でした。「本編」の最後に大きなエピソードが書き加えられました。あと数ページで終われる内容ではありません。
そして、さらに転機がやってきたのは、不注意で大怪我をした41歳の時。足を骨折し、1ヶ月半入院。完治に9ヶ月程度かかりました。幸い、仕事に大きな穴はあけませんでしたが、不自由な身体と頻繁な通院はできる仕事も限られ、現在に至るように仕事内容も大きく変わりました。

ルソーは「私達はいわば二回この世に生まれる。一回目は存在するために、二回目は生きるために」。と言いました。ある意味、その大怪我のあと、私は幾度目かの誕生を迎えたのかもしれません。
逆境だったと思います。今、この日にようやっと思い返せる余裕ができたのかもしれません。「明けない夜はないのだな」と思えるようになりました。
動けなくなったのを期に去っていった人もいましたが、多くの人に支えていただきました。
ありがとうございます。

その後に出会った人も数多くいます。その出会いにも感謝しています。
幾度目かの誕生以来、人との出会いに大切なものを感じるようになりました。
いま、お付き合いいただいている方々は私にとって、本当に大切な存在だと思っています。
ありがとうございます。

人生を振り返るには早すぎるし、「注釈」を書いているつもりもないのだけれど、大怪我から再起して、一年後、再入院して骨折治療ためのボルトを骨から抜いて、久々に身体にメスを入れていない一年を過ごして誕生日がきました。少し、振り返ってみたくなりました。

考えてみれば、どうやら私は43歳になって、ようやく純粋に人に感謝するということに気付いたようです。
遅すぎる成長ではありますが、「みなさま、ありがとうございます」。
今後とも、末永くよろしくお願いいたします。

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2008.11.26

グリコ「ウォーキーウォーキー」のコンセプトの妙

「コンセプト」はもはやカタカナの日本語ともいえるくらいに当たり前に使われる言葉になった。「コンセプトが固まらなくてね」などという会話もよく聞かれる。
しかし、実際にはコンセプトとはどのように考えればいいのだろうか。「製品コンセプト」の一例をご紹介したい。

ダイレクトマーケティングの父、レスター・ワンダーマンは「なぜ私に?に答えなさい」という名言を自著に記した。顧客に企業がアプローチするには、なぜ、オススメするのかという理由を明確にせねばならないということである。理由が明確でなく、疑問を抱けば必ず顧客はそっぽを向く。
ダイレクトマーケティングのアプローチではなくとも、企業が上市する製品についても同様のことがいえる。誰に向けた商品なのか。それを用いると、どのようないいコトがあるのか。それが伝わらなければ、売れない。

日経MJ11月21日号一面の囲み記事で、江崎グリコの「ウォーキーウォーキー」が紹介されていた。「<歩きながら食べるチョコ>お菓子のシーン広げる」とのタイトルだ。
同商品は、カップ入りのチョコレート菓子で、<缶ジュースのように片手でもって、粒状のチョコレートを口の中に流し込んで食べる新しい菓子>とある。<パソコンを触る仕事中や本を読みながらなど、手を汚したくないときでも食べられるのが好評>であるとのことで、発売以来2ヶ月、売り上げは好調のようだ。

この商品、記事では<歩きながら食べられることをコンセプトに開発した>とあり、<10~20代の若者に人気が高い>と分析されている。
しかし、結果として現在、若者に受けているのであって、「若者を攻略しよう!」と開発された商品ではないように思える。つまり、この商品はもっとすそ野が広がるように思えるのである。

製品コンセプトを「5W1H」的に考えてみよう。
「誰が、いつ、どこで、どのようにして利用すると、どのようなベネフィット(便益)があるのか」というフレームだ。
まず、「誰が」は「若者」ではなく、記事にあるように「手を汚したくない仕事や用事をしているが、ちょっと気分転換にお菓子を食べたい人」だ。「歩きながら」でも、手でチョコレートをつかんでティッシュで拭けばいいようなイメージではなく、何らか手がふさがっている時を想像した方がいい。その意味ではネーミングに若干の疑問が残る。
「いつ」は、誰がともかぶるが、「手が放せない用事の最中」だろう。
「どこで」は、ネーミングからすると「外出先で」となるが、「仕事や用事の席で」の方が需要がありそうだ。
「どのように」は、製品の特性である、「ふたを開けて口に流し込むようにして」ということになる。
そして、「ベネフィット」は「手を汚さないで手軽に食べられる」となる。
前述の通り、ネーミングとの若干の食い違いが、筆者個人としては感じられなくもないが、コンセプトがはっきりした、お手本のような商品といえるだろう。

景気の失速によって、消費者の商品の選択眼はますます厳しくなる。いかにコンセプトがはっきりしているかは、その選択眼にかなう最低条件だ。好事例として参考にしたい。

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2008.11.25

モノマネ「キターッ!」禁止からビジネスを再考する

織田裕二の「キターッ!」のモノマネを得意とする芸人・山本高広がピンチを迎えているという。しかし、それは他山の石として学ぶべきところがあると思うのだ。

山本高広はオモロイ。実は昔から織田裕二好きの筆者からみても、似ていて、ビミョーに似ていないモノマネはかなり笑える。しかし、織田裕二本人は笑えなかったようだ。

<山本高広が「キターッ!」と叫べぬ日が「キターッ」!?>
http://news.ameba.jp/domestic/2008/11/21717.html

<織田裕二の所属事務所から民放各局に「物真似を企画される際には、(真似される)本人のイメージを尊重していただくようなルール作りをお願いしたい」との通達があった><この通達は事実上の禁止宣告>とのことである。

記事にあるように年末年始の稼ぎ時を前に、大ピンチである。ネタを封印されたとあれば、出演のお呼びがかかるチャンスは極めて低くなる。以前はショーパブなどに出演し、生計を立てていたようであるが、現在はテレビ一本だというから収入も大打撃だ。
ファンとしては山本高広に何とかこの苦境を乗り切ってもらいたいと思うだが、それと同時に彼の現状から教訓をひとつ思い出したのである。

