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2008.02.25

“現場に効く”マーケティングの基本理論・第4回

インタラクティブマーケティングの専門誌「月刊im press(アイ・エム・プレス)」3月号が発売されましたので、連載バックナンバーをアップします。
本誌では連載第5回が掲載されています。


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「“現場に効く”マーケティングの基本理論」

あまりに“基本”と思われ忘れられているようなマーケティング理論。しかし、日々の業務が行われる“現場”で今一度振り返ってみれば、思わぬ“再発見”があるのだ。

第4回「SWOT分析と分析結果の解釈」

 企業研修などにおいて「今までにSWOT分析をやったことのある人は?」と質問をすると、かなりの割合で挙手がある。しかし、実行した感想を聞くと「難しかった」「うまくできなかった」という声が続く。非常にポピュラーでよく使われるフレームワークなのであるが、実際に使いこなすのが少々難しいのがこのSWOTなのだ。故に、今回は「急がば回れ」の手法をお伝えしよう。


■なぜ、SWOT分析に悩むのか?

 通常のSWOT分析は、自社を取り巻く環境を「外部環境」「内部環境」に分けて洗い出し、さらにそれを「プラス面」「マイナス面」に分類する手法だ。
 外部環境のプラスは自社の利益創出やポジション向上のために活かすべき「機会」。マイナスは自社の利益を守るために回避する、もしくは対策を採るべき「脅威」。内部環境のプラスは外部環境に対する強みとなり、マイナスは抱えた弱みを表すことになる。
 一見単純に思えるこの分析の何が難しいかといえば、一つは外部・内部のプラスマイナスを洗い出そうといったところで、何を頼りに洗い出せばいいのかわからないことにある。思いつくまま、闇雲に列挙していっても抜けモレだらけになってしまう。かといって、考え込んだからといって出てくるものではない。そこがこの分析で多くの人が最初に悩むところなのだ。


■抜けモレのないSWOT分析の手法

 昔の人は良いことを言った。「急がば回れ」である。連載第2回と第3回でご紹介したPEST分析と3C分析の手法を、そのままSWOTに展開する手法をご紹介する。(図1)のワークシートを参照されたい。
Photo
 まずは、外部のマクロ環境を分析するPEST、さらに3CのCustomerとCompetitorをつなぎ合わせてみよう。法規制などの政治的影響要因(Political)、経済情勢(Economical)、社会情勢(Social)、技術的成熟度(Technological)、総合的な市場環境と顧客ニーズ(Customer)、競合の動き(Competitor)。外部環境で注目すべき状況が抽出できるだろう。
一つの項目でも考えつく限りの状況を抽出すべきだ。例えば昨今なら、社会情勢では「少子高齢化」「団塊世代の大量定年」「ニートの増加」「雇用の流動化」などなど様々挙げられるはずだ。まずは思いつく限り出すことが肝要である。
 次は内部環境だ。3Cの自社(Company)で総合的にとらえることもできるが、それでは少々粒が粗くなり、分析に抜けモレが発生しそうで心配だ。Companyは、自社の総合的な方向性として状況を挙げ、さらにその下に、自社がどのような戦略を展開しているかを4つの切り口で抽出していこう。その切り口は、詳細は後の連載回で述べるが、4Pの項目だ。Product: 製品戦略、Price = 価格戦略、Place:流通戦略、 Promotion:コミュニケーション戦略。ここでは各々の戦略がどのように展開されているかという観点で列挙していこう。


■SWOT分析の完成に向けて・取り扱い上の注意点

 SWOTの難しさは実は、上記の状況抽出の切り口だけではない。まずは、ワークシートにあるように、プラスマイナスの分類がキモだ。通常の4マスのマトリックスだと、つい、「これはプラス!」「これはマイナス!」と一方の側面だけで判断しがちだが、それはやはり抜けモレを発生させる。
 物事は多くの場合、プラスにもマイナスにも判断できることがある。例えば、ペットボトルに半分の水が入っているとする。プラスに解釈するなら「まだ、半分残っている」。マイナスなら「もう、半分しかない」となる。どちらで解釈すればいいのかは状況によって異なる。迷うなら両方挙げておくべきなのだ。このように、ワークシートには、一つの状況から、プラス要因、マイナス要因の両面の解釈を列挙していく。全体としての解釈をするのはこの表が完成した後だ。それまでは時間がかかってもひたすらこの表の完成に注力するのがポイントである。
 もう一つの注意点は「時間軸」だ。分析の基本は、「現在~ほぼ確実な近未来まで」を対象とし、曖昧な未来は混ぜないことだ。また、プラス面、マイナス面のどちらかが確実に先に起こることなら、まず、何が起こり、その後何が起こるのかということを要因に付記する必要がある。時間軸を混ぜてしまうと、分析結果がめちゃめちゃになるので要注意だ。


■SWOT分析の仕上げはまだまだこれから!

 ワークシートが埋まった頃には、だいぶウンザリしてきていないだろうか。しかし、今回の眼目は「急がば回れ」だ。時間がかかっても抜けモレなく、確実な分析を行うことが重要なのである。それに、本連載の主旨は“現場に効く”だ。形ばかりで実際に使えない分析を行っても何の意味もないとご理解されたい。
 さて、よくある分析の問題点はフレームワークを埋めて分析が完成したつもりになってしまうことだ。苦労して埋めたフレームワークを眺め、「まぁ、だいたいこんなこと」と曖昧に分析結果を口頭で説明してオシマイ。最悪である。
 分析結果は誰が読んでも正しく解釈できるテキストとして残し、共有しなければ意味がない。そして、そのテキストからは、「外部環境からどのような機会・脅威の結論が導き出せたのか」ということと、「内部環境でどのように勝ち残っていくのか」が伝わらなければならない。つまり、SWOT分析は単なる状況整理のためのものではない。「市場機会・事業課題」を明らかにして「勝ち残りのシナリオ」を作ることが目標なのである。
 分析結果は以下のようなテキストで表すとよい。

 我が社を取り巻く環境は
 T                 というマイナス要因と、
 O                 というプラス要因があり、
 総合的には T+O             であると言える。
 その中で
 W              という弱みをカバーし
 S              という強みを活かして勝っていく。


 行数の関係で記入スペースが短くなっているが、各項目とも誰が読んでも正しく理解できる文章が記入されねばならない。例えばT+Oの部分に「総合的には”大変厳しい状況”であると言える」などと記入されるケースがあるが、それでは全く意味をなさない。「何が言いたいんだ?(So What?)」である。機会と脅威の何がどのように作用し、結果どうなるから厳しいのか、チャンスがあるのかという明確なメッセージとなっていることが必須。他の文章も同様である。

 通常のSWOT分析は、あくまでファクトの洗い出しレベルに留まるが、この手法であれば、明確な戦略の方向づけが導出できる。つまり、第2回で示したマーケティング・マネジメントの流れの中において、環境分析パートから、次の戦略立案パートへの橋渡しができるのだ。それだけに、この部分の重要性は高いといえる。急がば回れ。手戻りをしないように確実に行いたいステップである。

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