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【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

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October 2008の17件の記事

2008.10.30

来月の「○○でやろう。」は何だろう?

月が変わるのを楽しみにする理由は人によっていくつもあるだろうが、最近の筆者の楽しみは「○○でやろう。」だ。首都圏在住でなければ何のことやらさっぱりわからないだろうが、東京メトロのマナーポスターのことである。

列車内のマナー啓蒙のためとして昭和49年から続いているというので、その歴史は古い。しかし、どうしても「マナー」というと説教じみて面白くなくなるのだが、今年4月から1年間の予定で展開されている「○○でやろう。」シリーズは抜群なのだ。

東京メトロの以下のページにバックナンバーも全て掲出されている。
http://www.tokyometro.jp/anshin/kaiteki/poster/index.html

ポスターには車内で目にするマナー違反の乗客が取り上げられており、「あーこんなヤツいるいる」的な関心を引きつける。そして、デフォルメされたその姿の中に、そこまで極端ではないが、「多少自分もやっているかも・・・」と思わせる秀逸なクリエーティブだといえる。

シリーズの変遷は、4月~7月は「家でやろう。」だったが、8月は「海でやろう。」、9月が「山でやろう。」、10月が「庭でやろう。」と家を飛び出してからマナー違反の乗客の姿がさらにデフォルメされパワーアップしている。それ故、次の「○○でやろう。」の「○○は何だろう?」と期待してしまうのだ。

もう一つ注目したいのが、毎回登場するキャラクター「メガネのおじさん」である。
第1回の4月のポスターではその姿が確認できないが、5月よりマナー違反の乗客を遠くからじっと見つめるという、独特のポジションで登場するようになった。さらに8月までは「傍観者」であったが、9月は乗客に荷物を押しつけられ、10月には傘の水滴でびしょびしょにされるという「被害者」にポジションが変わっている。しかしながら、表情一つ変えないというキャラクターを保っているところに、おかしさが醸し出されているのだ。

笑いのツボは人それぞれ違うのだろうが、筆者にはこのおじさんの醸し出すシュールさがなんとも面白くてしかたがない。こんなクリエーティブを手がけたのは誰だろうと、調べてみると、なるほどと合点がいった。
JTの「大人たばこ養成講座」( http://www.otonatobacco.com/ )なども手がけている寄藤文平氏だった。

さて、10月ももうすぐ終わり。
来月の○○は何だろうか。そして、メガネのおじさんはどんな目に遭うのだろうか。
小さなことだけれど、気になることを楽しみに待つのはいいものだ。

2008.10.29

「ミスド値下げ」に感じる不安

原料高に苦しむ食品業界や外食産業では値上げラッシュが続いている。そんな中、ミスタードーナツは11月1日から商品の値下げを行うと発表した。いわゆる「逆張り」の戦略とも思えるのだが、実際には大きな不安が感じ取れる内容であった。

同社のニュースリリースによると、<“お手軽・お手頃、フレンドリー”をテーマに一部商品の規格・価格を改定>をするということだ。
http://www.duskin.co.jp/news/2008/1024_02.html

<平均単価を125円から119円に引き下げ>ということなので、平均した値下げ率は僅かではあるが、この環境下でよくぞ決断したと言えるだろう。しかし、この値下げ戦略にはウラがあったようだ。

Tech insightというニュースサイトがリリースにない情報をつかんでいた。
<手放しに喜べない… ミスド10商品価格引き下げへ>
http://japan.techinsight.jp/2008/10/suzuki081027014.html

<今回の発表では価格だけではなく規格も改定されることが明らかとなった。対象となる10商品はいずれもサイズが小さくなる><「スティックパイ アップル」は、現行の約70グラムから約45グラムへとサイズも大幅ダウン><グラムあたりの単価は改定前の約2.7円/gから改定後は約3.27円/gとなり、実質の値上げとなっている>

パイの大きさが70グラムから45グラムに減ると、見た目にもいかにも小さくなったと感じることになるだろう。スティックパイ アップルは189円から147円へと改定されるので、22%値段が下がって35%量が減ることになる。計算しなくとも見た目で「割が合わない」と消費者は感じるのではないだろうか。

「割が合う・合わない」という判断基準には「カスタマーバリュー」いう考え方が当てはまる。カスタマーバリューとは、その製品に対し顧客がいくら払ってもいいと感じる値段であり、価格がその基準を超えてしまうと全く売れなくなるものだ。
例えば、今年6月に行われたカップヌードルの値上げの影響がそれを如実に物語っている。メーカー希望価格155円から170円に15円値上げをしたが、店頭実勢価格が88円から118円と30円の値上げとなった。その結果、値上げ前月比で-52%の打ち上げという結果となったのだ。おそらく、消費者のカップ麺に対するカスタマーバリューは100円以下だったのだろう。
外食産業の例では、2006年9月のリンガーハットの価格改定が思い出される。同社の商品であるレギュラーのチャンポンは価格改定前399円だったのが、値上げ後は450円となった。結果、顧客の激減を招いてしまった。カスタマーバリューは400円のラインにあったのではないかと思われる。

その意味からすると、ミスタードーナツは189円のパイを値上げで解消しようとすれば、200円を超えてしまうかもしれない。それは明らかにカスタマーバリューを超えることになるだろう。
Tech insightは<価格とサイズを同時に下げるというのは業界でも珍しい試み>と分析しているが、これは食品業界ではよく行われる「量目調整」という手法だ。
例えば、今年の6月に日経新聞が行った調査では、袋入りウィンナーの「シャウエッセン」が量目調整を行って、店頭価格277円から271円と、見かけ上6円の値下げをして売り上げを9%上昇させることに成功している。しかし、ドーナツやパイは袋入りウィンナーのように一見、減量が分かりにくい商品とは明らかに異なる。

昨今の原料高はもはや企業努力だけでは吸収しきれない段階になっているのは確かだ。かといって、カスタマーバリューを超える値上げはできない。ミスタードーナツの外食産業では珍しいとされる量目調整は苦渋の選択であったことはわかる。
しかし、その厳しい選択の結果であるという価格改定の理由が消費者に理解されるか否かという、最後の部分に大きな不安が感じられるのだ。

ミスタードーナツのニュースリリースによると、今回の価格改定を以下のように説明している。
<お客様がよりお買い求めやすい価格で商品を提供するため>とし、<お客様に“お手軽・お手頃”にご利用いただけるよう低価格の商品発売にも力を入れ、バラエティーに富んだ商品を取り揃えた“フレンドリー”なドーナツショップを目指します>と結んでいる。
いかにも小さくなった商品を見たとき、消費者はフレンドリーさを感じられるだろうか。

価格改定の理由は「お求めやすい価格での提供」や「フレンドリー」などというきれいな言葉ではなく、「やむなき実質値上げ」という真情を吐露し、消費者に理解を求めた方がよかったのではないかと思う次第だ。


2008.10.27

「ペプシホワイト」と「クラシックデザイン」の戦略ポジション

10月21日から「ペプシホワイト」が発売になった。6月10日に発売された「ブルーハワイ」に続く、今年2度目の期間限定品だ。さらに、自動販売機限定で静かに人気が高まっているのがダイドードリンコの「ペプシコーラ クラシックデザイン」だ。コーラ業界におけるこれらの商品の戦略を考察してみる。


まず、「ホワイトペプシ」を購入し、飲んでみた。
・・・意外なほどおいしい。今年の6月に発売された青いコーラ「ブルーハワイ」の強烈な味、甘みと独特の舌に残る微妙な苦みを思い出し、かなり覚悟を決めて一口含んだので、少々拍子抜けでさえある。
メーカーのニュースリリースによると<軽やかな香りが心地よい、爽やかなヨーグルト風味のコーラ飲料>であるというが、偽りはない。
http://www.suntory.co.jp/news/2008/10226.html

日本にける飲料業界第1位は日本コカ・コーラであり、第2位がサントリーである。サントリーは日本国内においてはペプシのマーケティング及び製造販売総代理権を1997年に取得している。そして、コーラ飲料における世界的なシェアは地域的には逆転しているところもあるが、コカ・コーラは「リーダー」であり、ペプシが「チャレンジャー」だ。
日本国内においてはコーラ飲料ではコカ・コーラが圧倒的だ。企業としても、ブランドとしてもチャレンジャーのポジションを余儀なくされているという現状がある。