ジェラルド・M・ワインバーグの記した「コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学」という名著がある。1990年の発売以来、根強い人気を保ち続けているのは、ワインバーグがコンサルタントとして会得した課題解決のポイントが、惜しげもなく公開されているからだ。その内容は全てのビジネスマンに大きな示唆を与えてくれる。
さて、著者であるワインバーグの持論の一つに「一つのクライアントからの収益が60%を超えないこと」というものがある。当たり前といえば当たり前なのだが、収益源を単一にしてしまうとそれを失ったときのダメージが大きすぎるからだ。しかし、当たり前なのだけれど、つい、やってしまう。コンサルタントだけではない。営業マンはどうだろう。つい、通いやすい営業先ばかりに足を運んでしまわないだろうか。
もしくは、「一つのクライアント」というところを「一つの業務カテゴリー」や「売り物」と読み替えたらどうだろう。筆者はコンサルティングと講師の仕事をしている。正直、どちらかに集中した方が楽なのだが、あえてそれはしていない。性質の違う業務は収益構造も違う。そのバランスがうまく取れるからという理由からだ。

話を山本高広に戻そう。彼は織田裕二のモノマネ以外にもネタは持っているのであるが、ここのところ、ほとんどそれを披露していない。もちろん、番組が視聴者ウケのいいネタを集中的にやらせているという理由もあるだろうが、「キターッ!」以外ほとんど聞いていない気がする。
「60%」どころか、ほぼ100%依存していたネタを封じられ、大ピンチに陥る。
しかし、「あーあ、芸人は大変だ」とばかりいっていられない。ワインバーグの教えと共に考えれば、ビジネスの世界にも当てはまる教訓と考えられるだろう。

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2008.11.21

トヨタiQはマス広告離れを加速するのか?

発売前予約4,000台。それに貢献したのは従来型のマス広告ではない。ネットプロモーションが中心だという。

「2008-2009日本・カー・オブ・ザイヤー受賞」。11月20日の日経新聞朝刊にトヨタiQのカラー全面広告が掲載された。紙面を目にした時、内容よりもこの車種がマス広告に登場するのは珍しいなと率直に思った。

iQはトヨタが技術の粋を凝らして開発した世界戦略車であり、低迷する国内販売状況を打開する起爆剤としても期待されている車種である。
<トヨタiQ商品概要公式ページ> http://toyota.jp/iq/index.html

普通車1台のスペースに2台が駐車できるほどのコンパクトなボディー。全長が3メートル弱と軽自動車の規格より短いのに大人が4人乗れる。それを実現するために投入された技術はイノベーションのカタマリである。
しかし、iQに驚かされるのは技術だけではない。マーケティング手法も従来とは全く異なる。その展開は以下のアサヒコムの記事に詳しい。

<トヨタ超小型車「iQ」 ネットPRで予約4千台超>
http://www.asahi.com/car/news/NGY200811200016.html

YouTubeにトヨタ自らが動画をアップしたり、試乗会体験者のBlogに公式ページからリンクを張ったりと、かなり細かなネットプロモーションを展開した。そして、<新車発表から発売まで1カ月以上あけ、通常は発売後に始める、ネットを窓口にした販売店紹介を事前に実施。事前注文だけで、月間販売目標(2500台)を大きく上回った>という。

自動車専門誌などでは取り上げられていたものの、発売2ヶ月前から試乗会まで開催しているのに、iQはマス広告にはほとんど登場していなかった。つまり、従来の車と全く異なる広告戦略を取っているのではないかと考えられるのだ。

ネットプロモーションだけではない、トヨタとしては異例ともいえるゲリラマーケティングも先月展開し、大きな話題を喚起した。もちろん、その様子もYouTubeにアップされている。
<2008年10月20日~26日に、東京銀座ソニービルで行われた驚愕の空中ダンスパ フォーマンス。地上高30mの垂直のストリートを舞台に、人が歩く、踊る。>
http://jp.youtube.com/watch?v=sPrcNVtBwpo

こうした先鋭的な一連の展開は、「イノベーターの取り込み」という目的であることが推測できる。
iQが技術の粋を凝らした画期的なコンパクトカーであることは間違いない。しかし、その価格は140万円~160万円と決して安くはない。単純にコンパクトな車を求めるのであれば、軽自動車や、通常の排気量1リッタークラスの小型車を選択するだろう。
しかし、価格を超えても、この車に新しい何かの価値を感じて購入するイノベーター層も確かに存在したのだ。それが事前予約4,000台という実績につながっている。ネットプロモーションにゲリラマーケティングという展開が奏功したのだ。

しかし、革新的な技術や製品の普及には、「イノベーター」に続く、「アーリーアダプター」の取り込みが欠かせないと、E.M.ロジャースが「イノベーション普及学」に記している。
iQの次なる課題もまさにそこにあるのだろう。
では、アーリーアダプター層にiQを訴求していくとしたら、今度はマス広告を用いるのだろうか。 筆者はそうは思わない。アーリーアダプターはイノベーターよりもその技術や製品の特性をじっくりと吟味、評価して採用に至るという特徴を持っている。故に、現在の路線で、ネットを中心とした訴求やクチコミ促進でじっくりとiQの魅力を浸透させていく手段の方が有効ではないかと考えるからだ。

アーリーアダプターを取り込んだら、次の「アーリーマジョリティー」は比較的容易に獲得できるとされている。つまり、アーリーマジョリティーは、革新的な技術や製品をきちんと吟味、評価するアーリーアダプターの行動を見て、安心して採用に踏み切るのである。
そのあたりになると、マス広告での盛り上げも始まるであろうが、その段階では市場での評価がはっきりしているため、あまり大量の投下は必要ないはずだ。つまり、結果としてマス広告の総投下量は極めて小ささな結果となると予測できるのである。

発売前に、車のシルエットを「チラ見せ」するティザー(じらし)広告を展開し、発売日から一気にマス広告の攻勢をかけ、さらに週末のディーラーでの試乗会告知も展開する。
そんな、旧来の広告手法をiQは過去のものにしてしまったのかもしれない。

トヨタは今年の8月29日に北米市場の低迷を受け、マス広告費の3割削減を発表している。
<トヨタ、マスメディア広告費3割カット=自動車業界、一段の経費圧縮>
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200808/2008082900666
サブプライムショック以前の決定なので、さらに削減幅は増えるかもしれない。.
そして、それをiQの成功がさらに加速させることは間違いないと思われるのだ。

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2008.11.19

混ぜるなキケン

洗剤の使用上の注意の話ではない。
これは、モノゴト全般の話。
物事を「混ぜこぜ」にして考えると、わかるものもわからなくなる。

こんな広告を見た。「○○のプロショップオープン・どんな相談も承ります」。その道のプロとは頼もしいものだ。
しかし、オープン告知の横にこんな文言が。
「新規従業員募集」。・・・新規は従業員プロなのだろうか。もしかすると、プロフェッショナルを募集しているのかもしれないが、ともかく、オープン告知と募集告知は「混ぜる」ことなく、別々に行った方が見る者に誤解を与えないであろうことは確実だ。

