“現場に効く”マーケティングの基本理論・第8回
※えーと、昨日から商業誌原稿の転載が続いております。ちょうどタイミングが重なったのと・・・正直に言えば、少々業務に追い込まれております。
明日は書き下ろしをしますので、ご容赦ください。m(_ _)m
インタラクティブマーケティングの専門誌「月刊im press(アイ・エム・プレス)」6月号が発売されましたので、連載バックナンバーをアップします。
本誌では連載第9回が掲載されています。
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あまりに“基本”と思われ忘れられているようなマーケティング理論。しかし、日々の業務が行われる“現場”で今一度振り返ってみれば、思わぬ“再発見”があるのだ。
第8回「”マーケティング・ミックス”と製品戦略」
前回、戦略立案の要である「ポジショニング」をまとめた。今回から、いよいよ具体的な施策立案であるマーケティング・ミックスに入っていくことになる。
■ポジショニングを実現する
「マーケティング・ミックス」というと耳慣れないかもしれないが、「マーケティングの4P」といえば、「ああ、あれか!」と思う人も多いだろう。製品戦略(Product)、価格戦略(Price)、流通戦略(Place)、コミュニケーション戦略(Promotion)の4つの頭文字を取って”4P”と称するものだ。
では、4つのPの要素を使って何を実現するのかと改めて問われると、意外と「あれ?」と思うかもしれない。しかし、実はカンタンなことだ。事情に存在する人々を、同質なニーズでくくって、そこから魅力的なターゲットを選定。そのターゲットから魅力的に見えるポジションを取ることが、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングだったはずだ。その「魅力的に見える」には実体がなければ何の意味もない。魅力的なポジションを、製品と、価格、流通チャネルとコミュニケーションの要素で実現するのがマーケティング・ミックスなのである。
■「組み合わせ」と「整合性」が命
4Pが「ミックス」といわれる理由をもう少し整理しておこう。その4つの要素を「組み合わせる」ことによって効果を最大化させるということがポイントだ。製品に、最適な価格を設定し、最適なチャネルで生活者に届ける体制をくみ上げ、その存在を最適なコミュニケーションで知らしめるのである。
組み合わせの際の最重要ポイントは「整合性」である。生活者としても直感的に分かると思うが、例えば、製品の品質・価格・売っている場所・訴求方法のバランスが悪ければ買う気にはならないはずだ。一つ一つの要素が他に影響を及ぼすことを忘れてはならないのである。また、4つのP相互の整合性だけではない。その前の”S・T・P”のターゲティング、ポジショニングとの整合も重要だ。例えば、多くのファッションブランドでは、ファーストラインといわれるメインのブランドとは別に、デフュージョンブランドを扱っている。ターゲット顧客層をもう少し若くして、カジュアルなポジショニングにする。品質もメインより若干ダウングレード。価格も少し廉価に。ショップは別展開。広告のモデルも若い人を起用するなど、ターゲット、ポジショニング、4Pの全ての組み合わせが変えられ、整合を図っていることが分かるだろう。
■製品とは”価値”の集合体である
連載第1回で、「マーケティングとは”価値”の交換活動である」と記した。この製品戦略を考えるには、今一度、その「価値」の概念に注目する必要がある。「製品」といっても、有形物である場合だけではない。例えば10分間・1,050円のマッサージ、コンサルタントのアドバイスなどの無形のサービスも当然「製品」である。対価と交換してもらえる提供物は全て「製品」と考えてよい。つまり、「製品とは”価値”の集合体である」と考えればよい。
■製品の価値構造を明らかにするフレームワーク
その製品がどのような価値を持っているのかという、価値構造を明確にするのが、フィリップ・コトラーの製品特性モデルである。
製品特性モデルには「3層モデル」と「5層モデル」があるが、まずは簡単な3層から見ていこう。製品の持つ価値構造を3つのレベルに分解する。(図1)。3層は中心から<中核><実体><付随機能>である。
<中核>とは、「顧客が製品やサービスの購入で手に入れたい価値」だ。自動車で考えれば「移動する」や「運搬する」が相当するである。<実体>は「製品の特性を構成する価値」である。自動車ならその車の外装(デザイン)や内装(インテリア)、エンジン性能や安全装備に相当する。<付随機能>は「製品の中核価値に直接的な影響は及ぼさないが、その存在によってより魅力が高まる価値」である。車だと低金利ローンや無料点検サービス、納車までの期間の短さなどが相当する。
このように分解して構造を知ることによって、自らが顧客に提供している価値を明確にすることは非常に重要だ。もう一つ重要なのは、複数の製品を比較することによって、どの部分が差別化要素なのかがわかるということだ。この分析で自分の製品とと競合を比較すれば、勝負の賭けどころがわかるのである。是非、現場でこのフレームワークに従って、「勝負のしどころ」を考えていただきたい。恐らく、コモデティー品だったり、競合と差別化が難しい製品の場合、<中核>や<実体>では勝負がつかず、「その存在によってより魅力が高まる価値」である<付随機能>あたりの勝負となるはずだ。昨今、製品単独では競合とは勝負がつかないため、製品に加え、顧客へのサービスが重要であるといわれる理由が認識できるだろう。
■さらに詳細な分析が可能な5層モデル
3層モデルで「競合との差別化要因が見つからない!」と悩んだら、さらに価値構造を詳細に分析できる5層モデルで分析してみることをお勧めする。ノートパソコンを例にしてそのフレームワークを見てみよう(図3)。
パソコンの例でもわかるように、その製品の市場が成長途上にありコモデティー化していない場合、3層モデルで考えたときと同じく、<中核>から<期待>あたりの中心に近い階層で十分競争できる。あるいは、パソコンにおけるインターネットの登場のように、新たな活用方法が発案され、市場が再活性化するような場合は、<中核>に新たな要素が加わり、再定義されることになる。だが、インターネットが浸透し、パソコン自体の機能も十分強化された今日、競争要因はどんどん外側の階層に及んでいることがわかるだろう。その結果、パソコンは「期待はされていないが、実現できれば価値を増大させることができる要素」として、5層目の<潜在>の部分での勝負になっている。昨今のモデルがカラーバリエーションを競っていることでもわかる。当然、カラーバリエーションを増やせば、生産工程や在庫での無駄やリスクが増大する。しかし、それをしなくては勝負できない厳しさを表わしているのだ。故に、有形の製品だけでなく、顧客に対するサプライズを与えるような体験や、期待を大きく上回るサービスレベルの提供、もしくは顧客のプライドをくすぐるなど、無形の付加価値が昨今重要となってきているのである。
次回は2つめのPである、価格(Price)について考えたい。価格戦略は自社の利益にダイレクトに影響する重要な要素である。
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