圧倒的な力で圧するリーダーに対して、チャレンジャーの戦い方の基本は徹底した「差別化」だ。その象徴である米国発の「ペプシチャレンジ」というキャンペーンはあまりに有名だ。どちらが製品か明らかにされていないコップを街行く人に両方飲ませ、美味しいと思う方を指ささせる。そして「うゎー、ペプシだッたんだぁ〜」と被験者が言う。比較広告が嫌われる日本においても展開され、テレビCMにもなった。

差別化はキャンペーンだけではなく、商品においてもなされる必要がある。その象徴が、定期的に上市される「期間限定変わり種コーラ」だ。
ブルーハワイ以前にも、2007年6月12日にキュウリ風味の「アイスキューカンバー」、2006年には、5月16日にスパイシーな「レッド」、7月4日にトロピカルフルーツ味の「カーニバル」、10月10日にジンジャー味の「ゴールド」と矢継ぎ早に発売された歴史があるのである。
つまり、期間限定変わり種コーラは、リーダーに対する差別化戦略を行うチャレンジャーの戦略と定石通り考えられるため、今後も間違いなく続くことわかるのだ。


さて、コーラ飲料業界を見渡すと気になる存在がもう一つある。ダイドードリンコの「ペプシコーラ クラシックデザイン」だ。
http://www.dydo.co.jp/product/seihin/product.phtml?PD=629

上記メーカーの商品紹介サイトによれば<1960年代にアメリカのペプシコーラで使用されていたロゴマークを現代に復刻した復刻版ペプシコーラ><ダイドードリンコの自動販売機のみで購入できる限定商品>だという。クラッシックの名に恥じることにない、たっぷり砂糖とカフェインが使われているであろう、どっしりとした味わいで、2007年から発売されて以来、静かにブームを呼んでいる。
ダイドードリンコが使用できるのはこのクラッシックの商標のみであり、製品自体もサントリーがOEMで製造し、ダイドードリンコに供給しているというのが実態だ。

しかし、全く広告などに費用をかけない。販路も大きく広げない。ひたすら上位ポジションのプレイヤーの後をついて行き、しっかり稼ぐのは、「フォロアー」のポジションとして実に正しい戦略をとっていると言えるだろう。

商品戦略は、このようなポジションに応じた戦い方の類型だけで語れるほど単純ではないが、こうした定石を理解しておくと、消費者としてもメーカーの狙いがなんとなくわかり、より興味を持てるようになるだろう。

2008.10.23

Googleケータイと今日のケータイウォッチ

つい先頃、予定通り米国でGoogle携帯「T-Mobile G1」が発売された。
Googleによって公開されている携帯向けOS、アンドロイドを搭載した初の携帯電話である。
<Googleケータイ「Android G1」が発売>
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0810/22/news094.html

テレビでは動画でタッチパネルのインターフェースを初めて見た。十分にiPhoneの対抗となるという印象を受けた。
さらに、上記の発表記事にあるように、液晶がスライドしてキーボードが現れる点など、発売されたばかりのプラダフォン2ともかぶっている。
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0810/14/news023.html

ハードの機能だけでなく、Googleが提供するWebサービスの魅力も相まって、iPhone、プラダフォン2も喰いに行く意気込みを醸し出している。

Google携帯、プラダ携帯2とも日本での発売はまだ未定だが、発売されれば大きな話題になるのは間違いない。
また、公開されている携帯向けOS、アンドロイドを用いた携帯電話端末の研究も進んでいる。携帯電話頂上対決からは目が離せなくなる。
しかし、これらは日本におけるiPhoneの販売台数が頭打ちになっていることが示すように、一部の先端的なユーザーによって形成されているマーケットであることは否めない。


一方、携帯キャリアのサービスは全く別の意図が感じられる。
先週の発表だが、auとソフトバンクモバイルのサービスだ。

<au、換金可能なポイントが貯められる「au one おこづかい」を提供開始>
http://news.livedoor.com/article/detail/3858315/
<サイト登録やショッピングを通じて換金可能なポイントが貯められる>という。

<ソフトバンク:着メロを毎月3曲まで無料サービス開始>
http://news.livedoor.com/topics/detail/3858170/

換金可能なポイントと無料。携帯端末の価格上昇に伴い、買い換え期間が長期化している中、キャリアチェンジされたら、呼び戻すのは至難の業。こちらは囲い込み施策の模索だと言えるだろう。


新たな技術による最新型携帯の戦い。景気低迷期の囲い込み強化。一見全く異なる方向性を見せる携帯電話業界の動きだが、既にコモデティー化している携帯電話という存在においては理にかなった展開だ。
コモデティー化には新たな価値の付与が必要だ。本来それが、必ずしも必要とされないものであっても、一定のセグメントに効果があるのであれば、それを実行せざるを得ないのである。それが、今回、ハードとソフトという両面で見て取れる。
但し、Google携帯のOSに関しては今後、大きな波となるかもしれないので目が離せないのも事実ではある。

さて、次の注目日は来月初旬のようだ。
<ドコモ、新製品を11月5日発表――2008年秋冬モデルか>
http://news.livedoor.com/article/detail/3869347/

今回の新製品は従来の「70X」「90X」という、薄型(かつての廉価型)・高機能型というキャリアであるドコモのお仕着せである型番を廃し、メーカーの独自性を出すという。
日本のケータイの新しい姿が少し見えるかもしれない。

2008.10.22

スーパーホテル 顧客満足の秘密 「人を動かすしくみ」編

昨日の続きである。

その前に、すこし、他業種の事例を見てみよう。
<レレレの清掃 ラララな職場 JEX>
http://mytown.asahi.com/osaka/news.php?k_id=28000000810140004

日本航空の子会社JALエクスプレス(JEX)は<客室乗務員から社長までが機内掃除に加わるといった独自のコスト削減策で、原油高の中でも好調を保つ>という。

昨今では雇用形態がずいぶんと変わってしまったが、少し前までは、飛行機の客室乗務員といえば花形職業。それと、企業の社長が、機内清掃をするのだ。
掃除の象徴であるレレレのおじさんの名を冠した「レレレ当番」を持ち回りし、清掃担当者の人件費と入れ替え時間の無駄が省け、機材の回転率も高まったというのだからその効果は確かだ。
雇用の確保、人件費抑制防止というモチベーションの前には、掃除も致し方ない。人件費を効率的にするなら、少人数で何でもこなす「多能工化」は欠かせない。しかし、その場合、いかにモチベーションを維持するかが大きなカギになる。
JEXの場合、「当番」というしくみを作って、連帯感を持って行っているのがそれだ。

しかし、ローコストホテルの場合、極端に社員は少ない。簡素化するとはいえ、業務は多い。人が動くしくみはもっと必要なはずだ。

その一つが、人の採用方法にある。
<3年間で、2400万円~3600万円の収入。別途、報奨金最大1400万円(3年間)自己負担金0円。>
http://www.superhotel.co.jp/kaisya_r/job/manager.html

同社は住み込みのホテル支配人・副支配人を夫婦で採用する。
<収入は報奨金も合計すると3年間・お2人で最大5000万円。小売店や飲食店での独立をお考えの方にも、十分な準備資金を貯蓄することができます>とのことだ。

「3年間頑張れば独立開業できる」という強烈なモチベーションが人を動かすのだ。
得られるのは開業資金だけではなく、経営・接客のノウハウも学べるといい、3年間で「卒業」し、飲食業を開業した夫婦も紹介されている。

しかし、「開業したい」というモチベーションだけでは、良好な接客の実現が実行される保証はない。そこに、従業員に対するさらに重要なモチベーションプログラムが用意されている。

