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2008.10.09

トヨタ「レクサス・ハイブリッド戦略」の期待効果

トヨタはレクサスの全車種にハイブリッドを搭載するという。現状の搭載比率約10%から一気に加速するわけだ。<独メルセデス・ベンツなど海外高級車メーカーに対抗する>ためとしているが、その狙いはどこにあるのだろうか。

<トヨタの「レクサス」、ハイブリッドを全車種に設定>(日経本紙13面のダイジェスト)
http://car.nikkei.co.jp/news/business/index2.cfm

確かにメルセデスはトヨタのニッケル水素バッテリーを技術的に上回るとされる、リチウムイオンバッテリーによるハイブリッドを搭載したSクラスを先月発表している。「環境にはディーゼルのう方が優れている」と主張し続けてきたメルセデスが、プリウス発売以来10年目にして始めて真っ向勝負を挑んできたのだといえる。
<メルセデスベンツ Sクラス にハイブリッド---12.6km/リットル>
http://response.jp/issue/2008/0918/article113865_1.html

対するトヨタの思惑はどこにあるのか推察してみよう。ハイブリッド戦略の狙いについては<米金融危機などを背景に世界で高級車販売が落ち込んでいるため、売り物のハイブリッド技術を活用して販売拡大を目指す>と発表されている。
<米金融危機などを背景に世界で高級車販売が落ち込んでいるため>を解釈するなら、高級車を購入できる富裕層はますます限定されてくるということを予想してのことだろう。その点はメルセデスも同様の認識なのではないだろうか。その限られた層の「こだわり」にいかに応えるかが勝負の分かれ目となるのだ。
結局のところ、ディーゼルからハイブリッドへの転換は、「ガソリン車にこだわる層」の取り合いに競争のステージが移ったのだと考えられる。それまで「棲み分け」をしていたディーゼルとハイブリッドだが、レクサスハイブリッドの成功でユーザーのガソリン車志向が明らかになったともいえる。そうなると、もはや売る側の理論で「環境にはディーゼル!」と強要することはできなくなったわけだ。

富裕層の関心は、燃費効率もさることながら、資産的な余力があるため環境負荷軽減という観点は強い。しかし自らの快適性は失いたくない。故に、ガソリン車にこだわる。さらに言えば、環境負荷軽減を重視するなら小型車に乗ればいいのだが、とはいえ、大型車の快適性は失いたくない。という、ユーザー心理を洞察してメルセデスはSクラスをハイブリッド対決の戦場としてきたのだろう。

対するトヨタは、もう一歩先を行く戦略なのだろう。米国におけるプリウスの購買理由は「経済性」より、「環境負荷軽減」に重きが置かれていた。「環境のことを考える人が賢く選択するクールな車」というポジションを獲得していたのだ。
今後、環境意識がさらに高まれば、大型車からの乗り換えも進むかもしれない。そして<米金融危機などを背景に>の文脈からすると、経済的な理由からも車のダウンサイジングに踏み切らざるを得ない層も出てくるかもしれない。しかし、何らかのこだわりは捨てたくないときに「賢い選択」というポジションが効いてくるわけだ。


上記のとおり、競合戦略として全車ハイブリッド搭載は有効だと考えられるが、トヨタ全社にとっても大きな意味があるはずだ。
レクサスはトヨタとは別ブランドだが、良きにつけ悪しきにつけ、両者は同じトヨタの傘の下と見られている。すると、レクサスの動きはトヨタブランド全体のポジショニングに大きく影響することになる。
トヨタはここ10年来「エコ」を大きく掲げてきた。車という環境負荷を高める商品を作っているが、その軽減のために注力するという姿勢だ。このポジショニングの明確化の意義は大きい。
かつて、米国ビッグ3がここまで凋落する前に、ノースウエスタン大学教授・フィリップ・コトラーが自動車会社のポジショニングについて指摘している。
「地上最強のドライビングマシン」(BMW)、「世界一安全な車」(ボルボ)など、欧州のプレミアムカーはポジショニングが極めて明確であるのに対し、米国勢はオールラインナップの弊害で、ポジショニングがあいまいになってしまっている。その結果、消費者に魅力が伝わらなくなっているということだ。(著書”コトラーのマーケティングコンセプト”より)
オールラインナップメーカーといえば、トヨタも同じである。エコに舵を切る前のトヨタのイメージとは何だっただろうか。「経済的なコンパクトカーメーカー」だろうか。しかし、それはもはや実態を示していないし、消費者に魅力的にも映らないだろう。

「エコ」はトヨタのブランド戦略の要諦だ。フラッグシップであるレクサス全車がハイブリッドを搭載するということは、「トヨタ=エコ」というブランド強化を図るという大きな効果も期待できると考えられるのである。

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