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2008.10.03

任天堂DSiは「平行進化」からの離脱戦略か?

「あまり代り映えがしない」「中途半端」と新たに発売された「ニンテンドーDSi」に対する評価はあまり高いとは言えないようだ。しかし、別の見方をすると、ニンテンドーらしい独自のポジショニングを取ろうという意図が感じられるのである。

DSシリーズとしては三世代目となった任天堂の「DSi」。正式発表前に漏れてくる情報においても、新機種に対する期待の声よりも、「どこが新しいのかよくわからない」というネガティブな反応がインターネット上で散見された。そして、昨日の発表においても、やはり「予想の範囲内」という反応が大勢を占めるようだ。

ニュースリリースからDS lightとの比較を見てみよう。
http://www.nintendo.co.jp/corporate/release/2008/081002.html 

まず、サイズの変更が目につく。
・ほぼ同じ本体サイズながら厚さを2.6mm(約12%)薄型化
・2つの液晶画面は3.0インチから3.25インチへと(面積比で約17%)拡大
「12%薄型化と17%画面拡大」と数値で示されるとそれなりの改良と感じられるが、実際の厚さや大きさを考えると、確かに微妙ではある。

サイズを優先して切り捨てたものがある。
<ゲームボーイアドバンスソフト用スロットは、本体サイズを少しでも薄くするために「ニンテンドーDSi」からは削除>とのことだ。そのため当然ながら<ゲームボーイアドバンス用ソフトがプレイ不可能なだけではなく、ゲームボーイアドバンスソフト用スロットを利用するニンテンドーDS用ソフトもプレイできません>ということになる。

新たに搭載された機能の目玉は以下だろう。
・30万画素のカメラ機能搭載
・SDメモリーカードスロット
・Wi-Fi通信環境下でインターネット閲覧が可能
しかし、「今さら30万画素のカメラか?」「SDカードスロットつけて音楽が聴けるようになっても、DSの音源では厳しいのではないか?」「DSでわざわざネット見るのか?」という声も多い。

任天堂は独自のゲーム機能を一つ切り捨て、カメラやSDカードスロットを搭載し、インターネットの閲覧ができるようにしたわけだ。それが何を意味するのか。

あるサイトでは、重要なキーワードで警鐘を鳴らしている。
<市場の第一印象は冷ややか~任天堂、DS新型機「DSi」発表>
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2008/10/dsdsi111.html
<携帯電話や他のモバイル端末との差別化かつきにくくなっている。逆にいえば携帯電話に近づきつつあると表現してもよい>とし、<これは顧客のニーズに応える形で機能を追加していけば、結局似たような仕様のものが完成してしまうという、いわば「平行進化」の結果ではないかと思われる>と評している。

「平行進化」の本来の意味とは、<生物の進化に関する現象のひとつで、異なった種において、似通った方向の進化が見られる現象を指す。平行進化の結果が収斂である場合もある(Wikipedia)>というもの。
上記のサイトでの指摘は、生物の世界ではなく、それを人が持つ、「携帯端末」の世界で起きていることを示している。携帯電話も、ゲーム機も、音楽プレイヤーも、小型のパソコンも、今日では、ほぼ同じ機能を搭載し、カニバリゼーション(食い合い)を起こしているのは確かである。そして、任天堂DSiもまさにその渦中に参戦したとも考えられる。

カニバリによって奪い合うものは、物理的にはユーザーのポケットやカバンの中の一定の領域である。できれば誰しもいくつもの端末を持ち歩きたくはない。機能がかぶってくれば、どれがユーザーの「オンリーワン端末」となるかという熾烈な争いが展開されることになる。
目に見えないものの奪い合いも重要だ。ユーザーの「時間」である。単機能同士であれば、ユーザーの目的によって端末毎にユーザーが使用時間を振り分けることになるが、ユーザーの求めるあらゆる機能が搭載されれば、全ての時間はその端末が占有することになる。

しかし、その戦いに参戦するように見えて、実際には任天堂は独自のポジションを獲得しようとしていると解釈できる。
日経新聞に岩田聡社長のコメントが掲載されている。
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITea000002102008&landing=Next
<「カメラ機能を思い切り遊びの方向に振ったと考えてもらえばいい」>と30万画素のカメラの意味について述べている。撮影した映像に落書きができたり、自由に変形させたりと、そのまま保存するだけでなく、「遊びの素材としての写真を撮るためのカメラ」という位置づけが明確に示されているのだ。
音楽プレイヤー機能に関しても<「音を触って楽しむ道具としても宴会の一発芸としても使ってもらえる」>と、<音の高さや再生スピードを自由に変えられるほか、歌声を「さんにんハーモニー」に変換するなどの特殊効果を付けられる>という「遊びの要素」を強調している。

端末が平行進化し、カニバリはますます熾烈さを増すだろう。しかし、ゲーム機メーカーであるという自社のドメインから、「遊びの道具」というポジショニングで差別化と独自の生存領域を確保するという戦略の明確さは秀絶だ。
技術の高度化は容易に平行進化を招くのは確かだ。しかし、この任天堂の戦略には携帯端末だけでなく、他のカテゴリーでも学べるものが大きいのではないだろうか。

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