上司が部下を叱っている。「おまえは指示したことを忘れすぎだ。だいたい、話を聞くときメモも取っていない。その態度がいかん。そういう態度だから、得意先からの信頼も低くなって、ほかの部員より売り上げも低い成績になっているんだ。」
「指示を忘れる←メモを取っていない」という因果関係の指摘はいいだろう。しかし、「態度が悪い」「顧客の信頼」「売り上げの低迷」の関連付けは明らかに論理の飛躍がある。そうした無理な論理を混ぜこぜにして諭したら、本人の納得考えられない。「指示を忘れないためにメモを取れ」という論点に集約して話をすべきなのだ。


「混ざっている」状態にも様々なパターンがあるが、混ざった状態から「分解して考えること」の効用を次に示そう。

例えあなたが個人経営の小さなスーパーのオーナーだったとする。月末に締めた売り上げの数字を見て頭を抱えている。今月もまた、「売り上げが落ちている」と。
さて、このまま売り上げの数字を眺めていても、事態は打開できない。「売り上げ」というものを、適切に「分解」指定いく必要があるのだ。
原因を推測してみる。駅前にできた大手スーパーに客を取られた影響が大きいのだろうとすぐに思い至る。
では、売り上げを最もベーシックに分解すれば「売り上げ=客数×単価」である。競合に取られているのであれば、客数にまず、注目したい。確かに減っているかもしれない。客を取られているのだろう。
客単価はどうだろうか。ここも減っていたとしたら、大手スーパーの安売りの影響が出ているのかもしれない。
ここまでは、ごく普通の「分解」だ。もっと「売り上げ」を低下の原因追究と打開策がわかる切り口で分解しなくてはならない。「時間帯別」に売り上げを分解してみる。すると、大手が進出してくる前に比べて、通勤客の帰宅時間に当たる時間帯の売り上げが減っていることに気づく。駅前立地を活かした帰宅時の買い物需要にやられているのだ。だとすれば、いつものチラシにその時間帯の「タイムセール」を告知してはどうだろうと考えられるあろう。
「天気別」で分解してみる。実は、雨の日の来店客数が依然と同様堅調であることがわかったとする。「雨の日に駅前まで行きたくない」という近隣客の維持が自然とできていたことが推測できるだろう。だとすれば、より近隣客の雨の日需要の囲い混みを図るためには、「雨の日セール」もいいだろう。
まだまだ、切り口はたくさん考えられるが、このように「分解」することで、様々なことが見えてくるのだ。

分解せずに「混ぜて」考えられている例は、気にしてみれば日々、枚挙に暇がない。
「ターゲットは30代男性」。よく聞く話だ。しかし、「30代」はもっと分解しなければ、すべてか同じ購買行動をとるはずもない。30歳と39歳は同じか?地域差はないのか?収入は?心理特性は?などなど。いくらでも分解できる。

分解して考えることは、ある意味面倒だし時間もかかる。しかし、あえてそれをしなければ、わかるものもわからない。そのためには日々のトレーニングが必要なのだ。

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2008.11.18

マクドナルドの戦略 と モスバーガーのこれから

表参道のクォーターパウンダーに行ってみた。12時少し前であったが、オープン当初、報道にあったほどの行列はなかった。

「クォーターパウンダー」は重さ4分の1ポンド(約113グラム)、通常の2.5倍の肉厚の牛肉パテが入っている。さらにパテ2枚の「ダブル」もある。
パテ2枚なら「ハーフパウンダー」では?などと思いながら、試してみるとかなりのボリューム。マクドナルド色を一切消して、新たに日本に進出してきたハンバーガーチェーンといった風情の店内のせいだろうか。味も通常のマクドナルドの味とは少し違う気がしてくる。

とはいえ、表参道と渋谷にオープンしたこのクォーターパウンダー専門店は、当初のプロモーションやアンテナショップ的な役割が強く、このメニューはマクドナルド通常店に12月には展開されていく。
<メガじゃない、高級志向 マックがプレミアムバーガー>
http://www.asahi.com/business/update/1115/TKY200811150217.html

それよりも、この商品をマクドナルドがこのタイミングで、この価格で上市したことに深い戦略があると思うのだ。

マクドナルドには「高級バーガー」で痛い目を見た過去がある。2004年の「マックグラン」だ。
「ハンバーガーの王道」と華々しくデビューした3つのハンバーガー、「マックグラン」「ダブルマックグラン」「トマトマックグラン」は、上昇気流に乗れず、1年ちょっとで撤退したのである。

しかし、今、時は満ちている。「メガマック」の成功によって、メタボ対策や、健康志向の高まりに対する反動であろうが、大きいものを好む層を確実に取り込んだ。
しかし、その層を確保するだけであれば、メガマックを続ければいいだけのはず。なぜ、クォーターパウンダーを上市させたのか。それは、アンテナショップとしての表参道・渋谷の店が表わすように、海外のマクドナルドで展開されている由緒正しいメニューであるというポジショニングを持たせることなのだ。ただの「メガマック」の親戚ではないと。

全国的にハンバーガーはブームであるのは確かだ。
各地の独自の食材を用いた「ご当地バーガー」や、高級食材を用いた「高級バーガー」など、全国チェーンのハンバーガーとは一線を画すメニューが人気を呼んでいる。
例えば、高級路線の老舗では、ハワイ生まれの「クア・アイナ」がそうだ。
そのクア・アイナでは、最もスタンダードな1/3ポンドのハンバーガーが850円。1/2ポンドは1050円だ。かなりのボリュームだが、値段もなかなかである。

筆者を含め、クア・アイナには根強いファンがいるのでマクドナルドと同列に並べられることを潔しとしないかもしれないが、あえてここでマクドナルドの価格戦略に注目してみたい。「クォーターパウンダー」が一般店で単品で発売される際には「ダブル」で400円前後になるという。
同じ土俵で比べるのはムリがあるかもしれないが、「海外で販売されている本格バーガー」というポジショニングの商品としては破格だろう。