半年以上前の新聞記事であるが、日経MJ4月9日ので、<リピート多い低価格ホテル>と題された記事が掲載されていた。「スーパーホテル」のことである。
記事では同社のモットーが紹介されていた。「宿泊の翌日に元気になってビジネスに取り組んでいただきたい」だという。
そのモットーを実行するしくみが、理念の共有である。同社は<社員たちが作った「フェイス」という経営理念を記した冊子を常に持ち、(中略)自分がどう取り組んでいるかを(朝礼で)発表する。>と、徹底して自ら考え、行動する顧客対応を実践しているという。

資金が貯まっても、効率を保ちながら顧客満足を得る接客方法が習得、実践できなければ、開業後のノウハウとして活かせない。その習得のためのしくみも、きちんと顧客の満足を高める活動につながっているのである。


選択と集中、そのための業務プロセスと設備の設計。さらには人を動かすしくみ。全てが一体となった顧客満足のサービスが多くのリピーターを生んでいる秘密なのだと言えるだろう。

2008.10.21

スーパーホテル 顧客満足の秘密 「選択と集中」編

一泊4980円のロープライスホテル、「スーパーホテル」が最近メディアでしばしば取り上げられている。「コスト抑制のしくみ」と顧客の「安眠へのフォーカス」が成功のポイントと伝えられている。
しかし、同社の「高効率&顧客満足」の秘密は他にもまだまだあるのだ。

日経新聞10月14日夕刊。スーパーホテル会長 山本梁介氏が、インタビューシリーズの「人間発見」に登場していた。
残念ながら、ネットに掲出されていないので、ほぼ同様のインタビュー内容がまとめられている以下のダイヤモンド・オンラインの記事を参照されたい。
<チェックアウト不要で合理化満載の「1泊4980円ホテル」>
http://diamond.jp/series/entrepreneur/10045/ (1~3ページあり)

一つ目のポイントは4980円というプライシングだ。<ビジネスマンに絞り込んでニーズを突き詰めると、「出張宿泊予算は8000~1万円。夜の一杯を宿泊予算で賄うために、1泊5000円以内に抑えたい」>というターゲットニーズに応える価格設定は、「知覚価値価格設定(perceived value pricing)」をとっている。
<マーケティング・リサーチなどにより、「売れる価格帯」を発見し、原価がそれよりも高い場合には、コスト削減や製品仕様の見直しなどを行い、その価格帯に原価を近づける手法(グロービス経営用語辞典より)>である。
ターゲットニーズに間違いはないだろう。そして、そのニーズに応えつつ、顧客満足も両立する<コスト削減や製品仕様の見直し>をしたことが大きなポイントなのだ。

コスト削減は、大胆な機能の簡素化が第一に上げられる。
<ビジネスモデル特許を取得した自動チェックインシステム>によって、<チェックアウトの手続きは不要となり、人件費は3割削減>を実現した。他にも、精算の手間をなくすため、客室の電話や課金式冷蔵庫もなくした。
最近のインタビューで触れられていないが、顧客満足を高める目玉の一つである「無料朝食」も、実は機能の簡素化をしている。無料ということは、同じく精算のプロセスが削減できる。有料化して精算したり、内容に対するクレームに応えたりするよりは、無料の方がコストが安くつくのである。
もう一つの目玉である「天然温泉大浴場」も<客室での光熱・水使用量の抑制につながる>という狙いがあるという。

簡素化した分、集中したのが「眠りの質」だ。
顧客であるビジネスマンの多くは<ホテルでの滞在時間は約十時間で、この七、八割を睡眠が占め、お客さんはベッドにいるわけです>と山本会長は語っている。(10月14日日経夕刊)
そこでフォーカスしたのがベッドだ。
<ここ四、五年に出したホテルでは幅1.5メートル、長さ2メートルのサイズ。どんな大手のシティーホテルのベッドにも負けません>と日経のインタビューで会長は語っている。

「集中と選択」というキーワードは、言うは易く行うは難い言葉の典型だ。集中すべき絞り込みがうまく選択できない。そんな例は枚挙にいとまがない。
その点、同社にはブレがない。4980円というターゲットニーズとしてとらえ、そこに向けた大胆な簡素化をし、さらに満足度を高める、同社の提供価値の根本である「良質な眠りの提供」に対しては大胆な提供をする。
これが、目に見えるところでの、同社の「顧客満足の秘密」である。

(つづく)

2008.10.20

「5つの力」で読み解く100円ショップ業界の未来

原材料高に苦しむ100円ショップ業界。100円ぽっきりワンコインという価格の魅力が打ち出しづらくなっているのだ。環境分析の定番フレームワークで今後を読み解いてみたい。


日経新聞10月18日朝刊10面「価格攻防 変わる潮目」という連載の第2回は「揺れる100円ショップ メーカー・消費者の板挟み」と題されていた。
<原油や金属の価格は一時より下がったが数年前よりまだ高い>ことからメーカーからの値上げ要請がひっきりなしだという。一方、<消費者は生活防衛に走る>ことから、本当に必要な物しか買わなくなった。さらに<スーパーも百円売り場を拡大し、包囲網が狭まる>という状況にもある。その中で、100円ショップ業界のプレイヤーは生き残りをかけて戦っているのである。

さて、上記を見てみれば、メーカーは「売り手」、消費者は「買い手」。そして、100円ショップではなく、スーパーに置いてある100円商品は「代替品」と考えられる。そして、業界は「100円ショップ業界」だ。分析に必要な要素はほぼ揃った。

「5つの力分析」とはマイケル・ポーターが著書『競争の戦略』で紹介した。自社の属する業界の5つの競争要因から、業界の構造分析をおこなう手法である。
5つの競争要因とは以下の通り。
・「業界内の競争」=同じ業界内の競合企業との力関係と競争の激しさ。
・「売り手交渉力」=商品を作る原材料を供給してくれる企業がどの程度供給価格に変化を付けてくるかという要素。
・「買い手の交渉力」=自社の商品を購入してくれる顧客がどの程度スイッチングの可能性を持っているかという要素。
・「新規参入業者の脅威」=現在競合関係にない企業が突如参入してくる可能性。
・「代替品の脅威」=自社が提供している商品より魅力的な商品が開発され代替されてしまうという可能性。

では、100円ショップ業界はどうだろうか。
「業界内の競争」はいわずもがなであるが、生き残りをかけた熾烈な競争を展開している状況だ。メーカーの値上げ圧力は強烈な「売り手の交渉力」として作用している。
一方の顧客の買い控えはスイッチして顧客を失うのではないが、結果として顧客喪失をしている状況なので、「買い手の交渉力」の影響も甚大だ。
新規参入に関しては、この環境で100円ショップに参入してくる企業はあまりなさそうなので、「新規参入業者の脅威」は考慮する必要はないだろう。
その代わりに100円ショップに参入するのではないが、スーパーが自社の売り場に100円商品を並べることで、消費者にとっては代替品となる。他の買い物のついでに利用できることから、「代替品の脅威」としては手強い存在だ。
以上のように、5つの力のうち4つまでが非常に強く働き、収益を圧迫してくる状況にあることがわかる。

この分析で影響を及ぼす力が強いところがわかったら、まず、その力を弱めて収益を確保することを考えなくてはならない。
業界第2位のキャンドゥは<百円を維持できるコスト競争力のある会社だけと取引をする>と決断したという。つまり、「売り手の交渉力」に対して手を打とうということだ。しかし、<メーカーの選定は取扱商品の減少にもなりかねない>という弱みも抱えることになる。さらに、キャンドゥには弱みがある。記事によれば、直営店の半数は既に100円越えの商品を扱っているとある。
そもそも100円ショップで消費者が物を買う理由、つまりKBF(Key Buying Factor=購買主要因)は「100円という価格で様々な物が変える」という、「価格と品揃え」はどちらも欠かすことのできない要素であるのだ。そのことから考えれば、単価を守り品揃えが減ることも、100円という価格を維持できないことも100円ショップ業界では許されないことなのだ。

5つの力分析によって、どうにも自社を取り巻く力を弱められないことがわかった場合、「業界定義を変える」という決断もある。業界トップのダイソーの動きは、そちらを指向しているようだ。<数年前から新規店を中心に店の看板に百円を付けなくなった>という。
つまり、実質的な100円ショップ業界からの撤退だ。100円ショップ業界ではなく、一般的な「家庭用品・雑貨販売業界」を戦いの場としたということになるのだ。

<「百円越えの商品が増えれば魅力が減るのでは」。消費者の目は厳しい>という記事では消費者の意見を掲載している。価格の特徴を失い、より広い業界で戦うことは本来的にはより厳しさが待っていることになる。しかし、100円ショップ業界にとどまることもジリ貧の未来を暗示している。あえて、その業界を飛び出す決断もあながち間違いだとは言えないだろう。
<業界3位のセリアは店内の内装にもこだわる>とある。店内改装がどのような効果をもたらすかはわからないが、今まで通りでは立ち行かないが故の決断だろう。
100円ショップ業界という業界自体の経済環境の変化という外的要因を前に命脈が尽きようとしているのは明らかだ。業界自体の最後に企業が巻き込まれないためには、企業自体が変わるほかないのだろう。


2008.10.16

レギュレーションは穴の空くほど読み込め!

