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2008.03.28

“現場に効く”マーケティングの基本理論・第5回

※お詫び
一昨日はココログのメンテナンスで更新がでできず、昨日は年度末で業務が立て込んでいたため、更新をお休みいたしました。
申し訳ございません。
基本的には平日は毎日、何らかの記事を更新していきますので、よろしくお願いいたします。

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インタラクティブマーケティングの専門誌「月刊im press(アイ・エム・プレス)」4月号が発売されましたので、連載バックナンバーをアップします。
本誌では連載第6回が掲載されています。


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“現場に効く”マーケティングの基本理論

あまりに“基本”と思われ忘れられているようなマーケティング理論。しかし、日々の業務が行われる“現場”で今一度振り返ってみれば、思わぬ“再発見”があるのだ。


第5回「市場ポジションに応じた戦略の定石」

 前回、SWOT分析から市場機会と事業機会の導出、戦略の方向付けまでを整理した。市場環境の変化に対応した「勝ち残りのシナリオ」がある程度見えてきたのではないだろうか。しかし、そのシナリオも夢物語では意味がない。現実性を計る尺度が必要だ。また、いわゆる「戦略の定石」と照らし合わせてみることも重要だろう。


■市場ポジションをシェアで定量的に確認する

 「一人一人の顧客に注目することが大切」とするOne to oneやCRMが注目され、市場シェアの獲得に汲々とするべからずという論が高まった。とはいえ定量的なシェアを無視しては戦略を大きく見誤ることになる。自社はどの程度強い立場にいるのかという市場ポジションを意識することはとても大切なことだ。
 市場シェアを考えるときに、「市場」という言葉が表すものを明確にすることが重要だ。自社の属する業界という広い括りなのか、ある限定的な市場、つまり特定のエリアや特定のターゲットなどという、目標市場におけるシェアなのかである。結論から言えば、戦略の具体化である、目標市場の特定、施策立案につなげていくためには後者で考えるべきだろう。

■シェアの参考基準となる「クープマンの目標値」

 シェアの数字を洗い出したとしても、数字にどのような意味があるのか判断できなければ意味がない。そんなとき「クープマンの目標値」が参考になる。ランチェスター戦略の研究者、B.O.クープマンはシェアを六類型し、意味合いを導出した。
①73.9%:独占的シェア
 短期的には首位のポジションを奪われることがあり得ない、絶対的な安定シェア。
②41.7%:安定的シェア
 不測の事態がない限り、競合からの逆転や、新規参入によってトップが奪われることがない安定的なシェア。
③26.1%:市場影響シェア
 市場に影響をもたらす、一歩抜け出した状態を示すシェア。
 2位以下であってもトップを狙えるポジション。トップなら逆転される可能性がある。
④19.3%:並列的競争シェア
 複数のライバルが拮抗し、安定的な地位をどの企業も獲得できていない状態。
⑤10.9%:市場認知シェア
 生活者が自ら思い出せる(純粋想起)ギリギリのシェア。競合から存在を意識されるボーダーライン。
⑥6.8%:市場存在シェア 生活者が人からヒントを出されて思い出せる(助成想起)レベルのシェア。
 市場において、かろうじて存在が許されるレベル。


■定性的に市場ポジションをとらえる

自社のポジションを市場シェアで定量的にとらえることができたら、次に、どのように戦うべきかという定石を参考にするといいだろう。フィリップ・コトラーは「市場ポジションに応じた戦い方」を四類型にまとめた。実例を基に見ていこう。
 四つのポジションとは「リーダー」「チャレンジャー」「ニッチャー」「フォロアー」に分類される。


■全方位的リーダーの戦略
 リーダーはとにもかくにも唯一のチャンピオンであり、強者故の“やりたい放題”が可能だ。つまり、全方位的にあらゆる戦略を行使する。中でも特徴的な戦略を二つほどあげよう。
 一つは「需要創造」。例えば、「疾病啓発広告」といわれる手法。「こんな状態のあなたはEDかもしれません。一度病院で相談を」と訴求する。「病状あり」と診断されると、疾病に効く唯一、もしくはシェア・ナンバーワンの製薬会社の薬が処方される。つまり、市場を創り出していくのである。
 もう一つが「同質化」。リーダー以外の企業がヒット商品を開発したら、技術開発力を総動員して同種の製品を上市。強大な流通・販売力で一気にシェアを奪う。輸液メーカーが身体に吸収されやすい成分の飲料を発売したら、「スポーツ時の水分補給に」と同種の商品をすぐさま開発・発売して一気にシェアを奪った。ポカリスェット対アクエリアスの事例だ。


■徹底した差別化戦略で挑むチャレンジャー

 「チャレンジャー」の戦略の定石は何といっても「差別化」である。差別化は、中途半端が最もよくない。例えば「比較広告」なども、本来的には「徹底して」やればいいのだ。
 マーケティングの達人と言われ、後にアップルコンピュータのCEOに転身したジョン・スカーリーが考案した「ペプシ・チャレンジ」。コカ・コーラとペプシのどちらが入っているか明らかにされていないコップを街行く人に両方飲ませ、美味しいと思う方を指ささせる。被験者のほとんどがペプシを選んでいたというオチになるこのキャンペーンは、絶大な効果を上げた。ペプシは製品戦略でも徹底した差別化をとる。コーラにレモンフレーバーを最初に投入したのはペプシだ。昨年夏にはキュウリ味まで発売した。「ペプシ・キューカンバー」。かなり微妙な味だったが、インターネットを中心に話題になり、ヒットした。こんな商品を上市したのはチャレンジャーである証左だろう。チャレンジャーは常に「俺たちは違うんだ!」と言い続けることでリーダーに戦いを挑み、生き抜いていくのだ。


■最適化戦略のニッチャー

 「ニッチ」はカタカナ言葉になっているが、原義は“(人・物に)最適の地位(場所・仕事)”を表わす。では、いかにして「最適の地位」を確保するのか。「バリュープロポジション」を明確にすることだ。バリュープロポジションとは、「顧客が求める、競合には真似のできない、独自の提供価値」である。独自の技術や、サービス提供方法などの「力の源泉」をもって「独自の生存領域を確保すること」が戦略の要諦だ。
 例えば計測機器製造・販売のキーエンス。高収益であることで知られているが、その秘密は、とにかく顧客の現場、工場の生産ラインに密着し、徹底的に要望を聞き出し、問題点を発見し、最適化したソリューションを提供することにある。市場全体を見てリーダーとの「差別化」を図るのではなく、顧客を見て「最適化」することによって、生存領域を確保して高収益を生んでいるのだ。特定の顧客に張り付き、潜在ニーズを掘り起こすという、ニッチな動き方は、言葉面だけのソリューションとは一線を画している。


■変化しなければ生き残れないフォロアー

 リーダーにはなれない。それに戦いを挑むチャレンジャーほどの力もない。ニッチャーとしての”独自の生存領域確保”もできていない。そんなフォロアー企業が多いのもまた現実。しかし、この時代それではなかなか生き残るのは難しい。競争や変化が激しい業種であれば、存亡の危機はすぐに訪れる。また、そうでなくとも、緩慢なる衰退が待っている。ではどうすればいいのか。答えをひとことで言えば、「立ち止まらないこと」である。何とか「バリュープロポジション」を構築し、ニッチャーへと変身するのだ。肝心なことはともかく「変わるという意志の強さ」を持つことである。


 今回は定量、定性両面から自社のポジションを明らかにし、戦略を立てる上での定石を紹介した。戦略は実行されなければ意味がない。次号からは、実行プランを考えていこう。


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