実はこの戦い方はマクドナルドならではの「コストリーダー」の戦い方の典型だといえる。
コストリーダーは「高級バーガー」というような狭いカテゴリーで戦うことはしない。広い市場でコスト、つまり圧倒的な調達力を武器に戦う。
そして、リーダーの戦い方の得意技は「同質化」である。市場の中の目立った競合と同じような商品を上市し、圧倒的な販売力で競合の存在をかき消してしまうやり方だ。
さすがに、「高級バーガー」と言い切ることはしないし、全ての競合を消し去ることはできないが、消費者には「この値段でそこそこなら、まあいいか」と思わせてしまう効果はあるだろう。
つまり、今回の「クォーターパウンダー」はコストリーダーたる、マクドナルドらしい戦い方であると考えることができるのだ。100円マックや100円プレミアムコーヒーなど、低価格メニューの提供をしつつ、こうした同社としての高単価メニューを導入することによって、マージンミックスをうまく図っているのである。


対して、非常に心配な存在がハンバーガー市場にはある。
「モスバーガー」だ。

<売り上げが落ち込むモスバーガー、次なる一手は?>
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0811/12/news037.html

最終損益が2期連続の赤字となった同社。<モスフードサービスの櫻田厚社長は決算会見の席上、200円前後の低価格メニューの開発を進めていることを明らかにした>という。

モスバーガーも多くのファンを持っているが、その中からも味の低下、サービスの低下を嘆く声が高まっていた。そうした中、後発の「フレッシュネスバーガー」が模倣戦略に近い戦い方で追い上げて、現在は同社の方が勢いが良く思える。
その中で、あえて「低価格メニュー」に軸足を移すと、さらにファンの流出を招くことになる恐れが高いように思えるのだ。
コストを武器に戦えるコストリーダーは業界にただ1社しか存在できない。
先のリンク先の記事では<深刻な外食不況のなかで、快走を続けるのは日本マクドナルドやサイゼリヤなど、低価格を前面に打ち出した業態だ>と分析しているが、マクドナルド同様、サイゼリアも圧倒的な調達力を持つ「コストリーダー」である。

モスバーガーはやはり、ハンバーガー市場においてはマクドナルド、ロッテリアなどの大手に対するニッチャーとしての戦略に本来の強みがあったのだ。できたてにこだわり、ファストフードであることも拒否する。素材へのこだわり。二等立地にも足を運ばせるファンづくり。
確かに、この景気の低迷は消費者の価格に対する敏感さを一層高めている。価格調整を考えるものムリはないかもしれない。しかし、本来のポジションから考えると、「低価格メニュー」は一層、体力を弱め、顧客ベースを危うくするように思えてならない。


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2008.11.17

ポメラ日記

今日の記事はネットで話題騒然(というほどではないが)の「ポメラ」で書いている。
キングジム社が「デジタルメモ」と称するテキストエディタである。
http://www.kingjim.co.jp/pomera/

※お読みいただく前に、今日はおもいっきりマニアックな内容なので、
一般の方には面白くないかもしれないことを明記しておきます。

11月10日の発売初、新橋のヤマダ電気では即時完売で入手できず。
しかし、翌日、ヨドバシカメラ錦糸町店では、なんと在庫あり。
しかも定価27,300円が、22,000円に値引きされていた!なんという僥倖。即買いであった。

さて、この「ポメラ」の何がいいかというと、まず、起動の早さだ。電源キー一発で、わずか1~2秒で立ち上がる。
さらに特筆すべくは、電池の持ちのよさだ。単4乾電池2本で20時間も持つという。

ここまで書いていて気がつくのは、意外なほど、キータッチがいいことだ。
文庫本サイズの本体からバタフライ型に展開するキーボードは、フルサイズではないものの、キーピッチはストレスなく打てるサイズがある。慣れればミスタイプはずいぶんと少なくなるだろう。
キーのストロークもなかなか好みに合っている。名機ThinkPad的な深いストロークでカチカチと打ち込む快適さはないものの、メインマシンのLet's noteもストロークが浅めなので慣れているからかもしれない。
実際に、キングジムによるとキータッチはLet's noteを参考にしたという。
正直なところ、Let's noteよりはキーを押し込む感触が甘いのだが、まぁ、合格点は与えられるレベルだ。

画面はバックライトのない、モノクロの小さな液晶画面だが、コントラストがよく驚くほど見やすい。20年近く前に使っていたNECの98LTというマシンを思い出す。
暗いところではもちろん見ることはできないが、きちんと照明をつけたところで使えば、かえって目に優しいようにも思える。

ハード面のメリットだけではない、何といっても、変換がATOKなのだ。もちろん、パソコン版のATOKではないので、機能は限られているが、変換のアタマの良さは受け継いでいて頼もしい。変換がおバカだと、全く文章を書く気にならないからだ。サクサク適切に変換されていくのは何とも気持ちがいい。偉いぞ、ポメラ&ATOK。

ポメラはテキスト入力の機能しか持ち合わせていない。事務用品メーカーであるキングジムらしく、紙のノート代わりといったポジションなのだろう。
ネット上のBlogなどでは「何でネット接続ができないんだ!」という声が大きい。
さらにau携帯と接続させるようなハッキングをすでに行った強者もいるようだ。
<ポメラで保存したmicroSDのデータをauの携帯電話で見る方法>
http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0810/31/news063.html

時折、筆者は「ネット断ち」をする。
徹底して集中したい時もそうなのだが、アタマを完全に解放したいときこそ、ネットを見たくない。
しかし、何か思いついたときにはやはり文章を打ち込みたい。もはや、手書きでは文章が書けなくなっている自分がいる。
そんな時こそ、「ネットにつながらない」ことがメリットになるのだろう。
ポメラはたぶん、旅の友に最適なのではないだろうかと思う。


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2008.11.14

「お~いお茶 ふっておいしい抹茶」のネーミング変更を裏読み

伊藤園の「お~いお茶 ふっておいしい抹茶」が11月17日から全国販売されるという。
http://www.itoen.co.jp/news/2008/111105.html

「お〜いお茶 お抹茶」というネーミングで6月30日に1都9県(東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、茨城、群馬、山梨、長野、静岡)限定で発売された商品のリニューアル版である。
「お〜いお茶 お抹茶」には販売戦略上、意味深い商品であると筆者も注目していたが、全国展開するということは成功したということだろう。

 →バックナンバー:本日発売・伊藤園の「 お〜いお茶 お抹茶 」は救世主となりえるか?
   http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2008/06/post_e1bd.html )

この商品は、ペットボトルのキャップに抹茶が仕込んであり、開封時にボトル内の真水に抹茶が自然と落下する。それをボトルを振って混ぜ合わせて飲む。つまり、この「振って飲む」という部分が強調されたのである。では、その理由は何だろうか。