ちょっと面白く、少しモノゴトの考え方のヒントになるニュースがあったのでご紹介。


<燃費の良さを競うレースで、7000ccの『コルベット』が優勝>
http://wiredvision.jp/news/200810/2008101522.html

「ええ?あり得ないだろ、それ」・・・とリンクをポチッとクリックする。
このタイトル、ネットのニューズにありがちな「釣り」効果バッチリだ。

「コルベット」なる車が、いかにアメリカ的な男臭くもスパルタンで荒々しい車であり、ガソリンを振りまくようにして走る車なのだと知らない人でも「7000cc」という排気量を示す数字を見れば、タイトルの非現実性は容易に想像できるからだ。

しかし、これは「釣り」記事ではない。事実なのだ。

「燃費の良さを競うレース」は「MPG Marathon」。
レースは「ハイパーマイル」、つまり「燃費を向上させる運転の技術」を競い合うものだ。記事に明記されていないが、そのため、車体はノーマルの状態だろう。
ノーマルの状態で、運転技術によって<1ガロンのガソリンでどれだけの距離を走れるか>を競う。
総合優勝は1500ccエンジンを搭載したトヨタの「ヴィッツ」だったという。これは、ある意味、当たり前な気がする。但し、<84.66マイル毎英ガロン(1リットルあたり29.97キロメートル)>という記録であり、それは<トヨタ自動車による推定燃費を31.81%上回る>というから、ドライバーの技量は相当な物だ。

しかし、キモなのはこのレースのレギュレーションだ。
<自動車メーカーの推定燃費からどの程度伸ばせるか>という「燃費向上率部門」というものがある。
コルベットの推定燃費19.2マイル毎英ガロン(1リットルあたり約6.8キロメートル)だということだ。以前、コルベットのオーナーが知人におり、乗らせてもらったことがあるが、恐ろしく燃費が悪い車なのだ。渋滞にはまるって止まっている間にみるみる燃料計のメーターが下がっていくぐらいだ。

しかし、それだけ燃費の悪い車であれば、技量を活かす余地もあるということではないか。
豪華に毎日1500円のランチを食べていた人が、900円以内に40%節約するのと、もともと500円以内に切り詰めていた人が350円に30%節約するのでは絶対に前者の方が楽だ。
そうして、コルベットで実に、メーカーの<推定燃費19.2マイル毎英ガロン(1リットルあたり約6.8キロメートル)を61.26%も上回って>燃費向上率部門で優勝したということだ。

つまり、レギュレーションは穴が空くほどよく読めということ。また、主催者に確認するのも良いだろう。

北京オリンピック前の「スピード社の水着騒動」は記憶に新しいだろう。日本は「異種の素材使用禁止」というレギュレーションを信じて疑わなかった。スピード社はあえてそのギリギリのところで採用し、「金メダル製造水着」を作り上げた。
このコルベットのドライバーがどのように確認をしたのかは記事からはわからないが、運転の技量もさることながら、レギュレーションのうまい解釈が勝負を決めたと言えるだろう。

効率化の余地という意味で言えば、国別の温暖化ガス削減目標もそうだ。
日本はレギュレーションを作る話し合いの段階で失敗をしたのだ。
レギュレーションはそのまま受け入れてしまう習慣が日本は強いように思う。
「7000ccのコルベットでエコドライブ」はそんなことを考えさせてくれた。

2008.10.15

携帯電話はどう進化すべきか?

キーボードを搭載した新型プラダフォンがLG電子から発表された。日本市場投入の時期は不明だが、iPhoneやブラックベリーとの対決となるのだろう。しかし、スマートフォンは一部のヘビーユーザー層を抱えているものの、一般ユーザーのニーズとは乖離している。今後の携帯電話のあるべき姿を少し考えてみたい。

新型のプラダフォン2は前機種を継承し、iPhoneと同様のタッチスクリーンによる操作と、スライド式のキーボードを引き出せば、ブラックベリーやウィルコムのzero3のような操作も可能になるという、これまた筆者を含めギークな人々のハートを捕らえる仕様となっている。

しかし、一般の人々のニーズはもっと慎ましい。
<6割がケータイの電池が切れると不安に、うち4割は充電器を携行>
http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20381885,00.htm

株式会社アイシェアによるインターネット調査の結果では、携帯電話依存度の高まりによる電池切れの不安と、<コインチャージできるコンビニや携帯ショップなど町なかの充電スポットが充実する中、場所や時間にとらわれずに充電したい人の存在として注目される>と充電器市場拡大の可能性にフォーカスがあたっている。しかし、これは携帯電話そのものが解決すべき課題としてとらえられないだろうか。ノートパソコンのバッテリーの持ちはここ数年で劇的によくなった。携帯電話は何とかならないのだろうか。「電池が切れて困る」というのはユーザーの本質的ニーズだ。派手さはないが、それに対応することは重要ではないだろうか。

もう一つが防水機能だ。ソフトバンクモバイルは今年の夏モデルで防水性をアピールした機種を投入した。同様にドコモにもKDDIにも防水機能対応機はあるものの、携帯電話全体としてはまだ少数派だ。しかし、携帯電話の防水機能に関してはユーザーのニーズは高い。
1年前の調査だが、<「生活防水機能がほしい」72.2%>という結果が、マイボイスコムの調査で明らかになっている。
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/04/_722.html

しかし、それに対してメーカーの取り組みは今一歩遅れていると言えるだろう。今年5月に国民消費生活センターは、水濡れ故障への対応改善を電気通信事業者協会に要請した。
http://www.j-cast.com/2008/05/18019972.html

携帯電話はキャリア各社が販売奨励金を廃止したため、端末価格が1円からあったものが4万~5万円にも跳ね上がっている。そのため割賦販売方式を利用するユーザーも多いが、そうなれば確実に2年は同じ端末を使うことになる。10ヶ月毎に機種変更していた時代とは分けが違うのだ。丈夫で長持ちするためには防水も求められるだろう。

コトラーの製品特性分析のフレームワークで考えてみよう。
カラーバリエーションや、液晶画面が持ち歩く方向で切り替わるモーションセンサーの搭載などは、あればうれしいという「付随機能」に過ぎない。一方、携帯電話の「中核価値」は必要な時にいつでも通話やメールなどでコミュニケーションが取れることだ。そして、そのために「電池が切れないこと」や「水濡れで故障しない」ということは、その中核価値を実現するために欠かせない「実態」である。

製品がコモデティー化すると、どうしても差別化ポイントは「付随機能」レベルの勝負になってくる。しかし、端末価格の上昇によって、ユーザーニーズは変化している。つまり、今、求められているのは「実態」レベルの改善なのだ。

先端的なユーザーにスマートフォンを提供することも大事だが、数多くの一般ユーザーのニーズに応えることが求められているのではないだろうか。

2008.10.14

池袋駅前を掃除した。掃除から学んでみた。

早朝通勤客と夜通し遊んだ帰宅客がすれ違う池袋駅前、朝6時過ぎ。
路上にはタバコの吸い殻、空き缶、ペットボトル、ガム、ティッシュなど種種雑多なゴミがこれでもかと散乱している。これからここを清掃するのだ。誰に命じられたわけでもなく、自主活動として。


