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2008.10.07

行き着く先は「らくらくホン」? 消費者ニーズに異変あり

機能高度化の一途をたどるデジタルや家電製品に「No!」を言う消費者が増えてきたようだ。この先どこへ向かうのだろうか。

日経新聞の土曜別刷・日経PLUS1の10月4日号に「その機能、必要ですか?」というアンケート調査の結果が紹介された。
<「自動でラクラク」「ボタン一発で簡単操作」--。家電製品などの機能は新製品が出るたびに新しいものが加わる一方で「多すぎて使いこなせない」との声もある。>として、機能の必要性についてマクロミルによるネット調査と、日経生活モニターから声を集めたという。

特徴的なところでは、デジタルカメラの「手ぶれ補正」や「赤目防止」の機能については95%以上が「必要」と回答したのに対し、「笑顔検出機能(被写体が笑ったときに自動撮影する)」は65%に過ぎなかった。また、テレビの「二画面表示機能」も35%が「不要」との回答であった。日経生活モニターの声も「面白半分で使えても結局、実用的でない機能が多い」(40代男性)、「分からない機能が多くて触るのも怖い」(40代女性)などの否定的な意見が上がっていた。

このような意見は全年齢で見れば確かに現れるのかもしれないが、若年層は違うかもしれないと思ったところ、実は同様の傾向が他の調査でも示されていた。
<20代の40パーセント弱 シンプル携帯「支持」の意外>
http://news.livedoor.com/article/detail/3845919/

ネットマーケティングのアイシェア社による調査結果。<20歳代から40歳代の男女801人を対象に「多機能携帯とシンプル携帯、どちらに注目しているか」と質問したところ、「シンプル携帯」と答えた人が全体の4割を占めた>という。(詳細は上記リンク先記事参照)

携帯電話は多機能化の一途をたどるデジタル製品の典型だ。各企業が他社の端末と差別化を図らんと、こぞって機能を盛り込んだ結果、すでにメイン機能以外はどんな機能がついているのかすらユーザーが把握できなくなって久しい。しかし、それはユーザーの実情を見ていないメーカー間競争ではなかっただろうか。
確かに、カメラがついていて、その画素数が高いほうがいい。音楽も聴けたほうがいい。ワンセグも見られたほうがいい。だが、それは市場全体を見渡した最大公約数に過ぎない。メーカーが空想する「消費者」像からは魅力的に見えるかもしれない。しかし、それが実際の個々のユーザーからの支持につながるとは限らないのだ。

消費者の多様化というキーワードが言われるようになって久しい。しかし、その意味を今一度反芻してみることが必要なのではないだろうか。例えば、携帯電話は各キャリアもユーザーのニーズに応えて、機能を省いたシンプルな機種を投入し始めた。前出の記事は以下のように締めくくっている。

<新機種の価格相場は多機能タイプが5万円前後、シンプル携帯は3万円前後で、その差は2万円。豊富な機能が搭載されていても、使いきれるかわからない。それなら「最低限の機能で安いほうがいい」というのが、どうやら(ユーザーの)本音のようだ。>

20世紀のモダニズム建築を代表するドイツ の建築家、ミース・ファン・デル・ローエ(Mies van der Rohe、1886~1969)は「Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)」という言葉を遺した。その言葉どおり、ミースは古典的な建築様式を脱し、鉄・コンクリート・ガラスを用いた新しく合理的な様式を広めた。21世紀の今日、それらの建築物を見ても無駄を削ぎ落とした美しさが十分に感じられる。

タイトルに掲出した「らくらくホン」は1999年に発売され、以来5世代目が発売されており、昨年累計1,000万台が販売された。「初心者や高齢者でも使えるようなシンプルな携帯電話」というコンセプトからすると、昨今のらくらくホンは少々多機能化が進みすぎている感もある。らくらくホン自体も、その他の携帯電話も、さらには、多機能化しすぎた全ての家電やデジタル製品も、一度、「Less is more」という言葉の意味を考え、無駄を削ぎ落とした原点回帰が必要になっているのだろう。


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Comments

■海外テレビドラマ「大草原の小さな家」が示す潮目-消費者ニーズを探ることをやめよ?
こんにちは。今やいわゆる消費者ニーズにもとづ商品開発には限界があるのではないかと思います。近いうちに金融・経済が一辺倒だった時代から金融危機をへて、社会を重視するようになると思います。消費者ニーズの深耕ばかりやっていては、結局は景気の良いときには、消費意欲を煽るだけ、不況になれば安売りということになってしまうと思います。これからは、社会的イノベーションを推進したり、変化した社会に適応できないため生じたギャップを埋めるようなことが重要になってくると思います。私のブログでは、海外ドラマや演歌の興隆などから、このことの重要性を掲載してみしまた。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

Posted by: yutakarlson | 2008.11.15 02:05 PM

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