伊藤園としては<振って飲む楽しさを製品特性としてさらにアピール>としている。
確かに、リニューアル前の商品を飲んでみたとき、自分で振って飲むという感覚は新鮮ではあった。

「振って飲む」ということで、成功した飲料が別のカテゴリーにもう一つある。
「ファンタ ふるふるシェイカー」だ。
http://www.cocacola.co.jp/products/lineup/fanta11.html
炭酸飲料を振るという意外さと、振ることによって自分の好みの粒度まで中のゼリーを崩すというカスタマイズ感が好評であった。

つまり、伊藤園のいうとおり、<振って飲む楽しさを製品特性としてさらにアピール>は正解だろう。しかし、なぜ、そのようなアピールが必要なのであろうか。

この商品は1本275ml入りで198円とかなり高価なものとなっている。
価格戦略において常に留意すべくは、価値(品質)と価格が正比例する「バリューライン」のどこにポジションを取るかということだ。低品質で低価格な「エコノミー戦略」、中品質で中価格は「中価値戦略」、高品質・高価値な「プレミアム戦略」。その正比例した関係がバリューラインで、それを上回れば、通常は価格優位を確保することができることになる。
例えば緑茶ペット飲料においては、通常より茶葉を増量して淹れている商品などが数多く発売されている。価格戦略的にいえば、高品質な商品を中価格で販売しているので、「高価値戦略」のポジションを取っていることになるのだが、なかなか消費者からはその価値が認められない。通常の商品との差異が認識されないのだ。

そこで、各メーカーは昨年の秋、高品質・高価値な「プレミアム戦略」を目指した。500ml・150円の相場より高価格で高級な商品を上市したのである。
 →バックナンバー:緑茶飲料・秋の陣を占う
   http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2007/10/post_7cea.html

しかし、流通支配力の問題もあるが、現在でも頻繁に目にする生き残った商品は日本コカコーラの「綾鷹」ぐらいではないだろうか。なかなか、その価格と価値の関係が認められなかったということだろう。

「お~いお茶 ふっておいしい抹茶」は1本275ml入りで198円。価格戦略で見れば、これは伊藤園の「プレミアム戦略」への再挑戦だ。しかし、普通にやってはまた、同じ失敗の轍を踏むことになる。そこで、「振る」という消費者に特別な体験をネーミングでも強調することによって、高価格への妥当感を出したかったのではないかと考えられるのだ。

価格戦略は4Pの中でも最も慎重を期すべき部分だ。なぜなら、他の3つのP、製品を作る。流通チャネルを構築し維持する。プロモーションを展開する。それらは全て「コスト要因」である。価格戦略は失敗すれば塵芥に帰する。筆者は今回のネーミング変更は、実は価格戦略のためのものであると裏読みしてみたが、事実はどうだろうか。

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2008.11.13

「東芝ダイレクトPC 楽天市場店」の意味するものは?

東芝が自社サイトでの直販に続き、楽天市場にも出店をした。この意味するものは何だろうか。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/10/news074.html

<従来、自社サイト中心にPC直販を行っていたが、楽天を通じて直販モデルの認知・販売を拡大する>とのことだ。

実際に楽天のサイトを見てみる。
http://www.rakuten.co.jp/toshiba/
当面は、ネット限定モデルからスタートのようだ。

マーケティングの4P(Product・Price・Place・Promotion)のうち、place、つまり流通戦略(Place)は最も厄介で慎重を期するPである。それはなぜか。製品(Product)を作る。価格(Price)を設定する。これは、全部自社だけでコントロールできる。広告などのコミュニケーション戦略(Promotion)はメディアや広告代理店が絡むが、あくまで受発注の関係。あえて良くない言葉でいえば「下請け」である。
ところが、流通戦略はチャネルという全くの「他人」が対等の立場で絡んでくる。対等という表現には違和感があるかもしれない。しかし、メーカーはチャネルがなければ商品が売れない。しかし、チャネルもメーカーの商品がなければ売るものがない。言い換えれば相互依存の関係といえる。

相互依存の関係を良好に保つために、最も留意すべきは「チャネル・コンフリクト(衝突)」を回避することだ。チャネル戦略を変更すると、既存のチャネルとの軋轢が発生する。有名なのは旧松下の「ナショナルの店」だろう。松下幸之助が自らも一店一店足で回り、自社商品を扱ってくれるように口説いた店は最盛期全国で5万店に登った。店舗数ナンバー1のセブンイレブンですら全国12,000店強なので、いかにその数が多いか分かる。
しかし、松下の「力の源泉」であったナショナルの店が足かせとなった。家電量販店の登場である。圧倒的なバイイングパワーによる安値、品揃えが消費者の心をとらえ、購買行動が変化した。その変化に対応すべく、松下も量販店に注力したかったのだが、それをすれば、同一エリアに展開するナショナルの店をつぶすことになる。量販店に積極展開できない松下を尻目に成長したのが、シャープと三洋電機だ。なぜなら、両社はチェーンストアを持っていないため、しがらみがなかったからだ。その後、松下はナショナルの店をメンテナンスや工事までできる「プロショップ」化するなど、チャネル改革に懸命になったが、長い時間を要した。斯様に、流通戦略におけるチャネルコンフリクト回避には多大な配慮が必要なのである。

では、量販店の天下はいつまで続くのか。
家電量販店トップのヤマダ電機は売上高1兆1千億円を超えている。主要10社の売上規模は日本のGDPの10%以上を超える約56兆円にも上る。全国の主要駅前一等地にも次々と家電量販店の大型店が出店している。
しかし、その勢いにもかげりが見えてきた。
<家電量販大手4社、消費不振で最終損益悪化 4―6月>
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20080808AT1D0808J08082008.html
9月のサブプライムショック以降、一段と店頭から客足が遠のいているともいう。

チャネルコンフリクトは回避したい。しかし、チャネルと心中はしたくない。これはメーカーの永遠のテーマでもある。あるアパレルメーカーは、百貨店への配慮から、ショッピングモールなどへの直販店展開に躊躇し、如実に購入客数の低下を招いている。低迷する百貨店と緩やかな心中という方向が見えてくる。

東芝は特に低価格ノート市場へ積極参入している。「NB100」である。しかし、その市場は明らかに低価格でとにかく市場のシェアを取り合うペネトレーション・プライシングの戦いに突入している。大手デルの参入。さらに値下げ戦略に対抗するため、「NB100」も発売早々2万円近く値下げを余儀なくされた。ペネトレーションの要諦はとにかく数を売ること。売って売って、規模の経済や経験効果を発揮して、生産原価を下げ利益創出するしかないのだ。