清掃活動を展開する団体はいくつかあるが、有名なものとしては、平成5年にカー用品チェーンイエローハットの創業者・鍵山秀三郎氏の掃除哲学に学ぼうとして結成された「日本を美しくする会」がある。<掃除を通して、自分たちの「心の荒み(すさみ)」と「社会の荒み(すさみ)」をなくすことを目指しています>との活動趣旨を掲げている。
同会の活動は「掃除に学ぶ会」として各地でトイレ掃除や地域の清掃を展開。さらに、その趣旨に賛同したいくつかの企業で、「職場のトイレ掃除の実践」などが派生的に行われているという。

今回の池袋の街頭掃除は日本大学経済学部准教授の大森信氏が発起人である。組織認識論の研究として、「掃除によるリーダー育成、およびコミュニティー形成」を検証する活動の一環だ。

業務に取り組む姿勢として整理整頓や職場環境の整備を重要視する企業は多い。製造業では当たり前であるが、意外なことにネットベンチャー企業としてスタートした楽天も社長の三木谷氏のこだわりで、各自の机の周りや椅子の果てまでもきれいに磨き上げてから始業することが徹底されているという。しかし、トイレ掃除を含む、清掃活動は正規の業務ではない。街頭掃除はもとより、職場のトイレも仕事と直接関連する場ではない。あえて、その「人が好んでやらないことを行うことで、身につくものがある」ということが掃除に取り組む企業の狙いであるようだ。

正直、この手の精神主義的な考え方は好きではないのだが、大森准教授が学会で発表した内容に触発されて体験を志願したのだ。大森氏の発表は、ある企業におけるトイレ清掃活動を通じた新入社員の心理変容についてであった。わずか2週間で自発性と規律性の向上したという効用が見られたという。僅か一度の体験でわかるものではないであろうが、何らか感じるものもあろうと思ったからだ。


今日の掃除には9名の参加者があった。美容師、地元企業の勤め人、区議会議員などなど。各々の参加目的はわからないものの、手に手に清掃道具を持ち、てきぱきと池袋東口の駅前を掃除していく。筆者もほうきとちり取りでタバコの吸い殻などを集めつつ、空き缶などの大きなゴミをビニールに回収していった。
大森氏によると、清掃活動は、「掃除から学ぶ」という段階に至る前に「掃除のしかたを学ぶ」という段階を経るという。しかし、トイレのような場所に比べて街頭は難易度は高くない。ほうきとちり取りで、ささっと鮮やかに吸い殻を集めることはすぐできるようになる。なんとなく、ディズニーランドの掃除のお兄さんになった気分で少し楽しい。誰が飲み捨てたかわからないような空き缶や、食べ物のカスなどを集めるのは抵抗があったが、それもすぐ慣れた。
自分でも少し意外な気がした。恐らく命じられて一人で掃除を行う場合、その抵抗感の払拭は難しかったであろうし、ほうきとちり取りの扱いに楽しさを覚えることもなかっただろう。自発性が一つのカギであるのだと思う。だとすると、企業内での「掃除を通じた人材育成」を考える場合、「やらされ感」が出ないことが大きなポイントとなることがわかる。

もう一つの発見は、清掃終了後にあった。東口のパルコ前からはじめて、西武百貨店の端までを掃除した。所要時間約30分という短時間であったが、掃除開始前には「これは掃除してもムリだろう」というほどゴミが散乱していた駅前が、見違えるほどきれいになっていたことだ。ゴミ一つないとはこのことで、確かに9人で隅々まで掃除したので当たり前ではあるが、少々感動を覚えた。
成果が形として目に見えること。その重要さが理解できる。
掃除した側からタバコを捨てる馬鹿もいるのだが、それも黙々と集める。一見、賽の河原のような作業ではあるが、一度きれいになった状態と、きれいにする方法、きれいにできるという事実を知っているとそれもあまり辛くないこともわかった。

たった一度の体験で「掃除に学ぶ」というレベルにはなっていないものの、企業が決して精神主義、根性論だけでこうした活動を取り入れているのではないこともわかった。しかし、掃除という手段だけでなく、「やらされ感」を持たさないことと、「成果を目に見えるようにすること」などは当たり前ながら、あらゆる業務で留意すべきであることであると再確認できた次第だ。

2008.10.10

「1000文字でまとめる」ということ

Blog書きをしているとどうしても鈍くなるので気をつけているのだが、つい疎かになってしまうのが文字数の感覚だ。Blogだけではなく、日経BizPlusの連載を持っていた時もそうだ。文字数制限に甘いのがネットの特徴ともいえるだろう。
その点、雑誌原稿はシビアだ。規定の文字数にきっちり納めなくてはならない。それでも3,000文字程度あれば、結構調節もきく。あまり文章を書き慣れていない人だと、「何千字も書くのは大変ですよね!」と言うのだが実際には長い文章はそれなりにやりやすいのである。

現在書いている中では、日本実業出版社「ザッツ営業」誌に連載している「定番のヒミツ」が一番難物なのだ。(→最新号リンク
文字数、950字。中央にイメージ写真が入る1ページもののコラムだから、概ねそんな制限になる。読者がサラリと読めるようにという編集部からの注文でもある。読者はサラリでも、書く方はサラリとはいかない。文章を簡潔に。無駄な接続詞を省く。Blogで普段ダラダラ書いている文章が矯正されるようでありがたくもあるのだが、結構苦労する。

「定番のヒミツ」とほぼ同じ1000文字という制限の中で、しかも小説という、コラムより難易度がまた一段階上のジャンルで文章を競い合うサイトが誕生した。
「千文字小説」 http://www.1000moji.com/ 

サイトには次のような説明がある。
<1000文字以内、できれば1000文字ちょうどで書かれた超短編小説です。誰にでも気軽に書ける反面、制限された短さで表現しなければならない難しさもあり、上級者にも初心者にも楽しめる新ジャンル小説です>
星新一や筒井康隆のショートショートに学生の頃はまって読みふけったことがあるが、読むのと書くのは大違いだ。前述の通り、長く書くより短くまとめることは難しい。
しかし、サイトに投稿された1000文字小説の中には力作も多い。

日頃、直接的に自分自身のオピニオンを発信しているけれど、せっかくユニークなサイトが立ち上がったので、小説という形態で、間接的に人に伝えることも試してみようかなとも思った。

2008.10.09

トヨタ「レクサス・ハイブリッド戦略」の期待効果

トヨタはレクサスの全車種にハイブリッドを搭載するという。現状の搭載比率約10%から一気に加速するわけだ。<独メルセデス・ベンツなど海外高級車メーカーに対抗する>ためとしているが、その狙いはどこにあるのだろうか。

<トヨタの「レクサス」、ハイブリッドを全車種に設定>(日経本紙13面のダイジェスト)
http://car.nikkei.co.jp/news/business/index2.cfm

確かにメルセデスはトヨタのニッケル水素バッテリーを技術的に上回るとされる、リチウムイオンバッテリーによるハイブリッドを搭載したSクラスを先月発表している。「環境にはディーゼルのう方が優れている」と主張し続けてきたメルセデスが、プリウス発売以来10年目にして始めて真っ向勝負を挑んできたのだといえる。
<メルセデスベンツ Sクラス にハイブリッド---12.6km/リットル>
http://response.jp/issue/2008/0918/article113865_1.html

対するトヨタの思惑はどこにあるのか推察してみよう。ハイブリッド戦略の狙いについては<米金融危機などを背景に世界で高級車販売が落ち込んでいるため、売り物のハイブリッド技術を活用して販売拡大を目指す>と発表されている。
<米金融危機などを背景に世界で高級車販売が落ち込んでいるため>を解釈するなら、高級車を購入できる富裕層はますます限定されてくるということを予想してのことだろう。その点はメルセデスも同様の認識なのではないだろうか。その限られた層の「こだわり」にいかに応えるかが勝負の分かれ目となるのだ。
結局のところ、ディーゼルからハイブリッドへの転換は、「ガソリン車にこだわる層」の取り合いに競争のステージが移ったのだと考えられる。それまで「棲み分け」をしていたディーゼルとハイブリッドだが、レクサスハイブリッドの成功でユーザーのガソリン車志向が明らかになったともいえる。そうなると、もはや売る側の理論で「環境にはディーゼル!」と強要することはできなくなったわけだ。

