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2008.09.24

“現場に効く”マーケティングの基本理論・第11回

インタラクティブマーケティングの専門誌「月刊im press(アイ・エム・プレス)」10月号が発売されましたので、連載バックナンバーをアップします。

本誌では最終回である連載第12回が掲載されています。
ご愛読いただきました購読者の方々、ご協力いただきましたアイ・エム・プレスの編集長、編集者の皆様に厚く御礼申し上げます。

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“現場に効く”マーケティングの基本理論

あまりに“基本”と思われ忘れられているようなマーケティング理論。しかし、日々の業務が行われる“現場”で今一度振り返ってみれば、思わぬ“再発見”があるのだ。

第11回「“コミュニケーション戦略”は組み合わせが命」

今回は4Pの最後、“Promotion”。しかし、「プロモーション戦略」ではなく、「コミュニケーション戦略」という場合が多い。単なる“セールス・プロモーション”と限定的にとらえないようにするためだ。

■まずはフレームワークで読み解こう

このコミュニケーション戦略を考えるにも、やはりフレームワークで考えていきたい。用いるのは「AIDMAの法則」。

 広告やマーケティングの世界を少しでも囓ったことのある人なら、この「AIDMA」という言葉を1度や2度は聞いたことがあるだろう。生活者が商品購入に至るまでの心の動きと行動を表した代表的なモデルである。

 「AIDMA」は各々「Attention(注目)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字を取っている。つまり、顧客側の心理としては、「これは何だろう」と関心を示し、「もう少しよく知ってみよう」とその商品に注目し、「これは欲しい」と購買欲求が起こる。そのまま購買する場合もあるが、「給料が出たら」とか「次の休みに」とか、いったん記憶に留める場合も多い。その際、忘れないようにする。そして、その時がきて「やっぱりやめた」とならないように、最後に背中を一押しして、購買行動を完結させるという流れである。
 ポイントは、途中で止まらないように、その態度変容を確実に進めること。そのために「組み合わせ」て展開し、ターゲットに対して販売を完結するためのひとつの流れを設計する。コミュニケーション戦略が「コミュニケーション・ミックス」とも呼ばれる所以である。


■最適な「ミックス」を作り出そう

 コミュニケーション・ミックスは上記の広告、広報、セールスプロモーション、人的販売を組み合わせて展開する。そのためにはそれぞれの手法の特徴や得手・不得手を理解することが必要最低限の知識となる(図表1)。11

・広告
広告にはさまざまな手法があるが、ここでは狭義にマス広告を中心に述べる。一見、マス広告の費用、制作費もさることながら、媒体費は非常に高価に思えるが、非常に広範にメッセージが伝えられるため、一人当たりの到達コストは実際には安い。その代わり、ターゲットを説得するような深いコミュニケーションには向いていないため、AIDMAの初期段階を担うものとして考えるべきである。テレビCM、ラジオ広告などの電波媒体は特にAttentionを取る役割として、その後で新聞広告、雑誌広告などの活字媒体で理解を深めさせるという組み合わせが求められる。また、テレビ・新聞などは幅広いターゲットに到達させるのに向いているのに対し、雑誌は雑誌ごとに、ラジオは局ごとに読者、リスナーの特性があるため、ある程度のターゲティングが可能となる。故に、「認知を高めたい←→理解を深めたい」×「幅広く伝えたい←→絞り込んで伝えたい」という観点で媒体を選択する必要がある。

・人的販売
販売員や営業担当者が顧客と対峙して直接商品の説明をし、説得し、販売を行うことをいう。デモンストレーションや実演販売などもこれに属する。マス広告と反対に、担当者ひとりひとりの人件費は高くはないが、応対できる数に限界があるため、結果としてターゲット1人当たりにかかるコストは高くつく。そのため、AIDMAの後半、購入の欲求を高める辺りからが主要な領域になる。ある程度認知、理解が高まっており、多少なりとも購買欲求が萌芽していなければ説明、説得の効果が低いということもその理由である。

・広報
広報の基本はプレスリリースや記者発表、トレードショーへの出展などを通じてメディアに取り上げさせ、記事として発信してもらうことにある。広告は自社がコストをかけ、何度でも自由に好きなメッセージを発信することができる反面、説得力に欠ける場合がある。広報は第三者を通じた情報発信であるため、広告を補完して説得力を高める効果がある。日本においては残念ながら、コミュニケーション戦略において広報は重要視されておらず、予算も低く設定されているが、欧米においては広告と双璧をなすものとして重要視されている。

・販売促進
販売促進は、その他のコミュニケーション手段の補完および促進のために用いられる手法といえる。広告の注目度を高める「オープン懸賞」。商品に触れさせ、購入意向を高めるための「サンプリング」。その時点で買うことによる「お得感」を醸成して購買に踏み切らせる「クローズド懸賞」や「店頭キャンペーン」など、AIDMAの最初のAから最後のAに至るまで幅広い守備範囲を持っている。何かが当たる、お試し品が提供される、何か付いてくるという、何らかのオマケ(オファー:offer)を設定することと、その内容を何にするかも重要なポイントである。


■コミュニケーションプランを組んでみよう

 上記の通り、コミュニケーションの設計は、AIDMAの前半は広告・広報でしっかりメッセージを発信し、後半の人的販売に繋げ、販売促進を補完的に行うことが基本だ。

 例えば「低燃費な7人乗り。小型で取り回しが楽なワゴン車」という商品を例に、コミュニケーションプランを考えてみよう。メインターゲットは各家庭の世帯主だろう。しかし、小型で取り回しが楽となれば、ハンドルを自ら握る人であれば、主婦もサブターゲットであり、購買意志決定の重要な関与者となる。

 まずは広告。テレビCMは基本として、番組タイアップなどで主婦向けの情報番組内で紹介することも効果的だといえる。新聞であれば、朝刊・夕刊でもターゲットが異なる。朝刊は世帯主が通勤電車で読み、専業主婦の家庭であれば夕刊はまず、主婦が先に見る。それぞれメッセージを変えることも効果的だ。雑誌であれば、その雑誌ごとに読者層が異なるのでそれを考慮して選択する。

 広報はとにかく積極的にリリースを流すことが基本であるが、単純なリリースや記者発表だけでは心許なければ、発表時にPRイベントを組み合わせ、話題を喚起することも考えられる。

 販売促進は自動車の場合、人的販売とセットで考えることが肝要だ。昨今、自動車販売会社のショールームに足を運ぶ人は少ない。だから各社とも、どこで車に接触させるかに腐心する。例えば、ショッピングセンターの駐車場を借りての展示イベントを開催するなどの設計が必要だ。
 もうひとつ、オープン懸賞で見込み客リストを獲得して、営業フォローに繋げることも忘れてはならない(もちろん、パーミッションに留意すること)。その際、オファーとして「ハワイ旅行プレゼント」などを設定してはいけない。これに応募してくるのは、「自動車の購入に興味のある人」ではなく、「ハワイに行きたい人」だ。その意味で最も有効なのは「新車購入時○○万円割引クーポン」だ。購入に関心のある人以外、全く反応しないため、無駄な低見込み度のリストをフォローする手間も省ける。

 以上のように、コミュニケーションプランの設計においては「ターゲット」×「メディア」×「オファー」という組み合わせが極めて重要となってくるのだ。


次回はいよいよ連載の最終回となる。全体のまとめをしてみたい。

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