メーカーがネット直販を行う場合、チャネルコンフリクトを回避するために、「ネット専用モデル」から展開する。そして、順次、チャネルに対する配慮をしながら取扱商品を拡大していくのが普通である。
しかし、最終的に自社直販サイトが充実しても集客数には限界がある。そこで、大手ECサイトへの進出という選択肢が持ち上がってくる。自社直販サイトでの展開と、大手ECサイトへの進出では意味合いが大きく異なる。量販店の立場からすれば、明らかに競合となる存在だからだ。

チャネルコンフリクトの懸念を抱えてまで楽天に出店した東芝。まだ、ネット限定モデルでの展開だが、早晩ラインナップの充実も図るだろう。楽天への出店。それは、東芝が家電量販店の失速を見て、やがて凋落した場合に備えた「保険」なのではないかとも考えられるのである。

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2008.11.10

フレームワーク使用上の注意

今日はマーケティングを学ぶ人に向けて、フレームワークを用いるにあたっての再確認事項をお伝えしたい。

 漠然とものごとを列挙していき、「さてどうしよう?」と考え始めるのでは非常に効率的ではない。ある程度、「枠組み」に沿って進めれば効率的かつ、モレ抜け・ダブりがなく進められる。考えがまとめやすい。人にも伝えやすい。しかし、フレームワークは万能ではない。限界点を理解して使いこなしや使い分けをすることが重要なのだ。
 では、以下、注意点を記していこう。

1.フレームワークの「クセ」を理解しよう

マーケティング環境分析の定番コースといえば、マクロ環境=PEST分析→ミクロ(競合)環境分析=3C分析→市場機会・事業課題抽出=SWOT分析といった流れだろう。しかし、人によっては3C分析だけで一通りの環境分析を済ませてしまう事ができる人もいる。「使いこなし方」によって、一つのフレームワークでもできることが異なるのだ。
しかし、熟練度がまだ高くない場合は、複数のフレームワークを連携させて、分析精度を高めることが肝要である。
業界環境を分析する際には「5つの力分析」が俯瞰的にものごとが見えるのでお勧めだ。ある意味、PEST→3Cと同時に行うと分析結果を見比べれば、相互補完が可能となる。
さらに、例えば分析結果の中で、その業界で、もしくは競合との戦いにおいて「コスト」が重要になった場合などは、別のフレームワークが必要となってくる。「バリューチェーン分析」である。バリューチェーンはビジネスプロセスが組み立てられていて、のどの段階でどのようにコストが発生しているのか。その結果、どこが強みでどこが弱みとなっているのかがわかるフレームワークである。つまり、「コスト」のことを知りたいと思ったら、まずバリューチェーンが思い浮かばなければならない。
いつ、どのようなときに、どんなフレームワークを使えばいいのか。各々の特性を理解しておくことは最低限心がけたい。

2.フレームワークは改造しよう

上記までは、まだ初心者段階である。フレームワークに慣れていくと、時折、「あれ、なんかシックリ来ないなぁ」と思うときが出てくるはずだ。フレームワークは万能ではないからだ。
万能でないだけではない。実はMECE(ミーシー:Mutually Exclusive collectively Exhaustive=モレ抜け・ダブりがないこと)ですらない。こういうと「え?」と思うかもしれない。「だって、MECEは論理思考の基本でしょ?」と。しかし、型どおりにフレームワークを使っていたのではMECEでなくなってしまうのだ。
例えば、「3C分析」はCustomer(市場)・Competitor(競合)・Company(自社)の3つのCを考えるのだが、流通・販路の要素が大きい場合、ChannelのCを加えて「4C」で分析していく方法がある。
また、「5つの力」も川下である「買い手」を「販売店(チャネル)」と「最終顧客」に分けて、「6つの力」で分析していくこともある。つまり、必要な要素を切り出して行かないとモレ抜けやダブりが発生してしまうのである。

3.フレームワークの大前提を常に意識しよう

前項のモレ抜けにも通じるが、例えばフレームワークに現れない重要な視点もある。それは「時間」だ。例えば、<24時間営業にして売り上げ4倍になった畳店>という記事が少し話題になった。365日休めない飲食店など業務用の畳の張り替えを24時間体制で受け付け、店舗の開店前に納品するサービスだという。
このビジネスの成功ポイントは「時間」である。既存のフレームワークで考えれば、4PのProduct(製品)である、畳の張り替えというサービスに24時間という付随機能を付加して成功したとも説明できるが、やはり「時間」という概念は既存のフレームワークから切り離して考えた方がいいだろう。
「時間」はほとんどの顧客において重要な要素となるが、他にはどんなものがあるのか。それは分からない。しかし、まず「顧客」をきちんと見て、そのニーズはどこにあるのか。KBF(Key Buying Factor=購入主要因)は何なのかを意識し続けることがフレームワークを使う大前提であるといえるのだ。

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2008.11.07

熱い思いは手書きで伝える!・・・のか?

プレゼンの準備をしようと思えば、間違いなくほとんどの人がパワーポイントを立ち上げるだろう。そして、クライアントの会議室に通されると、そこにはきちんとプロジェクターが用意されていることも珍しくなくなった。

青山学院大学で教鞭を執っている。担当科目は「ベンチャーマーケティング論」。講義の最終回には学生に課題である「自分が起業する場合のビジネスプラン」のプレゼンを行わせている。
昨今の若者特長である「プレゼン上手」に加えて、驚くのはパワーポイントの使い方だ。筆者も実はパワーポイントのプレゼンではアニメーションをよく使う方なのだが、学生は半端ではない。動くは、飛ぶは、鳴るは・・・。少々やり過ぎである。「まずは内容ありき」は厳命してあるのだが、ある機能はつい使いたくなってしまうようだ。

<トヨタグループが「パワーポイント」自粛令!?>と報じられたのが今年の5月のこと。渡辺社長が「パワーポイントは枚数も多いし、カラーコピーも多用して無駄だ」と発言したことに端を発し、「A3一枚にまとめる」となったようだ。その後、トヨタグループでA3一枚での報告やプレゼンがスタンダードになったのかはわからないが、脱パワーポイントの一つの動きではある。

しかし、プレゼンは相手の共感を引き出し、行動させるかが目的なので、A3一枚ではやはり少々心許ない。かといって、もはや誰でも(学生でも)器用に使えるパワーポイントでは差別化が難しくなってきているように感じる。