富裕層の関心は、燃費効率もさることながら、資産的な余力があるため環境負荷軽減という観点は強い。しかし自らの快適性は失いたくない。故に、ガソリン車にこだわる。さらに言えば、環境負荷軽減を重視するなら小型車に乗ればいいのだが、とはいえ、大型車の快適性は失いたくない。という、ユーザー心理を洞察してメルセデスはSクラスをハイブリッド対決の戦場としてきたのだろう。

対するトヨタは、もう一歩先を行く戦略なのだろう。米国におけるプリウスの購買理由は「経済性」より、「環境負荷軽減」に重きが置かれていた。「環境のことを考える人が賢く選択するクールな車」というポジションを獲得していたのだ。
今後、環境意識がさらに高まれば、大型車からの乗り換えも進むかもしれない。そして<米金融危機などを背景に>の文脈からすると、経済的な理由からも車のダウンサイジングに踏み切らざるを得ない層も出てくるかもしれない。しかし、何らかのこだわりは捨てたくないときに「賢い選択」というポジションが効いてくるわけだ。


上記のとおり、競合戦略として全車ハイブリッド搭載は有効だと考えられるが、トヨタ全社にとっても大きな意味があるはずだ。
レクサスはトヨタとは別ブランドだが、良きにつけ悪しきにつけ、両者は同じトヨタの傘の下と見られている。すると、レクサスの動きはトヨタブランド全体のポジショニングに大きく影響することになる。
トヨタはここ10年来「エコ」を大きく掲げてきた。車という環境負荷を高める商品を作っているが、その軽減のために注力するという姿勢だ。このポジショニングの明確化の意義は大きい。
かつて、米国ビッグ3がここまで凋落する前に、ノースウエスタン大学教授・フィリップ・コトラーが自動車会社のポジショニングについて指摘している。
「地上最強のドライビングマシン」(BMW)、「世界一安全な車」(ボルボ)など、欧州のプレミアムカーはポジショニングが極めて明確であるのに対し、米国勢はオールラインナップの弊害で、ポジショニングがあいまいになってしまっている。その結果、消費者に魅力が伝わらなくなっているということだ。(著書”コトラーのマーケティングコンセプト”より)
オールラインナップメーカーといえば、トヨタも同じである。エコに舵を切る前のトヨタのイメージとは何だっただろうか。「経済的なコンパクトカーメーカー」だろうか。しかし、それはもはや実態を示していないし、消費者に魅力的にも映らないだろう。

「エコ」はトヨタのブランド戦略の要諦だ。フラッグシップであるレクサス全車がハイブリッドを搭載するということは、「トヨタ=エコ」というブランド強化を図るという大きな効果も期待できると考えられるのである。

2008.10.08

追悼・緒形拳さん

最期の姿を親友である津川雅彦さんがBlogで書き綴っている。
<冗談交えて、医者に危篤を宣言されてる患者とは思えない、明るい台詞を残して、その4時間後には、歌舞伎役者のように、虚空を睨み付けながら、静かに、静かに、息を引き取った!実に安らかに、全く苦しむ様子も見せず、名優らしい!カッコいい!立派な最後だった!俺もあんな死に方したいと、本気で思えた!>
http://www.santanokakurega.com/2008/10/1051153.html

筆者の大好きな役者だった。
何より、その表情にほれ込んでいた。厳しく、でも人懐こく。時にはにかんだような笑顔を浮かべる。こんないい顔の男はそうはいないと思う。そして、そんな顔になれたらと思うものの、ちょっと無理な気がして、少し嫉妬をおぼる顔だった。


9日からスタートするテレビドラマ「風のガーデン」が遺作となってしまった。
「風のガーデン」のテーマは、「人間の生と死」。そのテーマについて「いや応なく人って老いていくわけで、それでも病になるわけで、そしていや応なく死が訪れるわけで…」とも語ったという。
http://news.livedoor.com/article/detail/3850292/

「いや応なく病になり」と語ってはいたものの、1999年頃から患っていた肝臓ガンに対し、周囲にまったく知らせず手術を受けずに投薬治療を受けながら俳優活動を続けていたという。いや応もないが、壮絶な生きる、そして演じる戦いだったのだろう。

緒形拳さんのBlog「ハラハチブンメー」の更新も、9月30日の記者会見の様子が最後になっている。
http://ogata-ken.com/framepage-top.html
Blogで紹介されている粗食ぶりは、やはり今にして思えば病を感じさせるが、とても穏やかな表情をしている。。人は一緒にいても病に気付きはしなかっただろう。


「蟷螂(とうろう)の斧(おの)のようなものですが、人は老いと戦わねばならない。体は多少くたびれてきたが、気力でカバーして、『こんな役者もいたなあ』と思ってもらえる仕事を積み重ねたい」
朝日新聞のインタビューに今年の3月に応えた言葉だという。
http://www.asahi.com/culture/update/1007/TKY200810070057.html

緒形拳さんの本名は緒形明伸 (あきのぶ)だったという。
老いと戦い、病と闘い、気力でカバーし最後まで仕事を続けた緒形明伸さんという人は逝ってしまったけれど、緒形拳という役者は、人々の記憶と心に永遠に残るのだと思う。

2008.10.07

行き着く先は「らくらくホン」? 消費者ニーズに異変あり

機能高度化の一途をたどるデジタルや家電製品に「No!」を言う消費者が増えてきたようだ。この先どこへ向かうのだろうか。

日経新聞の土曜別刷・日経PLUS1の10月4日号に「その機能、必要ですか?」というアンケート調査の結果が紹介された。
<「自動でラクラク」「ボタン一発で簡単操作」--。家電製品などの機能は新製品が出るたびに新しいものが加わる一方で「多すぎて使いこなせない」との声もある。>として、機能の必要性についてマクロミルによるネット調査と、日経生活モニターから声を集めたという。

特徴的なところでは、デジタルカメラの「手ぶれ補正」や「赤目防止」の機能については95%以上が「必要」と回答したのに対し、「笑顔検出機能(被写体が笑ったときに自動撮影する)」は65%に過ぎなかった。また、テレビの「二画面表示機能」も35%が「不要」との回答であった。日経生活モニターの声も「面白半分で使えても結局、実用的でない機能が多い」(40代男性)、「分からない機能が多くて触るのも怖い」(40代女性)などの否定的な意見が上がっていた。

このような意見は全年齢で見れば確かに現れるのかもしれないが、若年層は違うかもしれないと思ったところ、実は同様の傾向が他の調査でも示されていた。
<20代の40パーセント弱 シンプル携帯「支持」の意外>
http://news.livedoor.com/article/detail/3845919/

ネットマーケティングのアイシェア社による調査結果。<20歳代から40歳代の男女801人を対象に「多機能携帯とシンプル携帯、どちらに注目しているか」と質問したところ、「シンプル携帯」と答えた人が全体の4割を占めた>という。(詳細は上記リンク先記事参照)

携帯電話は多機能化の一途をたどるデジタル製品の典型だ。各企業が他社の端末と差別化を図らんと、こぞって機能を盛り込んだ結果、すでにメイン機能以外はどんな機能がついているのかすらユーザーが把握できなくなって久しい。しかし、それはユーザーの実情を見ていないメーカー間競争ではなかっただろうか。
確かに、カメラがついていて、その画素数が高いほうがいい。音楽も聴けたほうがいい。ワンセグも見られたほうがいい。だが、それは市場全体を見渡した最大公約数に過ぎない。メーカーが空想する「消費者」像からは魅力的に見えるかもしれない。しかし、それが実際の個々のユーザーからの支持につながるとは限らないのだ。

消費者の多様化というキーワードが言われるようになって久しい。しかし、その意味を今一度反芻してみることが必要なのではないだろうか。例えば、携帯電話は各キャリアもユーザーのニーズに応えて、機能を省いたシンプルな機種を投入し始めた。前出の記事は以下のように締めくくっている。