そんな漠たる悩みを日々抱えていたところ、クリエイターから「自分は手書きのプレゼンにこだわる」という話を聞いた。B2サイズのスケッチブックを使った紙芝居をするのだと。また、テレビのニュースやクイズ番組でおなじみの、隠して置いた箇所を「めくる」という技も使うらしい。パワーポイントのアニメーションとやっていることは同じだが、そっちの方が数段見ていて楽しそうだ。

では、手書きのプレゼンがカッコよくできるツールはないものかと思い、銀座伊東屋に行った。かつて、そんな品物を見た記憶があったからだ。
あった。外国製のクリアファイルの高級版みたいなものだ。何がただのクリアファイルと違うのかといえば、表紙を折りたたんで止めると、紙芝居よろしく、しっかりと自立するのである。ファイルを立てて、バサバサとめくることができるのだ。閉じると背の部分に持ち手がついていて、提げて歩ける。なかなかカッコいい。

伊東屋の店員から意外な話を聞いた。
このファイル、手書きのプレゼンをサポートするツールなど、もう流行らないだろうと仕入れを中止していたのだが、今年に入って急に売れ出しているのだという。ちょうど最後の一冊で、その後はいつ取り寄せられるかもわからないそうだ。

筆者と同じように、パワーポイントばかりでは、熱い思いを伝わるプレゼンには限界を感じている人が多くなってきているんではないかと思った。

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2008.11.06

ドコモのラインナップは多すぎて選べない?

年末商戦に向けてKDDIが7機種と絞り込んだのに対し、ソフトバンクはその倍近い13機種で圧倒。しかし、ドコモは怒濤の22機種ラインナップだ。旧来の90X・70Xという型番を廃して端末メーカー色を強めたともいい、今までにない意気込みを感じる。


今回のコンセプトは「機能訴求型から、ユーザーのライフスタイルに合わせたシリーズ展開」ということらしい。そのため、90X・70Xという型番から4つのシリーズに切り替えたということだ。その4つとは「STYLE(スタイル)」「PRIME(プライム)」「SMART(スマート)」「PRO(プロ)」だ。

しかし、ここで既に筆者としてはちょっとついて行けなくなってしまったのだ。どうやら、ファッション性の高いSTYLE、ハイエンドなPRIME、薄型のSMART、スマートフォンがPROということらしいのだが、その区分け通りなのかスペック表を目を皿のようにして見ることになる。
確かに90X・70Xも70Xが高機能化して境界が曖昧になりつつあったが、そうは言ってもおおよその区分けはついた。高機能嗜好の筆者としては、今までなら70Xはばっさり選択肢から外せたのだが今回はそうもいかない。そうなると、本気で22機種を比較検討することになってしまうのだ。しかも高機能路線はPRIMEらしいが、既にどの機種も過剰なくらい機能満載で、スペック表からは選べない。

大和証券グループの「ベビーカーを選べない夫婦」のCMを見た方はいるだろうか。

ベビーカーを買いに来た夫婦が、4種類展示されたベビーカーからはいとも簡単に1つを選ぶが、展示する種類を十数種に増やすと、次にやってきた夫婦は選ぶことができずに立ち去ってしまうという内容だ。
プリストン大学の行動経済学者 E・シャフィール博士が解説する。「普通は『選択肢が多い方がよりよいものが選べる』と思うでしょ? 選択肢が増えすぎると、人はむしろ選べなくなるんだよ」と。「”決定回避”の法則」である。

シャフィール博士の理論は同じプリストン大学の教授で、認知心理学の先駆けであるジョージ・ミラー教授の考えが元になっているのだろう。ミラー教授は「マジカルナンバー7+-2」という論文を記した。簡単に言えば、人間の短期記憶の受容は7つ前後しかないということだ。但し、7は記憶対象の正確な絶対数ではなく「意味を持ったかたまり(チャンク)」を指す。

ドコモの新機種にあてはめれば、22機種も並べられてしまうと、「決定回避」が起こる恐れがある。しかし、そもそもの4つのシリーズで括られているので、それが「チャンク」として機能していれば、どのシリーズから選ぼう!と記憶に残ることになる。ところが、どうもそのシリーズの区分けも曖昧に感じてしまうのだ。

筆者自身ここ2年ほど端末を買い換えていないので、今回こそはと11月5日を心待ちにしていたのだが、昨夜早速カタログを手に入れたもののラインナップに圧倒され、早くも決定回避に走っている状況だ。
販売奨励金の廃止によって、端末価格は以前に比べ高くなった。ユーザーは以前のように10ヶ月毎に買い換えたりせずに慎重になっている。売れ行きの結果に注目してみたい。

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2008.11.05

プールの底で息を止め合うミニノート市場

何でも値上げの世の中で、ミニノート、またはネットブックと呼ばれる小型ノートパソコンだけが強烈な値下げ合戦を演じている。なんとも厳しい消耗戦だが、これは「プールの底での息の止め合い」だと考えればわかりやすい。

ASUS Eee PC901を買ったのが数ヶ月前。5,9800円。プライベートで出かけるときに、いつものゼロハリバートンにLet'sノートを慎重にしまい込むのではなく、故障の少ないSDD仕様の気軽さでヒョイと持ち出せる気軽さが気に入った。ただ、プライベートでお出かけが少ない筆者にとって、今のところ使用1回あたり幾らかかっているのかと気になるところだ。

しかし、それ以上に気になるのがミニノートの値下げ競争である。多くの企業が参入、大混戦となり値下げ合戦となっているのだ。さらに大手HPが参入し、短期間で最大25%もの値下げを行ったため、混迷度は一層高まった。
<HPの大幅値下げが引き金 ミニノートPCの「消耗戦」>
http://diamond.jp/series/it_biz_dw/10018/

HPの狙いは明らかにシェア奪取である。
<9月時点の国内ミニノートPC市場のシェアは、エイサー53%、ASUS32%に対し、HPは6%弱にとどまっていた(BCN調査)>という状況ではとうてい生き残りは望めない。

「クープマンの目標値」で考えれば、HPは、「市場存在シェア(6.8%)」=生活者が人からヒントを出されて思い出せる(助成想起)レベルのシェアにも届いていない。
エイサーは過半を握っているため、「安定的シェア(41.7%)」=不測の事態がない限り、競合からの逆転や、新規参入によってトップが奪われることがない安定的なシェアを既に大きく超えている。
ASUSは「市場影響シェア(26.1%)」=2位以下であってもトップを狙えるポジションを十分確保している。
つまり、新参者を寄せ付けないトップのエイサー、それを虎視眈々と狙うASUS、やっとやっと存在を許されているHPという構図になっていたわけだ。これは、パソコン業界では王者として君臨するHPには我慢がならなかっただろう。

しかし、問題は我慢がなるかならないかというような、感情的な問題ではない。
そもそも、値下げせずともミニノートの値段は安い。安すぎる。
HPは<「ミニノートPCは戦略的な価格設定でシェアを獲りにいく。ノートPC全体で利益を出せればいい」>という、戦略的な赤字さえ覚悟しているのだ。
赤字を覚悟して、徹底してシェアを取りに行くプライシング戦略。典型的な「ペネトレーション・プライシング(市場浸透価格)」である。

ペネトレーションが成立するには重要な要件がある。シェアを取れる目処があることだ。赤字を垂れ流さない。どこかで黒字転換しようと思えば、スケールメリットである「規模の経済」を働かせ、さらに「経験効果」で生産効率を向上させるという戦い方が必須だからだ。

しかし、ASUSも黙ってはいない。
<ASUSTeK、2009年にはEee PCを200ドルで提供へ>
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20382990,00.htm?ref=rss

日本市場向けは仕様が異なるため、今までも実際には割高になって市場投入されたが、こちらも大胆なプライシングを2009年にしてくることが予想される。

ポーターの市場ポジションの3類型では、市場においてコストを武器に戦う「コストリーダー戦略」と、それに対する「差別化戦略」。より狭い市場に集中特化する「集中戦略」という分類がされている。もともとはミニノート市場はノートパソコンという市場の中で、ミニノートという狭い市場に特化した存在だった。しかし、その市場が大きくなり、逆にHPのような巨大な存在が参入してきたのだ。

現在、ミニノートメーカーは皆、「コストリーダー」のポジションを狙っている。しかし、現実的にそのポジションにはただの一社しか存在できない。自動車では、トヨタ自動車。ファストフードでは、マクドナルド。他社はもはやどこも追随できない。
ただ一社のポジションをめぐって、多くの企業が赤字覚悟でコストを武器に戦う。それは、例えるならば「プールの底で息を止め合う」ようなものだ。我慢ができなくなって、水面に逃げれば負け。最後まで息を止めて残ったのがコストリーダーなのだ。

今後、この市場の覇者がどの企業になるのかはまだわからないが、いずれにしても非常に厳しい業界であることは間違いない。
ユーザーには当面恩恵がもたらされるわけではあるが。

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2008.11.04

オタフクソースの徹底した需要拡大策に学ぶ

「お好み焼きソース」は当然、お好み焼きが食べられなければ消費されない。メーカーの売上げはお好み焼きそのものの需要に左右されることになる。徹底した集中化で需要拡大を図るオタフクソースの戦略を見てみたい。


筆者を含む関東人のお好み焼き摂取頻度はかなり低い。また、そこにかけるソースに対するこだわりも非常に希薄で、平気でとんかつソースをかけて食べたりしてしまうのだ。
関西方面や広島方面に人から言わせると、アンビリーバボー!な行動だそうだ。
あるとき勧められるままに、「オタフクソース」を使って食べてみた。・・・うまい。「今まで他のソースを使って食べとったワイは、なんちゅうアホやったんや!」と言葉まで怪しくなるくらい衝撃的に世界が変わった。以来、ソースは同社の製品がお気に入りだ。

しかし、調べてみるとオタフクソースの商品ラインアップは驚くほどソース一本だ。
多少、酢やサプリなども製造しているが、ほとんどがソース。それもメインはお好みソースなのだ。恐ろしいまでのニッチャーである。しかし、ソース業界ではブルドックソースと戦う第二位のソースメーカーなのだ。
マイケル・ポーターのフレームワークで考えれば、リーダーに戦いを挑む「差別化戦略」をとっているといえるが、一方で徹底的にお好み焼きにこだわる「集中戦略」という戦い方であると解釈した方がいいのかもしれない。なぜなら、同社の戦略は徹底した「需要増大策」を取っているからだ。集中戦略の要諦は、特定のセグメントに特化して強みを発揮しつつ、そのセグメントを拡大していくことだからだ。

同社のお好み焼き普及・拡大策の努力は徹底している。まずは個人宅のお好み焼き需要の拡大よりも、量がさばける飲食店を増やす方が手っ取り早い。そのために、お好み焼き店開業予定のプロを養成する「お好み焼研修センター」を全国7箇所に設け、年間約300人が受講しているという。
その運営を担うのが営業本部マーケティング部に属するその名も「お好み焼課」だ。同課の活動はプロ養成に留まらず、家庭での需要促進も図るため「お好み焼教室」を開催し、ホットプレートで作るおいしい作り方を教えるという。
そして自社社員のお好み焼きに対する知識・技術錬成にも力を入れている。2006年から社内資格「お好み焼士」マイスター制度も導入した。

弛まぬ需要拡大の努力をしている同社であるが、昨今の外部環境が凄まじい逆風となって襲ってきている。肝心の「粉」の原料高は需要の低下をもたらすことになる。集中戦略の弱みは、集中したセグメント自体が縮小すると大きなダメージを受けることになることになるのだ。
マーケットの縮小に手をこまねいていては事態の打開はできない。そうしたときには、マーケットのセグメントをもっと細分化して、成長や拡大の可能性があるところを見つけ出すことが肝要だ。まさに、同社はその展開を行った。

<離乳食が終わったお子さまに…「1歳からのお好みソース」>
http://www.otafuku.co.jp/corporate/news/2008/20080901_1.html

同社のニュースリリースは9月1日の発表であるが、11月3日の日経新聞の地域総合面に「ご当地ニューフェース」として、紹介された。
同商品は<3歳くらいまでは、塩分の高いもの、濃い味、刺激の強い味はできるだけ避けた方が望ましい>として、塩分を30%カットし、さらに<アレルギー特定原材料25品目不使用>という配慮もしているという。
そもそもなぜ、1歳児にお好み焼き?と考えてしまう人も多いだろうが、<野菜をたっぷりとることができ、栄養バランスが良い・苦手な食材を細かく刻んで入れることができる>などの理論武装も完璧だ。今後、この離乳食を終えた層に対する普及・拡大に力を注いでいくのだろう。

徹底した集中化行い、そのセグメントでの需要拡大を図る。さらに、セグメントを細分化して、伸びシロのあるところを探す。オタフクソースの戦略から学ぶところは多い。

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