<新機種の価格相場は多機能タイプが5万円前後、シンプル携帯は3万円前後で、その差は2万円。豊富な機能が搭載されていても、使いきれるかわからない。それなら「最低限の機能で安いほうがいい」というのが、どうやら(ユーザーの)本音のようだ。>

20世紀のモダニズム建築を代表するドイツ の建築家、ミース・ファン・デル・ローエ(Mies van der Rohe、1886~1969)は「Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)」という言葉を遺した。その言葉どおり、ミースは古典的な建築様式を脱し、鉄・コンクリート・ガラスを用いた新しく合理的な様式を広めた。21世紀の今日、それらの建築物を見ても無駄を削ぎ落とした美しさが十分に感じられる。

タイトルに掲出した「らくらくホン」は1999年に発売され、以来5世代目が発売されており、昨年累計1,000万台が販売された。「初心者や高齢者でも使えるようなシンプルな携帯電話」というコンセプトからすると、昨今のらくらくホンは少々多機能化が進みすぎている感もある。らくらくホン自体も、その他の携帯電話も、さらには、多機能化しすぎた全ての家電やデジタル製品も、一度、「Less is more」という言葉の意味を考え、無駄を削ぎ落とした原点回帰が必要になっているのだろう。


2008.10.06

瀬戸内寂聴さんのケータイ小説に見る「プロ根性」

「86歳にしてケータイ小説デビュー」と先月下旬に大きな反響を呼んだ、瀬戸内寂聴氏。一見、無謀とも思われるその挑戦の意義を考察する。

まずはその作品を一読してほしい。ケータイ小説サイト「野いちご」でパソコンからでも閲読ができる。
http://no-ichigo.jp/read/book/book_id/89873

ケータイ小説特有の文章の短さや改行が、パソコンで読むとより目に付くが、すぐに気にならなくなる。それよりも、今まで試しにいくつか読んでみたケータイ小説といわれるものと比べて、まったく違和感がないことに驚く。種明かしをされなければ、これが谷崎潤一郎賞をはじめとして、野間文芸賞と数々の賞に輝いた文学者の手によるものとは思わないだろう。寂聴さんは、それだけ完璧に「なりきって」執筆したのだろう。
<「ケータイ小説については、日本語をだめにするとか、文学ではないとか、多くの批判を耳にしていた」と彼女は言う。「でも、読んでみたら売れている理由が分かった。自分でも書けると思った」>(ロイター・TIメディイアニュース)と各メディアには寂聴さんのコメントが掲載されている。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0809/26/news091.html

しかし、文学者がケータイ小説家になりきって執筆するというのは、生半可な大変さではなかっであろうことは想像に難くない。ケータイ小説の特徴はその文体にある。文体というのは背適当ではないかもしれない。何しろ文体と呼べるようなものが存在していないのが特徴だからだ。風景や心理、情景の描写がない。もしくは極度に少ない。ボキャブラリーも極端に少なく、修辞法も用いられることはない。そうした。意図せぬ極限までのそぎ落としが、独特の空気感を作り上げているのだ。
文学者がその空気感を再現するためには、本能的に用いてしまう文章のテクニックを全て禁則化することになる。これは恐ろしく辛いことではなかっただろうか。

その文学者としてありえないような世界に踏み込むために、寂聴さんは若者に「なりきり」をしている。
話題になった「野いちご」の作者プロフィールも見てみよう。
http://no-ichigo.jp/profile/show/member_id/73865?noichigo=kkjaqr0fa1bmgbfmideseh9sgfah2jv6

【自己紹介】最近ケータイ小説はじめました ドキドキッ ヾ(=^▽^=)ノ

確かに、初めてケータイ小説を書きますという内容も本当であるし、ここでは再現できないが、ケータイ絵文字も多用されたプロフィールは、若い女性そのものではないだろうか。
ちなみに、<【使っている携帯電話】 ピンクのドコモ>は寂聴さんご愛用のピンクのらくらくホンのことらしい。
このように、「なりきれること」は文学者であると同時に「文章のプロ」という「プロ根性」が伝わってくる。

ケータイ小説になりきりながらも、自身のバックグラウンドと得意領域をたくみに活かしているのも見落とせない。ペンネームの「ぱーぷる」とは、近年現代語訳に力を入れている源氏物語の作者である紫式部から取っている。ケータイ小説の主人公の名前は「ヒカル」であり、これは光源氏だ。
ケータイ小説に込めたメッセージは寂聴さんの尼僧として、または、自らの人生を振り返ってのものでもあるのだろう。
<「源氏は自身の罪を悔い改めていない」と彼女は指摘する。「だが悪いことをしたら、それを悔い改めなければならない。だからヒカルに『悪いことをしたから幸せになってはいけない』というセリフを言わせた」>(前出ロイター・TIメディイアニュース)

高齢の高名な文学者にして尼僧である寂聴氏であるが、特に同じく高齢な人は彼女の前半生を批判的に語る人も多い。Wikipediaに記載されている経歴を見るとわかる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%80%AC%E6%88%B8%E5%86%85%E5%AF%82%E8%81%B4

夫と子供を捨てて年下の男性と逃避行の後、小説家デビューしいくつかの賞を得るも、その風俗的な作風に批判が集まる。また、その後も妻帯者と長い不倫関係を持つち、その体験をもとにした小説で作家としての地位を確立するなど、僧籍に入るまでは波乱万丈に満ちている。
しかし、ふと考えると、寂聴さんの前半生はケータイ小説にも似ていないだろうか。ケータイ小説は若い女性の主人公を中心として、お約束のようにセックスやレイプ、妊娠、また恋人の死などがものすごいスピードで進行するのが特徴だ。寂聴さんの人生の経年とは内容を異にするが、年長者が好感を持って語らないという点では類似点があるだろう。

「86歳にしてケータイ小説デビュー」という挑戦とその成果に注目が集まり、そのプロ根性としての「なりきり」にも感嘆するが、この小説と執筆から感じられるプロ根性はさらに奥くが深いものだと思う。
自らの前半生の経験も踏まえ、さらに僧籍に入ってからの信仰生活で見えてきたものも下敷きにし、得意の源氏物語から1000年前の恋愛生活の過ちを正すという大きなメッセージが「あしたの空」には込められているのではないか。
だとすると、寂聴さんのプロ根性とは、単に「なりきる」だけではなく、ケータイ小説という、本来のテクニックが活かせないフィールドでも自らのスタイルと主張を貫けることを体現しているのだろう。
人生の偉大なる先輩であり、プロの鏡としての姿から学ぶところは大きい。

2008.10.03

任天堂DSiは「平行進化」からの離脱戦略か?

「あまり代り映えがしない」「中途半端」と新たに発売された「ニンテンドーDSi」に対する評価はあまり高いとは言えないようだ。しかし、別の見方をすると、ニンテンドーらしい独自のポジショニングを取ろうという意図が感じられるのである。

DSシリーズとしては三世代目となった任天堂の「DSi」。正式発表前に漏れてくる情報においても、新機種に対する期待の声よりも、「どこが新しいのかよくわからない」というネガティブな反応がインターネット上で散見された。そして、昨日の発表においても、やはり「予想の範囲内」という反応が大勢を占めるようだ。

ニュースリリースからDS lightとの比較を見てみよう。
http://www.nintendo.co.jp/corporate/release/2008/081002.html 

まず、サイズの変更が目につく。
・ほぼ同じ本体サイズながら厚さを2.6mm(約12%)薄型化
・2つの液晶画面は3.0インチから3.25インチへと(面積比で約17%)拡大
「12%薄型化と17%画面拡大」と数値で示されるとそれなりの改良と感じられるが、実際の厚さや大きさを考えると、確かに微妙ではある。

サイズを優先して切り捨てたものがある。
<ゲームボーイアドバンスソフト用スロットは、本体サイズを少しでも薄くするために「ニンテンドーDSi」からは削除>とのことだ。そのため当然ながら<ゲームボーイアドバンス用ソフトがプレイ不可能なだけではなく、ゲームボーイアドバンスソフト用スロットを利用するニンテンドーDS用ソフトもプレイできません>ということになる。

新たに搭載された機能の目玉は以下だろう。
・30万画素のカメラ機能搭載
・SDメモリーカードスロット
・Wi-Fi通信環境下でインターネット閲覧が可能
しかし、「今さら30万画素のカメラか?」「SDカードスロットつけて音楽が聴けるようになっても、DSの音源では厳しいのではないか?」「DSでわざわざネット見るのか?」という声も多い。

任天堂は独自のゲーム機能を一つ切り捨て、カメラやSDカードスロットを搭載し、インターネットの閲覧ができるようにしたわけだ。それが何を意味するのか。

あるサイトでは、重要なキーワードで警鐘を鳴らしている。
<市場の第一印象は冷ややか~任天堂、DS新型機「DSi」発表>
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2008/10/dsdsi111.html
<携帯電話や他のモバイル端末との差別化かつきにくくなっている。逆にいえば携帯電話に近づきつつあると表現してもよい>とし、<これは顧客のニーズに応える形で機能を追加していけば、結局似たような仕様のものが完成してしまうという、いわば「平行進化」の結果ではないかと思われる>と評している。

「平行進化」の本来の意味とは、<生物の進化に関する現象のひとつで、異なった種において、似通った方向の進化が見られる現象を指す。平行進化の結果が収斂である場合もある(Wikipedia)>というもの。
上記のサイトでの指摘は、生物の世界ではなく、それを人が持つ、「携帯端末」の世界で起きていることを示している。携帯電話も、ゲーム機も、音楽プレイヤーも、小型のパソコンも、今日では、ほぼ同じ機能を搭載し、カニバリゼーション(食い合い)を起こしているのは確かである。そして、任天堂DSiもまさにその渦中に参戦したとも考えられる。

カニバリによって奪い合うものは、物理的にはユーザーのポケットやカバンの中の一定の領域である。できれば誰しもいくつもの端末を持ち歩きたくはない。機能がかぶってくれば、どれがユーザーの「オンリーワン端末」となるかという熾烈な争いが展開されることになる。
目に見えないものの奪い合いも重要だ。ユーザーの「時間」である。単機能同士であれば、ユーザーの目的によって端末毎にユーザーが使用時間を振り分けることになるが、ユーザーの求めるあらゆる機能が搭載されれば、全ての時間はその端末が占有することになる。

しかし、その戦いに参戦するように見えて、実際には任天堂は独自のポジションを獲得しようとしていると解釈できる。
日経新聞に岩田聡社長のコメントが掲載されている。
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITea000002102008&landing=Next
<「カメラ機能を思い切り遊びの方向に振ったと考えてもらえばいい」>と30万画素のカメラの意味について述べている。撮影した映像に落書きができたり、自由に変形させたりと、そのまま保存するだけでなく、「遊びの素材としての写真を撮るためのカメラ」という位置づけが明確に示されているのだ。
音楽プレイヤー機能に関しても<「音を触って楽しむ道具としても宴会の一発芸としても使ってもらえる」>と、<音の高さや再生スピードを自由に変えられるほか、歌声を「さんにんハーモニー」に変換するなどの特殊効果を付けられる>という「遊びの要素」を強調している。

端末が平行進化し、カニバリはますます熾烈さを増すだろう。しかし、ゲーム機メーカーであるという自社のドメインから、「遊びの道具」というポジショニングで差別化と独自の生存領域を確保するという戦略の明確さは秀絶だ。
技術の高度化は容易に平行進化を招くのは確かだ。しかし、この任天堂の戦略には携帯端末だけでなく、他のカテゴリーでも学べるものが大きいのではないだろうか。

2008.10.02

バナナダイエットは効果があるのか?・・・をロジックでちょっと斬ってみる。

「先生、バナナはおやつに入りますか?」と遠足の前に確認してしまう、幼少の頃まだまだバナナが高価であった世代としては、神をも恐れぬ大胆な所行としか思えないのだが事実、店先からバナナの姿が消えて早、数週間経つ。「バナナはどこへ行ったかな」と、童謡の「飛んでったバナナ」の一節を口ずさんでしまいそうだが、歌詞のようにバナナは「おひげ生やした船長さん」の口にではなく、ダイエッターの胃袋に次々と収まっているのだ。

このダイエット方法がどのような過程で流行したのかはわからないが、「おもいッきりテレビ」でもやはり紹介されていたようだ。
<朝、バナナを食べるとメタボを撃退できる!? >
http://www.ntv.co.jp/omoii-tv/teacher/080605.html
薬学博士がバナナを握りしめて、その効用を解説している。・・・確かに効果がありそうだ。そして大流行のポイントは、その手軽さにある。朝、常温の水を飲みながら、バナナを1~2本食べる。それ以外は食べない。昼・夜は普通に食事をしてOK。
バナナはアスリートが競技前や試合中に摂取するように、吸収がよいためエネルギー変換が早い。これは事実だ。また、甘みが食べた時の満足度を高めるし、繊維質が多いため便通がよくなるなどといったイメージが強い。だが、バナナはイモのような食感ではあるがれっきとした果実であり、水分が全体の4分の3を占めている。
一日3度の食事のうち、1回を水分の多い食品と水だけを摂取するのであれば、確かにやせるのも頷ける。

しかし、ブームの広まりと共に成功者と失敗者が出はじめる。その両者を分けるものは何なのかという点から検証するのが良さそうだ。
観察者バイアスというものがある。実験を行い観察している者は、実際には仮説を立て、何らかの結果が出現することを期待する。そのため、期待している要素に注視するあまり、それ以外の要素を見落とすということを起こしがちになる。
「バナナダイエット」にもこの観察者バイアスが働いていないだろうか。

「人はパンのみに生くるにあらず」とは、聖句の本来の意味から乖離して用いられていることの方が多い。「ただ、神の口よりいづるすべての言葉による」と続き、「信仰は食欲にも勝る尊いものである」という言葉として解釈できる。
だがしかし、実際には間違った解釈通り、人間は様々な食べ物を摂取して生きている。もちろん、バナナだけではない。さらに、バナナダイエットという一種の戒律の緩いところは、「昼食、夕食は普通に食べてOK」なのだ。いろいろなものを食べる。その食べる内容が問題なのだ。
成功した人は、「せっかく、朝をバナナだけで我慢したのだから」と、それ以外の食事も控えめにしていなかっただろうか。また、「おもいッきりテレビ」で博士が<食事に頼るだけでなく、適度に歩くなど運動を取り入れると良い>としているが、今まで運動をしていなかった人が、運動をしたらどうなるか。

「インフルエンザの予防接種を受けている人は風邪をひきにくい」という通説がある。しかし、当然のことながらインフルエンザのワクチンは普通の風邪に効果はない。にもかかわらず、差異があるとしたら、「予防接種を受ける人は健康意識が高く、うがい、手洗い、マスク着用などを行っているから風邪の罹患率が低い」という結果だろうから、観察事項にバイアスがかかっている結果の通説であると言える。
バナナダイエットも同じことが言えるのではないか。

では、失敗した人はどうか。そのまるで逆だ。「朝食をバナナだけで済ませたから→やせる→その他の食事はOK」。その他の食事で、朝食のひもじさを補ってしまえばアウトなのは自明の理。にも関わらず、「バナナダイエットをしたのに失敗した→効果がない」となる。観察者バイアスの「期待している要素に注視するあまり、それ以外の要素を見落とす」という現象そのものだ。

今までにも「○○ダイエット」と、「○○」を食べてやせる手法は数多く紹介されてきた。ココアや納豆などなど。その度に成功者と失敗者が出て、真偽の程が論議される。多くの場合、「栄養学的に言うと大きな効果は期待できない」などというオチがついたりする。
今回のバナナがどのような結果になるかはわからないが、ダイエットには必ず「バイアス」が大きく作用することがわかる。要するに、「実践する人の総合的な心がけ次第」という、極めて当たり前な結論になるのだろう。

かく言う筆者も、健康診断で「メタボ予備軍」なる、不名誉な烙印を押されてしまった。ダイエットの必要に迫られている。「総合的に心がけをよく」してみようと思う。とはいえ一方で、バナナ好きとしては店頭に普通にバナナが戻ってきてくれることも願っている次第だ。

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